これまで数多の男との経験を持つまりもだが、幸か不幸か、本当の意味での『コスチュームプレイ』というものを経験させられた事は一度も無かった。せいぜいあったとすれば、とある男の趣味でボンデージを着用させられたり、麻縄で軽めに縛られたことがあったぐらいだ。とは言えそれも「何かになり切る為」のものでは無い。従って今回のそれは、まりもにとって初となる体験だった。
「……へえ、こうなってたんだタンクトップの中身。肌の色が透けて見えるほど薄そうな生地なのに下着の形が浮き出ないと思ったら、道理で」
「んっ……そうなの。このコスしててブラなんて見えたら興醒めもいいとこだ、って夕呼が……」
まりもが着ていたタンクトップをまくり上げた来須が、裸の乳房を舐りながらタンクトップの裏側をしげしげと観察している。そこにはメインの生地とほぼ同色の、極薄で真っ白なパッドが貼り付けられていた。本来の胸の形を崩さずぴったりと追従し、しかして表面に乳首のポッチを生じさせることの無い絶妙な硬度を持ったこのパッドこそ、おまんじゅうみたく綺麗に盛り上がったリファの乳形状を再現する最大の秘訣。そう夕呼が力説していたのをまりもは思い出す。
「つまりはパッドで補正してるんじゃなく、元々の形をそのまま生かせる構造にしてあるってことか。それでリファのむっちりした重量感ある胸を十二分に彷彿とさせるんだから、これはむしろ素体としてのまりものおっぱいを褒めるべきだな」
「肌が透けて見えるっていうのも夕呼の拘りで、ホントは生地の方に直接そういう色がついてるのよ。パッと見た時にそれと分からないぐらい、本当にごく薄っすらとなんだけど」
「ああ気付いたよ。めくってみると判るけど、パッド以外のところにも裏生地が貼ってあって段差が出ないよう埋めてある。それに加えて表側に色を付ける事で、裸に直接タンクトップ着てるように見せ掛けてるんだな。でも着色が見事過ぎて、そうと分かっててもちょっと目を離せばまた透けてるように見えてくる。殆どトリックアートの世界だ」
そういう技巧は至る所に張り巡らされてある。例えばスカート生地はお尻の張る部分をあえて摩耗させてテカりを出しているし、シューズやグローブにも一部ダメージ加工を施す事でいかにも使い込まれた格闘家の装備、という風合いに仕上げられている。その完成度の高さをカメラ小僧達が口々に賞賛していた事は、もはや言うまでもない。
「それとサスペンダーのベルトもね、わざと胸に当たるトコだけ硬くして、ちょっと真ん中に寄せるようにしてあるの。そうするとインナーパッドと連携して肩のところで胸の重さと釣り合いが取れて、ブラしてるのとおんなじように機能するんだって。詳しい事は夕呼にしか分からないんだけど」
「本当に天才じゃないのかその子。そんなギミック、理系出身の俺にだって思いつかないぞ」
「だから困ってるのよ。良い方にも悪い方にも、やるとなったらトコトンなんだから。……あん、」
こんな感じで一事が万事、夕呼の手の込みようは実に細部にまで張り巡らされていた。ウイッグだって頭の形がおかしくならないよう、カールの掛かった長いまりもの地毛を半分以上織り込む事で違和感無く収まりつつも固定が図られる……という構造に仕立てられた、恐らくは一点モノの特注品。他にもアクセントとなる両耳のイヤリングには、豪華にも本物のエメラルドをあしらったとの事だ。これら全てが今回きりの使い捨て。『あたしは要らないからあげるわよソレ、今回の報酬代わりに』なんて言ってた夕呼の金銭感覚は、やっぱり狂っているとしか言いようが無い。
「……それにしてもこうしてると、まるで本物のリファのおっぱいに触れてるみたいだ。この大きさと言いふかふか感と言い、本当にイメージイラストそのままの感じで……ああ、リファぁぁ……」
ちゅぷちゅぷ、と夢中で乳首をしゃぶる来須の嬉しそうな姿を、まりもは暖かな心地で愛でる。この恰好そのものに関しては色々と忸怩たる思いがあるものの、それで彼が喜んでくれるんだったらそれでいい。今頃夕呼が連発でくしゃみでもしていてくれればもっと良いが。
「それにこのスカート丈も実に計算し尽くされてる。太ももが剥き出しなのに決して下品に見えなくて、一番膨らんでるところが裾の端に来るようになってて……ちょっと足を上げるとむちむちな太もものくびれがチラっと覗く辺りが玄人仕事っていうか、凄くそそられる」
「何度も採寸させられたのよ、それ。『当日まで絶対体型崩すんじゃないわよ』なんて、何週間も前から念押されたりもして」
「分かってんだなあやっぱり。リファと言えば巨乳、とばかり思われがちだけど、リファの魅力は眩しいくらいの下半身にもあるんだ。このヘソ出しルックから滑らかに幅を広げる腰とお尻とか、格闘家らしい脚線美とか。それをこの黒いタイトスカートで引き締める事で、形の良さを強調する事に成功してる。リファの事もまりもの事も知り尽くしてないと、こんなレベルの高いクラフトは出来っこない」
来須の手がさわさわと腰回りを辿り、やがてお尻の肉をぎゅうぎゅうと揉み始めた。普段は絶対しない、強い興奮と衝動に突き動かされるがままのいやらしい手つき。それにまりもの花芯が熱を帯び始める。
「スカートの中身は? それも用意されてたって、さっき言ってたけど」
「んっ……直接見てみる?」
そう言っておずおずと、まりもは自らミニスカの裾をたくし上げた。布面積のごくごく少ない、レースをあしらった純白の紐パンことリボンショーツ。来須の眼前に全容を表したそれの後ろ側はTバックの形状になっていて、これまた下着の線が表に出ないようになっていた。
「うおわあ……」
「さ、さすがにここまで撮らせたりはしなかったんだけどね。中身の色気は表にも出るものだから、って……」
「こんな過激な格好で、あえて下着の色は白、っていうのがまたクるな」
「こういうカッコしてるけど根は純真な子らしくて、それを表現してるんだって。これから好きな
「――ここまで来ると怖いぐらいだ。男目線を全部見透かされてる、っていうか」
その光景は来須の性欲に直で突き刺さったのだろう。ズボンの一部が大きく膨らんでいるのを見て、まりもはそこへ指を這わせる。
「いつもよりカッチカチ。そんなに興奮してるんだ?」
「しない訳にはいかないよ。こんな同人誌みたいなシチュエーションで、しかも本物に等しいリファそのものの恰好をした君があられもない姿になってて……」
「じゃあ、それ……ココで沢山気持ち良くしてあげちゃう」
そう言ってまりもが両胸を手で寄せると、来須もその意図を察したらしい。無言でズボンを脱ぎ捨てまりもの胴に跨った彼は、既に先走りを滴らせたその肉竿を胸の谷間へと添える。
「んふふ……じゃあ行くね。せえの、ぎゅうぅぅ~~」
「ふおっ、」
肉竿を乳房で挟み、両側から圧迫する。その感触というものは男にどんな味わいを与えるものなのだろう。まりもに分かるのは、乳房の狭間に納めた肉竿がびくびくと打ち震えている事と、それを受ける来須の表情が一気に弛緩している事のみだ。
「どお? 気持ちいい?」
「気持ちいいし見た目の興奮がヤバ過ぎてっ。ああ、これがリファの、リファのパイズリっ……! うくうう、むっちり乳肉に包まれてチンコ溶けるぅっ……!!」
「ただ挟むだけじゃなくて、もっと色々してあげられるわよ~。例えばぁ、こんな事とか」
自ら胸を動かし、それで肉竿を縦に扱く。その刺激にだらだらと溢れた先走りが潤滑油となり、乳房での責めはよりスムーズなものとなっていった。それに味を占めたとばかり、来須も腰を前後させてまりもの胸の谷間を膣穴代わりみたいに犯し始める。谷間からぴょこぴょこと顔を覗かせる彼の亀頭はもはや、気持ち良さと感銘のせいで充血し切っていた。
「あぁぁっ……ずっとこうしたかったんだ。リファのおっぱいで、チンコごすごすって擦りながら、それで最後に……最後に……」
「んっ、んっ。どうしたいの?」
「リファのその可愛い顔に、俺のを……ぶっかけたいっ……!」
「……いいよ。遠慮しないで、気持ち良くなっちゃったらそのまま出して」
来須の両手が乳房を掴み、揉みしだきながら上下に揺すってきた。そこからは彼の好きにさせるつもりで、まりもは自分の両腕を頭上に伸ばすポーズを取る。――勝利のポーズ、として夕呼に仕込まれたのとほぼ同じそれを、彼に披露する為に。
「その仕草っ! そこまで完璧に、しかもパイズリの最中になんて……ッ」
「いいんだよ。このままおっぱい揉みながら気持ち良くなって、それで好きなだけ出して。全部受け止めてあげるから。んっ、ふぅっ、ぁん」
「うううっ、ダメだそろそろっ……イキたいのにイキたくないっ、ここで終わるの勿体ないっ。でももうっ……!」
来須の腰の動きが加速する。亀頭の噴門はしっかりとこちらの顔面に向けられていた。この興奮の度合いならきっと、顔中白濁まみれにされてしまう。その瞬間を半ば待ち侘びつつ、まりもはうっとりと笑んで来須の昂る姿と忙しなく往復する肉棒の出入りを見つめ続ける。
「……ぅぅううう、おっ、イクよリファ……イクっ……あぁぁ、――ッ!!」
「きてっ。ふぁうっ、はぁぁ……っ」
どぴっ、と放たれた第一射。そこからはもう止めどもなく、夥しい量の精液が亀頭を飛び出してはまりもの額に頬にと降り注いだ。勢いの盛りを過ぎてもなお精を吐き出そうとする肉竿、その先っぽから零れ出た青白い汁が、胸の谷間にべとりと小さな水溜まりを形成する。
「…………どう、良かった?」
「――すご、く……今までに無いくらい興奮した……」
「良かったぁ、ふふっ」
髪や鼻梁に掛かった精のとろみをあえて拭いもせず、亀頭に向かって「あーん」と舌を伸ばす。その誘いに応じて突き出された彼の肉竿が、まりもの口腔にずるりと滑り込んだ。
「はふぅ。ちゅるちゅる。れるれりゅりゅ……」
「く、ふぅっ。リファに舐められるの、気が狂いそうってぐらいイイ……!」
未だびくびくと快感の痙攣が止まない肉竿を入念にしゃぶり、尿道口を舌先で掻いて残滓の排出を促す。それに応えて滲みを吐き出す肉棒が、舌と上顎の間で跳ね回る。射精する度に残尿ならぬ残精感を覚えるらしい来須は、事後にまりもがこうしてあげる事で全てを吐き切りスッキリと快感の余韻に浸れる、との事だった。
「ずちゅちゅちゅううぅぅ……こく。ふふっ、とっても気持ち良さそうだったね」
「ああ。――はぁ。はぁ。でも何だろう、今夜は一回じゃ全然満足できない……もっとリファの事が欲しい……!」
「すごぉい、とっても逞しい……それなら、ね、私のココも触ってみて」
パイズリもフェラも別に今夜が初めてという訳でも無いのに、装い一つ違うだけで随分と猛ったものだ。そこへ重ねて誘い掛けるように、まりもはゆっくりと脚を開いてみせる。平素は見えそうで見えない、いや見せないからこそより強まる禁断性が醸す魅惑。そこへ来須の手が辿り着き、ショーツの上からぐにぐにと恥丘をまさぐり始める。
「んっ、あっ……いいよお。今日はいつもより、触り方ねっとりして、るぅ」
「何だろう、やっぱり気分の問題なのかな。自分でも抑えが利かない感じがして……」
「もっとして。私、それ好きっ。ふぅっ、んうぅ……あ、そうっ、胸も一緒に……」
二つの乳房を交互に吸われてぞくぞくと打ち震え、ショーツの奥でくちゅくちゅ、と強まってゆく水濡れの音にこっそりと昂らされつつ、まりもはあえて生娘のような悶え方をしてみせる。ついでに言えば口調や言葉の選択すらも、いつもの自分とはほんの少し変えていた。今のこの状況に求められているのは『セックスに慣れ切った大人の女』では無い。初めての男を迎え入れるに際し、緊張と幸福感にこの身を包まれながら愛する彼を求める一人の少女――リファ。その初心な姿こそ、彼が一番求めているもの。まりもはそれをきちんと理解していた。
「んッ……もうぐしょぐしょだよお。ねえお願い、ショーツ……脱がせて」
「……分かった」
来須の指がスカートの内側を手繰り、腰のところで結ばれたショーツのリボンを掴み取る。しゅる、と解かれる結び目。腰を起こして彼に抜き取らせたショーツのど真ん中は、自分の愛液が成した円形のシミにぐっちょりとそぼ濡れていた。
「すご。糸、引いてる……」
「あはっ。もう欲しくなっちゃってるの。だってずっと、ずっとあなたの事、好きだったから」
「リファ……」
「だから……ね、『クレスト』」
そう呼んであげた途端、来須はさらに興奮の表情を強めてまりもの上に覆いかぶさって来た。クレスト。件のゲームの主人公はそういう名前らしい。それと自分の『来須』という名字に似通った響きを感じていた彼は、今回の行為中に自分をそう呼ばわるようにとまりもに懇願していたのだった。
「あっ……そう、いいっ……ねえクレスト、私の胸、好き?」
「好きに決まってる。こんな大きくて形も綺麗で、ずっしりたぷたぷなリファのおっぱいが嫌いな男なんていないっ」
「嬉しいっ。クレストに好きって言って貰えたら、それだけですごく嬉しいの。私にはクレストだけだから。私の全部はあなただけのものだから。――んぅ、あっ。やだぁ、クレストの指……私のアソコぐちゅぐちゅってしてるぅ……」
花弁の内側に一本、二本、と来須の骨ばった指が入ってくる。『女性経験はそんなに無い』と嘯いていた彼は自分との行為もまだそれほど重ねていないが故に、こちらの弱いところを完全に把握し切れてはいない。だが今日は貪欲にぬめる膣内に指を滑らせ、快感の源泉を探ろうとするかのようにこちょこちょと指先を動かしている。それがGスポットの辺りを通り過ぎ、まりもは思わず「は、そこぉんっ」と甘声を洩らしてしまう。
「ここ? ここがイイの?」
「あっ……んっ、そう。そここすられると体がビリビリしてっ。だからもっと、もっと弄って欲しくてぇぇっ……」
「じゃあイイ時はイイ、ってもっと俺に教えて。リファのよがってるトコ、俺ももっと見たいから。――こんなのはどう?」
「あふっ、くあぅんっ。やだ、急に、責め方上手……っ」
ぬるぅぬるぅ、と舐り尽くすような動きで来須の中指が膣上辺をなぞってゆく。自分の弱い箇所の一つ。久々にそこをしっかり刺激されたことで、まりもの性感も一気に高まる。次に来須は秘所へと顔を近付け、舌で花弁をねっとりと舐め始めた。彼が口でアソコを責めてくれるなんて、これも今日が初めてだ。ずちゅちゅ、と音を立てて尖った陰核を啜られ、まりもは身体を仰け反らせて喜んでしまう。
「ひあぁああぁんっ」
「うわぁ……すごっ。リファのココからどぷんって、透明なツユが溢れ出て来たよ。入り口もこんなにひくひくして、指にどんどん絡みついてくる……すごくエロい……」
「だ、だって、クレストの愛撫気持ちいいのっ。気持ちいいとすぐ、ジュンってなっちゃうのぉぉ……」
「なら……こっちでならもっと、気持ち良くしてあげられるかな」
じゅぽんっ。愛液に濡れた指を抜き取った来須が、まりもの膝を分け入ってその身体をねじ込んだ。さっき精を放ったばかりの肉竿がひくひくと、次なる快感を求めて涎を垂らしながら直立している。彼のモノがこんなに勇ましく勃起しているのを見るのもこれが初めて。その事にまりもの芯奥はぐらりと揺るがされ、更にしとどに愛液を垂らしてしまう。
「ねえクレスト。今夜は……生で、しよ」
「え……いいの?」
「気持ち、昂っちゃって。直にあなたを感じたいの。だから……お願い」
自ら指で陰唇を開き、迎え入れのポーズを取る。ぬめる膣の奥に男の猛りと情けを、と求めるまりもに、来須はキスを一つ落とすことで応えた。
「ところでリファ、こっちももう一つだけ、お願い聞いて貰っていいかな」
「ん……いいよ」
「挿れる直前に、その、こう言って欲しいんだけど」
来須はこちらに耳を寄せ、ぼそぼそ、とその台詞を呟いた。まりもは察する。ああ、きっとその台詞が、このリファという子の名言か何かなのだ。いいよ、と頷きを返すと彼はまりもの太ももをぐいと押し広げ、亀頭を用いて花弁の真ん中に先走りを塗りたくり始めた。そのままぬるぬるの裏筋で陰核をこすられ、まりもは電気を流されたみたいに腹から胸までを震わせる。
「んあぁあうっ」
「じゃあ、頼むよ」
「はうっ、ふうっ、ふぅぅぅん……ん……はい」
ぐつ、と花弁に圧迫を加える亀頭の感触。まりもは彼に向けて両手を伸ばし、それを求める感情をふんだんに込めながら、先刻教えられた台詞をその通りに述べた。
「クレスト――想いはね、言葉じゃなくても……伝えられるんだよ」
要求通りの振る舞いが出来たかは定かでないが、きっと来須は十二分に満足したのだろう。うっそりと微笑んだ彼はまりもに熱いキスを落とし、そして溜めていた腰を前方へと突き出した。
「んっ――――!!」
三日ぶりの挿入感。受け入れてみて分かったが、やはり彼はいつも以上に興奮していて、その漲りが肉竿を幾重にも硬くしこらせていた。笠も大きく張っていて、膣道の形状を押し返そうとする彼の屹立ぶりが凄まじい。その感触を噛み締めるかのように、おへその下辺りが強烈なむずむず感を覚える。
「あッ、大きいよおクレストのっ。クレストが『はじめて』なのにっ、私、私へんになっちゃう……っっ」
彼と付き合い出してからこっち、まりもはずっと肉体的な物足りなさを覚えていた。でもそれは求めても仕方の無い事だと思っていた。愛してくれる・愛されるのが一番で、身体の事は二の次。それに自分も来須もそろそろ二十代の折り返し、いつまでも享楽的な事ばかりを言ってはいられない。究極はその相手と所帯を持って子供を育て、夫婦共白髪になってもずっと一緒で居る……そういう未来を描いた時に最も優先されるのは、やはり互いの性格や価値観といった人間的な相性である筈だ。
「ああぁっ、すっごっ。カズくんのっ、ううんクレストのっ、ずりゅずりゅ来てるっ。私の全部食べちゃうみたいに、奥まで来てるぅぅ……!」
けれどそうは言っても、やっぱり体の相性だって良いに越したことは無い。それをまりもは今宵、悉く実感させられていた。普段は淡泊な来須も今はより強い感情が籠っているせいか、それとも役柄になり切っている事の影響か、今夜は情熱的にまりもを求め貪っている。そのいつにない荒々しさこそが、まりもの渺漠たる性的欲求をこれでもかと揺り起こした。だが今は来須の為に、あえて本来の己自身を抑え込まなくてはならない。出すならそう、段階的に。穢れを知らぬ純粋な乙女が愛する男の穢れを浴びて、少しずつ堕ちていくみたいに。
「すごいっ、クレストっ……こんな逞しいの、すごいよおっ。私、クレストに愛されちゃってる。クレストの気持ち、いっぱいいっぱい伝わってくるよおぉぉっ」
「リファっ、リファぁぁ……っ!」
ずんずんと突かれ掻き回される膣道。こちらの締め付けが強まるところを察知してなのか、亀頭の軌道がまりもの弱点を掠る頻度が上がって来ている。無論、これですらまりもの掌中。『そこが気持ちいい』というメッセージを言葉で伝える代わりに体の反応で示し、それを受け取った相手にさらなる反応の加速を促しているのだ。そう、想いを伝える方法は、何も言葉だけとは限らない。
「あっ……あっ……! クレストのっ、中でどんどん大きくなってるっ……私もイイっ、きもちいいよおおっ……! ちょうだいクレスト。あなたの全部、私にちょうだぁいっっ」
「く、うわっ、ナカのうねりが凄っっ……出すよ全部……リファ……んく、リ、ファぁぁ……!!」
精神的昂揚は性感を高める上で最高のスパイスとして作用した事だろう。最後の数突きでがつがつとまりもの最奥を叩き、来須が果てる。彼に許した初の膣内射精。その生温かくて粘り気の強い波濤に、まりももまた身を大きく震わせる。
「んっ……あぅ、あっつい……! クレストぉぉ……」
はふ、と脱力して肉竿を抜こうとした来須の背に腕を回し、まりもは彼と繋がったままで身を起こした。今度はこっちの番。そう告げる代わりに膣口をきつく締め、呻く彼の身体を押し倒して騎乗位の体勢を取る。
「……とってもカッコ良かったよ、クレスト……たくさんの気持ち注いでくれて、ありがと……」
「リ、リファ……」
「お礼に……今度は私の方からいっぱい伝えてあげる。私の気持ち」
ずりずりと腰を引いて雁首のところまで後退した後、それを緩やかに収め直す。大きなグラインドを数度繰り返すうち、射精で一旦緩みかけていた彼の肉棒は再びみちみちと張り詰め出した。腰を捻って胸を大きく振ってみせると、彼もまたその求めを理解してまりもの重い乳房を下から抱え上げ、乳首を押し込みながら揉みしだく。彼が切なそうに腰を浮かせたら、それを感知したまりものお尻が妖しく蠢き肉竿を奥へ奥へと咥え込む。
「はぁっはぁっ。ああん、クレストっ、クレストぉ……もっと、もっとぉぉっ」
「ああ、凄くいいよリファ……もっと君が欲しいっ。リファ……!!」
下から激しく突き上げられ、まりもは胎の中の子宮が男の精を求めて下りてきたのを感じ取る。このまま一番いい所に熱いのをぶつけられたらきっと絶頂に達してしまう。彼と付き合ってからこっち、来須との行為では軽く達するばかりで、ここまで大きな快感の高波を感じた事は無かった。久しぶりの絶頂。一刻も早くそれを味わいたいという思いに身を焦がされ、まりもの腰のうねりはより大きくなってゆく。
いつしか二人は両手を繋ぎ合い、それを支えに互いの腰を打ち付け合い快楽を貪り合っていた。胎の奥に生じるむずむず。近い。あとちょっとで達してしまう。数ヵ月ぶりに得たそのギリギリの感覚を、まりもは存分に味わい尽くす。
「あっああっ、きてるこれっ、大きいのきちゃうっ。もっと乳首いじめてっ。ずんずんしてっ。それで私と一緒にイってえぇぇっ。このまま一緒にぃぃい~~っ!」
「いいよリファっ。ああっこんなエッチなリファ、最高過ぎるっ。俺もイクよ、また出すよ、君の……リファの中にっ」
「出して、出してぇ……! リファをあなただけのものにしてええっ!! ふっ、ふあぁああんっ――――!!」
どちゅぅんっ。その一突きが脊髄を震わせ思考を吹き飛ばし、まりもを快楽の頂点へと誘う。身体の仰け反りに合わせて収縮する膣内ではラストスパートを掛ける来須の肉竿がぎちゅぎちゅと抽挿を繰り返し、そして程なくその動作を止めた。びゅくびゅく、と内側を満たすぬかるんだ感覚。その斉射を浴びた最奥からじわりと幸福感が湧き上がる。
「――あぁ、あっっ……! 出てる、いっぱい……クレストの精子、私の……子宮に……」
「くっ、うあ…………届いてる? リファ……? 俺のこの想い……」
「うん、うんっ……届いてるよ沢山……。私のお腹の奥の奥まで、溢れ返っちゃうくらい……」
脱力して枕に頭をつけたまりもに、来須が身を寄せてきた。一度目から繋がりっぱなしの接合部から、ぐぷ、と白い粘液がこぼれ出る。両の乳房を手で寄せて自らの顔を埋め、絶頂の余韻と乳圧の心地良さに溺れる来須。その髪を優しく撫でながら、まりもは己の花芯に浸潤する精を吸い尽くすかのように肉竿を搾り続けた。
「んふっ、胸の触り方やらしい……まだし足りないのね?」
「ごめん、今夜はちょっと……収まりがつきそうになくて……」
「いいのよ。……満足するまでもーっとして。私もいっぱいいっぱい、カズくんの事気持ち良くしてあげるから……カズくんの大好きなリファの、この姿で。だから……ね?」
「……ああ。今夜はもう離さないよ――まりも」
そうして二人は再び絡み合い、高め合って果て合う。愛の交歓。まさしく身体のみで行われる二人の濃密なコミュニケーションは、夜更けを過ぎても尚盛んに行われ続けたのだった。
「――――で、どうしてそれがあたしのせいになんのよぉ」
「だって……だっでえええ……」
夏も過ぎ去り、秋雨前線が勢力を増してきた頃。週末までは元気だったまりもが月曜朝になって突然意気消沈しているのを見つけた夕呼は、たったそれだけで事の次第を悟ったらしい。ザアア、と雨音募る中、彼女に物理準備室――という名の学園内夕呼私室――に連れ込まれたまりもはそこで、泣く泣く全てをぶち撒けたのだった。
「彼がねぇ、もうねぇ、興味が持てないからってええええ……」
「ワケ分かんない事言ってるわねぇ。そんなのいつもの話じゃない。あたしがそこに絡む要因、これっぽっちでもあったってゆーの?」
「あったも何も、全ッッ部アンタのせいよおおおおおおん……」
それは突然にして訪れた悲劇、という訳では無かった。思えばこの一ヵ月余り、異状はそこかしこにあった。だが最初の契機をもたらしたのは間違いなくあの夜であり、そこへ至ったそもそものあらましを見返してみるとやっぱり夕呼のせいだ、とまりもは言いたくなるのだった。
『あの晩が凄く良かったもんで、もう一回味わいたくなっちゃって。これ着てみてよまりも。きっと君に似合うからさ』
あれ以来、来須は会う度毎にどこからか仕入れて来たコスプレ衣装をまりもに着せては、その恰好で事に及ぶようになった。人気対戦格闘ゲームのくノ一。セーラー的装いの美少女戦士。水着みたいな布切れを身に纏う雷様。社会現象まで起こしたSFロボアニメの女上官……嬉々としてそれらの詳細を語って聞かせる彼の事を、まりもは少し不思議程度にしか思わなかった。いや、むしろセックスに淡泊だった来須が意欲的になってくれたと解釈し喜んですらいたのだ。だが今となっては何故あんなにも次から次へと新たなネタを仕入れられたのか、どうしてその詳細を極めて流暢に語れたのか、その事にもっと早く疑問を呈すべきだったと悔やまれてならない。
『あ、そこの棚にあるヤツはそのままにしといて。後で俺がきちんと整理するから』
彼の部屋を訪れる度、そこにあるものは加速度的に数を増していった。元からあった漫画本やゲームの類は純粋に倍増、その他にもアニメのタイトルが書かれたビデオテープや分厚い設定資料集などが棚の空きスペースを埋め始め、それと共に部屋の趣味がシックでモダンな感じから原色多数のライトポップな物品によって占められるようになった。そのうち棚が二つ三つと増設されてゆき、そこに立ち並ぶラインナップが妙に薄い本やアニメキャラのちょっとエッチなフィギュア等で埋まるようになった辺りで、ようやっとまりもも真相に気が付いたのである。
彼、来須和弥は、いわゆるところの隠れオタクだった。
「おかしいと思ったのよおお……そもそもゲーム機からしてメーカー違いのを何個も持ってたし、『FS』に詳しいのはまだいいとして、コスプレの構造とかにまで興味津々って感じだったしぃ。コミゲとか同人誌とか、そういう用語も知ってたし……最近知識を仕入れたにしては、妙に深い所まで知ってる感じだったしぃぃぃ……」
そして極めつけは、以前見せて貰った彼の高校時代の卒業アルバムだ。その時は何の気なしに眺めただけだったが、改めて確認してみると彼の出身高校はバリバリの理系校。各クラスの女子比率は僅か10%未満。そして男子の八割ぐらいは牛乳の瓶底みたいな分厚いメガネ……という、ある意味テンプレ通りの装いで統一されていた。勿論彼もその中の一人で、在学中所属していたミステリー同好会もその活動実態たるや単なるオタク趣味共有グループであった事が、彼の口から暴露されたのである。
『高校の頃はそういうカンジだったんだけど、卒業してこっちに来るのに合わせて一気にイメチェンを図ってさ。いわゆる大学デビューってやつ。それを機に一旦はこういう趣味から離れようって思ってアレコレ処分したんだけど、ゲームだけはなかなか手放せなくて、それでFSとかはずっと遊んでたんだよ。ああ~~、今にして思えばあの時捨てたお宝たち、勿体ない事したなぁ。買い戻すとしたらどのぐらい掛かるかな、アレ全部今頃プレミアもんだろうなあ……』
そんな風にしみじみと語る来須に対して、騙された! なんて思ったりはしなかった。少々意外な一面を見たという思いはあるが、それでもまりもは今の彼が好きだったし、その過去についても受け入れる覚悟があった。オタクだからと十把一絡げに考えるのはおかしい。他人は他人、彼は彼だ。趣味が多少合わないのは仕方が無いとして、コスプレ姿で致す事についてもまあ許容の範囲内ではあったし、彼が望むならこれからも応えていこう……と、そう思っていたのだが。
『ごめんまりも、君とはこれ以上付き合えない。――別れよう』
その話を切り出されたのはまさに昨日の夜。当初まりもは大いに錯乱した。
『どどどどどうして!? 私何かカズくんの気に障る事しちゃった? それならごめんなさい許して! 私カズくんとずっと、ずっと一緒にいたいのよう! だから別れるなんて言わないで! おねがああああああい!!』
『いや、君は悪くない。まりものせいじゃないんだ』
『じゃあどうして? も、もしかして他に好きな女が出来たとか!?』
『女、っていうか……まあその、つまりね』
来須の言い分を要約するとこうである。あの一夜をキッカケに封印状態だったオタク道を取り戻した彼は、これまでのブランクを一気に埋めようとするみたいに数々のグッズを衝動買いしていった。そのせいでクレジットの残高も将来に向けての貯蓄も何もかもを使い果たしたらしいが、そんなもの今の彼にはもはやどうでも良い事だった。
自分の好きなものに囲まれる幸せ。自分の愛したいものを自由に愛でる幸せ。その喜びに今一度目覚めた彼は、それと同時に今目の前にいる
『そんな……!! そんな事って……ッッ!!』
『信じられないかも知れない。けど、本当の事なんだ。――君と出会えた事は心の底から感謝してる。お陰で俺は自分の本当に好きなもの、愛すべき対象を取り戻すことが出来たんだからね。でも君という存在を、
勿論、まりもも出来得る限りの抵抗はした。
「……それで結局別れる事になったんだもぉぉぉん。それもこれも全部、
「何よぉ、人が真面目に聞いてやってりゃくっだらない。原因も何も、そんなのその男が元々アッチ系の性質持ってて、たまたまアンタとのコスプレエッチでそれが再燃しちゃっただけの事でしょう? それであたしのせいだって言うんなら、オタク趣味こじらせたソイツもコスプレエッチしてあげたアンタも全員等しく同罪じゃないの。あたしだけ責められたって困るわよ」
「あうあうあう、えうううううう……」
「大体、アンタがもっと早くに気付いてりゃあ幾らでも手の打ちようがあったでしょ? 相手の要求を先取りして叶えてやって『2.5次元』の存在で居続けるとか、逆にアンタが
「カズくんの事悪く言わないでよおおお!! あんなに良い人、もおどれだけ探じだっで一生見づがらないんだがらああああ……うえええええええええんん……」
「全くぅ。ショック療法で少しは成長したかと思いきや、やっぱり根っこはガキんちょのままなんだから。これじゃあ結婚どころかまともな付き合いなんて、まりもには一生無理かもねぇ~」
やれやれ、と夕呼が肩をすくめる。彼を喜ばせようと思ってした事が、結果的に二人の関係を終わらせる端緒となってしまうだなんて。物事が裏目に出る反作用という名の皮肉な現実がつくづく恨めしい。それでもまりもは未だに彼の事が好きだった。諦めるなんて出来っこないとすら思った。こうしていつまでも泣き喚くまりもに『そんな執着など早く流し去ってしまえ』と言わんばかり、窓の外の大雨は終日ザアザアと降り続けたのだった。
後日談ながら、ディープなオタク道に回帰した来須は好きが高じて出版した同人誌の大ヒットをキッカケに会社を辞め、イラストレーター兼漫画家に転身。その数年後には界隈で名を馳せる一大同人サークルの主宰となり、大手の漫画出版社とも契約、そこでの連載作品が続けてアニメ化を果たすほどの売れっ子作家にのし上がるなど、空前の大出世を遂げたのだった。
その一方で、彼が勤めていた食品メーカーは来須の連載開始とほぼ同時期に深刻な不祥事を起こし業績が大幅に悪化。食の安全が叫ばれるこのご時世に一度落ちた信頼と風評を取り戻すこと叶わず、分社化の末に大半の社員がリストラの憂き目に遭ってしまったのだという。
当時の同僚のうち何人かは縁故によって別会社に拾われ、今は横浜市内の小さな食品工場でミンチ肉を挽くなどする毎日だと聞き及んでいる。もしあのままあそこに勤めていたら、自分も今頃どうなっていた事か――そんな風に語る来須のインタビュー記事を夕呼に見せられ、まりもは物凄く複雑な心境を抱かざるを得なかった。
人間万事塞翁が馬、とはまこと良く言ったものである。