俺からすべてを奪った女、三浦旭を呼び出し街外れの廃ビルに入る。
三浦は特に抵抗もせず、暗い顔で後ろを付いてきている。
目星を付けていた角部屋に着くなり、俺は後ろにいた三浦の腕を掴んで前に押しやり、壁に向かって力一杯蹴り飛ばした。壁との激突で生じた鈍い音と共に三浦が呻き声を上げ、壁を背にずり落ち、座り込む。
「お前、ここまでされてまだ街から出ていかねーのかよ」
「言ったはずであります…我は街を出ていくことはできないと……ぐっ!」
華奢な左肩に蹴りを入れる。勢いで身体を壁にぶつけ、息苦しそうに声を漏らす三浦。
「こっちも言ったはずだけどな。素直に出ていけば関係のない魔法少女には手を出さない。出ていかないなら俺たち撲滅派がお前ら三人を潰すって」
「灰谷が死んだのは我の責任…その報いは我が全部受け入れるでありますよ…」
三浦の口から出たその名前に、一気に俺の頭に血が上る。
お前がその名前を口にするな…!お前のせいで灰谷は…お前のせいで…!
三浦の前にしゃがみこみ、その茶髪を鷲掴みにして壁に打ちつける。何度も、何度も…
数ヶ月前まで、俺はこんな暴力とは無縁の、平凡ながらもそれなりに幸せな日々を送っていた。
でもあの雪崩が起こってからすべての歯車が狂いだした。
俺をここまで育ててくれた母親が雪崩に巻き込まれて死んだ。母親の死は俺を絶望の淵に突き落とした。
そんな俺をずっと傍で支えてくれたのが灰谷だった。
今度は俺が彼女を幸せにしたい…灰谷と一緒にいるうちに、いつしか俺の中にはそんな小さな希望が芽生えていった。
だがそんな希望もすぐに打ち消された。
母親の命を奪った理不尽が、今度は灰谷を襲ったのだ。
「魔女は間違いなく我々の前で魔女になったふたりの魔法少女…」
「既に倒されたか逃げ切っていると思っていたでありますが…」
失われていく灰谷の体温を感じながら、俺は三浦の声を聞いた。
自分たちの前で魔女に……逃げ切った……見逃したのか…?三浦が…?
…そうか、あの女はずっと俺を騙してたんだ…友達ヅラして近づいて、母さんを…灰谷を…俺の目の前で殺したんだ…!
気がつくと俺は、見えない何かに突き動かされるように三浦を罵倒していた。
空っぽになった俺の心は、怒りと憎しみで少しずつ満たされていった……
「はぁ…はぁ…」
三浦はぐったりとした様子で壁に身を預けていた。後頭部から吹き出た血で真っ赤に染まった壁が、事の重大さを如実に表していた。
普通の人間ならおそらく死んでいるんだろう。でもこいつら魔法少女はソウルジェムという魂の器が砕けない限り死ぬことはない。
きっと苦しんでるふりをして痛覚を遮断して、心の中で俺をせせら笑っているに違いない。
なにかこいつに思い知らせてやる方法はないのか…この化け物の尊厳を破壊するような方法が…
不意に、三浦の胸元が僅かにはだけ、白い鎖骨が顔を覗かせているのが目に入った。
その様子を見て、俺の中にある方法が浮かんだ。それは以前の俺なら絶対にできない手段。
でもそれがなんだ。こいつは人じゃない、多くの人間の命を奪った魔法少女だ。
自分のした事を思い知らせてやる…
「お前、男と付き合ったことないって言ってたよな」
「……なに、を…」
俺は勢いよく三浦の服を裂いた。発育の良い乳房が、簡素な下着を纏い現れる。
下着をずらすと、身の危険に備えるようにぷくっと膨らんだ赤い乳首が露になる。
「くろ、だ……やめ……」
「お前の身体にいくら傷を付けても意味がないことはわかった。だから、お前の心に傷を刻むことにした。一生消えない傷をな…」
「んっ…ふ…」
「チョロい女。さっきまで痛め付けられてた男に胸揉まれて感じてんのか」
ゴミを見るような目で三浦を見下ろす。三浦は血濡れた顔の下でわずかに頬を染め、はっ…はっ…と息を切らしている。
「痛覚消してるくせに快感だけは通るんだな。ほんと都合よく出来てるよな魔法少女って。澄ました顔してサカリやがって豚が」
「ちが……」
「喋んな」
三浦の口に指を突っ込む。舌を掴み捏ね回すように指で弄る。
次第にその目は朦朧として虚空を彷徨い、鼻からくぐもった声を上げる。
「ふぁ…ああ……あぁぇ…」
「バカみたいな声出しやがって……ってなんだこれ、下ビッショビショじゃねーか。マジで淫乱だろお前」
三浦の股はぐっしょりと濡れていた。
それがただの反射で、快感によるものではないことは流石の俺にもわかる。
その上で敢えて屈辱的な言葉を投げかける。
指を突っ込み膣内を掻き回し、目の前の女ができるだけ苦しむように罵詈雑言を浴びせ続ける。
「んっ…はぁ……あっ、あ…くろ、だ…」
「……」
三浦は息も絶え絶えの状態でなおも踏ん張って耐えているようだった。
指の動きに合わせて身を捩らせながらも、俺の肩に手を掛けなんとか体勢を維持している。
その手からは三浦の熱い体温が伝わり、俺の服をきゅっと握る様子はいじらしさを感じさせる。
手を振り払ってもよかったが、なぜかそんな気にはなれなかった。
目の前にいる化け物は、まるでどこにでもいる普通の女の子のように見えた。
しばらくそうしていると、俺自身の中からも怒りとは別のボルテージが上がってくるのを感じた。
目の前で悶えているこの女を組み敷いて、むしゃぶり尽くしてめちゃくちゃにしてやりたい…
全身が毛羽立つような感覚と共に、次第に荒くなる息づかい。
気付けば俺の股間のそれは三浦を求めるように激しく屹立していた。
「チッ…クソが」
三浦の身体から手を引き、自分の頭をガリガリと掻きむしり舌打ちをする。
俺は決して下卑た欲望で動いてるわけじゃない。死んでいった奴らの痛みをこいつに味わわせる、これはそのための手段に過ぎない。
それなのに今の俺はなんだ?
復讐を誓った自分が、あろうことかその相手に欲情しているという現実を見せつけられ辟易とする。
「くろだ…」
不意に声を掛けられる。
声の方向に目をやると、そこには息を切らしながらこちらの様子を窺う三浦の姿。
顔は血にまみれ、裂かれた服から乳房が覗き、股からは尿の入り混じった体液がつーっと滴っている。
「もう、いいのでありますか…?」
三浦の顔は疲れきっていて、その表情からは考えが窺い知れない。
だがその声色は、なぜか微かな慈しみを帯びているように思えた。
そんな彼女の姿に、俺は思わず見惚れてしまっていた。
「……そんな顔もするんだな、お前」
そう呟く自分の声色は、まるで事件が起こる前の、親友だった頃の彼女と話す時のようだった。
こうやって三浦と言葉を交わすのはひどく久しぶりのように感じる。
思えば少し前まで俺と三浦と灰谷の3人は親友同士だった。
灰谷ほどではないにせよ三浦とはそこそこ長い付き合いだ。
昔はよく勉強のことや湯国の伝承について語り合ったなぁ…
あの日もそうだった。確かあの日は灰谷に告白するために三浦に頼み込んだんだっけ…フェストを魔女から守ってくれって……
……魔女。
…そうだ、魔女だ…俺はこいつに魔女を倒すよう頼んだ…
なのにこいつは…魔女を逃がして灰谷を、俺を裏切ったんだ…
絶対に許せない……こんな生ぬるい手段じゃ足りない…
魔法少女は全員排除する…俺がこの街を守らないと…!
「……そろそろ本番いくか」
「え…?」
ベルトを外しズボンを下げ、怒張した肉棒を三浦に見せつける。
三浦の顔色がわずかに変化した気がした。
「黒田…まって…」
「全部受け入れるって言ったよな?」
三浦を強引に床に引き倒して下着をずらし、俺のそれをヒクヒクと震える三浦のそれにあてがう。
「俺たちが受けた痛み…しっかり味わえ」
「いっっ…!!」
力を込め、俺の怒張したそれが三浦の中を一気に貫いた。
「は…ははっ…案外呆気ないな」
「入っ…てる…?」
「あー入ってるぞ、奥まで全部な」
「……っ」
「なんだよ、泣いてんのか?泣きたいのはお前なんかとヤる羽目になったこっちのほうだっての」
「うぅっ…っく…ふぅぅっ…っ…」
空虚な部屋に三浦の嗚咽が響き、それを振り払うかのように俺は腰を動かす。
肉と肉がぶつかり合う音が三浦の嗚咽を掻き消していく。
あぁ…俺はついにこの女に消えない傷を刻むことができた。
でもまだ足りない。この女の膣内に、俺の怒りをぶちまけるまでは…
淡々と三浦の膣内に打ちつける。そこにはなんの快感もない、義務感だけの行為。
三浦はもう声も出さず、涙でぐしょぐしょになった顔を右腕で覆ってされるがままの状態になっている。
そんな三浦を見下ろしているうちに、言い知れぬ虚無感に襲われる。
これは死んでいった奴らの痛みをこいつに思い知らせるための復讐だ。
ソウルジェムを破壊されないかぎり死ぬことはなく、痛覚さえ自在に制御できるこいつらの尊厳を破壊する絶好の方法。
なのになぜ、こんなにも力が入らないのか…
虚無感は収まることはなく、打ちつける勢いはどんどん弱まり、ついには俺の肉棒は三浦の膣内で萎んでしまっていた。
「……ん…」
三浦が腕の隙間から顔を出してこちらを窺う。
「……やっぱお前じゃ抜けねー」
「黒田…」
「……はあ…なんでこんなことになっちまったんだろうな」
「……」
三浦の顔に触れ、血と汗で貼り付いた髪を指で軽く梳かすように触れる。
「改めて見るとすげーな、普通なら死んでるだろこれ。さすがは無敵の魔法少女サマ、どうせ痛覚も消してるから何ともないんだろ?」
「……今日は、遮断してないでありますよ」
「…は?」
「殴られ蹴られる痛みも、処女膜を破られる痛みも、しっかりと我の中に刻みこまれているでありますよ…」
思いがけない返事に耳を疑う。痛覚を遮断していない…?
それじゃあ、今まで俺は常人ならとっくに死んでいるほどの痛みをそっくりそのままこいつに与え続けていたのか…?
なんで……そう問いかける俺に、三浦は息を切らしながらぽつりぽつりと話し始めた。
「何度も遮断しようと思ったであります…でも出来なかった……我をいたぶってる間、黒田はずっと苦しそうだった……それはきっと…我の身体の痛みよりも、ずっとキツイものだと…感じたんであります…」
俺が苦しそうだった…?
殴られて、蹴られて、何度も壁に頭を打ち付けられて、最後は処女まで奪われて…その痛みよりも、加害者の俺の気持ちを優先したというのか…
「なんでそこまで…」
「友だちだから…では足りないでありますか」
「友だちってお前……はは…なんだよそれ…わけわかんねぇ」
「まあ……友だちといえど流石に今回はムカついてるでありますが」
息を切らしながらあからさまにムッとした表情を見せる三浦。
でも俺には、それすらも俺を労るために気を使った仕草に見えた。
「ところで…黒田もこういった男女のまぐわいの経験は初めてでありますよね」
「…まあ」
「一つ…頼みがあります」
「なんだよ」
「最後までしてほしい」
「…は?」
「お互いの初めてをこんな形で消費してしまうのは、あまりにも虚しいであります……だからせめて、お互いにとって良い思い出として残るような形で済ませたいであります」
三浦の言葉の意味を把握する。
三浦は俺に犯された事実を、「年頃の男女の行き過ぎた遊び」に塗り替えようとしているのだ。
「お前はそれでいいのかよ…俺と最後までして、良い思い出になんのかよ」
「今は、無理かもしれないであります……でもいつか、この街のすべての恨みが晴れる日が来たら……その時ならきっと…」
三浦のその答えは、まるで先の見えない未来への懇願のようだった。
三浦を抱き起こし、座ったままの状態で互いを抱きしめ合う。
血のこびりついた茶髪を撫でると、うっかり俺が付けた傷に触れてしまい「っつ…!」と息を漏らす三浦。
「あ、っと…」
「平気であります。……下のほうも…だいぶ痛みが引いてきたでありますよ」
「…分かってる」
三浦の中で再び屹立した俺のそれをゆっくりと動かす。
スローテンポな突き上げに三浦の口から甘い声が漏れだす。先程の虚無感はすっかり消え失せていた。
「黒田も、んっ…楽しめてるでありますか?」
「……るせー」
「さっき、我では興奮しないと言ってたでありますね…こう、自分で言うのはすごく癪なんでありますが…っ、我以外の方を思い受かべてはどうかと…例えば、は…」
「喋んなって」
言葉の止まらない口を俺の口で塞ぎ、これ以上あの名前を口に出来ないよう舌を絡めとる。
「んっ…ちゅっ、はあ、んあぁ…」
突き上げるスピードを速める。
俺の肉棒を逃がすまいと執拗にこびりついてくる三浦の膣、そしてピストンするごとに発せられる嬌声が俺の頭を揺さぶる。
「はっ、はぁ、ぁあっ」
快感に悶える三浦。その表情は、今まで俺に見せたことのない淫らなものだった。
「はぁ、んぁ…くろ…だ…くろだ…」
三浦の手が何かを探すように空を掻く。その手をしっかりと掴み指を絡める。
「あっ、んぁ、ああぁ、くっ……ふぅぅっ…んぅ…」
三浦が一足先に絶頂した。
俺もそろそろ限界だ。早くこれを三浦の膣内にぶちまけたい。
なあに、たとえ孕ませても堕ろさせればいい。わざわざ病院に行かせなくても腹を蹴れば一発だ。こいつにはそれがお似合い……
「……チッ」
「はぁ…はぁ…くろだ…?わっ…!」
すんでのところで三浦の身体を持ち上げて肉棒を膣内から引き抜き、射精する。
三浦の腹部にぶちまけられる精液。
「……ありが、とう」
「孕んだら面倒なだけだ」
「そう、でありますね…」
絶頂の余韻に浸り、身体を預けあう俺たち。
「…で、どうなんだよ。良い思い出に変わったのか?」
「……よくわからないであります。まあ、初めての相手が黒田なのは…及第点といったところでありますか」
「調子に乗んな」
「黒田はどうでありましたか?」
「俺もわかんねーよ……お前さ、さっき俺に『自分以外の女を思い浮かべれば』って言ったよな」
「…黒田にそれを言うのは軽率でありましたね」
「出来ない…っつーか、そもそも出来るわけなかったんだわ。だって…」
行為の最中からいまだ俺の左手に握られている三浦の右手を見やる。
絡めた指の感触を確かめながら、静かに呟く。
「お前と一緒にいると、はらわた煮えくり返って他のことなんか考えられねーんだから」
ぼんやりと服装を整える三浦を背を向けて待つ。
「替えの服を持ち歩いておいて正解だったであります」
「いつもそんなの持ち歩いてんのかよ」
「すぐ誰かさんたちに汚されるでありますからなぁ、親に悟られずに洗濯するのも大変なんでありますよ?」
「うるせーな…ほら」
立ち上がろうとする三浦に手を差しのべる。
「あぁ、ありが…」
掴もうとする三浦の手をパンッ、と払いのける。
勢いあまって尻もちをつく三浦。
「っつ…」
「一回ヤったぐらいで絆されたなんて思うなよ?今日のはただの気まぐれだ。お前らへの怒りはこんなもんじゃ消えない」
「…昔のようには、戻れないでありますか…?」
「当たり前だろ。これから毎日、お前に死んだほうがいいと思えるくらいの地獄をみせてやる。俺たちの憎しみを全部ぶつけて、最後は魔女にさせてこの街から排除してやる。それが嫌なら、今のうちに出ていくんだな」
悲しげな顔を浮かべて座り込む三浦を背にし、部屋を出る。
廃ビルを出たところで、メッセージアプリの通知が届く。他の撲滅派メンバーからだ。
『三浦どこにいるか知ってる?よさげな道具みつけたからアイツで試し撃ちしたいんだけど』
背後のビルを見上げる。
あの様子なら三浦はしばらくここにとどまっていることだろう。撲滅派を呼べば来るまでそう時間も掛からなそうだ。
でも…
「友だちだから…では足りないでありますか」
三浦の言葉が頭の中で反芻される。
迷った後、手慣れた動きで文字を打ち込み、画面を消灯する。
『今日は見てない』
「出ていってくれよ……頼むから」
呟きは空に溶け、誰に届くこともない。
時計の針は進み続ける。午前0時まで、あと少し――。