※この作品はR-18です。

くま クマ 熊 ベアー 魔性の男   作:土精霊騎士団副団長

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1話

魔性……。

それは人を誘惑するもの。

それは人を虚ろわせるもの。

それは人を狂わせるもの。

それは人を惑わすもの。

それは人を堕とすもの。

それは人を惑わすもの。

それは人を魅了するもの。

それは人を殺すもの。

それは人を犯すもの。

それは人を弄ぶもの。

それは人を破滅させるもの。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ふと、目が覚めた。

なんだか不思議な夢を見ていた気がする。

妙に体が重いが、気分は悪くない。

俺はゆっくりと体を起こした。

部屋の中は真っ暗だ。

まだ夜なのか? 俺は枕元にあるスマホを手探りで掴み、時刻を確認する。……午前3時12分。

どうやら夜中のようだ。

変な時間に目が覚めてしまったな……。

喉も渇いたし、何か飲んでから寝直そう。

そう思い、ベッドから立ち上がろうとしたその時だった。

ふらっと立ち眩みのような感覚に襲われた。

なんだこれ? 寝起きだからか? 俺は体勢を立て直し、再度立ち上がった。

すると今度は視界がぐるぐると回り始めた。……何だこれは!? 頭がクラクラする。

平衡感覚がおかしい! 足元がおぼつかない。

まるで地面がなくなったみたいだ。

そして次の瞬間、俺の意識はブラックアウトした。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「……ん」

 

ふと目が覚めると、そこは見知らぬ真っ白な部屋だった。

あれ? ここは何処だ? 確かさっきまで自分の部屋にいたはずなんだけど……。

それになんだか妙に頭がボーッとするな。

 

「あら、やっと起きたみたいね」

 

どこからか女性の声が聞こえてきた。

声の方向に視線を向けると、そこには20代前半くらいの綺麗な女性が佇んでいた。

長い黒髪に切れ長の目、モデルのようにスラッとした体型をしている。

その女性は微笑みながら俺に近づいてきた。

誰だこの人……?なんで俺は知らない部屋で知らない女性と二人きりになっているんだ?

 

「えっと、どちら様ですか?」

 

俺が尋ねると、彼女はキョトンとした表情で俺を見た。

 

「私は女神」

「……はい?」

 

今なんて言った?神様って言ったのか?この人が? いやいや、そんなバカなことがあるわけないじゃないか。

きっと聞き間違いだろう。

うん、そうだ。そうに違いない。

 

「ごめんなさい、もう一度言ってもらえますか?」

「だから、私は女神よ」

「……」

 

聞き間違いじゃなかった!!

え、本当に言ってるの? マジで言ってんのかよこの女神様(自称)は。

というかなんで女神様が俺の部屋にいるんだよ。

いや、そもそもここってどこなんだよ。

もしかして病院とかじゃないだろうな。

とりあえず目の前の女性に話を聞いてみるか。

もしかしたら何か知ってるかもしれないしな。

 

「あの、すみません女神様」

「何?」

「ここはどこなんでしょうか?」

 

俺が尋ねると、彼女は少し考える素振りを見せてから答えた。

 

「ここは天界よ」

「てんかい……?」

やっぱり病院だったか。

でも天界ってどういうことだ? 全く意味がわからないんだが。

「ええ、そうよ。あなたは死んだの」

「……はい?」

 

え、なに言ってるのこの人? 俺が死んだだって? そんな馬鹿なことあるわけないだろ。

現にこうして生きているわけだしさ。

しかし、彼女の真剣な表情を見ると嘘をついているようには見えないんだよなぁ……。

ということは本当に俺は死んでしまったのだろうか? うーん、全然実感湧かないんだが……。

 

「ちなみに死因は何でしょうか?」

「心臓発作ね」

 

マジかよ……。

じゃあ俺は病死ってことか? なんでまた急にそんなことが起こったんだろう……。

しかもよりによって死ぬ間際に見るのがこんな美人の女神様だとはなぁ……。

どうせならもっと可愛い女の子が良かったぜ……。

はぁ……。

なんかテンション下がるわ……。

まあ過ぎたことはしょうがないけどさ……。

せめて天国には行かせてほしいものだな。

そこでのんびりと過ごしたいもんだ。

 

「それでこれから俺はどうなるんでしょうか?」

「あなたの魂を転生させます」

 

なるほど、そういうことか。

つまり生まれ変わるわけだ。

 

「そこであなたにチートを授けましょう」

「よしゃぁ!!」

 

キタコレ!! 異世界転生物の主人公たちが必ずと言っていいほど貰えるというアレだな!

やったぜ!! ついに俺にもチャンスが来たようだ!! 

それではこれを使って決めましょうと言って、女神はスロットマシンを取り出した。

スロットマシンには3つのリールが設置されており、それらの上には左から身体、スキル、武器と描かれていた。

リールの面のには文字か書かれていた。

右から『エルフ』、『剣術』・『聖者の心』、サーベル『夜の夕凪』と書かれていた。

なるほど、右から転生する身体(種族を含む)、貰える2つのスキルと武器だと思う。

「では回してください」

言われるままにレバーを引くと、3つのリールが回転し始めた。

しばらくすると、全てのリールが止まった。

結果は……。

◆◇◆◇◆◇

【結果】

・身体:『魔性の美体』

身体解説:自分の体または行動に『魔性』を付与する。

・スキル1:『アイテムボックス』

スキル解説:ウインドウで表示される。触れる又は視界内にある物または死体を『アイテムボックス』内に収納することができる。

・スキル2:『マップ』

スキル解説:ウインドウで表示される地図。

      通常表示範囲は500mで500m間隔で拡張可能。

      基本には一定の大きさの敵性生物と生物を表示可能。

      オプションでアイテムの名前か特徴を念じることによって『マップ』にそのアイテムを表示できる。

・武器:『無貌の剣』」

武器解説:決まった姿をない剣で念じるだけで剣の色、属性、形を変えることができる剣。

     魔力を剣に注ぐことによって、剣から魔力の斬撃を飛ばすことができる。

 

◆◇◆◇◆◇

 

おお、中々良いんじゃないか? 特に武器の『無貌の剣』っていうのが良いな。

この剣なら敵の不意をつくことができそうだし、使いやすいと思うんだよな。

よし、決めたぞ!これで行こう!!

 

「決まりましたか?」

「はい、これにします!」

「わかりました、それではあなたを転生させますね」

 

女神がそう言うと、俺の足元に魔法陣のようなものが現れた。

どうやら今から転生させられるらしいな。

俺の足元にある魔法陣が強く輝き始めた。

そして次の瞬間、俺の意識は途切れたのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ここは……どこだ?」

 

意識が戻り、辺りを見渡すとそこは森の中だった。

木が生い茂り、風が葉をゆらす音が聞こえる。

俺は自分の頬をつねる。すると痛みが走り、これが現実だと認識した。

どうやら本当に俺は転生したようだな。

さて、これからどうしようか。

とりあえず、まずは自分のことを確認しよう。

えーと、俺の名前は槍沢 黒樹、年齢は24歳、社会人だ。

趣味はゲーム、特技は料理、好きな食べ物はラーメンだ。

うん、覚えているな。

でも転生した以上名前を変えたいな……そうだ。これから俺の名前はクロだ。

よし、そうしよう。

次は能力の確認かな? えーっと、確か『アイテムボックス』だったな。

俺は頭の中で『アイテムボックス』と念じた。すると目の前に画面が表示される。

画面には所持品一覧と書かれている欄があり、そこにいくつかアイコン(草や素材、武器)が表示されている。

試しに一つタップしてみる。すると画面が切り替わり、中身の一覧表が出てきた。まあ、中身はない。

所持金の欄を見てみると金貨999枚、銀貨999枚、半銀貨999枚が入っていた。

これはおそらくこの世界の貨幣だろうな。

お、これは便利だな。これなら荷物を持ち運ぶ手間も省けるし楽ちんだ。

よし、次に行こう。今度は『マップ』を開いてみるか。

ふむ、目の前に画面が表示される。周辺の地形や生き物の反応が映し出されている。

これはかなり便利な機能だ。敵が近くに来たらすぐにわかるからな。

そして最後に武器を確認することにした。

確か『無貌の剣』だったよな? そう思った瞬間、俺の右手に真っ黒な鞘に入った剣が握られていた。

 

「うおっ!?」

 

いきなり現れたことに驚きつつも、剣を引き抜く。

剣の見た目はごく普通のロングソードで見た目は鋼鉄製にも見える。

しかし、明らかに魔力が籠っている。普通の剣ではないことが一目でわかった。

 

「すげぇ……」

 

思わず感嘆の声を漏らす俺。

とりあえず近くの木を切ってみようと思い、剣を構える。

 

「せいっ!!」

 

気合と共に振り抜かれた刃は、木の幹を一刀両断にした。

断面は綺麗に切断されており、まるで豆腐のようにスパっと斬れている。

 

「なんだこりゃあ……?」

 

あまりの切れ味に驚く俺。

正直ここまで凄いとは思っていなかった。

まさかこれほどの威力があるとは思わなかったな……。

だが、それ以上に嬉しかったのは自分の身体能力が上がっていることだ。

身体が羽のように軽いのだ。今ならオリンピック選手並みの動きができそうだ。

それに身体能力だけでなく、五感も鋭くなっている気がする。

あの木に止まって鳴いている鳥の鳴き声まで聞こえるほどだ。

まるで生まれ変わったような気分である。

 

◆◇◆◇◆◇

 

とりあえず今は実験を止めて、森を出ようと歩き出す。

しばらく歩いていると、何かが近づいてくる気配がした。

咄嗟に身構えると同時に茂みの中から一匹の狼が飛びかかってきた。

俺はとっさに剣を振るい、一閃する。

飛びかかった狼はそのまま地面に着地して、再びこちらに突進してきた。

まずい!!

そう思い、左へステップを踏む。

すると狼が俺の目の前を通り過ぎようとした瞬間に左下から切り上げるようにして斬り上げた。

見事に胴体を切り裂かれた狼はそのまま動かなくなった。

俺はその場に崩れ落ちる様に座り込んだ。

 

「はぁ……はぁ……危なかったぁ~」

 

あのまま避けなければ間違いなく噛みつかれて致命傷を負っていただろう。

それにしても今の動き、まさに達人のような動きだった。

いや、違うな。実際に俺は達人の域に達しているのではないだろうか?

その証拠にさっきの戦闘中、一度も恐怖を感じることはなかった。むしろ楽しいとさえ思っていたくらいだ。

俺は自分の身体を見る。

全身を包む黒いコート、腰元には革製のベルトポーチが付いている。

そして、両手には真っ黒なグローブが嵌められている。

靴はブーツのようだ。

全体的に黒く、所々に赤いラインが入っているのが特徴的である。

そんな恰好をした自分を改めて見ると、自分が本当に転生したのだということを実感する。

ああ、本当に転生したんだなぁ……そう思うと感慨深いものがあるね。

まあ、それは置いておいて、今の戦闘について考えてみよう。

まず最初に思ったのは、やはり身体能力が上がっているということだ。

それも大幅に上がっているのがわかる。

さっきはただ回避しただけだったが、今では余裕をもってカウンターを入れることができた。

おそらく俺が予想していた通り、この身体はかなり高性能になっているようだ。

とりあえず、ウルフを『アイテムボックス』の中に仕舞っておくことにする。

街に向かうため『マップ』を開き、『マップ』を確認する。

 

「とりあえず500mを表示と……」

 

ウインドウに表示されるマップには赤い点が3つと緑色の点が1つの計4つだ。

赤い点は緑色の点を追いかけるように動いていた。赤い点をタッチするとウルフと表示される。

 

「これって、狩りをしているってこと?」

 

次は緑色の点をタッチすると人間と表示される。

 

「いや、違う。襲われている。助けないと」

 

急いでその場所へと向かうことにした。

 

◆◇◆◇◆◇

 

マップを見ながら走っていると、徐々に緑の点との距離が縮まっていく。

そろそろ、近いな。

マップをもう一度確認すると、緑の点のすぐ側に赤い点が表示されていた。

よし!近い。

走る速度を上げ、森を駆け抜ける。

そして、開けた場所に出た。そこには、1人の少女と3匹のウルフがいた。

少女は怯えていて、その周りを3匹のウルフが取り囲んでいる。

 

「助けないと」

 

そう呟いて、俺は駆け出した。

 

「ギャウウッ!!」

 

1匹のウルフが俺に気付き、威嚇するように吠える。

 

「邪魔だっ!!」

 

それに対して、俺も怒鳴り返す。

そして、すれ違いざまに剣を横に薙ぎ払った。

3匹のウルフは一瞬で真っ二つになり、絶命する。

2秒にも満たない出来事であった。

あっという間の出来事だったためか、少女は唖然としていた。

俺は剣を納め、『アイテムボックス』にウルフをしまうと、少女に話しかけることにした。

 

「大丈夫か?」

 

声をかけると、少女がハッと我に返ったのかこちらを見た。

綺麗な顔立ちをしており、年齢は10歳くらいだろうか?髪はダークブラウン髪、目は碧眼、大きなリボンが特徴的な少女。服装は緑を基調としたワンピースを着ており、ところどころ破れたりしている部分もあることから、結構長いこと逃げ回っていたことがわかる。

 

「怪我はないかい?」

 

再度質問するが返事はない。というより固まって動かないといったほうが正しいかもしれないな。

仕方ないのでこちらから話を進めることにしよう。

 

「あー……大丈夫?」

「……」

 

反応がないな……どうしたもんかねぇ。

うーん、こういう時どうすればいいんだろうか……? こうゆう時どうしたらいいのかわからないから困るんだよなぁ。

仕方がないからもう少しだけ待ってみようか? いや待てよ、もしかしたら喋れないほど酷い目にあったのかもしれないぞ!? よし、もう少し待とう!! 10分後……

まだ待つのかよ!! もう限界だぞ!! なんで喋らないんだよ!! 何か理由があるのだろうか? それとも単純に人見知りなのか? どっちにしろこのまま放置しておくわけにはいかないし、どうしたものか……その時、ようやく少女の口が開いた。

 

「……ありがとう……」

 

小さな声だったが確かに聞こえた。

よかった、ちゃんと喋ることはできるみたいだ。これで安心して話をすることができるな。

さて、それじゃあ早速いろいろと聞いてみようじゃないか! まずは自己紹介だな。

 

「俺はクロ、君の名前は?」

 

そう聞くと、少女は恐る恐るといった感じで答える。

 

「私はフィナっていうの」

「そうかフィナって言うのか」

「うん」

「ところでフィナちゃんはこんなところで何してたの?」

「お母さんが病気で薬草を探しに来たんです」

 

なるほどそういうことか。

それで魔物に襲われてしまったというわけか。

 

「君みたいな小さな女の子が?」

「お金がないんです。だから、街では薬草買えないから森に採りにきたんです。そしたらウルフに襲われて」

「そうだったのか、じゃあここは危険だね。一緒に街に行こうか」

そう言って手を差し出そうとしたのだが、フィナは首を横に振る。

 

「大丈夫です。一人で帰れます」

 

そういって立ち上がろうとするフィナだったが、ふらついて倒れそうになるところを慌てて支える。

どうやらかなり疲労しているようだ。無理もないだろう、あんなことがあったのだから当然だな。

とにかくこのままでは危ないだろうし、なんとかしなければ……そうだ!

 

「なら、俺がおんぶしてあげよう!」

 

これなら問題ないはずだしな!それに早くしないと日が暮れてしまうかもしれないし、急がないといかんからな。

そう思って提案したわけだが、なぜかフィナは顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。

あれ?どうしたのかな?なんだか様子が変だぞ? まあいいや、そんなことよりもさっさと連れて行こう。

俺はしゃがんで背中をフィナに向ける。するとフィナはおずおずといった感じで背中に乗っかってきた。

おお、軽いな。それになんかいい匂いがする気がするぞ。シャンプーの匂いなのかな?それとも香水でもつけてるのかな?わからんけどいい匂いだ。

おっと、こんなことを考えてる場合じゃないな。とっとと街に戻るとするか。

そうして俺は街に向けて歩き出したのだった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

しばらく歩いていると、背中のフィナから話しかけられた。

 

「あの、クロさん」

「ん?なんだい?」

「どうして助けてくれたんですか?」

「え?そりゃあ困ってたみたいだし、ほっとけなかったからさ」

「そうですか……ありがとうございます。とても嬉しかったです。おかげで助かりました。感謝してます」

「どういたしまして、まあ困ったときはお互い様だからね」

「はい、そうですね……本当にありがとうございました」

 

お礼を言われるなんて久しぶりだなと思いながら歩いていくと、いつの間にか街が見えてきたようだ。

やっと着いたか。

門の前まで来ると門番が待ち構えていた。

視線はまっすぐに俺を見ている。

そして俺の腕の中にいるフィナへと向けられた瞬間、驚いたような顔をしたのがわかった。

どうしたんだ?

不思議に思っていると門番が声をかけてきた。

 

「そっちの嬢ちゃんは、薬草を探しに行った子だったな。薬草は見つかったかい?」

「はい」

 

と返事をするとフィナは背中から降りて鞄の中から薬草を取り出した。

それを見た門番は少し安心したような顔になり、話しかけてきた。

 

「それなら良かったよ。最近は魔物の活動が活発になってきていて危険だからな。今後はあまり森の奥には入らないように気をつけるんだよ」

 

その言葉に苦笑いをする。

 

「入るならカードを見せてくれ」

 

フィナは住民カードを門番に見せている。

ここに来る間に見せてもらった。

中に入るのは住民なら無料。

住民以外は税金として銀貨1枚必要らしい。

 

「俺は旅の者です」

「わかった、それでは身分証を……」

 

門番一言だけ口を開く。

俺にはそんなものは無い。

 

「無くても銀貨1枚払えば入れるんだよな」

「無いのか? どこの街のカードでもいいぞ。もしくはギルドカードでも」

 

俺は首を横に振った。

 

「持ってないんだ、冒険者ギルドにも入ってないし、商人ギルドとか職人ギルドに入ってない」

それを聞いた門番は呆れた顔をする。

「お前、もしかして旅人だったのか? 冒険者でもなく、商人でもないとは……よくそんなんでここまで来れたものだな……」

 

呆れ顔の門番に対して俺は笑顔で答えた。

 

「それで、中に入れるのか?」

「ああ、住民でない者は税金として銀貨1枚支払ってもらっている。あと身分証が無い者は犯罪経歴を調べさせてもらっている。まあ、一度も街に来たことが無いなら意味が無いがな」

 

『アイテムボックス』から取り出して、銀貨1枚を門兵に渡す。

 

「それじゃ、こっちの部屋に来てくれるか」

 

犯罪はこの世界に来てからしてないから問題はない。

門兵に門の近くにある建物に連れていかれる。

よくファンタジー小説に出てくる兵舎だろうか。

中に入ると受付みたいな場所がある。その奥に通路があり、奥の扉を開くと部屋があった。

中に入り椅子に座ると、向かい側に座るよう言われたので座ることにした。

 

「ではさっそく調べるとしよう。名前はクロと言ったか」

 

門番は水晶を目の前の机に置く。

 

「この水晶板に手を置いてくれ、犯罪者なら水晶板が赤くなる」

「置くだけでいいか?」

「ああ、坊主の魔力に反応して調べるからな」

 

手を水晶板に置くが反応は無い。

 

「大丈夫だな」

「本当にこんなことで分かるのか?」

「そんなことも知らないのか。本当にどっから来たんだ。まったく……なら、説明をしてやるか。この水晶板は国の全ての水晶板に繋がっている。街に住む者なら、赤ちゃんが生まれると市民カードを発行され、同時に魔力の登録も行われる。これは王都、他の街でも同様に行われる。それによって、その者がどこの出身地か分かるようになっている」

 

住民登録みたいなものかな。

 

「そして犯罪をした場合、そのデータを水晶板に登録することができる。登録されると全ての水晶板にデータが行き渡ることになる。それによって犯罪者は街や王都に入れなくなる」

「なるほど……」

「説明は以上だ。他に何か知りたいことはあるか? なければ、もう、街に入っていいぞ」

 

礼を言って部屋を出るとフィナが待ってくれていた。

 

「どうだ、大丈夫だったろ?」

「はい、ありがとうございました。それとごめんなさい」

 

ぺこりと頭を下げて謝るフィナの頭に手を置き撫でる。

 

「気にするなって言っただろ? それじゃ俺は行くよ、またどこかで会おうぜ」

そう言って立ち去ろうとすると呼び止められた。

「待ってください! あ、あの……お礼させてください!」

「いやいいよ別に」

 

断ろうとしたのだが食い下がられてしまった。

 

「ダメです! このままじゃ私の気が済みません!」

うーん、どうしようかな……まあ、いいか。どうせやることもないし暇だしな。

「わかったよ……それで、何をしてくれるんだい?」

「それはですね……」

 

フィナは俺の手を取り歩き出すのだった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

連れていかれたのは大きな建物。

大きな建物には剣や杖を持った冒険者がいる。

この建物は何の建物なんだろうと思っているとフィナが口を開いた。

 

「ここが冒険者ギルドですよ」

 

中に入るとたくさんの人がいた。

その光景を見ているとフィナに話しかけられる。

 

「こっちです」

 

フィナに案内されてついていく。

大きな建物の隣の建物に入っていく。

 

「すみませーん。ウルフの買い取りお願いしたいんですけど」

 

フィナはカウンターの奥にいる男に声をかける。

 

「フィナじゃないか。こんな時間にどうしたんだ」

「クロさんがウルフを売りに来ました」

 

俺はウルフを『アイテムボックス』から取り出し床に置いた。

 

「解体をこっちでやるのだったら手間賃として2割だぞ」

 

男が言うとフィナは答える。

 

「あ、自分で解体するので大丈夫です」

「そうか、それなら任せたぞ」

 

フィナが声をかけてきた。

 

「クロさん、こっちにどうぞ」

 

奥に部屋に案内され、そこに座るよう言われたので椅子に座った。

 

「それじゃ解体しますね」

 

そう言ってナイフを取り出した。

 

そういえば、この世界ではどういう風にウルフの素材を回収するのか気になっていたんだよな。

そんなことを考えながら、解体作業を見守ることにした。

 

◆◇◆◇◆◇

 

フィナはナイフを使って手際よくウルフの毛皮を剥いでいく。

あっという間に皮と肉が分離された。その素材を回収して、内臓や骨は部屋の隅に纏められている。

 

「終わりました」

 

そう言うと彼女は毛皮と肉、魔石を俺に渡してきた。俺はそれを受け取って『アイテムボックス』に仕舞う。

フィナはそれを確認すると笑顔になった。

 

「それじゃあ、ゲンツさんのところに売りに行きましょう」

「ゲンツさん?」

「はい、あの受付にいた人です。わたしに解体を教えてくれた人です」

 

そう言って、買取カウンターまで戻り受付に声をかける。

 

「ゲンツさん、素材の買い取りお願いします」

「おお、フィナか。解体終わったのか」

「うん、終わったよ」

「よし、それじゃあ、見せてくれ」

「はい、これです」

 

フィナは素材を渡す。

 

「どれどれ……ふむ、肉の状態はいいな。毛皮は真っ二つと、これなら1匹当たり銀貨2枚半銀貨1枚ってところだな」

「はい、お願いします」

「ああ、それじゃ銀貨10枚だ」

 

フィナは硬貨を受け取ると、それを俺に渡してきた。

 

「はい、これはクロさんの取り分ですよ」

 

そう言ってニッコリと笑うのだった。

 

「ありがとう、フィナ」

 

俺はフィナからお金を受け取ると、フィナに銀貨2枚を手を取って渡す。

 

「はい、これはフィナの取り分な」

 

そう言うと彼女は驚いた顔をした。

 

「ゲンツさんも言っていただろう。手間賃は2割、これは正当な報酬で君からのお礼は別に貰おうかな」

 

フィナの耳元で囁く。

 

「フィナには宿に案内して貰おうかな」

 

「え、あの……それって……」

 

フィナの顔は赤くなっていた。

あれ?もしかしてセクハラっぽかったか?

 

「冗談だよ、冗談。フィナのおすすめの宿に案内して貰ってもいいかな」

 

そう言うとフィナはホッとした顔をしていた。

やっぱりセクハラっぽかったか……。

 

「わかりました、それでは案内しますね」

 

その後、フィナに案内されて宿へと向かったのだった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

案内された宿は換金場所から歩いて30分ほど離れた場所だった。

 

「ここだよ。ごはんもおいしいってみんな言っている」

「ありがとうね。じゃ、お母さんに早く薬草を持っていってあげてなよ」

「クロさん、ありがとう」

 

そう言って、フィナは走っていった。

さてと、これからどうしようかな。

宿の中に入ると受付の女性が出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませー」

 

おおっ可愛い!

見た目は10代後半だろうか?栗色の髪とこめかみからの三つ編みキュートな女の子だ。年齢は16から18くらいだろう。目がクリっとしていて、八重歯が可愛い。服装はメイド服みたいな格好をしている。

 

「本日はお泊りですか?それとも食事だけでしょうか? ちなみに朝、夜の食事付きで銀貨1枚です。食事なしだと半銀貨になります」

「それじゃ、食事ありで10日分で」

「お風呂は夜6時から10時の間になります」

「お風呂あるのか」

「はい、ございます」

「腹ペコだから食事はすぐにできるかな?」

「大丈夫です」

 

説明を聞き終わった俺は『アイテムボックス』から銀貨10枚取り出す。

 

「これでお願いします」

 

銀貨を受け取った彼女は笑顔で言った。

 

「はい、ではお部屋に案内しますね」

 

彼女の後をついていき、2階に上がると階段を登ってすぐの部屋だった。

へぇーなかなかいい部屋じゃないか。

1人用のベッドに小さなテーブルとイスが2つずつ。そして、トイレとお風呂がついていた。

 

「こちらがお部屋になります」

 

彼女が鍵を渡してきたので、それを受け取って部屋に入った。

 

「ありがとうございます。早速、風呂に入りたいんだけどいいかな?え~と」

「はい、大丈夫ですよ。わたしはエレナっています」

「よろしく。俺はクロです」

 

俺は部屋に荷物を置いて風呂に入ることにした。服を脱いでタオルを腰に巻き中へ入る。お湯は熱めで体が温まるのを感じた。髪と体を洗い湯船に浸かる。

お風呂から出て、部屋に戻ると荷物の中から着替えを取り出し、食堂へと向かった。

食堂に入ると、数人の客がいるだけだった。適当に席に座り注文をする。

 

「いらっしゃい!今日はなににする?」

 

元気な声でやってきたのはエレナだ。

 

「えーと、とりあえずエールと肉料理で」

「はーい!ちょっと待っててね!」

 

しばらく待つと料理が運ばれてきた。それを受け取ると早速食べ始める。

出てきたのはステーキだ。一口食べると肉の旨味が口に広がる。柔らかく、噛まなくても溶けるような食感だ。

 

「美味いな……」

 

思わず呟いてしまった。それを聞いたエレナが嬉しそうにしている。

 

「でしょ!うちの宿は料理自慢だからね!」

 

俺は夢中で食べ続けたのだった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

食事を終えて部屋に戻った俺はベッドに寝転ぶ。

さて、これからどうするかな……。

とりあえず冒険者ギルドに登録したいところだ。あと、武器も欲しいかな?一応、剣はあるけど実戦経験が少ないからな……まあ、街の外に行けば魔物はいるだろうしその時に試してみるか。

そんなことを考えながら眠りについたのだった。

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