朝早く起きれた俺は、朝食を食べると森に出かけることにした。
目的は夢でもらった魔法の完熟訓練だ。まあ、昨日買った魔法の本が無駄になってしまったが、まあいいやフィナにあげればいいかな。
ついでに薬草や食用キノコなどの採取も行う予定だが……正直言ってあまり期待していない。何故ならここは異世界なのだ。地球と同じ植物があるとは限らないし、同じ動物がいるとも限らないからだ。それでも一応、『マップ』を使って調べながら探すつもりだが……。
宿で朝食を取って、準備を済ませると宿を出る。
昨日の今日でフィナと会うのは気が引ける……。
宿を出た瞬間、フィナに声を掛けられる。
「おはようクロさん」
「ひぇっ、フィナ。おはよう」
思わず変な声が出てしまう俺に対して、彼女は笑顔で言った。
「今からどこに行くんですか?」
俺は動揺しながら答える。
「ちょっと、森まで行ってみようと思うんだ」
それを聞いたフィナは目を輝かせた。
「わたしも一緒に行っていいですか?」
うっ、どうしよう?別に断る理由もないけど。
俺が迷っていると彼女は悲しそうな顔をする。それを見て俺は慌てた。
「ああ、いいよ一緒に行こうか」
俺がそう言うと、彼女は笑顔になる。
「はい!」
こうして俺達は一緒に森の探索に行くことになったのだった……。
◆◇◆◇◆◇
街の門にやって来た俺たちは門番に声を掛ける。
「よっ、はい、ギルドカード」
「おお、こないだの兄ちゃんか。外に行くのかい……あれ? 嬢ちゃんも?」
俺はギルドカードを、フィナは見せて、水晶板に翳す。
街の外に行くときもカードを見せて水晶板に翳さないといけない。
門の出入り口で犯罪者か確認するためだ。
もし、街の中で犯罪をした場合、犯人が分かっていればギルドに登録してあるデータに書き込まれ、門でチェックされると捕まる仕組みになっている。
「よし、通っていいぞ」
無事、通行許可が出たので街を出ていく。
「外は危ないから気をつけろよ。嬢ちゃんは一度襲われているし」
「ちょっと外で魔法と剣の練習するだけし、フィナは俺が絶対守るよ」
俺がそう言うと、門番は安心したような顔をした。
「そうか、まあ気をつけてな」
俺達はギルドカードと住民カードを受け取り、街を出て森に向かうのだった……。
◆◇◆◇◆◇
森に着いた俺達は、まずはフィナのために薬草を採取することにした。
「これが薬草です」
フィナが指差した先には、葉っぱがギザギザで茎の部分が太い植物があった。
「なるほど……それで薬草の名前は?」
「名前ですか?えっと……知らないです」
まあ、いいか……特徴を認識していれば『マップ』に表示できる。
そう、『マップ』にはアイテムを探すことができる能力がある。
俺は『マップ』を開いて、薬草の特徴をイメージしつつ表示させると……。
「おっ、あったぞ」
俺は『マップ』に表示された薬草を指差した。するとフィナは嬉しそうな顔をする。
「流石クロさんですね!」
それから俺達はフィナのために採取をするために森の奥に向かった……。
◆◇◆◇◆◇
『マップ』をみながら、薬草を採取し始める。
すると、俺はあることに気がついた。
「フィナ、ちょっといいかな?」
「どうしたんですか?」
彼女は手を止めてこちらを見る。
「いや、この薬草はどれぐらい必要なのかなって」
俺がそう言うと、フィナは困ったような顔をした。どうやら考えていなかったようだ……。まあ、仕方ないか。別に急ぎじゃないし、ギルドに採取依頼が出てたらそれをやることにしよう。
「とりあえず……このぐらいあればいいかな?」
俺がそう言うとフィナも頷く。
そして、俺達は薬草を採り続けたのだった……。
◆◇◆◇◆◇
しばらく採取をしていると『マップ』に40個の赤点が画面外から現れる。
確認するとウルフで一直線にこちらに向けて走ってくる。
「フィナ、ウルフが向かってきているから俺から離れないで」
俺がそう言うとフィナが心配そうにこちらを見た。
「だ、大丈夫なんですか?」
俺は頷くと腰から『無貌の剣』を抜いて構える。
すると、茂みから3匹のウルフが現れる。
「フィナ、下がってて」
俺はそう言うと、1匹のウルフに斬りかかる。そして、飛びかかってきたもう1匹を横に避けてかわすと、そのまま首をはねる。残りの2体は同時に飛びかかってきたので『無貌の剣』で首を切り裂いた。するとウルフは力無く倒れる。
こいつは先遣隊だ。間違えなくすぐにウルフたちが到着して、俺たちに襲いかかるだろう。
30匹以上のウルフに襲われればフィナを守りながら戦うのも容易ではない。ならば……。
「フィナ、少しごめん」
俺はフィナをお姫さま抱っこして待機する。
「え、えっと……これは?」
困惑するフィナに俺は言う。
「ちょっと、恥ずかしいと思うけど我慢してね」
「はい」
フィナは顔を真っ赤にして、目を瞑る。
そうするとウルフの団体が背が低い木々を掻き分けて現れる。
「来たぞ」
俺がそう言うと、フィナはビクッとする。そして俺は魔法を唱える。
「ブリザードウインド」
すると、凄まじい冷気の風がウルフたちを襲う。その風は木々を凍らせながら、森を駆け抜けてウルフたちに襲いかかるウルフは凍結し始めるがこちらに向けて走り続けるウルフもいた。
しかし、数秒もしないうちに凍ってしまった。
「よし、フィナもう大丈夫だよ」
俺がそう言うと、彼女は目を開ける。そして俺の魔法を見て目をキラキラさせた。
「凄いです!クロさん!」
「これなら、毛皮も傷付けないだろう?」
俺の言葉に彼女は頷く。
「さて、あとは収納するか……」
そう言って俺は『アイテムボックス』にウルフを収納していく。
◆◇◆◇◆◇
収納を終えると、俺とフィナは街に戻ることにした。
森を抜けて、街道に出て、街に向かって歩いていく。
街に戻ってきて、真っ直ぐにギルドに向かう。
ギルドに入ると部屋にいる冒険者の視線が一斉に俺に向く。
ああ、なるほど。あの騒ぎがあったからか……と思いながら、受付に向かう。
ヘレンの元に行くと。
「クロさん、本日はどのような用件ですか」
「ウルフを森で倒したんだが、この場合どうしたらいいのかわからないだが」
「依頼内容が討伐だけでしたら、討伐の証拠の魔石を持ってきてもらうと依頼成功とさせてもらっています。ただし、その魔石が期限内が絶対条件になります」
「期限内?」
「本日依頼したのに、一ヶ月前に討伐をした魔石を持ってこられても困りますから」
「なるほど……」
「ウルフの依頼は常置依頼なので常時受け付けてます。但し、肉、毛皮が必要になります。肉などは食堂、一般家庭の食卓に並びます。この街の食料源になります。毛皮は服などで使いますのでギルドでは常置依頼になっています」
「それじゃ、そのウルフの依頼お願いできる?」
「はい、ウルフ1匹でFランクになります。3匹でEランク扱いになっています」
「了解。とりあえず40匹いるから3匹Eランクの依頼を13回処理頼む」
「…………えーと、クロさん。今なんと」
「40匹いるから3匹Eランクの依頼を13回処理頼む」
俺がそう言うと、後ろからヒソヒソと声が聞こえてくる。
「ウルフを40匹だとよ」
「冗談だろ」
「どうやったら、一人で倒せるんだよ」
などと聞こえてくる。
「失礼ですが、どこにあるのでしょうか。魔石だけでは認められませんが」
「解体はしてないが、ちゃんとアイテム袋に入っているよ」
肩掛けバックを触りながら言う。
「アイテム袋を持っているのですか? しかも、ウルフが40匹も入るほどの大きさの。それじゃ、すみませんが、隣の建物でよろしいですか」
「わかった。フィナは待っててくれ」
「うん、わかった」
ヘレンに案内されて隣の建物に向かう。
連れてこられた場所はこないだフィナとウルフの素材を売った場所だ。
ゲンツは見当たらない。別の男性が出迎えてくれる。
休みなのか奥にいるのかはここからではわからない。
「ヘレンさん、どうしましたか?」
男性職員がヘレンに気づいてこちらにやってくる。
「ウルフを持ってきましたのでよろしいですか?」
「大丈夫ですよ。倉庫の方も何も解体してませんから」
「それじゃ、クロさん、こちらにお願いします」
バックから出すふりをしながら『アイテムボックス』からウルフの死骸を取り出していく。
氷漬けのウルフ、首や胴体が切断されたウルフなど様々だ。
それを見たヘレンと男性職員は口を開けて驚いている。
「あ、あの……どうやってこんなにクロさん、これ全部本当に一人で倒したのですか」
ヘレンは震える声で聞いてくる。
「ん、ああ、魔法の練習ついでにね」
「はぁ、ついでですか。全部で43匹ですね」
「肉の状態も毛皮の状態も良いみたいですね。あと魔石も買い取らせてもらいますがよろしいですか?」
「いいぞ、いくらになるかな?」
「そうですね……状態が良いので銀貨129枚になります。それでは手続きをしますので、もう一度ギルドの中にお願いします」」
ヘレンはそれだけ言うと、ギルド戻っていく。俺も後に続いて戻る。
受付カウンターの前に来る。
「それではEランク依頼として処理させてもらいますのでギルドカードをよろしいでしょうか」
カードを渡す。
カードを受け取ったへレンが改めてこちらを見る。
「一つお聞きしてよろしいでしょうか」
「なんだ?」
「あのウルフは、一匹ずつ倒したのですか?」
「群れがいたから倒した。フィナもいたから証拠もある」
「うん、見てたよ」
「40匹の群れですか……Dランクの依頼ですね。ちょっとお待ちください。ギルマスに相談してきますから」
へレンが奥に行くとすぐに戻ってくる。
「今回のウルフの討伐をEランク14回の依頼達成としまして、クロさんをEランクとさせてもらいます」
「そんな簡単でいいの?」
「ギルマスの許可はもらいました。Dランクの討伐の依頼を一人で倒したのですから十分にその資格はあります」
「そうか……だったら有難くEランクになっておこう」
「では、手続きをしますね」
何かしらカウンターの中で操作をしている。
「まず、こちらが依頼達成料になります。ウルフの肉、毛皮、魔石の43匹分、状態が良いので銀貨129枚。でも、ウルフが解体されていなかったため2割引かせてもらって、銀貨105枚になります」
ヘレンの言葉にうなずいて皮袋に入ったお金を受け取り、『アイテムボックス』の中に入れる。
最後に手続きが終わったギルドカードも入れる。
「これでクロさんはEランクになりましたので頑張ってください」
「どうも」
ギルドを出て、宿に向かっている途中でフィナに声を掛けられる。
「ねえ、クロさん」
俺はそんなフィナの言葉に耳を傾けるのだった。
そして、そんな馬鹿なことを考えている俺に対してフィナはとんでもないことを言うのだった。
「今日はクロさんの部屋に泊まっていい?」
「……え?俺の部屋って、宿にだよね……」
あれ?フィナが俺の部屋に泊まるのは決定事項なの。
そんなことを考えていると……フィナは俺に言ってくる。
「やっぱり……ダメかな?」
「うぐっ……」
断らないとだめだ……俺はイエスロリータノータッチだ。
「わたし……怖い思いをしたんですよ? だったら添い寝してくれてもいいと思うんですよ」
「そ、それは……」
確かに、フィナは怖い思いをしたかもしれない。だから一緒に寝るというのはある意味正しいことだと思うが……。
「それにわたし、今日頑張ったでしょ? だからご褒美が欲しいなぁー」
フィナは上目づかいで俺を見てくる。
くっ……あざと可愛いじゃないか。
だが、俺は負けない! 幼女と一緒に寝るなんてそんなことできるか! いや待て!これはチャンスではないか!合法的に幼女と同じベッドで寝て、朝まで一緒にいれるという素晴らしいイベント! ならば、この機会を逃すわけにはいかない! よし!俺は決めたぞ!俺の答えはこれだ!
「いいよ、おいで」
そう言うとフィナは嬉しそうに笑うのだった。
「ありがとう!それじゃあ行こう!」
「その前にお母さんに一声かけるべきだな」
「そうだね、お母さんに言ってくるね」
一度、フィナと別れた。
俺は宿に着くと……受付に向かう。すると、丁度受付にはエレナがいた。
「エレナさん、今日、フィナが来るんで夕食をお金支払うで追加をお願いします」
「わかりました。お母さーん、エレナです。1食分追加ーー!」
エレナは大声で叫ぶように女将さんに言う。
しばらくすると、エレナの母親が顔を出す。
「なんだいエレナちゃん。大きな声で叫んだりして」
「ごめんなさい、お母さん。今日のご飯なんだけど、1人分追加してもらっていいかな?」
「わかったわ。それにしてもエレナちゃんにこんな素敵な人がいたなんてね……」
女将さんが俺のことを見てニヤニヤしながら言う。
「ち、違うからね!この人は私の彼氏とかじゃなくてただの友達だからね!?」
「あらあら、そうなの?私はてっきり恋人かと思ったんだけどねぇ……」
「もう!お母さんたら勘違いしすぎだよ!!」
エレナの顔が赤くなっている。たぶん照れてるんだろうなぁーと思いながら、二人の会話が終わるのを待つ。
「ごめんね、クロさん。それでどうしたの?」
「いや、今日からしばらくフィナが俺の部屋に泊まることになったから夕飯をよろしくって言いたかっただけだ」
「あら、そうだったの。いいわよ」
「それじゃ、よろしくお願いします」
エレナにそういうと彼女は耳傍に近づき囁く。
「クロさん、手を出しちゃダメですからね。もし手を出したら……わたしにも……」
「出さないから安心しろ……と言いたいけど、自信はない……」
「クロさん……信じてますよ」
そう言ってエレナは離れていくのだった。
しばらくしてフィナがやってくると俺が泊まっている部屋に案内するのだった。
部屋に入ると早速、ベッドに腰掛ける。もちろん二人分のベッドはなく、一つのベッドに二人で座る形となる。
ちなみにこの部屋は一人部屋で広さは5畳ほどの広さである。
なのでかなり狭いのだが、それでもなんとか二人が座れるだけのスペースはある。
「さて、どうしようか?」
「わたしは、このままでもいいですけど?」
フィナはちょこんと座っている。
フィナの服装は動きやすい格好ではあるが、少し薄着であり、太ももがチラチラ見えている。
「そ、そうか。なら、このままでいいか」
「はい、いいですよ」
フィナは俺の横に移動すると腕に抱きついてくる。
小さいけど柔らかい感触が腕に伝わる。
やばい、フィナの胸が当たっている。というか、押し付けてきているような気がする。
さらに、フィナのいい匂いがして理性が飛びそうになる。
「ちょ、ちょっと離れようか?」
「えー、嫌ですよ」
フィナは笑顔で拒否してくる。
「ほら、もう少ししたらお風呂に入るんだから、今のうちに体を綺麗にしないと」
「別に気にしないのに……」
「俺が気にするんだ!」
「むぅ……仕方ないですね」
しぶしぶと言った感じで離れてくれる。
「はぁ……まったく、油断も隙もないな……」
「えへへ……」
可愛く笑っているが、男の前であんなに無防備にするのは良くないと思うんだよな……まぁいいや……それよりもこれからどうするか考えないとな……。
あとは夜飯を食べて寝るくらいしかないか……。
とりあえず、今はゆっくり休むとしようかな。
「それじゃあ、そろそろ食堂に行くか?」
「そうですね、行きましょう」
俺とフィナは部屋を出ると、エレナの母親がいる受付に向かう。
「エレナさん、すいませんが夕食をお願いします」
「はいはい、ちょっと待っててね」
母親は厨房に向かって声を掛ける。
「お父さん、1食追加!」
「あいよ」
それから10分ほど待っていると料理が出てくる。
「はい、お待ちどうさま」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
俺たちは部屋に戻って食事をすることにした。
食事を終えるとフィナが話しかけてくる。
「あの……クロさんってどうやって強くなったんですか?」
「ん?どうしてそんなことを聞くんだ?」
「だって、クロさんはすごい強いじゃないですか。なのに、なんで今までFランクだったんだろうって思って」
「あぁ……そういうことか……。そうだな……簡単に言えば運が悪かったとしか言えないんだけどな……」
「どういうことですか?」
「えっとだな……」
俺は自分の過去について話すことにした。
自分が異世界から転生してきたこと、その時に神様からもらった能力のこと、それを使って冒険者になったことなどをすべて話した。
ただ、さすがに前世のことは言わなかったけどな……。
「……というわけなんだ」
「なるほど……クロさんは大変だったんですね……」
「まぁ、それなりには……でも、今が幸せだからいいんだ」
そういってフィナの頭を優しく撫でてあげると気持ちよさそうに目を細める。
そんなことを思っていると……フィナが話しかけてくる。
「ねえ、クロさん」
俺はそう聞くと……答えるのだった。
「なに?」
フィナは上目遣いで言う。
「私、そんなに魅力ないかな?」
「え?」
いきなりの質問に戸惑う俺。
なんで急にそんな話になるんだろうか?
「いや、十分魅力的だと思うけど……」
「本当に?おっぱい小さいし、色気もないし、子供だし、その、えっちなことしてもつまらないんじゃない?」
「そんなことないさ、でも、まだ出会ってから少ししか経ってないし」
「そっかぁ……」
なんだか残念そうなフィナだったが、すぐに笑顔に戻る。
「うん、そうだよね!まだ出会ったばかりだしね!これからいっぱいアピールしていくからね!」
「お、おう……」
フィナの言葉に若干押されながらも返事をするのだった。
「それじゃあ、そろそろ寝ようか」
「うん、おやすみなさい」
俺も眠ることにする。しかし、なかなか眠れない。
それもそうだ、なにせ隣に美少女がいるのだ。緊張しないはずがない。
しかも、フィナは俺に密着している状態なのだ。ドキドキするなというのが無理があるだろう。
ダメだ……眠れん……。
そんなことを考えていると隣から声が聞こえてくる。
「んぅ……すぅ……すぅ……」
どうやらフィナは眠ったようだ。とても可愛らしい寝顔をしている。
そんな彼女の頭を撫でながら眠りにつくのだった。