その日、母親から聞きたい事があると言われて娘は驚いた。
共働きで忙しく、朝からフルタイムで働いているので母親と話をするときは殆ど日常会話、必要最低限のことばかりだ、ところが、今日に限って話がある、そういった母親の表情は普段と違っていた。
クラスに○○という名前の生徒がいると聞かれて、どきりとした。
同じクラスだから話はするよというと母親は、そうと頷いた。
自分が彼女の取り巻きの一人だ、一緒になってクラスの地味な女子
を仲間外れにして、そう、周りから見ても明らかな陰湿な虐めをしているなど親には知られたくなかった。
嫌なのだ、だが、拒否して虐めるのは嫌だと言ったら、今度は自分が標的にされるかもしれないと思うと言い出せなかった。
「どうしたの、そんなこと聞いて」
少し迷ったようだが、母親は娘の顔を見ると、彼女は不良なのと聞いてきた。
その言葉に、すぐに答えることができないのは不良という言葉が、どういう意味を指しているのかわからなかったからだ。
虐めの事だろうかと思ったとき、異性交遊が良くないんじゃないと聞かれて驚いた、続けて男子生徒とセックスしているでしょう、予想もしない言葉だ。
「中絶も何度かしていて、性病にもかかっているっていうじゃない」
嫌悪感を隠そうともしない様子に何も言えなかった、自分の口から言葉が出てこなかったといったほうがいいだろう。
派手な外見と顔立ち、以前。プチ整形をしたのと笑いながら告白されたりした、男友達も多く、他の学校の男子生徒から付き合ってくれと言われたという話も聞かされたことがある。
だが、中絶、性病などまさかと思ってしまう。
「そんな噂を周りでされても学校に平気で通うなんて、普通じゃないのね」
母親の言葉に、どう、返事をすればいいのかわからなかった。
人違いじゃないと聞くと母親は近所の人が見たというのだ。
「年輩の男と腕を組んで、パパ活、援助交際まで、最近の高校生って本当に、ああ、あそこのご両親は」
クラスの女子を仲間外れも最低だと思っていた、まさか、こんな話を聞かされるとは驚きだった。
彼女は放課後には、いつもメイクしている、持っているコスメ用品も発売されたばかりのもので、ポーチなどもブランドものよと自慢されたことを思い出した。
高校生だが、家が裕福だからと言われて、そうなんだと納得していた。
お小遣いは月に幾らだと、だが、援交などしていたら、万単位のコスメやブランドものが変えても不思議はない。
自分の知らなかった彼女の裏、知らなかった一面を次々と言葉にする母親の顔に娘は呆然とした。
「あなたは大丈夫よね、そんなことしたり」
「母さん」
気まずい沈黙は長くは続かなかった、もしかして母親は、自分が彼女と同じようなことをしているのかと思っているのだろうか。
「ごめんなさい、母さんだって驚いたのよ、そんな女の子が」
自分の部屋に戻り、頭の中を整理する、近所の人が噂している、そんなこと知らなかった。
数日前の事を思い出した、お腹が減ったから、何か買おうとコンビニへ入ったとき、他校の生徒もいた。
「○○高校の制服じゃない」
「随分、派手よね」
「ねぇ、あの女の子」
こちらを見て、ひそひそと、あのときの視線、こちらを見ていた目、まるで嫌悪感を抱いたような。
嫌な予感がした。
翌日、教室に入ろうとして思わず立ち止まったのは廊下で立ち話をしている数人の生徒に気づいたからだ。
他のクラスの生徒たちも遠巻きにしているのは気になるのだろう。
「帰りに家に来ない、もっとたくさん話したいし」
女子の言葉に隣にいた男子も頷く。
「だったら、パソコンのスカイプを使ったらどうかな」
その言葉に眼鏡の女子がパソコンはと言いよどんだ。
「スマホじゃ無理かな、あたしパソコンは」
「持ってないの、だったら俺んとこのノートを貸そうか」
男子の言葉に悪いからと首を振る、ところが。
「気にすることないわよ、オタクなのよ、この男は、それにパソコンなら皆で、海外とも連絡取れるよ、ウェブ会議だよ」
「何、あれっ」
「有名人だよ、あの二人、女の方は次期生徒会長候補と言われてたのよ」
「男もだよ、なんで、あんな陰気な女と仲良く、腹立つわ」
教室に入るとボス的存在の彼女と、その取り巻きの女子たち、顔が明らかに不機嫌そうだ。
「お、おはよう」
「んっ、ねぇ、あの陰気な女、腹が立つと思わない」
いつもなら、そうだねとすぐに頷くのにできない。
「あれっ、手首、どうしたの」
「んっ、吹き出物ができてね」
ぽつぽつとしたいくつもの吹き出ものだ。
「ちょっと、痒くてさ、ストレスかな」
見てと言わんばかりに腕をつきだした瞬間、足が後ろへと、まるで近寄らないでというように動いてしまった。
「どうしたのよ」
「えっ、ああ」
性病、母親の言葉を思い出したせいかもしれない。周りの女子も驚いたようだ。
「どうしたの」
「なんかあったの」
返事ができない、避けられた彼女もだが、周りも自分の態度に何かを感じ取ったように不審な目で見ている。
「あ、あたし、今朝から調子が、保健室に行ってくる」
逃げるように彼女は教室を出た。
他にも書きたいものが、ここ最近色々と出てきました。