ねえっ、あれって何、どういうこと、取り巻きの一人でしょ、クラスの女子だけではない、男子生徒も気づいたようで、自分を見ている。
気にするなというほうが無理だが、仕方がないと諦めていた。
あの日、自分がボス的存在の彼女の腕を見て、慌てて退いたこと、まるで逃げるようにだ、その様子にクラス中が何かを感じ取ったのかもしれない。
数人の女子が声をかけて理由を聞こうとした。
だが、吹き出物に驚いてなど、深く理由を聞かれたらうまく説明できる自信がないし、下手な言い訳をすれば自分が今度は、あの虐められていた彼女と同じ目に遭う、そんなことになったら。
「なあ、ちょっといいか」
その日、自分に声をかけてきたのは彼女と仲のいい男子生徒の一人だ、他校の生徒と喧嘩をして病院送りにしたなどという噂のある彼に人気のない場所に呼び出された彼女に男は、あの日の事を聞いてきた。
「ちょっと、大袈裟すぎないか」
あのとき、自分が驚いたことを責めているのだろうか、だが、母親からあんな話を聞いた後だ、本当に性病ならと思ってしまったのだ。
「そうだね、ちょっと」
あの日以来、彼女もだが、グループの女子たちも自分を避けている、だからといって自分から話しかける事などできない。
近づかないほうがいい、この際、あのグループとは関わらないほうがいいのだと思ってしまった。
「ところで、最近、あいつ、変わったよな」
あいつというのが誰なのか聞かなくても分かる、自分たちが虐めていた陰気で滋味な女子生徒のことだ。
よそのクラスの男女と仲良くなった彼女は、ここ最近変わってきた。
明るくなったといってもいいだろう。
一度、彼女を人気のない場所、トイレに呼び出そうとして、そこを他のクラスの男女に見つかったのだ。
普通なら黙って見過ごす、知らないふりをする、そう思っていた、ところが、その女子はいきなり大声でイジメをしている生徒がいると大声で騒ぎ始めたのだ。
それだけではない、ボス的存在の彼女の名前をフルネームで叫んだのだ。
「卒業を控えているのに、何考えてるの」
「内申にも響くし、得意な事は虐めって」
「いや、それはないだろ」
翌日から彼女は有名人になった、それだけではない。
職員室に呼び出されたのだ。
「誤解です、虐めてなんかいません」
素直に頭を下げて涙ぐめば教師は騙される口頭の注意だけで許されるはずだった、ところが今回は以前とは違っていた。
「現場を見た女生徒の誤解だといいたいのか」
返事はない、だが、教師は追求はしなかった、かわりに、そういうことにしておこうと呟いた。
「聞きたいのは別のことだ、おまえ、随分とあそんでいるようだな、わかるか、男と」
職員室の教師たちの目が一斉に向けられた。
「な、何、言ってるんです、先生」
「婦人科に行ってるらしいな、それも何度も」
通報があったと言われて、言葉を失った女生徒の顔を、ちらりと見た教師は本当みたいだなと呟いた。
自分を見る視線、それは明らかに生徒を見る目ではない、いや、目の前の教師だけではない、わずかに伏せていた顔をあげると、このとき初めて自分に向けられている視線に気づいた。
汚いものを見るような、その目に。
地味で陰気な女生徒、クラスの目立つ女子から虐めを受けていた女子が少しずつ代わり始めたことでクラスの生徒たちの見る目も変わってきた。
何で、あんな陰気なブス女が、宇鯖瀬死に虐めていたボス的存在の女子が他のクラスの生徒達からさめた目で見られ、仲の良かった男子生徒達は離れる、いや、敬遠し、遠くから見るようになった。
その男子は分に自信があった、付合わないかと声をかけるとたいていの開いたの女子は考え、最後には承知する、自分の顔、ルックスには自信があるからだ。
今回も自信があった、ところが。
「おいおい、サルが人間の女と付き合いたいって」
「いや、それ以前にサルに失礼だろ」
「そうだな、以下だな」
通りすがりの数人の男子生徒の言葉、まさか自分か、いや、違う、だが、視線を向けると、にやにやとした笑いが返ってきた。
「病気だよ、アレしか興味がないって、しかも教室内でやるんだぜ」
「信じられん、人としてどうよ」
「よく退学にならないな」
「親だろ」
「ああ、そうか」
納得したような言葉に腹が立ち、相手に向かって近づくと避けるように避けられた。
「うつさないでくれよ、いや」
「交尾したら、だろ」
「雄の場合は癖になるらしいぜ、感染してないと駄目らしい」
だからやってるのか、最低だな、笑い声、それが何を意味しているのかわからず、男は去っていく男子生徒の後ろ姿を見つめていた。
「なんのこと」
飛び込むように教室内に入ってきた男子生徒に頬をぶたれて女は驚いた。
教室内に響きわたるような大きな声で罵倒された女生徒は驚いた、理由が分からなかった、だが、ヒートアップした男の
台詞から自分が最低の人間、いや、以下だと言われてかっとなった。
何よ、あんただって他の女と、だが、その言葉は最後まで口にできなかった。
ぶたれた、いや、殴られたのだ、痛みを感じて倒れてしまう瞬間、全てが終わった事に女は気づかなかった。
事故だったんですってね、倒れたときに机とイスに頭をぶつけて。
失神したの、救急車で運ばれて。
病院に運ばれたけど、そのまま意識が戻らなくて。
短編でサクッと読み切りにした方が良かったと思ってしまいました。
なろうで、再Upしようかと考えています。