押し寄せる後悔の念。遍く憎悪が私に突き刺さり、罪責が重くのしかかる。私は選択を間違えてしまった。そしてこの世界の命運が、私に委ねられている事もまた間違いなのだろう。私の様な罪深き人間にそのような権利があってよいものか。
「いいえッ...!xxxさんは騎士としての務めを見事果たしました。あなたは多くの人達を救った事を誇りに思うべきです...!」
私は魔姫の命を奪ってしまった。許されることではない。
「そんなことはありません、xxxさん...。自分自身を許すことが出来なかったとしても、それでもきっと神は貴方をお許しになる筈です...!」
「カタリナ嬢の仰る通りだよ。」
顔を上げるとエズワルドが微笑みを向けていた。エズワルドの手にしたロザリオの十字架が斜陽をちらと弾き、微かに目をくらませる。
「罪を重ねるほどに君の魂は黒ずんでゆく。君が穢れて堕ちてゆく様を見るのは、私にとっても忍びないことだ。許される罪などあってはならないものだと、君は思うかもしれない。しかし、前へ進むべき君の道をどうして阻む事が出来ようか?もし君に罪の意識があるならば、私が神に代わってその懺悔を聞き入れてやろう。もちろん、ソウルはいたただくがね。」
「エズワルドさん、あなたそういうところ...」
「さあ、罪を白日の下に晒け出すんだ。自ずと罪は和らぐことだろう。」
罪。私が犯してしまった、悪徳。
私はロストエンパイアへの道を切り開くために、魔姫を殺してしまった。世界を救う為だったとしても、私が人を殺したことには何ら変わりはない。私は、本当に、取り返しのつかない事をしてしまった。
「ふむ、そうかい。...私は罪を肯定することは出来ないが、それでも君は君の成すべき事を成したと、そう思うよ。これからは、罪に代わりに十字を背負って生きてゆくことだ。」
そうだ。罪を犯した身であったとしても、私かこれからも清く生きてゆくことで償えるかもしれない。今の私に、何が出来るだろうか。
そうだね、と軽く傾げるエズワルド。
「体を清めて神にその清純さを示してはどうかな」
エズワルドに言われるまま私はその場を後にして、湖へと向かった。
「xxxさん、本当に大丈夫なのでしょうか...変な気を起こさなければいいのですが...」
「私も心配です...エズワルドさんが話を聞いてくれたとはいえ、今までないくらいに落ち込んでいましたし...」
「きっと彼なら大丈夫だよ。」
心配の念を寄せる聖女たちを尻目にエズワルドが微笑む。
「黒い魂が蔓延る世界の中で、彼の様な純真美しい魂を持った者こそが救いとなるんだ。その心、いつまでも清らかなままでいてくれよ...」
聖森には今日も小鳥たちの囀りが響きわたっている。差し込む木漏れ日がいつにもまして心地よい。自分がようやくカルマから解放されたのだと実感する。しかし私の心内の霧が晴れたとはいえ、依然としてこの国は呪われた霧に覆われたままだ。霧の元凶であるロストエンパイア場への道が切り開かれた今、一刻も早く準備を整えて向かわなければ。焦燥が私の歩みを早める。
途端。
異様な臭気に鼻が劈かれる。こみ上げる吐き気に堪らず口を手で覆う。ひどいなこれは。安らぎの聖森には似つかわしくない不快感。生臭い錆びた匂いを、私は知っていた。
顔を上げた私が目にしたのは、辺り一面の緋色。妖精やら動物やらの屍体の血で染まり切った湖。血溜りの中で彼女は一人、___エリザベート・バートリーが裸体の肌に馴染ませる様に紅露を浴びていた。
私に背中を向けたまま、エリザベートは振り返る。
「あらあら、いけませんわ...xxxさん。寡婦とはいえ、女の湖水浴を覗くなんて。」
じっとりと湿った視線が、紅い瞳から放たれる。彼女の薄紅に覆われてた肌が、蝋の様に光沢を帯びている。
細身ながらも、豊満な果実の実った身体。艶かしい湾曲。その曲線をなぞるように水滴が伝う。
目の前には猟奇の光景が広がっているにも関わらず、私は唾を呑み込む。
「うふふ...xxxさん、どうかされましたの?」
掛けられた言葉が、耳を過るだけで、入らない。魂の奥底から、邪な欲望が煮える様に燻っている。その欲望が、脳天を突き抜け、粒子が駆け巡る様に、脳を支配する。
彼女の美しい身体と、笑みだけが、片隅の視界に、残響みたいにぐにゃりと歪んで___
気が付けばエリザベートの姿は何処にも無く、私だけが畔に取り残されていた。何だか、息が荒んでいる気がする...何だろう、この気分は。私は何をしにここへ...そうだ、体を清めるためにここへ赴いたのだ。
しかし、眼前には血に染まり切った湖。思わず苦い溜息が零れる。仕方がない、と独りごちりながらも汚れた湖に浸かる。私はこの時に初めて血水で足を清めたのだった。
真夜中の聖森。
昼間の動物たち鳴き声に代わってさざめく虫の音が不気味な雰囲気を醸し出していた。些かの眠気に鈍い頭。湖から吹く風が、少し寒い。
「お待ちしておりましたわ、xxxさん。」
声のする方に目を向けると、椅子に腰掛けたエリザベートの姿を月明かりが照らしていた。座った姿が普段と違って見えるのは、日傘を差していないからだろうか。いつもは差し込む傘の影がその美貌を隠しているが、月明かりに照らされる彼女の表情は冷淡たる美しさを湛えていた。
こんな時間に呼びだして、一体何の用だ。
「貴方のソウルを頂こうと思いまして、ね。昼間だと、他の方の目が憚るでしょう?」
女王たる、驕慢の態度を示す。
実際のところ、私はこの女を怪訝に思っていた。彼女の周りには常に不穏な噂が飛び交っている。例によってあの黒の裁判に追われているだとか。
だがそれ以前に、彼女と直面する度に私の魂が危険の兆しを感知するのだ。お互い、聖森に迷い込んだよしみで協力し合う関係にあるが、私はいつかこの女がとんでもない悪事を働くのではないかと常に用心していた。
そもそも、魂の蒐集家である彼女が、わざわざ私からソウルを供給する必要があるのだろうか?
「あら、薔薇の花がどんな養分を吸って生きていたとしても、薔薇は薔薇である以上自分の美しさを保たなければなりませんのよ?」
何を言うかと思ったら。世界に霧が充満してるこの期に及んで、彼女は自分の容貌の心配をしないと気が済まないというのか。その極端な自己陶酔は私にはとても理解しかねる。身勝手な理由で呼び出される私の身にもなってもらいたいものだ。
「それではxxxさんは真夜中の逢引がお望みでして?」
冗談じゃない。普通に考えて、人妻と懇ろな関係になったりでもしたら仲間たちの信用を失ってしまう。
「うふふ...貴方の仰る通り、冗談に過ぎませんわ。」
不敵に、彼女が微笑む。或いは、嘲笑的に。
一体、この女を何処まで信用して良いものか...
それでも、ソウル不足で魔獣に成り果てる者が多い中で、彼女を放って置く事は見捨てているのと同じだ。全く、『憐憫は魂の弱点である』とはよく言ったものだな。
やむなしに私は彼女のソウル供給の要求に応えてやる事にした。
私は普段仲間達にしている様に肉棒を露出させる。私に気があるのを見るとエリザべートは垂涎の色をしたまなざしを向ける。
彼女は徐に立ち上がると、衣装の胸元をはだけさせた。夜闇の中に彼女の豊満な果実の影がくっきりと浮かびあがる。月明かりに彼女の肌は蝋の白い輝きを放つ。その姿は何とも妖艶であった。
不可抗力に、私の陰茎は勃起してしまう。エリザベートは私の股ぐらの前に屈みこむと、手袋をはめたままそれを指先で弄り始めた。亀頭に絹の感触が伝うと竿に甘い刺激が走る。
「それじゃあ、早速いただきましょうかね...♡」
エリザベートは自らの胸を両手で持ち上げ、そのまま乳房で私の肉棒を挟み込んだ。ぬにゅり、と豊満な胸肉の間から亀頭が顔を覗かせる。挟み込む傍から、張りのある肌が肉棒を押し返して圧迫する。温柔な乳圧に思わず声が零れそうになる。悶える様に、大きく息を吐く。
「うふふ...♡そんなに我慢なさらなくてよくてよ?」
貴婦人に情けない姿を曝す訳にはいかない。
彼女は私と目を合わせながら、左右の乳肉を相互に動かして肉棒に擦り始めた。
「はぁ♡熱くてとっても硬くなってますわね...♡」
上下に扱くたびに、柔らかく甘い感触が肉棒を刺激する。肉棒に吸い付く肌が絡みついてくるようだ。乳房の弾力が竿を押し返す。
「もっと滑りを良くして差し上げますわね...♡れぇーーー...♡」
エリザベートの小さく窄めた口から、粘性の高い液体がたらと零れる。唾液が彼女の谷間を伝って、亀頭に絡みつく。生暖かい唾液に亀頭が覆われたのを見ると、エリザベートは両手でぎゅうっと胸を押し付けた。これまでない圧力に刺激が駆け巡る。強い力で肉棒を挟み込んだ乳房は、今度は亀頭までも覆われてしまう。
再び彼女は肉棒を擦りつけ始めた。唾液でぬかるんだ乳穴に擦れる度竿全体に粘液が塗りたくられる。乳房も竿も湿りきると、彼女はパイズリのスピードを一気に早める。リズミカルに押し寄せる快楽が先とは比べ物にならないほど気持ちがいい。
「はぁっ...んんっ......♡」
エリザベートが甘い声を漏らす。彼女は肉棒を上下に扱くのに合わせて、自らの乳首を指に挟んで弄っている。みるみると、彼女の乳頭がぷっくり隆起していく。
乳が擦りつけられるほどにどんどん肉棒に密着して射精を促そうとしてくる。彼女の潤滑油か、それとも私のカウパーか、最早判別が付かないほどに彼女の胸の中で混ざりあっている。粘液の坩堝の中で私の陰茎がビクン、と跳ねる。このまま爆発してしまう。
だが、私の陰茎がうねったのを合図にしたかの様に、エリザベートの奉仕が止まる。
爆発寸前だった陰茎から、徐々に快感の波が引いてゆく。達せなかったもどかしさが私の内で渦を巻く。
どうかしたのか?エリザベートに何かあったのかと、目を向けても、彼女は依然として私の目をじっとり見つめているだけで。
紅い瞳が私を見つめている。
紅い瞳が私を見つめている。
紅い瞳が私を見つめている。
あかいひとみが、私を
視界が歪んでゆく、残響の様に。興奮に醒めきっていた筈の眠気が鈍重さを増すのにも似た感覚。この朧げな感覚は、確か、昼間にも。
気付けば私はエリザベートに押し倒されていた。彼女がそのまま私の上に跨る。一体何のつもりだ。
「うふふ、言ったでしょう?『貴方の魂を頂く』と...♡」
細い指で私の胸板を撫でながら、彼女が言う。騎士が人妻とまぐわるなんて、そんなのあってはならない!
「あら、イケないことであるから犯すのではなくて?悪事と聞くと、わたくし夢中になってしまいますわ♪」
エリザベートを振り払おうと試みるも、なぜか指先一つ動かない。俺の身体に何をした。
「私は何も施していなくてよ?こうして組み敷かれるのがあなたの本望なのではなくて?」
抗おうとする意志も虚しく、先までに快楽を味わっていた私の肉棒は固く膨張したままだ。
エリザベートは身にまとっていた装束の一切を脱ぐと、私の陰茎目掛けて腰を下ろし、その秘裂へと挿入させた。
「xxxさん...♡はやく私のモノになって下まし♡」
恍惚の表情を浮かべる。彼女の膣は既にぐしょぐしょに濡れており私の侵入を容易く許してしまう。彼女の恥丘に、どんどん肉棒が呑み込まれてゆく。
「んはぁぁっ......♡あっんっ...♡とっても逞しいですわね...♡は、あぁん...♡わたくし...♡蕩けてしまいそう、ですわ...♡」
エリザベートの巧みな腰捌きに甘い快楽が押し寄せる。腰の上で踊る彼女の姿は艶麗でであった。彼女の動きに合わせて膨よかな乳房がゆさゆさと揺れる。ヒダが肉棒に絡みつく度に、愛液が溢れるように陰門から零れる。腰が大きくグラインドすると、膣壁が亀頭まで纏わりついてくる。キュウと吸い付いたまま、私の陰茎は再びビクンと跳ねる。堰を切られた欲望が迸り、思考が白く滲んでいく。
「はぁん...♡ああ...♡いいですわっ...♡貴方のおちんちん、凄く素敵...♡...んんっ...♡」
普段は貞淑に振る舞う彼女が獣のように快楽を貪る姿に思わず唆られてしまう。いつしか私は彼女の扇情的な姿に魅了されていた。
「はっ...んんっ!♡はぁぁ...♡ xxxさん...♡わたくしにっ...んんっ♡...接吻してくださいまし...♡」
物欲しそうに上気した視線でエリザベートが此方を見下ろす。
私は仰向けの姿勢から彼女と結合したまま上体を起こす。エリザベートが肩に抱き付くと、二人の距離が一気に近くなる。彼女の紅潮した頬も、つぶらな瞳も。すぐ目の前にある。汗の仄かな香りが鼻をくすぐる。
彼女に求められたままに、私は彼女の薄く開いた唇にむしゃぶりついた。
「ちゅ、る...んふ、れぷぅ...♡んちゅぅ...♡♡んんっ...♡」
欲望のままに、彼女の偽り塗れの喉舌ごと、絡めて嘗め回す。負けず劣らず彼女も私の口の中に無理くり舌を入れ込む。引く事を知らずに、私達は互いに互いを侵犯し合う。口内で繰り広げられる、小さな戦争。
エリザベートとディープキスを交わしたまま、私は腰を打ち付ける。彼女は下のの口でも貪欲に締め付けてきた。
激しい快楽に脱力してしまったエリザベートが私に身を預ける。伴って、彼女の胸が私に押し当てられる。私は彼女の肩の稜線を、鎖骨の窪みを、愛撫する。流れる様に私は彼女の乳房を乳腺に沿ってなぞる。男の掌からも零れる、身の程知らずな巨乳を淡く揉みしだく。
「んんっ♡ちゅ、んむっ...!♡」
絡みあっていた彼女の舌筋が一瞬力む。
その瞬間。
ガリと、舌先に鈍い痛みが走る。思わず私は彼女から唇を引きはがす。運命を結ぶみたいに血の色をした赤い糸が二人の間を繋ぐ。
今、この女は俺の舌に噛みついてきたのか?エリザベートの唇の隙間から吸いきれなかった血が零れていた。
「ああぁ...♡美味しい...♡ うふふ、xxxさんの血、もっと私に下さいな♪...♡」
私の口から滴る血を吸おうとエリザベートが舌吻する。
「ちゅ、ちゅる...♡くちゅ...♡ん、れる...っぷは、ぁ...♡♡」
傷に触れる度にジンと痛むがその刺激さえ心地よく思えた。血の香りに別の興奮も高まってくる。
そのまま私は彼女の背中に手を回して抱きしめる。撓る様な背部に程よく引き締まった細い腰。きっと、彼女の華奢な背中は、何も知らないでいる。己の犯した罪も、悔恨の十字も。この小さな背中は、背負う事を、苛む事を知らない。地獄も、神さえも、この女の眼中には留まらないのだ。彼女の身体の穢れの無い唯一の清純の領域を、そして彼女の傲慢を体現した背中を、欲望のままに撫でまわす。張りのある柔肉の肌が彼女が身を捩る度に私の掌の中で踊る。私が腰を突き上げると、彼女の腰筋が強張るのが直に伝わった。
「あぁっ♡はぁぁっ...♡ふぅ...んんぅっ...♡」
押し寄せる快楽の波に任せたまま、彼女と僕の魂が蕩けて溶け合っていく。膣壁を擦り着ける度に、ドロドロと、塗り潰される。赤く、白く、赤く、黒く、穢れてゆく。私の肉棒が彼女を侵略している筈が、気付けば私の魂が彼女の黒い穢れを孕もうとしていた。私が私でなくなっていく。彼女に、塗り潰されてしまう。頭では理解っていても、愚かにも貪欲に悦楽を求め続ける腰が意思とは乖離して暴れてしまう。欠片程も無い理性が示す拒絶の意と反して脳髄を支配する快楽に、背徳感が唆られている。最早腰を打ち付けているのか、それとも浮いて震えているのか、判別が付かなくなっていた。
「んんっ♡♡っんぁぁ......♡はっ...はぁっ...♡...xxxさ、んんっ...!♡」
快楽の中で互いの名を呼び合い、存在を確かなものへとしていく。彼女の名を重ねる程に、私の中に秘めていた悪徳が情欲の熱の燻りを栄えさせる。私の魂そのものが、彼女から放たれる厄涜のリビドーを求めていた。
「んぁう♡あぁん.....♡はあぁぁっ...♡あんっ...♡あぁんっ!♡ん、ふっ...♡んあぁん!♡激しいです、わっ......!♡」
ぎゅうと何度も何度も締め付けてくる柔肉。彼女を通じてどんどん快感が込みあがるのを感じる。快楽が出口を求めて下半身を駆け巡る。ビクビクと肉棒が脈動する。
「はぁぁんぅっ...♡あら...っ?♡そろそろ、果ててしまいますの...?♡うふふ......♡いいですわよ♡♡思う存
分たっぷり中に射精してくださいまし...♡」
子宮口が亀頭に吸い付いて、射精を受け入れようとしている。私は熱く震えた陰茎を彼女の最奥に貫くと、思い切り欲望の塊を放出させる。
「あぁっ♡ぁううんんぅぅっ!♡♡♡」
溢れる。溢れて、溢れて、私の器から、際限の無い快楽の生気が、彼女に注がれてゆく。彼女と混ざり合って、穢れた私の魂が、捕食されている様だった。
果てても尚、ソウルを求めて締め付けてくる蜜壺から、半ば無理矢理に、陰茎を引き抜くと、卑猥な音と共に、彼女との醜行の証が、陰門から垂れ流されていた。
「はぁぁぁんんぅ...♡うふふ.....久々にはしたなく乱れてしまいましたわね......♡...xxxさん...?♡ また一緒に交わってくださいましね...♡」
火照った彼女が私を見つめている。紅潮した頬よりも、ずっと、紅い色をした目が、私を。紅い。彼女がこれまでに屠った者たちの血が。彼女の瞳の中、佇んだ侭に眠っていた。エリザベートの瞳。私はそのとき血が生きている事を知ったのだ。動物が生きるのは、心臓が脈動するからなどではなく、血が、流れているからなのだ。命をたらしめるものは、血であり、私の思考する脳も、自在に動く手足も、唯の、生命のカリカチュアでしかない。血だけだ、生きているのは。エリザベートの中で、眠る様に、生きている。
一体、私の血は、何色に流れているのだろうか。
この世界に不死として在り続ける私。ここでは、私だけが、血の代わりに、死が眠っている。其れは、呪いなのか、祝福なのか。私は、血なのだ。エリザベート・バートリーの、或いは、世界の。
エリザベートと過ごした不埒な夜以降、私は言葉にもし難い程の悪徳の限りを尽くしていた。自然なり国家なり公衆なりによって形成された規範を侵し破る事で、いとも容易く他者の魂の真髄を垣間見ることが出来る。穢れた魂の血の香りは如何なる時も私に悦をもたらすのだ。最早、私にとっての罪悪の重さなど快楽に耽溺するための材料に過ぎなかった。
堕落は快楽の薬味だ。堕落がなければ快楽はその瑞々しさを失ってしまう。限度を超さない快楽など、快楽とは呼ばない。
今頃は黒の裁判が私を処刑するために、国中を探し回ってるだろう。
ジャンヌもカタリナもいつからか森から姿を消していた。たった二人でロストエンパイア城に向かったのだろうか。何が出来る訳でもあるまいに。聖女達の誠実さが、いかに美徳が哀れで愚かしくあるかを物語っていた。
聖森は厭に静かだ。鳥も虫ももう鳴くことはない。残されたのは、篝火と、腐った血で黒ずんだ湖。そして、私と、彼女。
「うふふ、爛れた世界の中で穢れ切ったxxxさんの魂がどれだけ美味であるか、想像しただけで舞い上がってしまいますわ♪」
冷たい、冷たい、微笑み。血の様に、緋色をした眼。
私の魂に、血が、凝血が、錆びついている。倒錯に蝕まれた、私の魂。
「もちろん、貴方は自堕落きわまる悪徳のうちで、永遠に生きることをわたくしに誓って下さいますわよね?」
罪に落ちぶれた私を神が赦したとしても、エリザベートの眼窩が私が堕落の道から逃れる事を許さない。
赤よりも紅く煌く瞳に。
私は、怯えているのだろうか。
血はその中に生命のある故によりて贖罪を成す者なればなり
汝らのうち何人も血を食らうべからず