【期間限定】魔鍵師育成学校N・T・R~爆乳美女たちを寝取ってハーレムを築く〜(未完) 作:ハルカ
「オラァ!」
シルビィの腕甲に包まれた拳が放たれ、空を切りながらもう片方の拳がすかさず叩き込まれる。
「ゼァッ!」
その刹那を狗郎は見切りながら、紙一重で避けて逆手に構えた打刀を振るって受け流していく。
二種類の鋼が削れ合い、擦れ合いながら火花を散らしていくと、返す刃がシルビィへと向かって放たれる。刃に纏わりついた仄かな緋色が軌跡を描き、横薙ぎの一閃が拳に弾かれ、ギャリンッと試合場に殺伐とした音を響かせた。
だが二人とも止まることは無い。
シルビィが拳を弾かれれば、脚甲を纏わせた鋭い蹴りで狗郎の刀を弾き返した。
そこから始まるのは 荒々しく、敵を削り倒し、殴り潰すことに特化した獣のラッシュだ。一つ一つが重く、隙も無く組み立てられた連撃は洗練されており、並大抵な反射速度と技術では捌くことも難しい。
「ッ、これは、見事だな」
「オラオラオラァ! まだまだ行くぜ!」
一つ、二つ、三つと襲い掛かる拳と、鋭く空気を裂くしなやかな健脚が、ダウナーな美声と共に狗郎を追い詰めていく。これだけでも彼女が勝ち抜いている理由がよく分かった。
︎︎ 野性的ながらも、その拳には一定のリズムが存在し、入り混じった虚と実が先読みをさせないように滑り込んできた。
喧嘩闘法が、伝統と格式のある拳法と合わさって昇華された独特なリズムは、きっと並大抵の修練では会得できなかっただろう。
――それに、厄介なのはまだある……
︎︎ 袈裟に振るった打刀でシルビィの拳を受け流した狗郎は、ゆっくりと相手の分析を始めていた。彼女のラッシュに潜んだ凶悪な組み立てはもちろん、問題なのは、弾き、鍔迫り合い、受け流した刀から伝わってくる二種類の衝撃だった。
――最初は打撃……その後すぐに来るコレは……斬撃か……?
拳撃から伝わる不可視の衝撃は、少しずつ狗郎を圧していき、魔鍵態を削っていく。裂かれた頬からは赤い粒子が飛び散り、体内の法力が漏出していくことを知らせてきた。
単純に弾くだけでは徐々に削り取られて、先程の敗者のように地に伏せてしまうことだろう。
どうしたものか。そう思考をめぐらせて僅かに距離を取り、刀を正眼に構え直したその瞬間。
シルビィの姿が視界から消えた。
「しまった……っ」
「おせぇ!」
いや、厳密には消えたのではなく、視界のずっと下に潜り込んできたのだ。下へ、下へ。狗郎の膝より下になるまで体勢を低くしたシルビィが、ブレイクダンスの要領で肉感的な下半身を回転させて刀を弾きあげてきた。
生まれる隙は大きく、鳩尾を狙った蹴りが鋭い槍のように放たれる。必殺とも呼べる気の籠った蹴撃は、おそらく決着を狙ったものだったのだろう。
だがしかし、それは相手が狗郎でなかった場合の話だ。
思考がバチリと弾けた。
避けるのではなく、逆に体勢を前に倒してシルビィへと向かっていく。脚甲の鋼が肩を掠めて頭を蹴り飛ばそうとするが、側面に滑り込んできた刃がそれを阻害して火花を散らした。
空いた左腕でシルビィの筋肉質ながらも女性の柔さを持った脚を抱え込んだ狗郎は、そのまま距離を詰めて押し倒す。
「っ、このやろっ!」
悪態を吐くよりも先に、倒れたシルビィへと打刀が振るわれる。剣先がタイルをなぞりながら斬り上げられ、容赦なく彼女の頭を撥ねようと振るわれた。殺意が纏わりついた刃がシルビィの頬を裂いたが、回転しながら跳躍して避けられた。
その最中に放たれた蹴りは虚空を貫いたが、螺旋状に広がった不可視の斬撃が狗郎の身を僅かに裂いた。二人の間に距離が生まれる。
シルビィは頬から赤い粒子を滴らせ、深く呼吸をして両の拳を握りなおす。自分が攻め立てている立場であったにも関わらず、数秒にも満たない攻防で絶命を予感したのだ。僅かな油断も許されない、そこらの有象無象ではないのだと再認識し、獰猛な笑みと共に気を引き締める。
対して狗郎は、浅く傷ついた肩や腕の動きを確認しながら、トントンッと小さくステップを取った。落ち着き払った様子で息を吐き、刀を左右に振りながら変則的な脇構えを取った。手ごたえを感じたように笑みを浮かべると、ブーツでタイルを踏みしめて一気に駆け抜けていく。
軌道を読まれないためなのだろう。ジグザグに動き回り、右へ左へと視線を誘導していく。そんな狙いとは裏腹に、狗郎の姿をハッキリと捉えることは出来ず、僅かな幻影だけがシルビィの視界を掠めているだけだった。
「この、ちょこまかしやがって!」
「遅いぞ」
そう苛立ちを吐き出したシルビィが気づいたとき、狗郎が刀の間合いに入っていた。まるで先ほどのリプレイ。違う点と言えば立場が逆転しているところだ。
片手で振るわれた刃がシルビィの拳を弾き、間合いに踏み込んだままガードを開けていく。狗郎が刀を両手に持ち替えたのは、攻め込むという合図だ。
「ゼァッ――!」
横薙ぎに振るわれた刃が、三日月のような軌跡を描いてシルビィへと襲いかかった。交差した腕でガードしても無駄だった。軽々と弾かれ、僅かに身体が浮きながら胸元の淫肉がバルンッ♡と弾んだ。
そしてその隙は、先ほどの狗郎とは違い、大きな隙どころか致命的な隙へとなる。
「神裂一刀流、六車」
一つ息を吐いた狗郎が、自らの作り上げた刀法、人狩りの為の刃を放つ宣言をした。
下段に構えた打刀を振り上げ、放たれるのは六連続の斬撃。様々な角度から放たれる刃がシルビィを魔鍵態を切り裂き、一分の隙も無く止めまで運んでいく。
袈裟斬りから刃を返し、横薙ぎに腹部を一閃。三角形を描くように逆袈裟の斬り上げを叩き込めば、鍛えられたシルビィの身体から赤い粒子が噴出した。
「このっ、なめんなぁ!」
最後の抵抗とばかりにシルビィが拳を握り、残りの力を込めた打突を放った。だがもう遅い。速度だけの直線的な拳では、既にそれを見切った狗郎を捉えることなど出来ない。
円を描きながら振るった打刀が腕甲を纏った拳を斬り飛ばし、次いで剣先でタイルをなぞりながら打刀を斬り上げた。
これで五撃目、と短く息を吐いたときだ。
「なん、だと……」
狗郎が振るっていた打刀に亀裂が走り、半ばから圧し折れた。刀身が宙を舞い残ったのは柄と鍔、僅かに残った刃だけだ。
シルビィが口元に獰猛な笑みを浮かべ、残った方の拳を握る。片腕を失い、今にも魔鍵態が解除されそうなほどダメージを負っているが、一人を仕留めるには充分な余力が残っていた。
「これで、終いだぜ!」
螺旋状の斬撃を纏った拳が放たれる。打刀が折れたことへの驚愕で反応が遅れた。回避は不可能と悟るのにコンマ一秒もかからない。直撃すれば出力の差で押し切られてしまうだろう。
ならば、やるべきことは一つしかない。柄を逆手に持ち替えた狗郎は、より深く、至近距離へと踏み込んで残った刃を突き立てた。
「ああ、仕舞いだ」
螺旋状に斬撃を纏う拳撃と、淡々と確実に仕留めようとする刃。
互いの心臓部、魔鍵態を生成するコアの部分を狙った一撃が正しく中心部を捉えた。
シルビィの傷だらけな身体に、中心部から亀裂が広がっていく。
狗郎の洗練された肉体、その胸部に荒い穴が空いて崩れていく。
相打ちとはきっと、今のような戦いを言うのだと、二人の戦闘を見ていた者たちは頷いた。
それと共に、神裂狗郎という新参者が、一流と呼べるAランクの魔鍵師と引き分けたという事実に驚愕が流れる。
もしも狗郎の装備が
そう思案し、期待する者も、一人や二人では無かった。
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「納得いかねえ! なんで訓練用魔鍵なんて使ってんだよ!」
「そんなことを言われてもなぁ……渡されたものがこれしかないんだ」
「なんだよそれ、ふざけんなぁ!」
控室に強制送還された狗郎は、不完全燃焼といった様子で鼻息を荒くしたシルビィの襲撃を受けていた。いや、襲撃と言うほど物騒ではない。ただ単純に、先ほどの戦闘における不公平さに苛立っているのを我慢できなかったようだ。
戦闘の最後、狗郎の打刀が砕けたのは、正規品よりランクがずっと落ちる訓練用だったためだ。逆にシルビィの魔鍵は、彼女専用に整備が施されたもので、性能差は歴然だった。
「ふざけんなと言われても……なぁ?」
故障したのか、破損してしまったのか、うんともすんとも言わなくなってしまった魔鍵に首を傾げていると、部屋にいたもう一人、マリナが深く溜息を吐いた。腕を組んで乳肉を持ち上げたような体勢になっていた彼女が、呆れたように近づいて狗郎から魔鍵を取り上げた。
「私はいきなりA級と戦うなんて思わなかったんだよ! 訓練用ってさっき言ったよね、私!」
「言って……たか?」
マリナが呆れと怒りを綯い交ぜにしたような声音で叱ってくる。狗郎に言われた記憶は無いのだが、実際のところ、魔鍵を使えるとはしゃいでいた彼が聞いていなかっただけだ。
シルビィとの戦いに向かう前にも引き留めようとしていたのはそれが理由である。
「まぁ、その……すまんな。また今度相手をするから、今日は引き分け……いや、俺の負けということにしておいてくれ」
「ざけんな、ノーカンだノーカン! 正規品が手に入ってから仕切り直しに決まってんだろ」
舌打ち混じりにシルビィが狗郎の提案を断る。そこは彼女にも意地があったのだろう。戦士として、拳闘家として無闇に勝ち星を譲られるようなことは、きっと屈辱以外の何物でもない。
それを剣客として思い出した狗郎は、僅かな申し訳なさを覚えながらシルビィへと大袈裟に手を差しのべる。
「では改めて。君のような美しく強い女性と手合わせできた事を嬉しく思う。シルビィ、もし嫌でなければ、公私共にこれからも深い付き合いをしてはくれないか?」
「……………………は?」
「またやってるよ……」
シルビィが小さく間抜けな声を漏らし、マリナが額に手を当てながら溜息を吐く。戦闘開始前も同じように口説いてきたのは覚えているが、今度のはそれよりもさらに直球な口説き方をしてきていた。
どうにも手慣れた態度なのが癇に障り、シルビィは思わず差し出された手を弾いて舌打ちをする。
「わりぃけど、オレには強ぇ旦那がもういるんだよ。誘いになんかのってやんねぇぞ」
「……そうか、もし気が向いたら話を聞かせてくれ。単純に友人としての付き合いはしていきたい」
意外にも狗郎は食い下がることなく、少し残念そうに溜息を吐いた。改めて差し伸べられた手をシルビィが取り、軽く握手をする様子を隣で見ていたマリナは、予想外のことに驚いたような表情を浮かべている。
彼ならばもう少し口説き落とそうとすると踏んでいたのだが、どうやら引き際は弁えているようだ。
だが一点だけ訂正しなければいけないところがある。
「あ、言っておくけどシルビィ。彼はキミの旦那じゃないから。まだ誰のモノでもないから、そこらへんは覚えておいてよね」
「解ってるよ、会長。でも最後はオレの旦那になるけどな?」
マリナとシルビィの間に剣呑な空気が流れる。もしも視線に物理的な効力があれば、宙でバチバチと火花が散っていることだろう。牽制し合う二人を見た狗郎は何かを察したのだろう。ふむ、と小さく頷き、腕を組んで軽く考え込んだ。
「そうか……二人とも意中の相手がいるが、今は未だ深い仲には成っていない。そういうことで良いのかな?」
グサリと二人の心中に刃が突き立てられる。図星だったようだ。気まずそうに顔を顰めるマリナと、イラついた視線を向けてくるシルビィを交互に見ながら、狗郎は正解だったことを再認識し、それぞれ真逆な反応をする二人へと笑みを零した。
「それなら、少し手を出し過ぎるのはやめておこうか。気持ちを無理やり動かすのは無礼だからな」
変な男、というのが二人の率直な感想だった。
だがそれと同時に、面白い青年だという感想も生まれた。
改めてよろしく、と狗郎とシルビィは軽く握手をする。
友好的な笑みが零れた初めての瞬間だった。
中途半端なところで斬りましたが今回はここまで。
次回はエロ回か、それともストーリーか……