【期間限定】魔鍵師育成学校N・T・R~爆乳美女たちを寝取ってハーレムを築く〜(未完) 作:ハルカ
前回から人数を変更して、ジャックの部隊は男二人に女一人、という配分になりました。よろしくお願いします。
あれからというもの、狗郎は寮の自室に戻るのでも無ければ、訓練場でランク戦に挑むでもなく、ジャックが率いるリーパー隊三人の話を聞いていた。と言っても昼食を取って談笑しながらというような形だ。
「つまり、B級ランク戦で伸び悩んでいるから力を貸してほしい、と言うことでいいか?」
「うん……どうしても次のチームランク戦で勝って、上位に食い込みたいんだよ」
深刻そうな表情をしたジャックが頷く。少し長めな金髪の隙間から、自信なさげな瞳が揺れ動いている。隊長だと言う割には覇気がなく、不安げな雰囲気を隠すような気も無いようだ。気の弱い性格なのだろうかと、なぜか少し心配にもなってしまう。
「ったく、じゃあ、僕の方から説明しますよ」
「ああ、頼む。確か……慶喜、だったか」
暗い顔をしながら俯くジャックの隣で、須賀慶喜と言う名の青年が呆れたように笑って説明を始めてくれた。リーパー隊で狙撃手を担当している彼は、眼鏡の位置を整えながら知的な笑みを浮かべている。
彼が言うには、一か月後に魔鍵に関連した遺跡への調査が複数の民間機関合同で行われるらしい。それにジャックは、一身上の都合でどうしても参加がしたいのだが、条件としてA級からB級上位までの部隊しか同行が出来ない。
「それで、俺たちは今季のランク戦に賭けてるってわけだ」
「なるほど……それは今じゃなければいけないのか? 時期を先延ばしにすれば、俺を無理に引き入れようとしなくてもいいだろうに」
「いや、今回の、あの遺跡じゃないとダメなんだ!」
声を張ったのはジャックだ。必死な表情で、思い詰めていることが見ているだけでよく分かる。狗郎は少し驚きながら彼の言葉を待った。他の三人も同様だ。ここから先は隊長であるジャック自身が言わないと意味がない、と解っているのだろう。
「俺の、家族が……あの遺跡の周辺で行方不明になったんだ……」
「……そういうことか」
あの遺跡、というのは調査に行く遺跡のことだろう。どこからともなく突如として出現する。それが魔鍵に関連した遺跡だと教本には書いてあった。それに巻き込まれ、周辺の建物や人々が飲み込まれてしまうのも少なくないらしい。
ジャックの家族は、どうやらそれに巻き込まれたようだ。
「俺は、俺自身で家族を見つけ出したい。どんなに才能がないって言われても、無理だって言われても、俺はあの遺跡から弟と両親を見つけ出してやるんだ」
弱さや自信の無さは消え去っていた。ゆるぎない決意の光は、狗郎が何を言ったところで消え去ることは無いだろう。明確な目的を持ち、上に行こうとする人間の心を挫くことが難しいと、狗郎はよく理解していた。
記憶を失くしていても、それだけはよく分かった。
「だが、どうして俺なんだ? 今日来たばかりの不審な男よりも、個人ランク戦で上位にいる誰かを引き入れた方が良いだろう」
「ああ、それなんだけどね」
狗郎の疑問に答える声があった。ジャックの隣に座っている三つ編みの彼女は、やはりマリナやシルビィに負けず劣らずの美少女だった。穏やかな優等生といった雰囲気を纏ってはいるが、佇まいや歩き方からは高い実力を伺い知ることが出来る。
「リリィ、だったな。頼む」
「うん。とりあえず大きな理由が二つあってね。個人ランク戦で上位にいる人って、基本的に部隊入りしてるか絶対に部隊には入らないって人ばっかりなのよ」
丁寧な説明に狗郎は理解を深めていく。既に他部隊へ入ってしまっているのはもちろん、個人でのみ戦いたいと言うモノへも理解は出来る。戦士としての自分に自信を持っていたり、他人とのかかわりを断とうとする人間は、総じて我が強いものだ。
それを無理に引き入れようとしても、やはり不和が生まれることだろう。。
だが、その可能性は狗郎が入ったとしても過言ではない。
「で、二つ目の理由は……一昨日から出回ってるこの動画」
思案している狗郎に、リリィが支給された携帯端末を差し出してくる。画面に映っているのは、露出度の高い装備を身に纏い、両の拳を得物としながら疾駆する銀髪褐色の美女、シルビィと、それと相対する剣士、狗郎の姿だった。
つい先日、訓練用の魔鍵を用いて立ち会った時の映像だろう。
「訓練用魔鍵でB級上位のシルビィと相打ちになることが出来る。その強さを見込んでお願いしたいの。少なくとも、竜城より紳士的な感じがしたから」
「……最後の基準については何とも言えんが、そう言う理由か」
事情は理解した。納得も出来た。彼らにとって戦力の増強がどれだけ大事なのかも承知している。
狗郎が思案し、答えを迷い悩んでいる。彼らに手をかすことはやぶさかではない。特に断る理由が浮かび上がるわけでも、嫌悪感を覚えることもないのだから、容易く受け入れてしまえば良いはずだ。
「…………」
だが、即決の返事が喉の奥で突っかかって出てこない。理由は彼らが狗郎を勧誘したのと同じように二つある。
一つは、彼らが本当のことを言ってるのかという懸念だ。話だけを聞けば家族のために努力する隊長と、それをサポートする隊員という構図に見える。しかし、裏を返せばその構図はあまりにも出来過ぎているようにも見えた。
――俺に、何が出来る。
そしてもう一つは、今ここで彼らの未来を背負う自信が無い、というものだった。魔鍵師に成ろうと決めたのは罪悪感から逃れるためだ。だからと言って何をすればよいのかはなにも定まっていない。
その状態で彼らの信念に関わるのは、簡単に決めていいことではないだろう。
「少し、考えさせてくれ」
**********
一日のカリキュラムを終え、狗郎は寮の自室へと戻っていた。あの後、実技の訓練があったが内容はそこまで頭に入っていない。殆ど無心で課題をこなしていた。それも全て、ジャックが率いるリーパー隊の勧誘に応えるかどうか悩んでいたせいだ。
色々と思考を巡らせても上手くいかず、溜息ばかりが漏れ出てしまう。
「とりあえず判断材料が必要だな……ん?」
そうしながら自室に戻ると、ドア付近でマリナが誰かと言い合っているのが見えた。相手は眼鏡をかけた女子生徒だ。幼げながらも優秀そうな雰囲気を持ち、必死そうな眼差しで何かを訴えかけていた。
だがしかし、それをマリナは申し訳なさそうに誤魔化しているように見える。
「お願いします、生徒会に戻ってください! 会長が指揮を取らないと、遺跡調査もままならないんです! このままじゃ取り返しのつかないことになってしまいます!」
「っ、でも、私じゃなくても大丈夫だよ。きっと竜城くんとか、千空先生の方が良いと思うから。それに椎菜さんだってきっと」
「会長がいないとダメなんです! せめて、せめて次の遺跡調査だけでも……」
眼鏡の少女が縋りつくように瞳に涙を浮かべた。だがその思いも届かないのか、マリナは視線を逸らして黙り込んでいる。どうにも様子がおかしい。あんな風に懇願されるのも不可解な状況ではあるが、それを切って捨ててしまうマリナにも謎の違和感を覚えた。
思わず、といった感情を抑えきれなかった狗郎は、二人の間へと割って入った。
「すまん、一応そこでは俺も生活しているんだが、会話に入っても平気か?」
そう言われてしまえば、二人とも反応せざるを得なかった。マリナは驚いたように目を見開き、眼鏡の彼女は不審人物を見るかのように睨みつけてくる。
いや、実際に今の狗郎は不審者と呼ぶに相応しいだろう。女性二人の言い合いに割り込んでくる背丈のある男など、不審以外の何物でもない。
「……何なんですか、貴方は。少し席を外してくれませんか?」
「いや、今の君もマリナも冷静とは言えんだろう。後日にして落ち着いてからまた話し合った方がよさそうだ」
「そんなこと……いえ、そう、ですね……」
眼鏡の彼女は、ギリリと奥歯を噛み締めて眼鏡の位置を直した。冷静になってくれたのだろうか、上がるだけだった声音を小さくして良き、制服の襟を正して咳払いをする。そうして再び上げられた瞳には数舜前までの必死さは消え、落ちついたものへと変わっていた。
「その失礼しました。会長もお忙しい中、申し訳ございません。本日は、これで……」
「う、うん、ごめんね、椎菜さん」
椎菜と呼ばれた彼女は、マリナと狗郎に一礼して寮の廊下を歩いていった。突き当りで左に曲がり姿が見えなくなるのを確認した二人は、謎の気まずさを感じながら苦笑いを浮かべ合っている。同室での生活を始めた二人だが、思えば狗郎はマリナの背景ということをあまり知らない。
彼女がどんな関係を持っているのかも知らないのだ。
「あ、えっと……その……」
「……とりあえず、お茶でも入れようか?」
なんと説明しようか言いよどんでいるマリナに、出来るだけ柔らかい口調で微笑みかけた。人に歴史あり、とは言うがどうやら本当のことらしい。そこから生まれる様々な厄介事から逃げることは難しく、マリナもそれに苛まれている一人だ。
緑茶をマグカップに淹れた狗郎は、椅子に座って俯くマリナへと差し出す。
「さっきの彼女が言っていたのは……前線に復帰してほしい、という話だったようだが?」
「うん、まぁ、そうだね……」
僅かな沈黙の後、話を切り出したのは狗郎だった。俯き、視線を逸らすマリナでは自ら口を割るとは思えなかったせいだ。何事も無理矢理にさせるのは趣味ではないが、切っ掛けもないのでは話をすることも出来ない。
そうして再びの沈黙の後、マリナが言葉を紡いでいく。
「戦うことを望まれて、期待されて、それに応えながら私は歩いてきた。結局、椎菜さんも……みんなも、私が持ってる力にしか興味が無いんだよ。強くて、みんなを率いて、何でもこなす力のある私にしか、誰も必要とされてなかったんだよ」
でも、とマリナが区切る。すると狗郎は、僅かに彼女が纏っていた空気が変化したことに気が付く。本人も気が付いていないのだろうが、確実に雰囲気が変わり、瞳には仄かに桃色の光が宿っているように見える。
「おいマリナ、大丈夫か?」
『でも彼だけは違ったんだよ』
狗郎の問いかけを遮り、不気味な光を帯びた虚ろな瞳でマリナは語り始めた。出会った時の気高さや強さは感じられず、声にも自然さと言うモノが消えている。虚空を見つめて語る彼女は、まるで台本を読むだけの顔のない人形のようだった。
『彼は、壱馬くんは私の、私自身のことを望んでくれたんだ。戦わなくて良いって、強い私じゃなくて良いって言ってくれたんだ。だから私は会長として戦うのも止めて、前線にも立たない。それでも壱馬くんは私を認めてくれたから』
つらつらと、だらだらと淀みなく決められた台詞を読み上げていく。頬を赤らめ、表情を柔らかく崩していても張り付けたような歪さはそのままだ。ああ、これは良くない、と狗郎が危機感を覚えてしまうのも当たり前な話だった。
未だに壱馬への恋慕を口にするマリナの前で、両手を大きく叩く。猫だましの要領でパンッ、と破裂音が響けば、マリナはようやく正常になったようだ。
「っあ、えっと、ごめん、なんか変な気分になっちゃって……」
「ああ、そうみたいだな……」
本人も自分が不可解なことになっていると自覚しているようで、眉間に皺を寄せながらマグカップに注がれた緑茶を啜った。ボンヤリと熱に浮かされていた思考は次第に鮮明なものへと戻っていくが、想いが変わることは無かった。
マリナは、壱馬が言ってくれた通り、自分を大切にすると決めたのだ。
「だから、私は前線にも生徒会にも戻らないよって、椎菜さんにも言ったんだけどね」
「……だが、マリナがいないことで被害が出てると聞いたが?」
「私のせい、じゃないって思いたいかな……みんな優秀なんだから、私一人いないだけでダメになるなんて思えないよ」
「それは本心か? それとも、そう思いたいだけか?」
強めに投げかけられた狗郎の問いかけに、マリナは言葉を濁す。ハッキリとした答えが出来ない。それはきっと彼女が心に不和を抱え込んでいるからあろう。
少なくとも、狗郎が変異体に襲い掛かられていたあの日に見たマリナ・シードフィールドは、簡単に他者を切り捨てる人間ではない。
『でも、でも私は……誰かを守る道具じゃない! 彼は力だけを望んだりしなかった!』
再び三文芝居が始まる。段々と狗郎の中に苛立ちが募ってきた。
止めろ、と心中で吐き捨てる。それ以上、誰かが言わせたい言葉を吐かされるな。彼女の意思を捻じ曲げ、台本を読ませるようなことをするな。
ギリリと歯を喰いしばった狗郎は、マリナの頬へと手を添えて視線を向けさせる。
「力ある君も、誰かを守る君も、それはマリナ・シードフィールドだ」
瞳に宿った桃色の光が薄れる。だが消え去ることは無い。知ったことかと、狗郎はマリナへと顔を寄せて視線を合わせる。二人の距離が近づき、荒くなったマリナの吐息が感じ取れるほどになった。あと少し顔を寄せれば、唇同士が触れ合ってしまうだろう。
「っ、な、だって……そんなの……」
「それに皆は、マリナに力があるから頼るんじゃない。その力を正しく扱える、優しく気高いマリナ・シードフィールドだから頼りたくなるんだ。他の誰かじゃない、君自身じゃなきゃ、ダメなんだ」
圧倒的な力を持つ野生の獣には誰も頼らない。圧倒的な力を持ち、それを正しく扱える誰かに頼るのだ。マリナは誰も自分自身を見ていないと嘆いて、
それでもマリナに頼ってきたのだから、マリナを信頼していることは明白だった。
「もし、本心から前線に出たくないのなら、戦いたくないのならそれで良い。だが、竜城に言われたから戦わないのなら、もう一度考えてほしい。どうして君が、戦おうと思ったのかを」
**********
「で、結局のところ俺はこの部隊で何をすればいいんだ?」
翌日、狗郎はジャックの率いるリーパー隊と共にシミュレーター室へと来ていた。三人は呆気に取られたような表情をしており、魔鍵を展開した狗郎を見ている。前回の訓練用魔鍵とはだいぶ様相が変わり、ボディスーツの上からジャケットとスラックス、そして各所に僅かな装甲を纏った状態だ。
「えっと……と、とりあえずフォーメーションは慶喜が狙撃手で、俺が中距離射手、リリィが盾持ちの前衛、なんだけど……でも、なんで急に承諾してくれたんだ?」
ジャックが機関銃型の魔鍵を抱えながら答える。彼と慶喜は狗郎と同じような恰好をしているが、その隣で盾と短槍を装備しているリリィは、ピッタリとしたボディスーツに僅かな装甲を纏った過激な恰好をしている。
スレンダーで筋肉質な肢体が良く見え、やはり実力者なのだと佇まいで理解できた。
「そうだよね。昨日はあんまり乗り気じゃなかったし、てっきり断られるんだと思ってた」
「あ~、まぁ、そうだな。最初は半々だったんだが……」
リリィの相槌に、狗郎が視線を別へと向ける。そこにいるのはゲラゲラと笑っている魔鍵師の姿があった。構えている長剣は光輝き、個人ランク戦においてB級中位の魔鍵師を圧倒している。それは、マリナに戦わなくて良いと言った張本人、壱馬に他ならなかった。
「少し、話を聞きたい奴がいてな」
言葉では分からなくとも、斬り結べば理解できる。
そのために、狗郎は彼らに協力すると決めた。
マリナへ告げた言葉の真意を知るために。
今は戦おうと決めたのだ。
一途な善人同士の恋路は推したくなるけど「あ、こいつらはきっと幸せに成んないだろうなぁ」と確信したら全力でNTR。それがこの作品です。
今回は前者。
段々と彼女たちの歪さが見え隠れしてきた、かな?