皆殺しから始める現代戦国物語/敵家を潰し、報酬として美少女を奪い、喰らい、辱める 作:三流木青二斎
救世川家の地下室は全三層となっている。
第一層は懲罰房と大掛かりな玩具を用意した娯楽室。
第二層は救世川淡海が洗脳していた術師を幽閉する座敷牢や、救世川淡海が用意する爆弾人間を収納している隔離庫。
そして第三層……此処は、精神を病んだ非術師が棄てられる廃棄場であった。
女も男もこの廃棄場に捨てられ、地上から発生したゴミはダストボックスからこの廃棄場へと棄てられる。
精神を狂わせた非術師たちは、皆、このゴミを漁り、喰らう事で何とか餓えを凌いでいた。
当然ながら、この廃棄場にはトイレなど存在しない。
だから、部屋の隅に糞尿を垂れ流している。
隅には、唯一の下水管があり、其処に排せつ物が流れる様になっていた。
暗闇に満たされた廃棄場。
唯一抜きん出ている事があるとすれば、上部の救世川屋敷よりも広い事だろう。
元々は、この第三層は地下闘技場として作られたものだった。
同盟の術師たちが集い、鍛錬と称して術を交える。
十年前には少なくともその様なイベントは存在していた。
だが十年前。
救世川家による略奪行為により、前宿主は絶命。
この屋敷が救世川家のモノになった時、この地下闘技場は精神破綻者の隔離施設と化した。
元々は、精神異常を齎した者は即座に処分していた。
しかし救世川家に、淡海が加入した事で人間は殺さずに隔離と言う方針に決まった。
救世川淡海。血を操る術師。彼の血を交えた人間は血を爆ぜる爆弾となる。
大幅な戦力になる分、救世川太歳も彼を優遇していたのだ。
基本的に、この救世川家地下室第三層に足を踏み入れる者は救世川淡海くらいのものだった。
地上では儀式当日。
既に、多くの術師が集まっていた。
だがこの日、その儀式に参加しない者が居た。
廃棄場に続く扉を開く。
腰に刀を携える、白葱を暗喩される術師が登場した。
救世川寂弦である。
室内で満たされた異臭を嗅いで苛立ちを覚える。
異変に気が付いたのは、扉の前で座っていた男性だった。
彼は自食症を患っていて、自らの爪は指の皮を齧ってボロボロだった。
この廃棄場に落ちてからと言うもの、最早足を使って移動する事も無いので、足指が欠けていたり、脹脛が抉れている。
他にも、人肉趣味の者も居た。
地上から落ちて来る人間は、この扉を通って来る。
何時もはお付きの黒マスクが居るが、その人間は食べてはならないと本能的に理解していた。
だから、腰に刀を佩いている男が一人だけやって来た事に、これは食べても良いもの、と人肉趣味は思った。
既に屍と化した女の太腿を齧っていた人肉趣味は、ひび割れた唇を真横に引いて、唇から血を流しながら笑う。
そして、救世川寂弦の元へと走り出して、その新鮮な肉を喰らう為に両手を広げた。
「糞が……」
救世川寂弦は柄を強く握り締めると、刀を抜刀する。
異臭が十万する空気を切り裂いて、此方へと接近していた人肉趣味の体を真っ二つにした。
そして斬撃の余波は後方で固まる非術師の群れに接触して、腕が切断して地面に落ちる。
「うあああああああ、ああああああッ」
サイレンの様な声が響く。
下水溝から流れる水の音以外、この地下施設には音が無い。
だから異質な声に誰もが反応した。
この廃棄場で異変が起こっていると。
「糞がッ……クソどもがァ!!」
怒り狂う救世川寂弦。
彼がこの廃棄場に来たのは、行き場のない怒りを鎮める為である。
本日を以て、新しい救世川家の代替わりが行われる。
三代目救世川家棟梁は救世川生類となるのだ。
これは、自分を除く救世川家の総意であり、此処で反感し救世川生類を討ち、自身が襲名したと言っても誰もついては来ないだろう。
だから現状は指を咥えてみている事しか出来ない。
それが彼の心を荒ませた。
誰に対してこの感情を吐き出せば良いのか分からず、武力を振るう為に、廃棄場へと足を運んだ。
此処には落伍者に溢れている。
虐殺をしても、誰も文句など言わないだろうと思った。
「おやめくださいっ! おやめくださぎゃッ」
だから斬る。
涙を流して懇願する中年の女性を殺す。
「うーっ! うううっ!」
牙を剥き反抗の意志を見せる禿げた男を斬首する。
「……」
無抵抗な人間ですら、彼は蹴り倒して何度も何度も突き刺す。
刀が血で汚れ、切れ味が悪くなる。
「お助けをッ! どうか、どうかぁ!!」
落伍者の群れが隅で固まる。
刀を振る。術式を開放する。
斬撃が飛ぶ。位置は腹部であり、大根の輪切りの如く落伍者の群れ諸共真っ二つにする。
「やあめろぉお!!」
叫び突進する者も居た。
手に握り締める人間の脊髄を振り上げる。
刀で受ける。
「ッ儂の刀がッ」
酷使し続けて来た刀身が半ばで折れた。
折角の鬱憤晴らしなのに、刀が破壊され余計に激怒する。
男の腹部を蹴り上げて距離を取ると術式を使い、斬撃を上から下へと落とす。
鈍色の軌跡を描く斬撃が男を切断した。
「殺してくれるッ! 此処に居る奴ら、全員ッ!」
叫ぶ。
最早、餓鬼道の餓鬼を殺す悪鬼と化した。
悉くを皆殺しにした末に、救世川寂弦は肩で息をしながら周囲を見回す。
血だ。地面は血で溢れている。
吐気を催す異臭が、鉄の臭いで満たされていた。
「ぐぅ……ふ、うっ……」
血の香りを嗅いで、救世川寂弦はようやく冷静さを取り戻す。
まったくもって無駄な行動をしたものだ。
救世川寂弦はそう思いながら刀を振る。
無銘ではあるが、一流の剣ではあった。
刀身の半ばで折れている以上は修復は不可能。
刀を投げ捨て、救世川寂弦は廃棄場から出ていく。
多少疲れているのか、廃棄場を止める鍵をする事を忘れ、地上へと登って行った。
地上では儀式の準備が行われている。
大広間には、黒装束を着込んだ術師たちが集っている。
本日限りではあるが非術師の者らもきちんとした衣装を与えられた。
紫もまた着物であった。救世川寂弦が着物の衿に手を突っ込み、少女の育ち盛りの乳房を揉んでいる。
大広間へと入って来るのは伏木羽家当主・伏木羽六朗、及びその配下の術師。
更に歩衛家当主・歩衛清七含める配下の術師。
大広間には、述べ20名程の術師たちで溢れ返っていた。
しかし、凰母家代表・凰母万仲の姿、及びその配下の術師の姿が見えない。
電話番に話を聞くが、音信不通であり儀式の時間は一向に迫っている。
「何をしているのか」
救世川生類は額を掻きながら苛立ちが募る声を漏らす。
折角の晴れ舞台、出来る事ならば完璧に儀式を完遂させたいと思っている。
対して救世川太歳は欠伸をしていた。
早々にこの退屈な儀式を終わらせたいと思っていた。
「仕方が無い、凰母家は参加せず始める事としよう」
救世川太歳がそう告げると救世川生類は首を横に振る。
「儀式は重要だ。同盟者も参加しなければならない」
「別に良いだろう、人がいるかどうかが重要ではないのだ。儀式を行い、正式に継承する事こそが重要だろう」
手を叩き、急かす。
一刻も早く、この儀式から解放されたいらしい。
「ほれ、始めよう、儀式を」
早々に終わらせて、また紫の女体に溺れたかった。
その証拠に、紫に近づいては悪戯をしている。
「(好都合です……此方も早めに決着をつけたい)」
紫も、汚らわしい手で見ながら救世川太歳を見る。
戦略の内容はこうだ。
救世川家儀式の最中に、予め手を付けておいた伏木羽六朗、歩衛清七が同盟を破り、救世川家の重要人物を討伐する。
その後、伏木羽家と歩衛家と凰母家の三家が、救世川家の財産を争い同士討ちを謀らせる。
そして残る紫が一人勝ちをする。
「(この日の為に、あの三人には念入りに私の性技で悦ばせた……最早、私が居なければ生きていけない程に……)」
彼女の術式と肉体の虜になっている三人は、喉から手が出る程に紫を欲しがっているだろう。
紫には自身があった。
それは、大人たちの玩具にされて、ぐちゃぐちゃにされながらも必死に男の悦ばせ方を覚えたのだ。
自分の技術と術式を使い、精神すら擦り削って作戦を決行した。
必ず成功する、いや、しなければならない。
紫の野心が心の内から漏れて燃え盛っていた。
「一つ」
手を挙げる。
それは伏木羽六朗だった。
唐突な挙手に誰もが目を向ける。
救世川太歳も紫も目を見る。
老いた人間とは思えない生に溢れた目だった。
伏木羽六朗は紫を指差した。
「その女に諭された。救世川家を滅亡せよと」
辺りが鎮まる。
休息に、熱が冷めていく紫。
老人が一体、何を口にしているのか分からない様子だった。
「どういう事だ?」
救世川太歳が紫の方を見た。
紫は驚きのあまり頭の中が真っ白になって何も答えない。
代わりに、伏木羽六朗が答えた。
「夜な夜な、この娘は儂を呼びつけては篭絡してきたのだ。コスい手を考えおる。歩衛家と凰母家と手を結んで救世川家を討伐せよとな。なぁ、清七殿」
そう言われて、歩衛清七は首を縦に振った。
「無論、言われた。が、それを実行する程に愚かではない」
歩衛清七はそう言う他無かった。
奇襲と言う手を使う以上、ぎりぎりまでその内容を知られてはならない。
だが、伏木羽六朗の唐突の裏切り、そしてその口ぶりからして、同盟三家は裏切って無い事を示唆している。
もしも首を横にでも振れば、即座に同盟破棄、敵となる。
救世川家と伏木羽家の両名から逃れる程、歩衛清七は傲慢な性格では無かった。
「(何故、何故その様な事を、一体、あの老人は、あのおいぼれは、何を考えているのか、どうして、なにを、間違えた? 何を、私は、いや、何も間違えて無い筈、ちゃんと、ちゃんとおねだりも、甘える事もした、徹底してやってみせた、香りが足りなかった? もっと依存させておけば……なぜ、なぜ)」
思考を張り巡らせる紫は脳内で堂々巡りを続け、不意に殺気を感じ取った。
真横から拳が飛んでくる。それを避ける事無く、彼女の白き頬を殴る。
殴ったのは救世川太歳だった。
「き、さ、ま、ぁ!!」
小さな体が畳の上に叩きつけられる。
その上に跨り、救世川太歳が細い首に手を添えて強く締めた。
「ぐ、ぁッはッ」
顔を真っ赤にして、紫は悶えた。
「わ、わしを、わしを謀りおったのかッ! 常に、常に目を掛けていたこの儂をォ!! この売女めがァ!」
顔がだんだんと蒼褪めていく。
息が出来なくなって、紫は苦しみのあまり失禁した。
じょろじょろと、下着を濡らして黄金色の体液が畳にシミを作る。
「太歳様……太歳様ッ!!」
死に絶えそうだった紫を救ったのは、救世川生類だった。
押し倒されて転ぶ救世川太歳、喉に手を添えながら紫は大きく息を吸って咳き込んだ。
「おい、捕えろ」
救世川生類がそう命令すると、従士たちが紫の体を拘束した。
「残念ですが、是より儀式を始める所、神聖な場に血は似合いませぬ……どうか、殺めるのならば儀式を終えた後で」
救世川生類が言う。
伏木羽六朗は立ち上がり、救世川生類に頭を下げた。
「申し訳ありませぬ、早く、お耳に伝えておけば良かったものを」
「そうだ、と言いたいが、あの娘を出し抜く為にしたのだろう」
救世川生類は伏木羽六朗を許す。
もしも、別の場で言った所で、後で両家に伺ってもしらを切られる。
紫を問い詰めても、救世川太歳がそんなはずがないと問題を不問にしただろう。
「そして……あの娘の処分ではありますが……どうか、この伏木羽六朗に任せては如何でしょうか?」
「……あぁ」
爛々とした瞳を見てようやく合点が言った。
つまる話、この老人は両方を取ったのだ。
救世川家との良縁を結びつつ、あの娘、紫を我が物にする方法を取った。
出来た話である、冷めた目線を向けながら、救世川生類は首を横に振る。
「処遇について後で決めましょう」
「ぐふふ、良い返事を期待しておりますぞ」
そう言って伏木羽六朗が離れる。
救世川生類は、紫を捉える従士に耳打ちした。
「……その女は地下に送り、殺せ。この家にとって、厄しか運ばん」
と、そう告げるのだった。
その声を聞いた紫は、自らの死が迫っている事を知り、暴れ出した。
「離してッ離せっ! なんで、なんでっ! わたしが、わたしがこんな目にッ! 悪いのは、悪いのはあいつらの方なのに、っととさまも、ははさまもっ! 全部全部、こいつらが殺したせいなのにっ! わたしが、何故、わたしが殺されなければっ! あぁあッ! いやだッ! 嫌だぁ!! ととさまぁ! かかさまぁ!! 誰でも、だれでもいいっ! ころしてっ! あいつを、こいつらを! いやぁああああ!!」
叫び声をあげながら広間から消えていく紫。
何故、自分だけがこの様な仕打ちを受けなければならないのか。
神も仏も、何故、私にこの様な不幸を与えるのか。
そう思い、そう嘆き、そう考えながら、彼女は地下室へと連行された。