皆殺しから始める現代戦国物語/敵家を潰し、報酬として美少女を奪い、喰らい、辱める 作:三流木青二斎
儀式は滞り無く進んでいた。
凰母家を除く二つの家系が見守る最中、救世川太歳と救世川生類が座っている。
二人の間では救世川淡海が書面を握り、継承の口上を述べていた。
「棟梁・救世川太歳殿、全てを統べ、統率する役割を救世川生類に継承し、棟梁の座を明け渡す事を誓うならば、血の契りを持ち、新たな門出を祝う事を、この場にて証明を」
差し出される針と証明書。
救世川太歳は気分を削がれていた。
紫と言う極上の性欲処理奴隷に裏切られ、気分が落ちていたのだ。
それでも、儀式を完遂しなければならないと言う頭は残っているらしい。
針で親指の皮を貫き血を流す。
指で証明書に押し付けると、血が付着した針を救世川生類に渡す。
それを受け取ると、迷う事無く救世川生類は親指に針を刺した。
「(これが終われば、救世川家は俺の所有物か……先代とは違い、不退転を貫く気は無くなった。この地を繁栄させ、次代に続く救世川の棟梁として生きなければならない)」
侵略よりも安寧を救世川生類は取っていた。
親指を証明書に押し付けようとした時だった。
「きゃああああッ!」
広間の奥から、悲鳴が聞こえて来た。
いや、それは断末魔に近かった。
その声に反応して、誰もが声のする方に顔を向ける。
「なんだ?」
救世川淘汰郎が反応する。
常に全裸である彼も、今日ばかりは着物を着用していた。
とことこ、びちゃびちゃ。
歩く音と、水溜まりを跳ねる音が聞こえた。
障子張りの戸には小さな姿をした子供の様な影が出来ていた。
ばん。と。
障子を割って、子供の手が見えた。
両手は血に染まっている。
見れば、手には牙の様なものが生えていた。
両手の五指がわきわきと動いて、「あはは」と、笑い声が響く。
すると、ばん、ばんばん。と障子を手当たり次第に割っていく。
障子を割る事が、面白いのだろう。
笑い声が絶えず、その行動は逆に、広間に居る人間を不気味な感情を過らせた。
「なんだ、誰だッ!」
声を荒げる。
戸がばたりと倒れた。
腰に着物の断片を羽織る、体を血で濡らした子供の姿が其処にあった。
「おー……いるなぁ」
両手を広げて、広間の中に入っていく。
後ろに座っていた術師が子供を静止しようと肩に触れる。
「貴様、止まれ、今は儀式の最中だぞえあ?」
肩に触れていた手が、消えていた。
消失していた。いや、掌には、齧り付いた様な痕が出来ている。
子供の肩には、牙が生えていた。その牙はもごもごと動いていた。
「俺の手……て、手がぁああ!?」
狂乱する男の顔を見て、子供は笑う。
「あはは、面白いなぁ……なー、あんたらぜんいん殺すからよぉ、楽しもうぜぇ」
そう笑った瞬間。
術師たちが立ち上がる。
先頭列に座っていた救世川烏賊助が術式を開放。
十六本の短ドスを抜刀すると、磁力操作によって術師たちの間を掻い潜り突き刺そうとする。
「ばりぁ」
手を翳す。
子供を突き刺そうとする短ドスの切っ先が彼に接触する寸前で止まった。
手を握る。短ドスは重力を増加されたように畳へと突き刺さった。
「あははぁ」
笑みを浮かべながら、術師たちが居るにも関わらず走り出す。
子供の異常さを感じ、思わず術師たちはその疾走を止める事無く道を譲ってしまう。
「(無能どもがッ)」
救世川淡海はそう思った。
「止まれ餓鬼ィ!」
道を遮るは救世川烏賊助だった。
短ドスを喪った今、彼の武器は自らの体のみだった。
洗脳されている救世川烏賊助は、最優先で他の救世川の血縁を守る様に作られている。
少年は救世川烏賊助の真正面に突っ込む。
腹部に彼の手が埋もれる。
直後に、烏賊助の皮膚が食われ、内臓、骨、肉、血、骨、皮を食い破り、烏賊助の腹に穴を空けた。
その穴から飛び出る彼は、真正面を見据えている。
救世川淡海が手を翳す。
彼は、即座に、この子供が尋常ならざる存在だと理解した。
この席に座る術師には『血胤』を持つ『血染者』である。
「(『
術師、非術師の命を使い、この子供を殺すべく、血の爆弾を発動する。
「ぶべらッ」「ぶぎゅっ」「えヴあッ」「ぎょえべッ」「じゅばぁッ!」
奇怪な声を漏らす人間爆弾たち。
しかしそれを愉しむ余裕はない。
咄嗟の判断ではあるが、最前列に座る術師や同盟者は爆弾にしなかった。
それは、同盟者だから、と言うワケではない。
爆弾の破片が救世川家に当たらぬ様に、体の良い肉壁にしたのだ。
「しゅッ」
更に肉壁の強度を上げるべく。
救世川淘汰郎が体液を分泌して最前席に座る術師たちに掛けた。
摩擦度を零にする彼の体液は、血の爆破から迫る肉片が体に突き刺さる事は無い。
爆破による周囲の部屋の崩壊。想定以上の威力に建物が崩壊する。
「(『
天井が迫る。
救世川生類は術式を開放。
彼の術式は星を作る。
石礫の如き飛来物を作り、それを操作。
接触すると、爆破の如き衝撃を発生させる隕石の術式。
天井に穴を空けるべく、『
激しい崩壊の音と共に建物が崩れていく。
土煙と共に、瓦礫を押し退けて立ち上がる男たちの姿がある。
救世川生類、救世川淡海、救世川太歳。
彼らは救世川生類の近くに居た為、『落火星』で穴を空けた為に無事であった。
瓦礫の山から出て来る三人の姿もあった。
一人は全てを滑らせる事が出来る救世川淘汰郎。
もう一人は、鋼の鎧に身を包む歩衛清七。
瓦礫を押し上げて出て来るのは、右腕が肥大化した伏木羽六朗。
当主たちは無事であった。
「どういう事じゃ、これは」
伏木羽六朗は目を充血させながら言う。
救世川淡海が視線を前に向けながら言った。
「あの餓鬼が脅威だった、殺される前に殺すべきだと判断した」
「テメェ、俺の兵隊を殺しやがったなッ!」
歩衛清七は鋼の鎧を解きながら言う。
鋼の鎧は砂と変わって地面に落ちていく。
「今はどうでも良い……自分の心配をしていろ」
救世川生類が手を伸ばす。
土煙が払われる。
其処に立つのは、瓦礫どころか、土煙すら彼に近づけない、ドーム状に展開された不可侵の領域。
廃棄場の怪物が其処に立っている。
「あぁ……なんだよ、面白いなぁ……こんなスゲェ事があるのかぁ……あぁ……広いなぁ……世界って奴はよぉ」
天を見上げていた。
曇天の空。今にでも振り出しそうな大空に、彼は感動していた。
地下しか知らなかった彼は、その世界の広さに興奮していたのだ。
灰色の髪を揺らす風、糞尿で汚れた身体は風を感じ取り、澄んだ空気が己の肺を満たしていく。
「ならば、世界の広さを知り、死の深さに溺れていろッ!」
先に仕掛けたのは救世川淘汰郎。
遠距離では、あの謎のバリアによって塞がれてしまう。
だから近距離での戦闘を仕掛けた。
その子供は十中八九術式を使用している。
だから、その術式を理解する為に近づいた。
救世川淘汰郎の体は攻撃力を皆無にする体液に濡れている。
物理である以上、全ての攻撃を受け流す事が可能なのだ。
「ッ!?」
だが、救世川淘汰郎は意表を突かれた。
彼の攻撃が彼に通ったのだ。
謎のバリアを張っていると思った。
けれどその腕は少年の体に触れている。
「ありがてぇなぁ……そっちから来てくれるなんてぇよぉ」
手を伸ばす。
救世川淘汰郎の攻撃は、少年にも効かない。
全身を濡らしている為に、摩擦が零であり、拳が深く突き刺さらないのだ。
だがそれは少年も同じだ。
救世川淘汰郎の全身潤滑には攻撃を与える事が出来ない。
絶対的な防御が彼を安全にしているのだ。
「っ?」
唐突に。
舌先が熱く感じた。
次の瞬間、全身が煮え滾る。
「ぐぉ、ば、ぁあああああッ!!」
ぐつぐつと、体中の酸素が出口を求めて体に穴を空ける。
眼球が潰れて、内臓は破裂しぺしゃんこになる。
一瞬で、救世川淘汰郎は死滅した。
「て、て、てて」
驚愕の声を漏らす。
それは、救世川太歳だった。
彼はその術式を見た事がある。
「天遇……貴様、貴様かッ! 貴様なのかッ! そんな、信じられんッあれが、あれがまだ……ッ、ひ、ひぃいい!!」
救世川太歳は、その子供に初代の姿を見た。
初代が生まれ変わったと錯覚し、狂乱しながら逃げる。
逃走する棟梁を見て、救世川生類は、その名前を反復させた。
「救世川……天遇。空印の使い手、だった筈だ」
救世川天遇。
その男は、空間を操作する事が出来る術師であった。
救世川淘汰郎が死亡したのは、空間内の酸素を操り、真空状態にしたのだろう。
真空状態では気圧がなくなり、体が破裂する。
そして水分は真空の中では沸騰してしまうのだ。
救世川生類は舌打ちをする。
「救世川家最強の男の術式を持つ者だ、奴は……ッ!」
そう断言した。
十年前。
救世川天遇は廃棄場と化した地下闘技場に棄てられた。
其処から、精神を兆した他の非術師や術師が棄てられた。
その中には、女が居た。
「あへあぁ……おんな、おんなぁ!」
白の髪を持つ女。
彼女は精神を壊して、心を喪った。
それでも、その廃棄場の中では一番美しかった。
高価な着物を腕の膂力で引き千切り、救世川天遇は、誰も触れたことのないであろう白桃の様にたわわな胸を、舌で舐め回す。
「んぢゅ、んっ……あぁッんめぇッ! おっぱいうめぇッ、乳、ミルクだせよぉ!」
乳房を強く握り締めながら、勃起した乳首に咬み付く。
母乳を求めた救世川天遇は、女を孕ます事にした。
着物を剥いで、ピンク色の乳輪を舌先で円を描く様に刺激させながら、防衛本能で濡らす彼女の割れ目に勃起した陰茎を突き刺す。
処女であったのだろう。
割れ目から血を流しているが、救世川天遇はそんな事関係なく腰を振った。
彼女も、それを黙って受け止めた。もとより、痛みを感じる心も無く、彼の凌辱をただ受け入れる。
「ミルクぅ……みるく欲しいよぉ……出せよぉッ、俺が出すからお前も出せよぉ!」
膨張した陰茎が白濁の体液を膣の奥へと勢い良く流れた。
痙攣する程の絶頂。快楽に溺れていた救世川天遇は、何度も何度も、その女を犯し続けた。
それが彼の正体だった。
本来ならば、術師の家系と言うものは、同じ血を宿す者たちを指す。
ただ、はぐれの者たちが集い、家系として名乗った救世川は、家系では無く集団と呼べるだろう。
救世川とは、家族になれぬ者たちの集い。
天遇も、太歳も、寂弦も、淘汰郎も、淡海も、生類も、烏賊助も。
彼らは、血の繋がらぬ赤の他人である。
その誰も彼もが、救世川を継ぐに相応しくは無い。
だが、例外が居るとすれば、彼だ。
彼だけが、初代救世川家の血を引き継いでいる。
正当な後継者が、其処に居る。
救世川の血を持つ者、名前は無い……
「だからどうした……」
救世川生類は歯軋りをしながら瓦礫の上を歩く。
「天遇の術式を持つからと言って、勝てぬ相手ではない」
救世川淡海が立ち上がる。
伏木羽六朗と、歩衛清七の方を見た。
「おい、お前ら」
そう淡海が二人に話し掛ける。
「なんだ……言っておくが、儂らには関係ないぞ」
「そうだ、ただ巻き込まれた、俺たちは帰らせて貰う」
憤りを覚え、自らの配下を殺された恨みを持ちながらも、その感情を押し殺してその場から離れようとする。
だが、救世川淡海はそれを許さない。
「馬鹿な事を言うんじゃねぇ……テメェらの駒が死んだ理由も分かんねぇのか?」
救世川淡海が指を向けた。
「毎週酒池肉林をしてやったのは、テメェらの体に俺の術式を混ぜ込む為さ……俺が手を動かせば……テメェらは死ぬ、破裂してな……」
驚愕の事実を聞いて、二人は目を丸くした。
今の今まで気が付いて無かったらしく、余計に、この二人の滑稽さを際立たせた。
「貴様ぁ! 儂らを脅すつもりかぁ!」
「脅しじゃねぇ、テメェらも戦えってんだよ……じゃねえと、内部から破裂させるぞ」
救世川淡海は怒っていた。
既に手駒は、地下室に眠る奴隷たちを使う他ない。
だが……その手駒は、既に救世川寂弦が滅ぼしていた。
手頃な駒は、最早この敷地内には存在しない。
脅された事で、二人は仕方なく戦う道を選ぶ他無かった。
「テメェらは奴を足止めしろ、その間に爆弾を補充する……そうすりゃ『血胤』をどうにかしてやるよ」
「ざけんな……クソ野郎どもが……こんな目に遭わせやがって……ッ」
歩衛清七は自分が利用されている事に怒りを覚える。
伏木羽六朗も怒っていた。
しかし、自分の命が可愛いものだ。救世川淡海の言葉に頷く他無かった。
「おい、生類、お前も来い、此処は危険だからな」
「あぁ……太歳様は、何処に行かれた?」
そう言いながらその場から離れていく。
伏木羽六朗と、歩衛清七が、彼と対峙する。
取り合えずは、この餓鬼を殺せばそれで終わるのだ。
そう信じているが、何処までも憐れだった。
ネタをバラした以上、救世川淡海は二人を生かす筈が無い。
もしも子供を倒す事が出来れば、二人は口封じの為に殺すのだ。