休憩所の聖域 2-A専用”女子トイレ" 作:jadenoshon
(やっとついた・・・)
回想の世界から戻ると、どうやらもう休憩所についていたみたいだ。
結局、バスの中では散々な目にあった。
それはみんなもおんなじだったに違いない。
お昼にがぶ飲みしたお茶は、容赦のないスピードでおしっこに変換されていき、加速度的に膀胱を圧迫してきた。
途中、凄まじい尿意で何度も心が折れそうになって、外の景色を見る作戦や、隣のななみとおしゃべり作戦、もういっそ寝ちゃえ作戦、
そのどれもがうまくいかなかった。
外の景色はいつまで経っても木々だけだし、ますますトイレが心配になる。
ななみはななみで、結構がまんがきついのか、いつもはあんなにおしゃべりなのに口数が少なくて、会話がぎこちなくなってしまう。
寝ようと試みれば、余計に尿意が意識に上がってくる。
(でも、みんなここで我慢してるんだな... 休憩所まで、頑張ろう!)
そう思うと、まだまだ我慢する力が湧いてくるように感じたんだっけ。
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先生からのお知らせに、明るいムードに戻った生徒たちは、休憩所につくなり、みんなに続いて、バスを降りる。
待ちに待った休憩、みんなそわそわとしながら、休憩所という場所には必ず付き物であるトイレを求めてバスを出ていく。
やっとおしっこできる。
そんな期待に溢れていることが、口に出してはいなくとも余裕で伺うことのできる安堵の表情で出て行った少女たちの声と顔が、次第に何故か悲痛なものになっていくのが感じられる。
次第に、期待に満ちた気持ちが、不安と焦りで塗り替えられていく。
(な、なに...?)
なにやらただならぬ雰囲気に、徐々に怖くなってくる。
(ひょっとして、ここのトイレもお昼の広場みたいに汚いとか...?)
お願い神様。それだけはありませんように。
すっかり曇ってしまった気持ちで、クラスメイトたちを追う。
「みんな〜 トイレがどうしたの〜」
背後から、まりん先生の呑気な声が聞こえてくる。
「先生!ここ、トイレがないんです!」
「この休憩所、おトイレないんですか...?」
悲痛な声が次々と訴えられる。
(え...? それ、本気で言ってる?)
背筋が一気にぞわっと寒くなる。
(トイレ... ないの?)
何事も自分の目で確かめてみなくては。
ぐいっとクラスメイトたちが集まっているところに体を寄せて、休憩所を見渡す。
あたり一面の緑の山道の中に、唐突に現れた休憩所。
バスが停めているところを出て、あたりを見渡すと、だだっ広い敷地に、自販機とボロいベンチと、何やら物置小屋のような古びた小さな小屋があるだけ。
「うそっ...!? もう我慢できないよ!」
「なんでこうなるの!?」
「信じらんない!」
次々に嘆きの声をあげるクラスメイトたち。
私だって信じられない。
何か目の錯覚だと思いたい。
しかし、何度目を擦っても、まばたきしても、ベンチ、自販機、小屋。
目に入るものはそれだけだ。それ以外には全て大自然。
そんなことってあるのかな。
散々我慢をしてきた末の、あんまりな仕打ちだ。
「どうしよう...?」
まりん先生も困り果てている様子だ。
「ひょっとしたら、この小屋の中にトイレがあるかも...?」
希望に縋りついたように出した独り言が、まりん先生の耳に入ったようだ。
「ここでおトイレ貸してもらえるかもしれないよ!それに、ここになくても、誰かいたら近くにトイレがあったら教えてくれるかもしれないよ!みんな、もうちょっと頑張って!」
そういうと、まりん先生は小屋の正面のボロい扉をノックする。
「すいませ〜ん。誰かいませんか〜?」
再びノック。
「すいませ〜〜ん!」
返事、なし。
それをクラスメイトたちが見守る。
まりん先生が小屋をノックするたびに、みんなの表情がどんどんと曇っていく。
「誰もいないみたい...」
先生自身も困り果ててる。
「もういいや、オレそのへんで立ちションするわ。」
そんな声が聞こえたかと思うと、数少ない男子生徒たちはみんな一斉に休憩所を出て行った。
きっと、その辺の山道で立ちションでもするんだろう。
「ほんと男子って、こういう時に得よね。」
りんかが愚痴を言っていた。
ゆきねも、去っていく男子たちの後ろ姿を恨めしげに見つめていた。
男子が羨ましい。
女子の場合、こうはいかない。
男子たちがいなくなると、まりん先生はもう一度ノックして、縋るようにノブをガチャガチャと捻る。
とはいえ、扉が開くはずもないのだが...
いや、開いた。
たしかに、開いた。
開いたのだ。
その瞬間、追い詰められた生徒たちと、その期待を背負い更なる焦りを感じていた先生に名案が浮かんだ。
「みんな...!!悪いけど、もう我慢できないでしょ? ここの持ち主さんには申し訳ないけど、どうしても我慢できない子は、ここをおトイレにして、ここの中でしちゃえばいいんじゃないかな...!?」
悪魔の提案をする先生。
たしかに、ちょちょっと済ませてしまえる男子と違い、女の子がおしっこをするにはプライバシーが確保される安全な空間が不可欠だ。
そして、だだっ広い空間が広がり、遮蔽物も小屋の裏のいういささか安全性に問題のある場所しかないこの休憩所において、この中でしちゃうというのは確かに合理的ではあるのだが...
「ちょっと待っててね!」
先生はすぐにバスに向かって走り去って行った。
「えっ...!?」
「それは...!?」
「流石にダメじゃない!?」
「で、でももう限界だよ...!?」
「私も、もう我慢できないよ!」
残された女の子たちはみんな困ったようにお互いに顔を見つめ合わせて言い合っている。
そこは、トイレと呼ぶにはあまりにも異質な空間。
たしかに、小屋の後ろにも茂みがあるとはいえ、完全に隠れられるわけでもなく、このだだっ広い場所でプライバシーを確保できる場所はこの小屋しかない。
とはいっても、である。
スカートを前押さえでもじもじしている子までいる始末なのに、誰もそこで用をたしたがらない。
本当はみんないますぐにでもその各々を苦しめている下腹部の違和感を、放出したくてしたくてたまらないはずなのに、罪悪感と、常識という枷がそれを踏みとどまらせる。
(限界...! もう漏れる...!)
そう思った矢先、パンツにじわっとした違和感を感じる。
(うそっ...!? 少し漏らしちゃった...!?)
これは本格的にマズイかもしれない。
膀胱を抑える筋肉が、我慢に次ぐ我慢のせいで、痛いというのを超えて段々と痺れて感覚がなくなってきた。
決壊が近い... いますぐおしっこを!
本能がそう告げていた。
そう、私は昼にがぶ飲みしたお茶が早くもおしっこに変換され、もはや漏れそうなレベルにまでなっていた。
「じゃあ私、ここでする!もう我慢できない!」
もうなりふり構っている場合ではない。
例えここがトイレでないとしても、ここでするしかない。
意を決した時、まりん先生が新品のティッシュ箱を持って掛け寄ってきた。
と同時に、がやがやと声がして、用を出し終えたらしい男子生徒たちが戻ってくる。
「あ、ごめんね男子!悪いけど、先にバスに戻ってちょっと待っててくれないかしら?」
「え〜」
そんなことをぶつぶつと言いながらも、可愛くお願いしてウィンクするまりん先生にはなんとなく逆らえず、男子たちは気まずい雰囲気でバスに戻っていく。
再び男子生徒たちがいなくなると、みんなを励ますように明るく
「運転手さんから借りてきたよ!」
と、ティッシュをみんなに見せるように手に持ち、上に掲げる。
「みんな、もう男子もいないし恥ずかしがらなくていいからね!ここで我慢しても、しばらくトイレはないし、限界な子はここで済ましちゃったほうがいいと思うよ!それに、運転手さんに頼んでバスはここから100mくらい進んでもらったから見られることもないよ!」
「あ、私行きます...」
私が膠着を打ち破る最初の1人目。
まりん先生はティッシュ箱を開けると、3〜4枚ほどのティッシュを取り出し、束にしてくれる。
「本当にここでして大丈夫なんですか...?」
「大丈夫大丈夫 緊急事態なんだし、仕方ない!」
先生の返答に若干不安になる。
本当にここでしてもいいのかな。
(でも、とにかく早くおしっこしないと漏れそう...!)
言ってしまった以上引き下がれない。それにこれ以上の我慢は不可能だ。