休憩所の聖域 2-A専用”女子トイレ" 作:jadenoshon
私は昔から、こういう山奥などへのドライブに連れて行かれることや、ハイキングなどに行くのが嫌いだった。
昔を振り返ってみると、やっぱりいい思い出がなかった。
小学校の行事でハイキングに行った時、家族で田舎の実家に帰省したときの車での思い出。
あまり愉快な類のものではない思い出がたくさん。
なんで私、こういうのが楽しめないんだろう...
その理由は明確だった。
おしっこ、そう、おしっこの問題である。
多分私は、結構頻尿な部類に入る人だと思う。
学校でも授業と授業の間の休憩の時間には必ずトイレに行く。
前どこかで、みんなに合わせて授業中にトイレに行くのが実はめんどくさい と言う女の子の話をテレビかなんかで聞いたことがある。
私の学校でも、授業と授業の間の休み時間に女の子たちはみんなで一緒にトイレに行く。
「わたし、ちょっとトイレに行ってくるね!」
「あ、うちもいく〜」
「あたしも〜」
教室ではいつもこんな風に、1人がトイレを宣言すると、それは呼び水のように周りの女の子たちに伝播して、楽しそうに会話をしながらぞろぞろと連れ立ってトイレへと向かっていく。
でも、前どこかのテレビで見た女の子と違って、私はこんな風潮が大好きだった。
これなら、毎時間ごとにおしっこをする私も、変に目立たなくて済むからだ。
やっぱりどうしてもわたしだけ毎回トイレに行くと言うのはなかなかに恥ずかしい。
なかなかおトイレと言い出せずに、漏らしてしまった小学校低学年の時のハイキングの思い出、実家に帰る途中の延々と続く山道でおしっこが我慢できなくなり、やむを得ず車を降りて、山道におしっこをひっかけることになった思い出...
今の状況が、そういった類の思い出を次々と思い出させてしまうのも無理はない。
(でも、やっぱりみんながいるっていうのは心強いなぁ...)
ただ、あの時とは違うことが一つある。
私の前後に並ぶクラスメイトたち。
彼女たちもみんな、私と同じようにおしっこが我慢できなくなり、この場所に並んでいる。
そして、この場所はおトイレではない。
いや、正確にはおトイレではないのだけれど、私を含む2-Aの女の子たちの中ではみんな、この場所はおトイレだという認識がしっかりと共有されていた。
「すっきりした〜」
そんなことを言いながら、クラスメイトの子たちが笑顔で小屋の扉を開けて軽快な足取りで歩いてくる。
そう、ここはおトイレ。
そして、私たちはおトイレに並んでいる。
2-Aの女の子みんなで。
みんなもするから大丈夫。
最初はここをトイレとすることに驚き、ためらいを感じていたみんなも、もうこの頃になると、すっかりここが”トイレ"だということを受け入れ、順応していた。
そういったことを考えていると、これから私がすることになる行為への罪悪感がちょっぴり和らぐ。
でも、みんなはよく我慢できたよね。
私以外のみんなは、あの昼休憩の広場での、想像するのもおぞましいトイレを使っていないのだ。
これまでの16年の人生で、散々おしっこに苦しめられてきた私は、みんなが汚い汚いといって使わなかったあの休憩所のトイレをも、勇気を出して使い、しっかりとおしっこの最後の一滴まで絞り出したはずなのに、しばらくしたらすぐにまたいつもみたいに催してしまい、それはすぐに私に危機感を抱かせるレベルにまでのものになった。
(まわり、相変わらず山ばっかりだよぉ... はやく、休憩所につかないかな...)
バスの中でも、みんなと同じようにゆきねは我慢の戦いを繰り広げていた。
出発したての時のような活気はすっかりなくなってしまったバスの中で、そう願いながら、タイツを履いた両足をぴったりと閉じる。
きっと、タイツを履いてきただけいくらかマシなのだろう。
寒さは尿意の天敵でもあるし、山道ということで寒さを覚悟してきたゆきねはタイツを履いてきていたのだ。
これまでの経験からして、まだ大丈夫だろう。
もし、広場のトイレを使っていなかったら...
そんな最悪の仮定を考えていると、嫌でもあの強烈な光景を想像してしまう。
ーーー広場にて
(うわぁ... なにこれ...)
おんぼろのトイレの一つしかない男女共用と思われる個室を開けて、絶句する。
変色して朽ちかけている壁に、ぐちゃぐちゃの床、そして、水が流れるかどうかすら怪しそうな茶色に変色した和式便所が1つ、おぞましい口を開けていた。
あまりの汚さだ。
一体どれくらい放置されていたのだろう。匂いも相当にキツくて、みんなが次の休憩所のトイレ休憩まで我慢するという選択肢を選んだのも納得できる。
(本当は、私だってこんなところでしたくないよ...)
でも、仕方がない。
頻尿の私がここでおしっこをしないで次の休憩所まで我慢なんて道を選んだら、間違いなく途中で漏らすという最悪のケースを迎えるだろう。
(ダメ!もうおしっこの失敗はしないんだから!)
勇気を出してそう自分に言い聞かせると、勇気を振り絞って今からおしっこをする対象となるその便器を覗く。
(うわぁぁぁぁぁむりむりむりむりむり!!!!!)
見ない方が良かった。
凄まじい生理的な嫌悪感が私と背筋を駆け上がる。
便器の中には、大量の虫が犇めいており、魑魅魍魎たちが這う楽園のようになっていた。
(無理無理、絶対ムリ!)
ただでさえ虫が苦手な私は今すぐにでもこの場所を逃げたい気持ちに襲われる。
(でもダメだ、ここでちゃんと済ませないと!)
つくづく頻尿な自分が恨めしい。
みんなみたいに、しっかりと我慢できる体質だったらこんな目にあってないのに。
意を決して、魔界が口を開けたかのようなおぞましさのその和式便座に跨り、タイツとスカートを一気に下ろししゃがみ込むと、目を瞑り、下半身のムズムズを解放することにした。
シュイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!
(私、ここまで我慢してたっけ?)
その瞬間から、出した本人すら驚くような、凄まじい量で迸るおしっこが便器の中に勢いよく叩きつけられる。
この便器がちゃんと使用されるのはいつぶりなのだろうか。
虫たちが蠢く、虫たちの楽園と化していたそこは、いつぶりとも知れない大洪水で大パニックとなり、なにやら足がたくさんある気持ち悪い虫や、蟻などが大量に窒息し、阿鼻叫喚の状態となっていたのだが、目を瞑っているのでゆきね自身はその惨状に気づくことはなかった。
(んっ、そろそろ終わるかな... しっかり最後まで出さないと...)
力強く力み、残尿の最後の最後まで絞り出す。
ジュイイイイイッ‼︎‼︎ ジュイイッ‼︎
また勢いよくおしっこが迸ると、10秒間ほど出続けた後についにおさまった。
この最後の尿が、かろうじて便器の水のない部分にしがみついていた蟲をおしっこの池へと叩きこんだのだが、ゆきねはまだ目を瞑っていたのでそれも知ることはなかった。
一刻も早くこの場を立ち去りたいゆきねは、りんかから貰ったポケットティッシュを数枚取り出すと、そのまま目を瞑ったまま勢いよくごしごしと己の秘所を拭き、その場に落とした。
急いでタイツとスカートをあげると、流しもせずに個室を飛び出し、目を開けた。
ゆきねたち人間にとってはおぞましいことこの上ないが、蟲たちにとっては楽園と化していたその場所は、わずか1分ほどの惨劇で破壊され、そこにはゆきねの秘所を拭き取り、おしっこをたっぷりと含まされた白くて柔らかい墓標が立つことになった。
〜〜〜
バスの中での我慢の戦いや、広場での最悪な出来事を考えているうちに、ゆきねの番がやってきた。
「はい、ゆきちゃんの分のティッシュね〜」
「ありがとうございます...」
扉の前に立つまりん先生が、箱から3〜4枚ほどのティッシュをシュッシュッと引き抜き、それを渡してくれる。
前の子と入れ違いのようにして扉を開け、待ちに待っていた”トイレ”へと足を踏み入れる。
(やっとおしっこできる...!)
今回は、失敗をしなくてすみそうだ。
おしっこに関する失敗を多く重ねてきゆきねは、その事実に、気分が高揚する。
でも、まだゆきねを悩ませる出来事があった。
(これ、どこですればいいの!?)
あっさりとみんなこの小屋を”トイレ”として使っており、私もなんとなくその前提を受け入れてしまっていたためしっかりと意識していなかったが、いざその小屋に入ってみると、想像とは異なりがっつりと物置小屋か何かの体をなしており、あると思っていた溝やトイレ代わりになるような袋、用を足すことができそうなシンクなどの水場などはどこにもなかった。
どうやらこの小屋では、水を使うことは想定されてないらしい。
そう思っていると、ふと壁際の棚の上にある水槽が目に止まる。
(あ!お水!)
期待を感じて近づいてみる。そっと上から覗いてみると、中で金魚が数匹泳いでいた。
(ここでしたいけど... だめだよね。)
そっとそこから離れる。
床にはそこら中に池ができており、地面のどこを見ても、おしっこ溜まりと捨てられたティッシュを視界に入れないことは不可能とさえ思えた。
一部のティッシュは、捨てられた後にさらに他の子におしっこをかけられてしまったのだろうか、ぐじゅぐじゅのべとべとになって床に張り付いている。
特に目立っていたのが、ゆきねの前にある机である。
机の上にある紙や本はぐじゅぐじゅに濡れそぼっており、被害はその下のカーペットにまで及んでいた。誰かがここにおしっこをするという、非常識な行為を成したのは明確だった。
いや、それをいったらもともと、非常事態であるとはいえトイレではない場所、しかも人が使っている可能性を否定できない物置小屋のような場所を勝手にトイレがわりにしている私たち全員が非常識なのかもしれない。
(みんな、1箇所にしないで結構好き勝手にしてる感じなのかも...)
たしかにこの場所のおしっこの作法なんてはなから存在していないのだが、それにしても随分と身勝手な使い方をされているような感じる。およそ私有地になしていい行為ではない。
(でも、私もここでしなきゃいけないんだよね...)
下腹部に強烈に押し寄せるむず痒さが、いやでもその事実を突きつける。
(で、でも... ここをトイレにしようっていったのはまりん先生だし、みんなやってるし... きっと私は怒られない...)
そう思ってみたところで、やっぱり人の私有地、しかも室内でおしっこをぶちまけるという行為は、ゆきねには容易いことではなかった。
ゆきねは人の私有地の物置小屋を汚す順番おトイレ待ちの行列の真ん中あたりにならんでいたので、私の前にはありさちゃんやななみちゃんを含む15人ほどの子がここでおしっこをしたのだろう。
(ありさちゃんやななみちゃんはどこでしたんだろう...)
(どうしよう...)
罪悪感に苛まれ、悩んでいるうちに半泣きになってしまう。
早くしないと、みんなを待たせちゃうし、目立っちゃうよ...
なかなか決心を決められないゆきねの視界が、ふと壁際の小さな棚に乗っかっている植木鉢を捉える。
(植木鉢...? 植物...? おしっこ...? 肥料...?)
その瞬間、今この瞬間ゆきねを苦しめている全ての悩みから解放される名案が思い浮かんだ。
(たしか、植物にとっておしっこって栄養になるって昔習った気がする...!!)
一気に結びつき始める、昔の授業かなにかで習った記憶。
棚にちかづくと植木鉢を手に持ち、それを床に置く。
(この植物、ちょっと元気なさそう。私がここにしてあげれば、栄養にもなるし、私はここを汚さないし、お互いにいいことなんじゃないかな...!?)
思うが早いか、罪悪感の一切が打ち消されたゆきねはスカートの中をまさぐると、タイツを急いでおろし、スカートをまくると、植物に足がぶつからないように慎重に前から植木鉢に跨り、ちょうどおしっこが植物の根元にかかるようなポーズで、両足の間に植物の茎があるようにしゃがんだ姿勢を固定した。
(ああっ... 出る...!)
ジュイイイイイッジュイイイイイイイイイッッッッッ、ジュオオオオオッシュイイイイイーーーーチュイーーーーーー!!!!!!!
これまでの我慢がどれだけのものだったのか、その音が雄弁に語っていた。
跨るや否や、すぐにおしっこがゆきねのあまり毛の生えていない綺麗な秘所から吹き出して、植物の根元に抉るように命中した。
(はぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜きもち〜〜〜〜〜〜〜)
我慢からの解放、あまりの快感に、恍惚感さえ伴う。
(たくさん栄養あげるから、元気になってね...!)
そんな思いを込めて、真っ黄色で汚い毒を、ウォーターカッターのように植物の根元へとピンポイントで放出し続ける。
根っこの部分の土にものすごい勢いでまっすぐなゆきねのおしっこがあたり、土を抉ってしまっている。
ボドボドボドボドボドボドボドボドボド
(ん?なんか音が変わったような...)
さっきまでの排尿音が、いつもの水洗の洋式トイレで排尿した時のような、聴き慣れた水を叩く音に変わる。
(やばい!溢れちゃいそう!)
あまりにも勢いよく放出され続けるおしっこを、もう既に土が吸収しきれなくなってしまい、水が溢れかけていたのだ。
やむを得ず腰を浮かして中腰になる。
なおも止まらないおしっこは、植木鉢から溢れ続け、あたりを土とおしっこの混じった汚いぐちゃぐちゃの液体が流れ始めていた。
トポトポトポ、トポ... トポ... ピチョン
どれくらい経っただろうか。
ようやくゆきねの放尿が終わった頃には、オーバーフローを起こした植木鉢と、そこから流れ出した土とおしっこが混ざって出来た汚い液体が池を形成していた。
一旦制服のポケットにしまっていたまりん先生から貰ったティッシュを取り出すと、丁寧に後始末をして、タイツを上げて立ち上がる。
(ティッシュは... 捨てたらダメだよね...)
(申し訳ないとか、思わないのかな?)
そこら中にぽいぽいと平然と捨ててあるティッシュを見て、ゆきねはちょっとした腹立たしさを感じる。
とはいえ、だからといって既に捨ててあるものを回収して綺麗にしていこうとは別に思わない。そんな役回りは絶対にごめんだ。
(でも、汚いし持って帰りたくはないなぁ...)
葛藤するゆきねに、またしても名案が浮かんだ。
(そういやティッシュって、土に還るんじゃなかったっけ...!?)
これなら、多少目を瞑ってくれるだろう。
先ほどの植木鉢に目をやると、オーバーフローした水位も、徐々に土が吸収するようになり、低くなっていた。
ゆきねは吹き終わったティッシュをその中にぽいっと放り込んだ。
(みんなも、植木鉢におしっこしたらちゃんと植物の栄養にもなるし、この場所を汚くしないのに...
そうだ、これを目立つところに置いておこう!)
ゆきねはおしっこでぐしょぐしょになった植木鉢を、手で持つのは少し抵抗があったので、足でゆっくりと扉の近くの目立つ場所にまで移動させた。
(これなら、みんなここにしてくれるかも!)
(にしても、ちょっといいことしちゃったな。
この植物、元気になってくれるといいな...)
自分が少しいいことをしたという気持ちと達成感を感じながら、ゆきねは扉を開けると、上機嫌に”トイレ"を後にした。
「ゆきね、珍しくご機嫌そうじゃない?」
小屋を出ると、小屋を取り囲むように並んでいる行列のなかのりんかに声をかけられた。足がモジモジしていて、結構我慢がつらそうだ。
「うん、ちょっといいことしちゃった!」
(へぇ。いいことってなにかしら。)
よくわからないが、自分の番になればわかるのかもしれない。
りんかはそう思うことにした。なんかちょっとだけ楽しみである。ひょっとして、中に何かあるのかな。
そう微笑むと、ゆきねは、先に用を出し終えたありさやななみが待つ場所へと鼻歌を歌いながら戻っていった。
ちなみに、植物にとって人間の糞尿が肥料になる というのは間違ってはいないものの、それは加工をした場合であり、直接尿をかけた場合、その濃さは毒になる。ましてや、植木鉢から溢れ出るほどの量を根元にかけたのだ。
この後、あの植物は枯れてしまい、土に還ると思い土の上に放置したティッシュはいつまでも溶け切らずに、土の表面に汚らしくこびりついていたということは、ゆきねにとってはまたしても知る由のないこととなった。
そして、目立つところに置かれた植木鉢、それはこの後に”トイレ“を使う全員が目にすることとなる。
植木鉢の中におしっこまでして、そこにティッシュまで放り込んであるという状況は、ゆきねの善意であったのにも関わらず、こんな非常識なおしっこまで行なわれているんだから、あとはもうどんなに汚しても構わない とみんなの罪悪感のハードルをさらに下げるという皮肉な結果となった。