休憩所の聖域 2-A専用”女子トイレ" 作:jadenoshon
「さすがに待ち時間、長くない?」
1人、また1人と、すっきりとした様子で“トイレ”から戻ってきたクラスメイトでにぎわい、話の花が咲き、女の子たちの笑い声とおしゃべりでだんだんとにぎやかになる待機スペースで、ありさはおもわず口に出してしまう。
「一人ずつ入ってるからね~」
ななみがのんびりとした口調で答える。
「うん。後ろの方に並んでたあおいちゃんも戻ってきたとこだし、もうちょっとじゃないかな・・・」
ゆきねが状況を報告してくれる。
そうか。あおいちゃんは後ろの方に並んでたのか。
我慢が限界だった私は、一番最初に“トイレ”を使わせてもらっから、順番まではよくわからなかった。
たくさん我慢してからおしっこをすると、案外すぐにまた尿意がぶり返してきて、おしっこをしたくなってしまうというのは、別段珍しいことでもない。
ありさもまた、この例にもれず、再び下腹部に違和感を感じ始めていた。
「あの・・・私またしてきたくなっちゃったんだけど・・・ ななみちゃんとゆきねちゃんはどう?」
「ん~ あたしはいいかな~」
「私ももう大丈夫・・・」
1人で行くのも若干気恥ずかしいので、二人に声をかけてみるけど、二人とももう別に大丈夫みたい。
「もう次のりんかちゃんで最後だった気がするし、いきたいならはやくいった方がいいと思う・・・」
ゆきねちゃんにそう言われて、念のためもう一度“トイレ”に行くことにした。
「あれ、ありさ。どうしたの?」
“トイレ”の前に行くと、なぜかりんかちゃんが扉の前で立っていた。
「あれ、りんかちゃん。何してるの?」
「あー 実はね・・・」
「ん~ すっきりした~ って、うわあ!ありちゃん!」
その瞬間、扉から出てきたまりん先生が私を見て、もともと丸っこくて愛らしい目をまんまるにして驚いた声をあげていた。
「実はね 私もしたくなっちゃってね~」
なんか言い訳がましくそんなことを言っている。
そうか、先生もしたかったんだ。
「あれ、ありちゃんどうしたの?またおトイレ?」
「はい・・・またしたくなっちゃって・・・」
「先生。ありさにティッシュ渡してあげてください。」
「あ~そうだった。はい、ティッシュ!りんちゃんは優しいね~」
「あっ、そう。そのティッシュ、残り少ないし、なくなったら捨ててきていいから。」
しれっとりんかちゃんにそんなことを言われる。
「えっ・・・いいの?」
りんかちゃんらしからぬ発言に、思わず聞き返してしまう。
「いいよ。どうせもうきったないし。」
まりん先生から受け取った、りんかちゃんのポケティを握りしめると、再び“トイレ”へと足を踏み入れた・・・
一回目に来たときは、ここは人の私有地かもしれない という思いから靴を脱いでいたのだが、ずかずかと土足で、人の私有地の物置小屋2-A女子の汚くて臭い女子便所へと侵入する。
だって仕方ないじゃん。だれも靴下でこんな汚い床歩きたくないじゃん。
そして実際、ここで靴を脱いだのは、事実として最初にここを使ったありさだけだった。
そのまま、目の前の机の下に敷かれているカーペットの前にしゃがみ込むと、二回目の“トイレ”の使用を開始する。
始めてきた時とは何もかもが違う。
確かにぼろかったが、ある程度しっかりとしていた小屋の中は、見渡す限りの惨状と化していた。
そこら中水たまりだらけで、ぐちゃぐちゃになった机の上。
汚らしいおしっこまみれのカーペット。
なぜか根元にティッシュが詰め込まれ、床に移動されており、土とアンモニアがまざったような湿っぽくて不快なにおいを発している植木鉢。
こころなしか一回目に見たときよりもぐったりしているようにも見えた。
隅に置かれている機材の数々の足元からも、なぜか小川が流れ出している。
それに、水槽の水もこんなに澱んだ黄色だったっけ?
なによりも顕著なのはティッシュだ。
見渡す限りどこもかしこもティッシュの残骸。
さっき来た時には一個もなかったのに・・・
カーペットに向かって、ためらいもなく尿意を解き放つ。
ジュイイイイイイイイイーーーーーーーッッッッッッッ!!!!
1回目とは異なり、罪悪感がなくなったせいなのだろうか。
さっきはなかなかおしっこが出なかったのに、今回はしゃがみ込むなりノータイムで激しく迸り始めた。
なぜ、1回目はあんなにお行儀良くしてたんだろう。そう思うと、自分だけがちょっと損をした気分で腹立たしい。
そんな自分への当てつけかのように、もはやゴミ同然と化したカーペットにおしっこをバシャバシャと激しく叩きつける。
だって、なんもためらう事なんてないでしょ。
この場所を、りんかちゃんやまりん先生だって使っているのだ。
みんなの中で、この場所は“トイレ”だという合意が形成されてしまった以上、トイレはおしっこを受け止めるだけの場所なのだ。
(なんで私、最初はあんなにためらってたんだろう。)
そこら中に散らばるティッシュを見ていると、さっきここを使ったときに、ちゃんとティッシュを持ち帰ったことがばかばかしくなる。
だって、トイレで使ったティッシュをわざわざ持って帰る人なんて、見たことも聞いたこともない。
おろしたての消しゴムを、最初に使うときは一抹の罪悪感を感じるのだが、たくさん使って黒くなってくると、もはや使うのになんのためらいも無くなるのと同じだなぁ。
と思う。
カーペットに大量のおしっこを含ませ終わり、放尿が終わる。
さっきりんかちゃんから貰ったティッシュで後始末をすると、パンツをあげてスカートを整える。
スカートのポケットから、先ほど“トイレ”をしたときに使用したティッシュを取り出すと、今使ったティッシュと共に、たっぷりと水を吸って、もはや便所モップのような有様となっているカーペットの上にぽいっと投げ捨てた。
ティッシュを使い切ってしまったので、ポケティの空のビニール袋も、ついでに投げ捨てる。
だって、りんかちゃんが捨てていいっていってたもん。
はらはらと舞う残骸が、不規則な軌道を描きながら落ち、カーペットの上から逸れると、一面の尿でできた池に着水し、ゆっくりと重みを吸って沈み込んでいった・・・
(みんな捨ててるのに、私だけ持って帰るってのもばからしいでしょ。)
みんながおしっこしてるから、自分もする。
みんながポイ捨てしてるから、自分もする。
ここの持ち主のことなんて一切気にしない、共犯意識で薄れた罪悪感と、みんなやってるから という理由だけで行われる悪行。
おしっこを終えて、小屋をでていくありさに、一回目の時のような罪悪感はどこにもなかった・・・
「あ、ありちゃんおかえり~」
「長かったね。さあ、はやくかえろ」
「もうりんかちゃん!恥ずかしいから言わないでよ・・・」
「さ、だいぶ時間遅れちゃったから、急いで戻りましょ」
扉を開けて、りんかちゃんとまりん先生と合流すると、楽しげにおしゃべりに花を咲かせながら、バスへと歩いて行った・・・
自分たちだけスッキリして、散々トイレ代わりにして汚すだけ汚した私有地の物置小屋を振り返らずに、談笑する3人...