サイコレズ死刑囚が異世界転生して快楽の限りを尽くす話 作:AS
「囚人番号AS1175出ろ」
そう言われ、一人の女性が特別房から出てくる。オレンジの囚人服に二重にかけられた手錠、そしてその周りには防護服を着た看守たち。
その女が出てくるとき、周りはまるでテロリストの本拠地に乗り込むときのような、そんな緊張感に包まれていた。
「ちゃんと可愛い女の子は用意してくれたんですか?できれば処女の」
「黙って歩け」
女はふらふらとふざけるように歩く。
その前と後ろは武装した者たちによって厳格に塞がれる。まるでVIPのようだ。悪い気はしない。
その時、一組の看守たちとすれ違う。その看守たちは敬礼をしながら道を開ける。
「....なんか、やばそうっすね」
「そっか、お前新入りだもんな。やっと執行されるのか....。」
「あの女...相当ヤバいやつだって聞いてます。」
「相当程度で済むかよ。現世に降りた悪魔だ。」
「たしか...78人でしたっけ。」
「いや...あの後も死体が見つかって85人に修正された。これでも、『見つかってるだけで』だ。」
「そんなヤツが本当にいるなんて...。」
「そのうちの一人は、うちの看守だ。女の看守だった。」
「え?」
「奴はその看守を誑かして、セックスしたんだ。そのあと殺した。喉元を食いちぎって。」
「脱走が目的?」
「いや、そのあとも自室で当たり前のように寝てたよ。あいつ、人の命をなんだとも思ってない。だからあいつの看守は特殊な訓練を受けた者で構成されている。」
「あんなに面はいいのに、重度のレズビアンで猟奇的なサイコパス...。世の中がわからなくなります。」
「あいつは例外中の例外だ。理解してやる必要はない。..ああ、これでいいんだ。」
看守はその女に一瞥をくれてやると、その場を後にする。
女はこれから自身に起こることを知ってか知らずか、そこに緊張の様子は全くなかった。
それどころか不敵な笑みを浮かべ、足音でリズムをとりながら陽気に鼻歌を歌う。
「ねぇ、デイルーム行きたいなぁ。しばらく行ってないもの。誰かとおしゃべりがしたい。できれば可愛い女の子と。最期くらいいいでしょ?」
「無理だ。お前自分の立場わかってるのか?」
「ちぇ。他の娘たちには優しいくせに。私には冷たいのね。」
「お前はこの拘置所内でさえも殺人を犯した。そんな奴を誰と会わせる?」
「あー、ベスのことなら謝るわ。彼女...その..キスは下手だったけど。いい娘だった。ちょっと私も熱が入っちゃって。」
「もう喋るな。」
その時、刑務官のインカムに一本の連絡が入る。
「そんなに喋りたいなら、喋らせてやろう。面会室にお前に会いたいという人が来ている」
「やったぁ。」
――――――――――
そこは殺風景な空間で椅子と衝立がいくつも並べてある場所。
普段なら受刑者でいっぱいなのだろう、今日の利用者はたった一人だけ。
「話が違う。私は可愛い娘と話しができると思っていたのに」
彼女のアクリル越しに向かって座っていたのは中年の無精ひげを生やした男性だった。
「それは申し訳なかった。私、ノール雑誌の記者ラッセルです。お時間は取らせません。」
アクリル越しに名刺を見せる。
「別にいいよ。どうせこの後死ぬだけだし。」
「...。単刀直入に言えば、あなたへの取材で来ました。今まで手紙での取材を申し込んでたのですが。」
「ああ、ごめんね。私、文字書けないの。」
「そうですか。では早速。」
記者はノートを開く。
「お名前は、Ms,ラビット..。これは偽名?」
「...そうかもよ?」
「...今まで何人殺した?」
「さあ?警察が詳しいよ。」
「...。動機はすべて、快楽殺人。これは..?」
「なんか取り調べみたいで嫌だなあ。私はもっと楽しいおしゃべりがしたいの。」
「そうか...。」
「なんかヘンだねぇ。この手の情報ならみんな知ってるはずなのに。私が記者の取材に応じたのも初めてじゃないんだし。今日が私の死刑執行日だからわざわざ来たんでしょ?」
記者はノートを乱暴に閉じる。
「なら、楽しい話をしてやろう。お前は2010年にコロラドで20歳の女性を殺した。覚えているよな?」
「...コロラドでなら、確か5人殺した。」
「いや、7人だ。男2人に女5人。」
「ああ、そうだっけ?」
「エリーゼという女性に覚えは。」
「あたし記憶力ないもん」
記者は写真が入ったファイルを突き付ける。そこの横には新聞などのスクラップも添えてあった。
『コロラド州在住の20歳の大学生、自宅で何者かによって殺害される。』
『死体は損傷が激しい状態。地元警察は怨恨の可能性をみて調査...。』
『女子大生、包丁でめった刺し!?交際のもつれか..。』
「ああ、この娘!エリーゼっていうんだ。確か太ももの付け根に黒子があったのよね。とっても優しかった。」
「随分と詳しいんだな。」
「ええ、彼女私にずいぶん優しくしてくれたもの。汚れた私を自宅にまで招いてくれて、ストレートのくせにセックスまで応じてくれた。本当にいい娘だった。」
「...なぜ殺した?」
「殺したくなるくらい可愛かったから。可愛いって罪よね。」
「...。」
記者の顔は殺気立った顔で女をにらみつける。
「ずいぶんと拘ってるのね。」
「...もし俺が、その娘の恋人だとしたら..お前はなんて言う?」
「お気の毒。ずいぶん疑われたんじゃない?交際のもつれだって。」
女はスクラップを指さす。
ダン!とその空間に力強い音が響く。
記者の男が机を叩いたのだ。そして立ち上がる。
「なんで...なんでエリーゼを殺した!!」
異変を感じた警備員は記者の男を取り押えようとするが、記者はそれを振り払う。
「このぉ!!このクソ野郎があああ!!ああ!俺は!お前を殺してやりたい!!あの娘でなく、死ぬべきだったのはお前だ!」
「あら奇遇」
女は口端を上げておもむろに言う。
「私も..あなたを殺したい気分だわ..。」
そしてその美しい顔からは想像もつかないようなボロボロになった歯を男に見せつけるかのようにして笑った。
その様に男は思わずのけぞる。
「..!!お前は!お前は今日で死ぬ!...いい気味だ!さっさと地獄へ堕ちろ!!!」
記者の男は乱暴に上着を羽織ると、速足でその場を去る。
女は手錠のかかった手で男の背中に手を振った。
「済んだか。」
後ろから刑務官が声をかける。
「私、なんだか怒らせちゃったみたい。」
女は場所を移される。
彼女の座るテーブルの上には、チョコレートでコーティングされた一口サイズのケーキがおいてあった。
「....女の子は?」
彼女は不服そうに刑務官たちをにらみつける。
「そんなもの用意できるか。」
「なんでも好きなもの頼んでいいっていったくせに。」
女はそのテーブルの脚を思いっきり蹴る。
ガシャ!と音をたてテーブルは揺れるが、倒れるまでには至らなかった。
周りの刑務官たちは臨戦態勢をとる。この瞬間でも、この女相手は油断できない。
「食わないのなら、執行を開始するぞ」
「うーん。じゃあいただこう。ケーキなんて15年振りだし。」
女は近くの刑務官に言う。
「ねぇ。手錠とってよ。これじゃ食べにくいじゃん。」
「それはできない。」
「じゃあ食べさせてよ」
担当刑務官はすぐそばにいた若手の刑務官に目で合図を送る。
その刑務官はケーキをつかむと恐る恐る彼女の口元に運ぶ。その手は微かに震えていた。
「わあ!」
その震えた手に女は噛みつくマネをする。若手の刑務官は思わずのけぞる。
「へへ、ジョーダン。あーん。」
女は舌を大きく出して口を開ける。
その舌にそっとケーキをのせると女はそれをゆっくり咀嚼する。
グチャア....グチュ....クチャア....ニチャア....
その咀嚼音はまるで生肉でも食べているかのような不快なものだった。
「んあー!」
女は口を大きく開き、刑務官たちにその食べかけのケーキを見せつける。
「うっ..!なんなんだこいつ...」
刑務官たちは思わず目を背ける。
....ゴクン
「ああ、おいしかった。」
「...。最期に牧師との面会もできるが、どうする?」
「うーん、べつにいいや。話聞いてても眠たくなるだけだもの。」
「そうか。」
「それに私は...。」
女は立ち上がる。
「天国へいくもの。」
誰も彼女のその言葉に対し、何も返すことはできなかった。
「私って電気椅子で死ぬの?」
「いや。お前は薬殺刑が決まっている。」
「ああ、注射はいやだなぁ。痛いもの」
そうして彼女は自らの足で執行室へと歩いて行った。