※この作品はR-18です。

「居眠り磐音艶記゛」   作:松友 清司

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居眠り磐音艶記゛:第七巻 狐火ノ杜 第一章 紅葉狩海晏寺 74ページ

おこんと吉右衛門:居眠り磐音江戸双紙 第七巻 狐火ノ杜 第一章 紅葉狩海晏寺 の終わり(p74)に挿入

 

由蔵と磐音の掛け合いが今津屋の土間にのんびりと響き、磐音は金森右京の抜き身を拾い上げながら、

(金森家が口止め料を笹塚孫一に払うことになりそうだ)

と考えていた。

 

 

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ここからが挿入部分です

 

 

金森右京の騒動があってしばらく後のことだ。

10月初旬 その日は友引だった。

入浴の支度ができたことを 吉右衛門に告げたおこんは 頃合いを見て 吉右衛門に声をかけた。

「旦那さま 湯加減はいかがですか?」

「ちょうどいい具合です。

 ゆっくり入っていると 気持ちが安らぎます。」

「先日は お暇をいただき 紅葉を堪能させていただきました。

 ありがとうございました。

 旦那さま お背中を流しに 入らせていただきます。」

「おこん そんなことを することはありませんよ。

 自分でできます。」

「いいえ 旦那さま 私が奉公を始めた時 お艶さまと一緒にお風呂に入っておられました。

 その時 お艶さまと お身体を洗いあっていらしたではありませんか。」

「それは お艶とだからです。

 それに ずいぶん前のことになります。

 この2・3年は 一人で入っていましたよ。」

「はい 存じております。

 お艶さまのお身体を気遣って なんてお優しいのだろう と羨ましく思っていました。

 なので お艶さまがいらしたときは 遠慮しておりました。

 これからは お艶さまの代わりに お背中を流すくらいは こんにさせて戴きとうございます。

 実は お艶さまと 伊勢原で約束をしたことにございます。」

「えっ お艶とそのような話をしていたのですか。

 それほど言ってくれるのなら 甘えてみましょうか。」

「よかった。

 失礼します。」

と 裾を絡げた浴衣姿のおこんが 浴室に入ってきて 吉右衛門が椅子に座るのを待った。

おこんは 吉右衛門の背中を ぬか袋で丁寧にゆっくりと 時には強く 時には弱く

洗いあげていった。

おこんの左手は 自分を支えるように 吉右衛門の肩にあてがわれていた。

「人に洗ってもらうのが こんなに気持ちいいなんて 忘れていました。

 ありがとう。」

「そう言って下さると 勇気を出して声をおかけしてよかったです。

 二日おきになるかと思いますが これからはお背中を流させていただきます。」

「お艶との約束とはいえ おこんに 気を遣わせてしまいましたな。

 無理をしないで そなたの都合のいい時で 構いませんよ。

 ありがとう。

 もう 上がりなされ。」

「では。」

と言って おこんは 今一度 手桶で 吉右衛門の背中に 湯をかけて 風呂場の戸口に

向かった。

裾をからげた浴衣から出る おこんの白い脚を 吉右衛門は見ることがなかった。

 

おこんとお艶との約束が その後 二日おきに 果たされていった。

江戸期の暦は 時々ずれるときがあるが 大安と友引がその日だった。

吉右衛門も だいぶ慣れて おこんが背中を洗いに来るのを 楽しみにするようになった。

おこんの 吉右衛門を洗うところが 二の腕・脇腹と だんだんと広くなっていった。

吉右衛門は そのたびに 少し戸惑ったが おこんは 半ば強引に 洗う部分を広げていった。

それは お艶が洗っていた部分にまで 広げようとしていたからだ。

新しい部分が 加わるたびに 吉右衛門は ふうっ とため息をつきながらも おこんの手の

動きを拒まなかった。

 

その日は暦のずれた大安だった。

「お背中を流します。」

とおこんに声をかけられた吉右衛門は

「おこん 二日おきではなかったのかな。

 無理をしないでおくれ。」

と 驚いた様子で 言葉を返した。

「はい 時間ができましたので それに今日は 大安ですので参りました。

 ご迷惑ですか。」

と おこんの 少し硬い声が返ってきた。

「迷惑などでは 決してないが・・・ うれしいが・・・。」

「でしたら 入ります。」

おこんは いつものように 吉右衛門に ぬか袋を使っていった。

吉右衛門を洗うのは 後ろからだったが (今日こそは) とおこんは今日大安に

声をかけたのだった。

「旦那さま こんの方を向いてくださいまし。

 お身体の前も洗います。」

「いや おこん それは いかにもはばかられます。

 ありがとう。

 もう上がりなされ。」

「旦那さま 今日は 大安でございます。

 お艶さまと一緒に お風呂に入られ 特別のことをなさっていたのが 大安でございました。」

「えっ おこん そのようなことも 知っていたのですか。

 特別なこと・・・そう 確かに 大安ごとでした。」

「はい 旦那様方の着替えを用意するのが 少し遅くなったことがございました。

 その時 旦那さまとお艶さまがなさっていることを見てしまったのです。」

「なんと、・・・。」

「お艶さまには 私が奉公に上がった時から 妹のように思っていただきました。

 大山詣に ご一緒した折 お艶さまとゆっくりお話をすることができました。

 お艶さまは 『私がいなくなったら 旦那様をよろしく頼みます』と 何度も

おっしゃっいました。

 こんは 大安ごとのことも含まれている と思い 『ご安心ください 必ず』と お艶さまと

約束をしました。

 今日 やっと 約束が果たせます。」

「それにしても おこんの方を向くのは はばかられます。」

「でしたら 今日は 背中の方から手を回させてくださいまし。

 シャボンを使わせていただきます。」

今津屋には 長崎の取引先から 渡来物のシャボンが 折々に届けられていた。

おこんも 使うのは初めてだった。

手の中で シャボンをなじませて 吉右衛門の胸に 手をあてがい 円を描いていった。

おこんが 手を動かすたびに 浴衣越しの胸が 吉右衛門の背中に触れた。

おこんは 浴衣地にこすられる 乳首が だんだん硬くなっていくのが わかった。 

「旦那様 これでは 足が洗えません。

 立っていただけますか?」

吉右衛門は ふうっ とため息をつくと 観念したように 立ち上がった。

おこんは シャボンを何回か 手になじませながら 吉右衛門の足に 手を滑らせていった。

「おこん お艶への気遣い また 私への思いやり 有難く思います。

 こうしてもらっていると お艶とのことが 思い出されます。

 この家にお艶がいないと思うと どうにもこうにも たまらなくなります。」

「お艶さまと一緒に お風呂に入られなくなった後 旦那様は 身体の前で 手を動かして

おられました。

 何をして と訝しく思っていましたが わかった時には なんてお優しいのだろうお艶さまに

無理をさせないように ご自分でと こんは 感激いたしました。

 たまには 遊びに行かれては と思ったこともございました。」

「おこん 人は 夫婦は それぞれです。

 私は 独り身の時にはともかく お艶がいた時には そのようなこと 一度も思ったことは

ありませんよ。

 おこんにだから いいますが お艶と一緒に入らなくなった後でも 寝床では お艶を 

慈しんでいました。

 私は それで 十分でした。」

「旦那様に 新しいお内儀様ができるまで こんに お世話をさせてくださいまし。

 ただ こんも いずれ所帯を持ちたく思っています。

 操は その時まで大事にしたいと思います。」

「当たり前のことです おこん。

 私は そのようなことを 望んでいません。

 それに 三回忌も済んでいないのに 後添えなど 考えられません。」

立っている吉右衛門の両足を 膝をついて洗っていたおこんは スッと立ち上がり 両手を 

吉右衛門の背中から脇腹 そして 腹部へを滑らせ 脚の付け根へ 持っていった。

吉右衛門は ビクッとしたが お艶との約束と 言われてしまったことを思い 

されるがままになっていた。

おこんの両手が 吉右衛門をまさぐり 握り 揉み 握った手を前後に動かしたりしていた。

「旦那様 目をお瞑りになり お艶さまのことだけを 思ってくださいまし。

 お艶さまと同じにはできませんが、・・・、がんばります。」

「おこん お艶の頼みとはいえ 申し訳なく思います。

 ありがとう。

 坂崎様とは このようなことは?」

「とんでもございません。

 坂崎様には 一途な方がいらっしゃいます。」

「定めとはいえ 坂崎様も おこんも 不憫なことです。」

「大山詣の帰り 私が足を痛めたことがありました。

 その折 坂崎様は 私を背負ってくださいました。

 こんは その時の坂崎様の背の温もりと 腿に当てられた坂崎様の掌が 今も心と身体に

焼き付いております。

 何かの折に 思い出されて、・・・、はしたのうございますね。」

「はしたないなんて そんなことは 決してありませんよ。

 好きな方への思いは 大事になさい。

 ただ 仕事が疎かになるようでは 私たちも困ります。

 また 坂崎様も そなた自身も 望むことではありますまい。」

「はい。」

おこんは 両手の中で 吉右衛門が力をつけ 太く 堅く 大きくなっていくのを感じていた。

「そなたに いつまでも このようなことを させておくのは申し訳ありません。

 もう少し強く 前後に手を動かしてみてください。

 速さも 変えてみてくれませんか。」

おこんは 主人の言葉遣いが 奉公人へのものでないことを おかしくも うれしくも思った。

いわれる通り 強く 弱く 速く 遅く 握った手を前後に動かしていると 吉右衛門の身体に

軽い痙攣が起こり 握った手の中でも ビクッ ビクッ っと動きが起きた。

十度近くも 動いただろうか おこんには 吉右衛門の背中の向こうで 起きていることは 

見えなかったが 梅雨時に漂う クリの花の匂いが おこんの鼻をくすぐった。

「おこん ありがとう あとは 自分で洗えます。

 そなたも シャボンを使って 手を洗いなされ。

 汗をかきました。

 少し湯につかってから あがります。」

「はい それでは。」

と おこんが 応えて 吉右衛門の背中から離れた。

浴衣が しっとりと濡れて おこんの乳首が 透けていた。

吉右衛門は 湯船の湯を 身体に何杯もかけながら 精気が飛んだ場所を確かめていた。

二・三尺も飛んだであろうか (思ったより遠くへ) と思いながら (お艶、・・・)と

心の中で呟いた。

おこんは シャボンを使いながら 吉右衛門の身体の変化を思い出し

(坂崎様、・・・、磐音様)と心の中で呟いた。 

 

その日以来 吉右衛門の背中を流す日は 二日おきから 大安・友引の日と替わった。

その日が 大安であれば 遠慮しがちな吉右衛門を 説き伏せ お艶との約束を果たした。

しかし 相変わらず 吉右衛門は おこんの方を向こうとはしなかった。

おこんは そのような吉右衛門を じれったさを感じながらも かわいいと思った。

 

 

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ここまでが挿入部分です

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