※この作品はR-18です。

秘密の花園   作:童貞侍

3 / 3
中小路 明日香(なかのこうじ あすか)
中等部2年
髪型:金色ウェーブがかかったロング。
体型:Dカップ。中学生離れした発育具合。
   身長は平均よりもやや高め。
性格:名家のお嬢様(ガチ)なため、やや傲慢。Sっ気が強い。
   自分を慕うものには案外面倒見がよかったりする。
備考:本作のいじめ役。彩音とは初等部からの付き合い。
   中等部に上がってからはやや疎遠だったが、改めて関係を持つ。


高坂 彩音(こうさか あやね)
中等部1年
髪型:赤みが強い茶髪。ロングのツインテール。
体型:Aカップ。スレンダー体型。スポーツはたしなむ程度。
   身長は平均よりも低め。
性格:平時は猫をかぶっているが、本性は傲慢かつ冷徹。ドS。
   明日香に対しては純粋に尊敬しているし、慕っている。
備考:本作のいじめ役2。むしろメイン。
   能力は電気。学園全体で見ても上から数えたほうが圧倒的に早い強能力者。


 いじめ役を見るだけでなんとなく作者の趣味がわかってしまうね。


第2話

 中等部に入ってから1か月ほど経過して、今は5月の初旬になった。

 

 入学式前のトラブル以降は特に問題もなく、無事に過ごすことができている。自分のクラスに行くと、まさかの彩音と同じクラスであり体がこわばったが、今のところこちらに何か仕掛けてきそうな雰囲気はない。

 エスカレーター式とはいえ、生徒の数も多いこの学校では、クラス替えが起きるごとに、今まであまり関わってこなかった人とクラスメートになることのほうが多いくらいだ。どうやら今は人間関係の構築に力を注いでいるらしく、私にかかずらっている暇はない、ということだろう。

 

 噂を聞くに、彩音は2年生の中でもいろんな意味で有名な中小路 明日香先輩のもとにも1度挨拶に行っており、彼女の派閥の一員になっているのだとか。私は知らなかったけど、彼女らは初等部時代から付き合いがあるらしく、そう不思議なことでもないのかもしれない。

 

 なぜ、中小路先輩が有名なのかというといくつかの理由がある。まず単純に能力が非常に強力なのだそうだ。詳細は知らないが、なんでも挑んできた人間はなすすべもなくあしらわれるのだとか(どういう状況で彼女に挑む事態になるのかは全くわからないが)

 もう一つの理由は、彼女が白百合女学園の理事長も務める中小路家の令嬢だからだ。中小路家は古くからの歴史がある名家であり、能力研究に莫大な私財を投じ、白百合学園の前身を作り上げて以降、歴代理事長は全員が中小路家の人間が務めているらしい。ほかにも、スタイル抜群で容姿端麗であるとか、生粋のお嬢様であり所作が美しいとか、彼女が作った派閥が学内最大となっているとか……。とにかく話題に事欠かない。

 

 情けない話だが、彩音が関係構築にかかり切りな状況に感謝している自分がいる。一度は何とか勇気を出して反抗してみたが、もう一度できるかと言われたら……自信はない。あの時に助けてくれた、中村先輩のように、毅然とした態度をとることは、自分には難しい。

 とりとめもないことを考えながら、私は一人、当番で回ってきた日直の仕事をこなしている。放課後になってから少々時間がたった後ということもあり、今教室には私一人しかいない。誰もいない教室に響くのは、私が日誌に書き込むシャーペンの音のみであり、そんな空間に何とも言えない心地よさを感じる。

 日誌を書き終わり、所定の棚に収めた後、寮に戻ろうと席を立った。部活動には入っていないし、そもそも私は人づきあいが苦手だ。クラスの中では、話しかけられれば返事もするし、話もするが、自分から輪の中に入っていこうとするような、そんな積極性が持てないでいる。なので放課後に友達と買い物に行くような予定もないため、さっさと寮に帰ろうと会談を降りていくと、彩音が靴箱の前に立っていた。

 

 

「ごきげんよう、恵さん。日直のお仕事、ご苦労様ですの。」

 

 

 前回とは打って変わって、お嬢様然とし佇まいの彩音が言った。

 これは彩音の対外的な話し方……とでもいえばいいのだろうか。普通に生活を送るうえで、彼女はこのお嬢様の面しか表に出さないが、嬲る獲物を前にした時には、前回のようなサディスティックな面が出てくるのだ。今も表面的にはお嬢様にしか見えない。が、その目は獲物を追い詰める猫のように感じられた。

 

 一歩、自然と後退りしてしまう。

 周りを見ても、広い玄関ホールにいるのは私と彩音だけ。放課後になり、ある程度時間が経過してしまってるためか、玄関ホールに誰かが来そうな雰囲気もない。

 

 

「先日の校門での折。あたしとしたことが、急に話しかけてしまったから、びっくりしたんですわよね?あたしとあなたの仲ですもの。あんな態度、とるはずありませんの。」

 

 

 意訳するならば、「先日の校門でのやりとりは何だ?調子に乗るんじゃないぞ」といったところだろう。少しずつ後ろに下がる私に、それ以上に距離を詰めてくる。そして、右手を徐に伸ばして私の肩を掴もうとしている。その手には電気が帯びているのが肉眼でも見えており、バチバチと断続的に音がしている。

 

 怖い。入学式の時はなんというか、ハイになっていたのだろう。それに加えて、彼女は能力を一切見せていなかったから、まだ真正面から向き合うことができた。しかし今、その強力な『電気』という能力を目に見える形で示しながら、ゆっくりと近づいてくる。初等部の時に嫌というほど味わった、バチバチという電気の音と強烈な痛みが頭をよぎる。あの時は出てきた拒絶の言葉が、今出てこない。

 

 

「ね、恵さん?」

 

 

動くことのできない私に向けて、彼女の手が伸びてきたとき。

あの時と同じ、鋭い声が割って入った。

 

 

「ストップ。そこまでよ。」

 

 

振り向くとそこには、『保安』の腕章を制服に着けた中村先輩がいた。その姿はやはり、どこまでも凛々しく、堂々としていて、何より美しいと思った。

 

 

______________

 

 

声に反応して、彩音は伸ばしていた手を中空で止めていた。

声の発生源を確認し、見覚えのある顔を確認した彼女の顔は忌々しげに歪むと同時に小さく舌打ちが聞こえた。しかし、一瞬でその表情を隠し、お手本のようなお嬢様然とした笑顔と所作で先輩に振り返った。

 

 

「これはこれは、保安委員の方じゃありませんか。ごきげんよう。あたしは友人と話をしていただけなのですが、何かご用ですか?」

 

 

 いけしゃあしゃあと、彩音は今の状況を取り繕う。

 私が一言否定するだけで崩れるような嘘を堂々と言えるのは、私が否定できないと確信しているからだろう。事実、私は怖くて何も言えなくなってしまっている。一瞬彩音の視線が、「余計なことを言ったらどうなるかわかってるよね」というようにこちらを向いた。それにより一層の恐怖を覚えて、黙って震えることしかできない。

 

 

「ボクにはそうは見えなくてね。伸ばしていたキミの手から能力が発動しているようにも見えたし、詳しく聞きたいところだね。」

 

 

 しかし、中村先輩は彩音の能力使用を見ていたようで、そちらについても言及してきた。当たり前だが、能力をいたずらに人に向けることは禁止されている。下手をしなくても簡単に人を傷つけることができるし、最悪殺してしまうかもしれないからだ。

 

 

「あたしの能力は電気ですので。肩回りが凝っているといってる友人に、電気を応用したマッサージをしようとしただけですの。両者合意の上に、傷つける意図は全くないのですから、問題ないですの。」

 

 

「……ふーん、そう。彼女はそう言っているけど、本当かな?」

 

 

 中村先輩がこちらを見つめ、そう問いかける。ここで私が肯定すれば、この一件はこれで終了。場所は移すだろうが、また上下関係の『教育』が実行されることは想像に難くない。しかし、ここで目の前の先輩にそれを訴えたとして、何になるのか。

 もしかしたら、先輩まで攻撃されてしまうかもしれない。彩音の能力は強力だ。仮にやり合うことになったとして、先輩まで巻き込んで傷つけてしまうかもしれない。そうなることもまた、怖い。

 

 

「あ、あの……」

 

 

 大丈夫です。何も問題ありません。

 そう言おうと先輩に目を向けると、あの日と同じような力強い目が、私を見つめていた。大丈夫だと、語りかけるように。

 

 

「安心して。本当のことを言ってくれればいいんだよ。」

 

 

 真っ直ぐで優しい、労わるような目だと、そう思った。この人の前なら、大丈夫かもしれない。さっきまではカケラも出て来なかったちょっとの勇気が、湧いてくるような気がした。

 

 

「あのですねぇ。先ほどと言いましたがあたし達は…」

 

 

「今ボクは、彼女に聞いてるんだ。ちょっと黙っててくれないかな?…ほら、大丈夫だから」

 

 

一度しか会ったこともない、しかも数分間のやりとりがあっただけだけど、憧れたこの先輩の前でなら、少しは強くなれる気がした。目を強く瞑り、震える喉を無理やり動かして一息に言った。

 

 

「そ、そんなこと言ってません!電気の手で、痛めつけられそうでした!しょ、初等部の時から、影でやられてたんです…!」

 

 

 恐る恐る目を開けると、不機嫌を隠そうともしない顔でこちらを睨む彩音と、いつのまにか私の前に移動していた先輩の背中が見えた。そんなに大きくない、どちらかといえば小柄な先輩の背中に、とてつもない安心感を覚えてしまった。先輩は顔だけこちらを振り向き、笑顔を浮かべた。まるで、よく言った。頑張ったねと、褒めてくれているような雰囲気だ。

 

 

「……彼女はこう言ってる。キミの説明と矛盾があるようだけど、何か言うことはあるかな?」

 

 

 顔を正面に向け,彩音を見据えながら先輩は言う。対する彩音は、俯けていた顔をあげ、こちらを睨みつけた。体の近くに青白い電気を纏い、時折火花を散らせながらゆっくりと手をこちらに向けた。

 

 

「はぁぁ……。あんた、本っ当に生意気になったわね。もう許さないから。あと、そこのセンパイもこれ以上関わるとどうなるか分からせないといけないみたいね。」

 

 

 完全にこちらを痛めつけるつもりの彩音の視線にたじろいでしまい、先輩を見る。目の前に攻撃する気満々の生徒がいるにも関わらず、全く気負っておらず、ブレザーの内側から、取り押さえるための手錠のようなものを取り出した。

 

 

「あなたもこれに懲りて、あたしの邪魔はするんじゃないわよ!」

 

 

 彩音から先輩に向けてまっすぐ電気が飛んでいく!しかし、先輩は全く動こうともしない。次の瞬間、電気は先輩に直撃した!

 しかし、本来であれば身悶えするような痛みが走るであろう攻撃をまともに受けたのに、先輩は平然としていた。

 

 

「は?」

 

 

 その様子に、攻撃を放った彩音も声を漏らして呆然としている。私も目の前の光景が信じられず、ただただ先輩を見つめているだけだ。ただ、先輩はその隙を見逃さず、一息に彩音との距離を詰めると、床に組み伏せて彩音の右手に手錠をかけた。

 

 

「能力不正使用の現行犯だよ。初回だからあまり重くはならないだろうけど、反省文くらいは覚悟しておくことだね。」

 

 

 一瞬で彩音を取り押さえてみせた先輩は、へたり込んでしまった私にウインクをしながら彩音に告げた。

 

 

 

 

__________

 

 

 

 彩音はしばらく抜け出そうと試みていたが、能力を使おうにも先輩にはなぜか効かず、すでに拘束されてしまっていることもあり、そのまま保安委員室(保安委員の特別教室。事情聴取や反省文の作成等をさせる部屋)に連れていかれた。連れていかれる際にこちらを強く睨みつけてきたが、不思議と先ほど感じたような恐怖感は感じなかった。とはいえ、精神的にとても疲れてしまったため、校舎を出て近くのベンチに腰を下ろし、先ほどまでのことを思い出していた。

 先輩に電気が効かなかったのは、一体どういう仕組みがあったのだろうか。電気自体は発生していたし、彩音のミスということも考えられないだろう。となると、真空状態を作って電気を逃がしていたとか……?

 

 

「ここにいたんだ。さっきは大丈夫だった?」

 

 

 突然後ろから声をかけられ、驚いて後ろを見ると、中村先輩がベンチの背もたれに手をかけて立っていた。

 

 

「あ、あの!先ほどは助けていただいて、ありがとうございました!」

 

 

「気にしないでいいんだよ。ああやってやりすぎる生徒を取り締まるのがボクの仕事なんだし。それよりも、入学式の時もそうだったけど、災難だったね。」

 

 

 嫌味のない快活な笑みを浮かべながら、先輩は私を気遣ってくれた。まだほんの数回しか会話をしたことがないというのに、この人はとてもいい人なんだと確信できる。今だってきっと、もしかしたら怖がっているんじゃないかと心配して私を探してくれていたんだろう。

 

 

「……さっき、『初等部の時から』って言ってたけど、ずっとあんなことをされてたの?不躾かもしれないけれど、よければ相談相手くらいにはなれるかもしれない。」

 

 

 この人になら、いろいろと話すことができるかもしれない。そう思って、ポツリポツリと私はこれまでのことを話し始めた。

 

 現代において重要性が日に日に増していく能力。この能力には、遺伝的要因が大きいといわれている。実際、両親とも能力持ちである場合と、そうでない場合では、子に能力が発現する確率に大きな差が生まれることが知られている。また、発現率以外にも、能力強度にもその法則は垣間見れる。代々能力持ちを多く輩出してきた家系は、強い能力を持つものもまた生まれやすいのだ。これにより、そういった強い能力持ちを輩出する『名門』や『名家』と呼ばれるような一族は政財界でも一目置かれるようになるのだとか。

 

 話を戻すと、強い能力者を輩出するのは、そういった名家と呼ばれる家系であることが大半だ。よって、能力研究の権威とされる白百合女学園に入学しているのもまた、名家の人間ばかりということになる。……一部の例外を除いて。

 私はその一例だ。私がここに通っているのは「能力が珍しかったから」。設備が整っていない教育機関では適正な指導と研究をすることができない可能性があるため、環境が整っているこの学校に半ば強制的に入学させられたのだ。

 

 ちなみに私の能力は「ステルス化」。しっかりと磨けば、目で見えなくなることはもちろん、監視カメラやレーダー等あらゆる観測機器をやり過ごすことができるようになるのではないか……と、言われてはいるのだが、残念ながら私の能力ではそこまでは出来ない。監視カメラやレーダーなどの観測機器はやり過ごすことができるが、肉眼では普通に観測できてしまう。

 これだけであれば特に珍しくもないのだが、私の能力は「自分以外のモノに付与できる」という点で特殊なのだそうだ。通常、私のような能力は自分自身のみが対象となるそうなのだが、私の場合は時間制限こそあれど、自分以外の人やモノを一定時間観測不可状態にできる。この一点だけの違いによって一般庶民の私はこの学園に通うことになっている。

 

 さて、では名家のお嬢様の中に、場違いな庶民の子ども。しかも外界から切り離された狭いコミュニティの中で生活する環境。とどめに、もともとの私の内向きな性格。いじめにつながる要素がきれいにそろってしまっていたのだ。

 

 

「入学式の時、勇気を出して嫌だって言っちゃったんです。ちょっと環境が変わって、何かが変わるような気がして。でも、実際はそのまま内部進学だからあまり変わらなくて……。すみません、変な話になっちゃって……。今日は本当にありがとうございました。じゃあ、私はこれで。」

 

 

 なんとなくこの場にいづらくなってしまい、先輩の前から辞去しようとしたとき、私の手を先輩がつかんだ。こちらを見る目はやはりまっすぐ澄んでいて、思わずたじろぐ。

 

 

「それでも、あの時は言えたんでしょう?それにさっきだって、怖い思いをしながらでもちゃんと立ち向かえてたじゃない。」

 

 

「それは、あなたがいたから……。」

 

 

「ボクが?」

 

 

「おかしいと思われるかもしれません。数回あっただけなのにって、自分でも思います。でも、あなたにあこがれたから、あなたの前では少しは強くなれる気がして……。」

 

 

 しどろもどろになりながら、答えた私を見て、先輩は立ち上がってまっすぐこちらを向いた。

 

 

「じゃあ、今後も勇気が出るように、ボクと姉妹関係、結ぶ?」

 

 何を言われたのか飲み込み切れない私に、先輩は続けた。

 

「別に同情がないわけじゃないけど、それだけでもない。単純にキミと話してて悪くないかなって。境遇も似てるしね。」

 

 曰く、先輩も私と同じように、珍しい能力であったためにこの学園に入ってきたのだという。でも、周りに負けないよう奮起し、保安委員長まで上り詰めたのだとか。

 

「だから、一緒に学園生活を頑張っていこう?」

 

 差し出された手を、私は迷うことなく、取った。

 

 

 

 

 

 




姉妹関係
生徒同士で結ばれる特殊な関係。年長者が姉、年少者が妹となる。
妹は寮生活において姉に尽くし、姉は妹の学園生活や寮生活における指導役となる。
その関係上、姉妹関係になった場合は学園に届け出ることで、寮の部屋の引っ越しが行われるなど、メリットが多い。


快活だったり凛々しい人が堕ちていくのが好きなのだ。
堕ちる前の姿を鮮明にしてこそ、その落差がたまらなくなるよねって。

……にしても、後半の描写が雑いな。
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