星たま☆放課後制服デート ~手〇きカラオケバトル~ 作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)
キャッキャウフフと繁華街へと繰り出したふたりは、黄昏の景色に楽しい思い出を刻んでいく。
コスメやアクセサリーの専門店を巡って、楽しかった分だけバッグを重たくした。ブティックでは、星川の試着ファッションショーが進むたびにたまきがコーディネート単位で貢ごうとした。
何をしても楽しいし、もはやベンチで何もしなくても満たされる。そんな、笑顔と笑声が絶えない時間が過ぎていく。
はしゃぎまわって、小腹が空いたのでひと休み。ひげおやじが目印なお店のシュークリームをベンチで食べて……たまきのほっぺたに付いたクリームを星川が舐め取った。
「ぅひょぁっ!? ほ、星川……不意打ちはズルいぞ……!」
「たまきくんの白いトロトロ、美味しい……☆ 星川のお腹に……はぁ……♡」
「やめろよ!! ボクが野外でシコったと思われるだろ!!」
「思われないだろ、さすがに」
「……そうか、気にしすぎか……。最近さぁ、周囲の目がめっちゃ気になるんだよ」
「たまきくんが可愛いからだよ。『どうやったらあの子のチンコもげるかな』って、みんなつい考えちゃうんじゃね?」
「相変わらずテキトー言ってんなお前……つーかそっちの方がこえーよ。完全にサイコじゃん」
「いっけね。そういえば、昨日まつりちゃんとデートしたんだった」
「会話が繋がってないようで微妙に繋がってるの怖ぇーんだけど!! ボクたちふたりとも、アイツの捕食ターゲットなんだからな!?」
「まあまあ。限界極めてないときはそこそこ普通だから。極めるとちょっとガチろうとしてくるけど」
「いや、話を聞く限り普段からけっこうアレだと思うが……ぶっちゃけ、星川はまつりにどこまで許したことあんの?」
「……ひみつ☆」
「…………やべぇ……! 今の答えが男として一番ドキドキしたかもしんねぇ……! 星川すげぇなお前……チンイラの達人かよ……!」
「ふーん……相手が女の子だったら浮気してもいいんだ?」
「よくはないなッ! でも、なんだろうな……まあ、アレだ……『なんかエッチですね……?』っていう……」
「結局そこかよ。まあ星川は、あれぐらいの……〝イイ友達〟って距離感が一番好きだからさ」
「ボクは?」
「たまきくんはそういう枠組みじゃないから、気にしなくていいんだよ」
はぷり、とシュークリームを上手に食べる星川を見ながら、たまきは「こいつ、マブいな……」と思っていた。
その映える顔を見ながら、自然と熱くなった頬を夕焼けに照らさせる。ポケットから取り出したハンカチで頬を拭き、たまきははぐらかすように咳払いをした。
「……これからどうする? まだ帰るのには早いよね」
「だねー。星川今度ライブあるから、歌の練習したーい!」
「わかった! ボイトレの予約飛び入りで取れるか聞いてみるか!」
「真面目かよ! っていうか絶対無理だし! 普通にさぁ、カラオケ行こうよ!」
「……か、カラオケか……」
「あれ? 嫌いだったっけ?」
「いや、嫌いってよりも……カラオケに行くと、どうしても下積み時代を思い出すんだよな……」
「下積み……ああ、手コキカラオケね」
「コいてはねえよ!! あれだよ、良い感じの高さでシコシコ振るだけだったから!!」
「いや、アレは完全に狙って……ああでも……そういえば、そんなこともありましたねぇ……♪」
手に握った雑巾で窓を拭くような動きを再現しながら、たまきは必死に否定していた――だからこそ、星川のニヤニヤした悪ぅい笑みに気づけなかった。
「ま、売れっ子になった今は過激なことヤらなくてもいいんだし、気にせず楽しんじゃお! たまきくんめっちゃ歌上手くなったし、星川もちゃんと聴きたいな~♪」
「うぐぬ……! そ、そうだな……そうだよな……彼女にも生歌聞いてもらいたいな……! じゃあ、星川のために……おじさん頑張っちゃうゾ!」
「やった~、おじさん大好き~♪ お礼に~、ギューッ♡てしてあげる!」
「むほほ、おっぱいデッカ……! よーし、今日はおじさんが全部出すぞ~!」
「ホントに!? 行こ、さっさと行こっ! ドリンクバーとパフェあるとこね!! ポテからとたこ焼きも頼もう!!」
「食いつき良すぎだろ……へいへい、わかってますよ! のりおママから預かったクレカが火を吹くぜ!!」
「わーい! のりお社長最高~!!」
腕に抱きついてきたキャピキャピな星川を侍らせ、おじさん気分なたまきは調子に乗った貴族のように胸板を張って闊歩する。
――その先に、戦いの気配が漂っていることなど気づくはずもなかった。
――――――
星川がチョイスしたカラオケ店に入ったふたりは、マイクとタブレットを交互に持ち替えて、持ち前の歌唱力を披露し合っていた。
スピーカーを通して響くのは、透き通るガラス玉と弾ける星のような煌めき。それぞれが交代で輝いたり、時たまに光の波長を合わせたり。
身振りを伴う感情的を乗せた歌唱は、まばゆい光を部屋中に散りばめて、唯一無二な観客たちの心を沸かせていた。
『~~♪』
「すっごーい!! ホント、前よりめっちゃ上手くなってるよ、たまきくん!」
『でゅへへへへ! そーお? いやぁ、それなりに頑張ってるからさぁ……そう言われると、普通に嬉しいっすね……』
「わかるわかるー。でも二番始まってるよ?」
『あ、やべっ!』
慌ててモニターを見て、歌に熱中するたまき。その立派な横顔を、星川がうっとりと眺める。
頬杖を突いた手に、じんわりと温かみが伝わってくる。キスをしてから少しずつ高まっていた体温が、もう抑えきれないところまで達しそうだった。
(……たまきくん……。一緒に居るだけでも死ぬほど楽しいけど……もっと、近くで触れ合いたい……)
ただムラムラしているのではなく、愛しい恋人の濃厚な温もりを素肌で感じたい……そんな気持ちの方が大きかった。
入力端末であるタブレットを抱えるようにして、星川がもどかしそうに膝を抱く。脚をもじつかせて、指を忙しなく動かして……キュンと波打つ、下腹部の甘い疼きをごまかすばかりだった。
歌いたい曲など、まったく思い付かない。シたいことなんて、ひとつしかない。
たまきが歌う楽曲よりも主張が強い鼓動と、その揺らめきを生むもののことだけを考えていた。
「ふぃー、上手さとか気にせず全力で歌うの気持ちいい……! ってあれ? 星川、まだ曲入れてないの?」
「あ、うん、なんか思い付かんくて。たまきくん、もっかい歌う?」
「いや、そしたらちょっと休憩するよ……っていうか星川、パンツ見えてるよ」
「見せてんのよ」
「なんでだよ。っていうかそれボクが買ってあげたヤツじゃん」
「だからだよ。『ちゃんと穿いてるよ!』って教えてあげたくて」
「気持ちは嬉しいけど、気持ちだけで充分だよ。ボクはね、星川にお淑やかでいてほしいんだ」
「ガチでめんどいオジサンみたいなこと言うじゃん……で、本音は?」
「パンツと食い込んだ肉を見てるとチンイラするからやめてほしい。そろそろスカートがエグイことになりそう」
「あっはっはっはっ!! うんうん、正直でよろしい♪ 男の娘なんだから、そうじゃないとだよね!」
「いや、その必要条件みたいな言い方は他の業界で炎上するから気を付けような」
「はーい、ごめんちゃーい♪」
たまきのムラムラもイイ具合に昂っていることを察した星川は、満足そうに笑って――つまみで照明を暗くしてから、入力タブレットを操作し始めた。
「ねえたまきくん、カラオケを使ったゲームしない?」
「ゲーム? ああ、最近のカラオケってそういう機能あるんだっけか……どんなのかわからんけど、いいよ。わりとしっかり歌ったから、そろそろふざけるか~」
「やった☆ それじゃ、これからいろいろセットするから……たまきくん、今から入れるヤツを立ったまま歌ってくれる?」
「わかった。ルールとかは画面に従えばいいの?」
「ああ、うん、そんな感じ。あとは流れでわかるから」
「おっけ。それじゃ、よろしく~」
たまきはマイクを構えてモニターを見つめた。
その横顔を見て、ニヤリと笑った星川は――ゲームの設定などせずにたまきのオハコ曲を入れた。
ポップなイントロの陰に隠れて、ぽよんぽよんと座り歩きでたまきの隣に移動し……バッグの中から、常備していたローションボトルを取り出した。