美少年ハーレムを作りたい!! ~モブおじだけど転生したらチート勇者でした。なので盗賊になって好き勝手に生きることにしました~ 作:とけそうだら
メインキャラとのHではないので、文章はちょっと淡泊になります。
朝もやが立ち込める王都の空に、まるで童話から抜け出してきたかのような白亜の王城が、その威容を誇っていた。
幾重にも重なる尖塔は天を突き刺すように伸び、まるで神々の住処を思わせる荘厳な姿である。
「うわぁ、ご主人さま、見てください! お城が朝日でキラキラして、まるでお菓子の国みたいです!」
カイトは馬車の窓から身を乗り出し、宝石のような瞳を輝かせた。
「うむ、ゲームに出てくるような立派な城じゃのう。ここがわしとエリオットくんの愛の巣...いや、愛の宮殿になるわけじゃな」
権蔵は頬を染め、陶酔とした表情で城を見上げる。
「はい、この城こそ威厳のある権蔵さまにふさわしい御殿です」
グレイは優雅に頷いた。
「げへへ、そうともよ。昔話では勇者は王さまと結ばれて幸せに暮らすのじゃ。ああ、想像しただけで胸が高鳴って止まらんわい」
権蔵の夢見心地な言葉に、ジュリアンは眉をひそめる。
「何を寝言を言っているのだ。全く……陛下の前で貴様のその不埒な振る舞い、考えただけで胃が痛くなる。いい加減、勇者の品格というものを――」
しかし権蔵はすでに馬車の窓から半身を乗り出し、朝もやに包まれた城へと声を響かせていた。
「エリオットきゅーん! あなたの愛しの勇者さまが迎えに来たぞーい! もうじきこの手で優しく抱きしめたいあげるぞーい!」
「こ、こら! 何という無礼を! もし陛下に聞かれたらどうするのだ!」
ジュリアンは真っ赤な顔で権蔵の襟首を掴み、強引に馬車の中へと引きずり込んだ。
馬車は吊り橋を渡り、城の中庭で静かに止まった。
降り立った一行の前で、重厚な大扉がゆっくりと開かれる。白い大理石の床に靴音が響き、天井から吊り下げられた巨大なシャンデリアが柔らかな光を投げかけていた。
案内役の侍従に導かれ、一行は豪華な廊下を進んでいく。
金箔が施された壁面と、深紅の絨毯が王城の威厳を物語っていた。
やがて、重厚な彫刻が施された大扉の前で足を止める。
「宰相ラソリーニさまがお待ちです」
侍従の声に、権蔵は首を傾げた。
「ん? エリオットくんは中におらんのか?」
「申し訳ございません。本日は勇者さまとオルレアヌ重臣との会談の場となっております」
「承知いたしました。では権蔵さまと私で会談に臨ませていただきます」
グレイは凛とした声音で告げると、静かにカイトとジュリアンを振り返った。
「二人はここで待つように」
「待て。私も同席すべきではないのか。この重要な場で役に立てることも……」
ジュリアンが眉をひそめ、明らかな不満を露わにしたが、グレイは冷静な声で遮った。
「これは国と勇者との正式な会談の場。部外者の同席は差し控えていただきたい」
その毅然とした態度に、ジュリアンは不満げながらも黙って頷くしかなかった。
重厚な扉が開かれ、そこには豪華な調度品に囲まれた会議場が広がっていた。
天井まで届きそうな大きな窓からは陽光が差し込み、長い机の上で煌めいている。
机を挟んで、宰相と数名の大臣たちが厳かな表情で座していた。
その姿は、まるで裁きの場に臨む裁判官のようだった。
「ようこそいらっしゃいました、勇者さま。お待ち申し上げておりました」
宰相ラソリーニは優美な仕草で一礼すると、深みのある声で迎え入れた。
「なんじゃ、ここは。おっさんだらけじゃないか。わが愛しのエリオットくんはどこに行ったんじゃ? こうして呼び出しておきながら、肝心の美少年王がおらんとは何事か」
権蔵の声には不満が滲み、その言葉に大臣たちの表情が一瞬凍りついた。
「申し訳ございません。先日お送りいたしました書状の通り、まずは婚約に至るための儀式的な手続きを整えさせていただきたく。どうかご安心を、これは決して婚約を覆すものではございません」
権蔵の反応に、まるで計算済みであるかのように、宰相の微笑みは深まった。
「ふん、回りくどい話じゃ。おぬしら、わしに何か頼み事があるんじゃろう? そうでなければ、こんな面倒な茶番は打たんはずじゃ」
「さすがは勇者さま、話が早くて助かります」
ラソリーニは机上の羊皮紙に目を落とし、優雅に言葉を紡ぎ始めた。
「エリオット陛下は、この国の主君にして象徴。王の地位にある者は国そのものと結ばれているようなものでございます。陛下との婚約をお望みになられるのであれば、まずは我が国への忠誠を示していただく必要がございましょう」
「ほう、忠誠じゃと? 面白いことを言うな、おぬしは」
権蔵は興味深げに眉を上げる。
「具体的には、三つの条件を提示させていただきたく存じます。第一に、この国が認める正統なる『勇者』としての認定式でございます。本来であれば召喚の直後、王都にて厳かに執り行うべきところ、今回は特別な事情ゆえ、後日改めて執り行わせていただきたく」
「ふむ……まあそれは構わん。勇者として認められるのは悪い気はせんからな」
「ご理解いただき、誠に感謝申し上げます。さて、二つ目の条件でございますが...ドルテナ要塞の即時返還をお願いしたく存じます」
「あ? ドルテナを返せだと?」
権蔵は表情こそ変えなかったものの、その胸の内では怒りが渦巻いていた。
ドルテナ要塞――それは彼が血と汗で築き上げた城であり、仲間たちと共に暮らす我が家同然の場所だった。その大切な場所を、こともあろうにこの老獪な宰相が、さも当然のように返還を求めてくる。
ラソリーニの満足げな笑みを見つめながら、権蔵は心の中で舌打ちした。
こいつらは自分たちの都合のいいように物事を進めようとしている。まるで、自分の意思など最初から眼中にないかのように。
「その代わりに勇者さまとお供の方々には城内に相応しい居室を、『子羊の産声』の皆様方には王都内に豪奢な邸宅と、それに見合う贅沢な暮らしをご用意させていただく所存でございます」
「ふん、随分と気前のいい話じゃな。だが、わしにはドルテナが気に入っておってな。あの城は、わしと仲間たちが命を賭けて勝ち取った場所。おぬしらの甘い言葉で手放せるような代物ではない」
権蔵の言葉に大臣たちが騒然となるが、ラソリーニは「静粛に」と一喝して場を収める。
「そして...最後の条件でございますが」
ラソリーニはそこで言葉を区切り、厳かな面持ちで告げた。
「北方のレシア要塞...これを魔王軍より奪還していただきたく存じます」
「は?」
思いがけない条件に、権蔵の眉間に深い皺が刻まれる。
その反応を楽しむように、ラソリーニは言葉を重ねた。
「オルレアヌ王国と魔王領との境界に位置するレシア要塞は、長らく魔王軍の侵略拠点となっております。勇者さまには、この要塞の奪還をお願いしたく」
「要塞の奪還とはずいぶんと大きく出たのう」
「現在、要塞は魔王軍配下の獣王グリムフの軍が占拠しております。ただし、グリムフ本人は魔王国へ戻っており不在。勇者さまがオルレアヌの英雄として帰還された今こそ、要塞奪還の絶好の機会かと」
「ふむ、オルレアヌの英雄か...」
権蔵は意地の悪い笑みを浮かべながら、ゆったりと椅子に深く腰を沈めた。
「でも、わしはこの国がどうなろうが知ったこっちゃないんじゃがのう。所詮は、おぬしらの都合で召喚された勇者じゃ」
その挑発的な態度に、内務大臣のアンリ・ド・モンフォールが堪えかねたように口を開く。
「申し上げにくいことではございますが...現在の勇者さまは『山賊勇者』という、世間では甚だ不名誉な呼び名で語られております。そのため、エリオット陛下とのご婚姻に関しまして、王国内では激しい反対の声が渦巻いております。このままでは、さらなる反発を招くことにも...」
「ほう、あくまでもわしのためを思っての提案だと言うか?」
権蔵は冷ややかな笑みを浮かべながら、アンリを見据えた。
アンリは思わず後ずさり、ラソリーニの背後に隠れるように身を寄せる。
「この汚名を雪ぐためにも、勇者としての真価を示していただきたく。もし勇者様が魔王軍の要塞を奪還なさいましたら、それは陛下とのご婚姻を正当化する無二の功績となりましょう。国民の支持も、自ずと集まることかと」
ラソリーニは表情を崩さず、むしろ意図的に柔らかな声音で語りかける。
まるで毒を含んだ蜜のような、甘美で危険な響きだった。
「『山賊勇者』か。わしをそう呼んで馬鹿にしておったのはおぬしらなんじゃがのう。国から勝手にそのような汚名を着せられて、わしは大層傷ついておったんじゃが...グレイ、おぬしはどう思う?」
静かに一歩前に出たグレイは、冷たく響く声音で言った。
「ラソリーニさま、あなたの提案は、いささか筋違いかと存じます」
その声に、会議室の空気が一瞬で凍てついた。
「無理難題を権蔵さまに押し付け、婚約破棄の口実を探ろうとする魂胆が見え見えでございます」
ラソリーニは、まるで計算が狂ったかのように、わずかに表情を歪めた。
「誤解でございます。そのような意図など毛頭。この提案は、ただ勇者殿の栄誉を讃え、我が国との絆を深めるためのものに過ぎません」
「ほう、あくまでも我々の名誉を回復するためとおっしゃる」
グレイは獲物を前にした猟師のように、冷酷な微笑みを浮かべた。
「であれば、我々からも条件を提示させていただきましょう。まず、国として権蔵さまを『山賊勇者』と呼称した件、公式な謝罪を求めます。次に、ドルテナ要塞の完全なる自治権を我々に譲渡していただく。そして...」
グレイは一呼吸置いて、鋭い眼差しでラソリーニを射抜いた。
「レシア要塞奪還後は、その統治権を権蔵さまに委譲していただく。これが我々の条件です」
「な、何という無礼な! そのような途方もない要求など、到底受け入れられるものではありません!」
大臣たちが一斉に声を上げるが、グレイの放つ冷徹な威圧感に、その声は途端に萎んでいった。
「権蔵さま、これは紛れもない罠でございます。彼らは無理難題を突きつけ、婚約破棄の口実を作り、あまつさえ国の厄介な存在である権蔵様を討ち死にに追いやろうという魂胆以外の何物でもございません。どうか慎重にお考えを」
権蔵は一瞬にして表情を一変させ、グレイの傍らへと身を寄せた。その唇には危険な笑みが宿っている。
「ほう...おぬしら、このわしを罠に嵌めようと目論んでおったというわけか」
そのあまりにも非情な指摘に、大臣たちから小声で不満の声が漏れ聞こえる。
「やはり山賊勇者には道理が通じぬ。このような者と話し合いなど...」
「ラソリーニ卿、なんとか穏便に、オルレアヌから立ち去るよう説得していただけませぬか」
周囲の大臣たちが小声で懇願するなか、ラソリーニは深い思索に沈んでいた。
「ふむ、『山賊勇者』か。人はわしのことを蔑むがのう。だが、わしはただ己の欲望に忠実に生きているだけよ。美食に耽り、美しき者を愛で、気に入った相手を抱く。そのためなら、力づくで奪い取ることも厭わん。それがわしのやり方よ。のう、グレイ」
権蔵は挑発的な笑みを浮かべ、ゆっくりとグレイの腰に手を回した。
「はい、権蔵さま。この身はあなた様のもの。あなたこそが、俺にとっての絶対なる存在」
グレイは頬を朱に染め、権蔵を見上げる。
その淫靡な光景に、大臣たちは顔を歪めた。
「申し上げにくいことではございますが...勇者さまのご提案はとても受け入れられるものではございません。そして我々の側の条件をお断りになられるということは、当然、陛下との婚約の件も白紙に戻さざるを得ないことになりますが...」
アンリの震える声に、権蔵は月夜の狼のような笑みを浮かべた。
「それがどうした」
「は...?」
権蔵はゆっくりと立ち上がった。緋色のマントが闇夜の翼のように翻る。
ドルテナを支配して以来、彼は誰にも縛られることなく、己の欲望のままに生きてきた。
邪魔する者は容赦なく排除し、勇者の力を以って己の意志を貫いてきた。
そんな自分に楯突こうとする貴族どもの愚かさに、権蔵は心の中で嘲笑を浮かべた。
彼らは自分の力が及ばぬことを知らぬのか。それとも、知っていながらも虚勢を張っているのか。
権蔵は魔王の再来を思わせる威圧的な姿勢で会議室を睥睨した。
大臣たちの息遣いが止まり、空気が凍てつくのを感じる。
この恐怖に満ちた静寂こそが、己の力を証明していると、権蔵は満足げに感じていた。
「申し訳ございません、勇者さま。我々の言葉が無礼に感じられたこと、心よりお詫び申し上げます。どうか、改めて我々の真意をお聞き届けくださいませ」
ラソリーニは深々と頭を下げ、その姿はまるで罪を悔い改める罪人のようだった。
「げへへ、今更土下座されても遅いのう。そうじゃな、わしがこの国を手中に収めた暁には、おぬしらを裸にひん剥いて城の装飾品にしようかのう。貴族どもが吊るされる姿は、一見の価値ありじゃろうて」
権蔵の残虐な言葉に、大臣たちの顔から血の気が引いていく。
しかし、その圧倒的な威圧感を前に、ラソリーニはまるで老獪な古狐のように、妖しく微笑んだ。
「さすがは勇者さま。その豪胆さこそ、まさに英雄の証。では、あなたさまのお怒りを鎮めるため、特別な献上品をご用意させていただきましょう」
ラソリーニが目配せをすると、侍従が音もなく裏手の扉を開いた。
そこから現れたのは、三人の美しい少年たちだった。
「おお、これは素晴らしい!」
権蔵は目を輝かせて、その少年たちに歩み寄る。
「なんという美しさじゃ。まるで森の妖精を人の姿に変えたかのようじゃわい!」
それは、まだ幼さの残る少年たちだった。年齢は十二歳前後だろうか。
透き通るような白い肌の少年が二人、褐色肌の少年が一人、みな華奢な体つきをしている。
三人はぞれぞれ鮮やかな栗色の髪、淡いピンク色、黒髪をしている。
そしてその顔立ちもまた、まさに宝石を人の形に変えたかのような美しさだ。
「いかがでございましょう、勇者さま。この者たちは特別に選りすぐった献上品でございます。どうぞ、思うがままにお楽しみくださいませ」
ラソリーニの言葉に、権蔵は舌なめずりをした。
「むふふ……たまらん逸品じゃのう。どの子から可愛がってやろうかのぉ」
「勇者さま、改めて懇願させていただきたく。北方のレシア要塞、ただそれだけでも攻略していただけましたら...勇者さまにはさらなる極上の褒美をご用意させていただく所存です」
ラソリーニは深々と頭を下げ、しかしその声音には蜜のような甘さが滲んでいた。
「ほう...極上の品とな? それはさぞかし旨かろうて」
権蔵はゆっくりとラソリーニを見つめた。
「げへへへへ、そなたはわしの喜ばせ方をなかなかわかっておるのぉ。よかろう、勇者であるこのわしが要塞だろうが、魔王軍だろうが、まとめて制圧してやるわ!」
権蔵は満足げに少年達の肩を抱く。
「心から感謝申し上げます。それでは、レシア要塞への遠征準備を整えさせていただきます。どうぞ、それまでの間、城内でごゆるりとお過ごしくださいませ」
ラソリーニの言葉に、大臣たちは胸を撫で下ろす。
そしてラソリーニとともに、まるで悪魔の巣から逃げ出すかのように、そそくさと会議場を後にした。
「げへへ、さすがはわがグレイよ。おぬしが言った通りやっぱこういう交渉のときはごねてみるもんじゃな。婚約の餌だけでなく、こんな可愛らしいオマケまで引き出せて。商人顔負けの手腕じゃな」
権蔵は上機嫌で、少年達の尻を触りながら労った。
少年たちは恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、されるがままになっていた。
「恐れ入ります。『子羊の産声』は、こうした駆け引きを生業としております。相手の出方を読んで、想定以上の見返りを引き出す。まるでチェスのような駆け引きを楽しませていただきました」
グレイは涼やかに答える。その巧妙な手腕に、権蔵は満足したような表情を浮かべた。
「ほう、チェスとな? ならわしは王か?」
「いいえ、権蔵さまはプレイヤー。盤上の駒を自在に操り、相手の王を追い詰める存在です」
「げへへ、なかなか粋な例えじゃな。おぬしのことをますます気に入ったぞ」
「身に余るお褒めの言葉、この身が震えるほどの悦びでございます」
グレイは薔薇色の頬を更に染めながら、艶めかしく微笑んだ。
「ああ、グレイよ。おぬしは城に残って婚約の詳細を詰めておけ。奴らの腹の中は真っ黒じゃ。後で不測の事態が起きぬよう、しっかりと取り決めを交わしておくのじゃぞ」
「はい。彼らの策略など、蜘蛛の巣のように掬い取ってみせましょう」
グレイは凛とした声で応え、深々と一礼した。