美少年ハーレムを作りたい!! ~モブおじだけど転生したらチート勇者でした。なので盗賊になって好き勝手に生きることにしました~ 作:とけそうだら
権蔵が両拳をゴキゴキと鳴らし、ニィ、と獰猛な笑みを浮かべて準備運動を終える。
対するマキシムもまた静かに闘気を練り上げ、紅蓮の大槍と深紅の長剣を構え直した。
槍は右手に低く、剣は左手に逆手で。
まるで猛獣が爪を研ぐかのような、静かな、しかし張り詰めた緊張感が謁見の間を満たす。
そして次の瞬間――空気が爆ぜた。
権蔵の視界から、マキシムの姿が一瞬にして消し飛ぶ。
瞬く間に懐に潜り込んだマキシムは、その勢いのまま、紅蓮の大槍を雷光の如き鋭さで突き出した。
狙いは寸分違わず権蔵の心臓。
「ふん、確かに速いな。……じゃが、ちっとばかし直線的すぎやしねえか、じーさんよぉ!」
常人ならば反応すらできぬであろう神速の突き。
しかし、勇者の力により、規格外の動体視力を持つ権蔵にとっては、コマ送りの映像のように捉えることができた。
権蔵は最小限の動きで槍の穂先を左手の手刀で逸らすと同時に、右の裏拳をマキシムのがら空きの顔面へと叩き込もうとする。
巨漢の体重が乗った、必殺の一撃。
だが――
キィンッ! と甲高い金属音。
権蔵の拳が届く寸前、死角から閃いたのはマキシムの左手に握られた深紅の長剣。
剣身が権蔵の拳側面を滑るように受け流し、衝撃を殺す。
同時に、マキシムの姿がまるで陽炎のように揺らめき、権蔵の拳は虚しく空を切った。
「なっ!? ちぃっ、剣で受け流しおったか! しかも消え――」
権蔵が驚愕に目を見開いた、まさにその刹那。
「隙だらけですぞ、勇者殿!」
声は背後から。
いつの間に回り込んだのか!?
権蔵が反射的に振り向きざまに腕でガードした瞬間、今度はマキシムの左足から放たれた重い回し蹴りが襲いかかる。
老人のものとは思えぬ凄まじい衝撃。
「うおっ!」
権蔵は衝撃に体勢を崩し、数メートル後方へと吹き飛ばされる。
床に叩きつけられる寸前で踏みとどまり、砂塵を巻き上げながら着地した。
顔を上げると、さっきまで背後にいたはずのマキシムが、何事もなかったかのように再び権蔵の正面、数メートル先に槍と剣を構えて立っている。
「……ほぉ。なるほどな、伊達に王国最強と呼ばれているわけではないな。面白いじゃないか」
権蔵の口元に、ようやく愉悦の色が戻る。
「お褒めに預かり光栄ですな。ですが、何度やっても結果は同じ。その程度の動きでは、私の『
マキシムは静かに告げると、再び動いた。
今度は直線的な踏み込みではない。
まるで燃え盛る炎が揺らめくかのように、不規則かつ滑らかな歩法で権蔵を幻惑し、距離を詰めてくる。
槍が右から突き出されたかと思えば、次の瞬間には左から剣が薙ぎ払ってくる。
上段への突きはフェイントで、本命は下段への足払い。
縦横無尽、変幻自在。
二つの武器が異なる軌道を描き、権蔵を翻弄する。
「くそっ、ちょこまかと!」
権蔵は両手両足を駆使し、迫りくる槍と剣の怒涛の連撃を捌いていく。
時に拳で弾き、時に頭突きで逸らし、時には敢えて攻撃を受け流してカウンターを狙う。
だが、マキシムの動きは老練そのもの。
権蔵の反撃は全て読み切られ、的確な剣捌きと槍捌きでいなされ、逆に体勢を崩される。
攻防は激しさを増すが、主導権は完全にマキシムが握っていた。
(こりゃあとんでもない……槍と剣、別々の動きで完全に連動しておる。しかも、あの妙なステップ……ただ速いだけじゃねえ。動きがまるで掴めん。炎の揺らめきみたいに、どこが実体でどこが虚像か……クソ、厄介な!)
権蔵が思考を巡らせた一瞬の隙。
マキシムの姿が、ふっと掻き消えた。
気配すらも。
「っ!? また消えたぞい。どこ行きやがった、あのじーさん!」
権蔵が油断したように周囲を見回した、その時。
「ふむ、どうやら私の『流炎歩』の真髄、勇者殿でも見切るのは不可能でしたかな」
権蔵が「ん?」と首を傾げた瞬間、頭上に急速に広がる複数の巨大な影と、凄まじい熱量を感じ取った。
「――真上かっ!」
見上げると、そこには直径三メートルはあろうかという巨大な炎の球が十数個、まるで隕石群のように降り注いでくるところだった!
「ちょ……マジかよ、爺さん! 王様の城なのにやりすぎだろ!」
さすがにこれには肝を冷やした権蔵は、慌ててその場から飛び退く。
だが、炎球の雨は正確に権蔵を追尾し、数発が避けきれずに肩と背中に炸裂した。
ゴォンッ! と凄まじい爆発音と熱波が謁見の間を襲い、周囲の瓦礫や粉塵が激しく舞い上がる。
権蔵の視界が一瞬、爆炎と土煙に遮られた。
「げほっ、げほっ……! くそっ、熱っちぃだろうが! ……って、今度はなんだ!?」
視界が晴れる間もなく、舞い上がる土煙の向こうから、無数の赤い閃光が飛来するのを権蔵は捉えた。
それは――紅蓮の闘気を纏った、実体を持つかのような極太の槍の穂先。
「ほれ! まだまだ参りますぞ! 『炎槍・百花繚乱』!!」
マキシムの力強い声と共に、権蔵の周囲の空間に、さらに数十、いや百を超える炎槍が出現。
それらは一斉に、音速すら超えるかのような速度で権蔵目掛けて殺到する。
爆炎による視界不良と、槍の弾幕、回避不能の波状攻撃。
「ぐおおおおおおおおっ!!!」
全身に無数の槍が突き刺さるかのような、凄まじい衝撃の嵐。
『勇者』の規格外の肉体は、それでも致命傷には至らない。
だが、衝撃までは殺しきれない。
権蔵は為す術なく後方へと吹き飛ばされ、謁見の間の壁に背中から叩きつけられ、ゴシャッ! と鈍い音を立ててようやく止まった。
「いってぇ~~……マジで容赦ねえな、あのクソジジイ……!」
壁からずるずると崩れ落ち、埃を払いながらなんとか立ち上がった権蔵は、忌々しげに舌打ちした。
体に突き刺さったかに見えた無数の炎槍は、実体を持たぬ魔力の残滓となって掻き消えていたが、その衝撃は本物だった。
少し離れた場所では、マキシムが紅蓮の大槍と深紅の長剣を構えたまま、涼しい顔でこちらを見据えている。
その老いた体躯から放たれる闘気は、先ほどよりもさらに鋭さを増しているように感じられた。
(……ったく、化け物かよ、あの爺さん……!)
権蔵は内心で悪態をつく。
その、一瞬生まれた張り詰めた静寂の中、少し離れた場所で控えていた権蔵の側近たちは、主の預かり知らぬところで、ひそやかに言葉を交わしていた。
「わぁー、すごい! ご主人さまがおじいさんに押されてる! あのライオンさんより強いんですか!?」
カイトが、まるで面白い見世物でも観戦しているかのように、無邪気に目を輝かせて声を上げる。
「……黙っていろ、カイト。今は状況をよく見ておけ」
静かに
目隠しの下で、彼は冷静に相手の力量を分析しているようだった。
「あれはマキシム・レステンクール。オルレアヌ王国にその人ありと謳われる『剣聖』。そしてもう一つ……古きを知る魔族ならば誰もが震え上がるであろう、『竜殺し』の異名を持つ……生ける伝説、だ」
「りゅーごろし? ドラゴンを倒したんですか? すごーい! でも、ご主人さまも北ででっかいアイスドラゴン、やっつけちゃいましたよ! じゃあ、やっぱりご主人さまの方がすごくて強いですよね!」
カイトは得意げに胸を張り、主の武勇伝を疑うことすらしない。
グレイは小さく息をつくと、淡々と事実を告げる。
「……彼が
グレイの淡々とした説明に、カイトの表情がわずかに曇る。
「ええっ!? じゃあ、あのおじいさんってご主人さまがライオンさんを倒したのと同じくらい、すごいってことですか!?」
「……ああ、そういうことになるかもしれんな。それだけではない。あの老練な技量……変幻自在の剣と槍の連携、そしてあの、くすぶる炎のように揺らめき、相手の認識すら幻惑する不可思議な歩法……。正直に言って、俺の剣では、おそらくマキシムの足元にも及ばないだろう。……だが」
グレイの視線が、再び立ち上がり、まさにこれから反撃に転じようとするかのように、不敵な笑みを浮かべようとしている権蔵へと向けられる。
その声には、揺るぎない、絶対的なまでの信頼が宿っていた。
「……権蔵さまならば、きっと……我々の想像を超えた何かを、見せてくださるはずだ」
グレイとカイトのひそやかな会話が、張り詰めた謁見の間に流れる。
権蔵はその内容を知る由もなかったが、ただ目の前の老将が放つ尋常ならざるプレッシャーだけは、肌でビリビリと感じ取っていた。
そして、マキシムがゆっくりと口を開いた。その声は穏やかだが、有無を言わせぬ圧力を伴っている。
「ほっほっほ。どうですかな、勇者殿。そろそろ降参なされても、よろしいのでは? これ以上は、お互いのためになりませぬぞ」
マキシムは、まるで出来の悪い孫に根気よく言い聞かせるかのように、穏やかな口調で降伏を促す。
だが、その双眸の奥に宿る光は、一切の油断も慈悲も映してはいない。
老獪な戦士の目が、獲物の僅かな動きも見逃すまいと光っている。
(……くくっ、このクソジジイ、やっぱり強ぇわ……! 口調は呑気だが、全然隙がねえ。それに、まだ何か隠してやがる気配がプンプンするぜ。こっちも全然、まーったく本気じゃねえが、ここまで手玉に取られたのは異世界に来て初めてかもしれん。
強敵との死闘、血湧き肉躍る感覚。
権蔵の胸に、久しぶりに闘争本能という名の炎が燃え上がるのを感じた。
「ふん、誰が降参なんかするもんかい、ボケナスじじい! わしは最強最悪、無敵の勇者権蔵さまなんじゃぞ。こんなところでくたばってたまるか! わしの美少年ハーレム計画はまだ始まったばかりなんじゃ! お前こそ、さっさとその槍と剣を捨てて、わしの前にひざまずき、靴でも舐めて命乞いする準備をせい!」
権蔵は瓦礫を蹴散らしながら立ち上がり、いつもの下品な笑みを浮かべて言い放つ。
その言葉を聞いたマキシムは、しかし怒るでもなく、ただ心底残念そうな顔をして、静かに溜息をついた。
「やれやれ……これだから、最近の若造は……。言葉遣いがなっておりませぬな。そのような下品な物言い、一体どこで覚えてこられたのやら……」
(はああぁ!? なんだこのクソジジイ、このクソ忙しい戦闘中にマジで説教垂れてんのか!? しかも中年のわしを『若造』じゃと? 確かに取り巻きの少年からイケメンだのかわいいだの齢の割には若いだの言われるが……まあ、じいさんから見たらわしって二十台の若者にでも見えるのかもしれん……。って、いかんいかん! このじじいのペースに乗せられるところだったわい! こいつ、絶対わしを油断させるためにわざとやっておる!)
権蔵が内心で毒づいている間にも、マキシムの説教は続く。
「やれやれ……その口の利き方、まるで聞き分けのない子供のようですな。力ばかりが先行し、言葉に品性も知性もまるで感じられぬ。それでは真の『勇者』とは到底呼べませぬぞ。真の強さとは、力だけでなく、それを律する礼節と自制心があってこそ輝くもの。貴殿には、その根本が致命的に欠けているように見受けられますな。まずは人としての最低限の礼儀作法、そして言葉の重みというものを、一から学び直されてはいかがかな? そして一人の人間として、いや、生物として最低限の尊厳を―――」
(………………なっっっげぇええええ!! 聞いてるこっちの耳が腐るわ! ……あー、なんかこの感じ、デジャヴュが……そうだ、あのクソガキ、ジュリアンと同じじゃ! このネチネチネチネチと、人の神経を逆なでする感じ! まるで脳みそに直接ヤスリでもかけられてるみてえな不快感! さすが血は争えないのう!)
権蔵は込み上げる強烈なイライラを顔には出さず、マキシムの長々とした説教を右から左へと聞き流すフリをしながら、反撃の隙を虎視眈々と窺っていた。
(――いや、待てよ? こやつ、説教に夢中で、さっきより明らかにガードが甘くなってる……くくっ、これは好都合じゃないか! 今度こそ、今度こそあの偉そうなツラに、一発、デカいのをぶち込んでやるぞい!)
権蔵は内心の悪態と共に、再びマキシムとの距離を一瞬で詰める。
狙うは渾身の右ストレート。
今度こそ捉え――
だが、その瞬間。権蔵の拳がマキシムの顔面に届くよりも早く、マキシムの左手の長剣が閃いた。
剣身が権蔵の拳を巧みに受け止め、流す。
同時に右手の槍の石突が、体勢を崩した権蔵の足元を鋭く払う。
「なっ――!?」
完璧なカウンター。
権蔵は完全に体勢を崩され、無様に地面に転がされた。
「くっ……! このクソじじい……! やりやがったな!」
「ほっほっほ。まだまだ。若い者には負けるわけにはいきませぬな」
マキシムは倒れた権蔵を見下ろし、静かに告げる。
「勇者殿。貴方のその身体能力は、確かに規格外。神に選ばれ、この世界に召喚されただけのことはありましょう。ですが……その、あまりにも強大すぎる力の使い方が、絶望的に稚拙で未熟。動きはまるで素人同然。ただ力任せに腕を振り回すだけ。これでは、まさに『宝の持ち腐れ』というものですな」
「うっ……! だ、だってしょうがないじゃろうが! 前世じゃ、しがないモブおじさんで、喧嘩の一つもしたことなかったんじゃし!」
思わず弱音が口をついて出る。
権蔵は、幼少期に相撲を少しかじっただけで、小さいころから喧嘩とは無縁の陰キャ人生を歩んできたのだ。
それを聞いたマキシムは、今度こそ心底呆れ果てたという表情で、天を仰いだ。
「…………やれやれ。あなたは……本当に、あの『勇者』なのですかな? 私には、とてもそうは思えませぬが……」
(……くそっ……! なんか知らんが、めちゃくちゃ腹が立ってきた! このクソジジイ、完全にわしを見下してやがる!)
久しぶりに、権蔵の腹の底でマグマのような怒りが沸騰した。
そうだ、もう我慢ならん。全てを破壊し尽くしたい衝動に身を任せればいい。本気を出せば、この偉そうな老いぼれなど一瞬でミンチにして、謁見の間の肥やしにしてやれるのだ。
しかし…………。
それをやってしまえば、どうなる?
この謁見の間が消し飛ぶだけでは済まない。
王城が崩壊し、王都が更地になり、最悪、このオルレアヌという国そのものが地図から消え去るかもしれない。
そうなれば、王国の財宝も、食料も、民も、何もかもが失われる。
そして何より――あの、この世で最も美しいであろう少年王エリオットや、権蔵が手塩にかけて育てたドルテナの可愛い子羊たち、そしてこれから出会うはずだった無数の美少年たちが、跡形もなく消え去ってしまう……!
理想の美少年ハーレム創設! そのために、この三年間、どれだけ苦労してきたと思っている!
そんな最悪のバッドエンドだけは、絶対に、絶対に許容できるわけがなかった。
だが、かといって、このまま手加減していて勝てる相手か?
否! このクソジジイは、権蔵の規格外のパワーをもってしても、簡単には倒せない。
先ほどの一連の攻防で、それは嫌というほど骨身に染みた。こと戦闘技術においては、天と地ほどの差があるのだ。
(――なら、いっそ……。このままエリオットきゅんを小脇に抱えて、とんずらするか……?)
いや、ダメだ。
権蔵は内心でぶんぶんと頭を振る。
そんな無様な真似、できるわけがない。
ここで最強のジジイに尻尾を巻いて逃げ出したら?
無敵の勇者であるはずの自分に心酔している愛しい妾たちや、ドルテナで待つ子羊たちに、どんな顔で会えるというのだ?
きっと『権蔵様、だっさ!』『ヘタレ!』と失望され、軽蔑され、夢にまで見たハーレムが音を立てて崩壊してしまうかもしれない。
せっかく異世界で築き上げた、権蔵様を絶対の父として頂点に戴く、美少年たちに囲まれた歪んだ理想郷……それが崩壊するなど、死んでもごめんだった。
ならばやはり、道は一つ。
今、この場で、この邪魔なクソジジイを、なんとかして倒すしかない。
だが、どうやって?
あの老獪な防御技術をどうやって突破する?
本気を出さずに、どうやってダメージを与える?
(…………あれ?)
その時、ふと、瞬間的に、まるで悪魔が囁くかのように、一つの突拍子もない考えが、権蔵の脳裏をよぎった。
(もしかして……このジジイの鉄壁のガードを……あの、禁断の『技』でなら、破れるんじゃねえか……?)
そう思いついた瞬間、権蔵の体の奥底から、抑えきれない笑いが「ぶひっ」と漏れた。
(そうじゃ! なぜ今まで気が付かなかった! こいつにはあるじゃないか! 隠しようがない、目に見える、明らかな弱点が!)
なんという簡単なことだったのか!
権蔵には最初から、最強にして最悪の切り札があったではないか!
(ぐふふふ、さすがわし! 冴えわたってるぜ! まさに悪魔的発想!)
権蔵は内心でほくそ笑み、自画自賛する。そして、にやりと口角を吊り上げてマキシムに向き直った。
「じいさんよ、わしに勝つつもりなんじゃろ? だったら遠慮はいらんぞ。本気でかかってこいよ!」
突然の権蔵の言葉に、マキシムは怪訝そうな顔をした。
「何を当たり前のことを。私はあくまで勇者殿を倒すつもり。本気でなければ、貴殿を打ち倒し、この国を守ることなどできませぬからな」
当然のことのように語る老紳士に、権蔵は不敵な笑みを深める。
(そうかよ。ならばこちらも遠慮はいらんな。――思いっきり、どでかい花火をぶちかましてやるぞい!)
「ゆくぞじいさん、覚悟しやがれ! ふおおおおおおおおおおおお!!」
権蔵は両の拳を強く握りしめ、大地を揺るがすほどの雄叫びを上げると、次の瞬間、躊躇いなく自身のズボンを一気に引きずり下ろした。
刹那、彼の股間から、常軌を逸した眩い光が迸った。
それは聖なる輝きとは程遠い、禍々しくも力強い、異様な燐光だった。
そして、光の中心――権蔵の『イチモツ』が、生物の限界を超えたかのように脈打ち、見る間に異常なまでのサイズへと膨張を開始した。
「きゃああああああああっ!!」
謁見の間という神聖な場で繰り広げられた、ありえない、あまりにも破廉恥な光景に、貴婦人たちの絶叫が響き渡る。
その、もはや生物のそれとは思えぬ規格外の質量を放つ『肉塊』に、その場にいた全ての者が――シャルロットも、玉座のエリオット王とその側近たち、そして居並ぶ貴族たちまでもが言葉を失う。
周りの異様な視線を一身に浴びながらも、権蔵は意に介する様子もなく、なぜかマキシムがいる方向とは真逆へと駆け出した。
まるでこれから放つ『何か』の射程を計算するかのように、あっという間にマキシムから大きく距離を取る。
「な、なんとっ!? 勇者殿!? そのような破廉恥極まるものを衆目に晒した上で、あろうことか勝負から逃亡するおつもりか!」
遠くでマキシムの、動揺と怒りが入り混じった声が響いたが、権蔵はせせら笑うかのように無視した。
彼の意識は、もはや目の前の『剣聖』ではなく、自らの内に漲る異様な『力』と、これから放つであろう前代未聞にして最低最悪の『一撃』にのみ注がれていた。
「ぬんっ!! どりゃああぁあああーーー!!!」
権蔵は一直線に壁際へ駆けた。そこには打ちひしがれ、動けずにいた金髪の美少年――ジュリアンの姿があった。
凍りついたように動けない少年の眼前に、己の禍々しい肉棒を誇示するように突きつけると、、少年が恐怖に息を呑んだ一瞬の隙を突き、いとも容易くその背後に回り込んだ。
そして、抵抗する間も与えず、華奢な首に太い腕を絡め取る。
「――ひぃっ!? う、うわあああっ! き、貴様っ、何を!? 離せ! この、変態勇者め! 今すぐ私から手を離せぇえええ!!」
突然の屈辱にジュリアンの顔が真っ赤に染まる。騎士のプライドも何もかも捨てて足をばたつかせ、金切り声を上げた。
だが、権蔵はその涙目の抵抗を鼻で笑い、ジュリアンを盾にするように抱えたまま、ゆっくりとマキシムへ向き直る。
その顔には、悪魔も逃げ出すような下卑た笑みが浮かんでいた。
「ぐへへへっ! どうだ見たか、じーさんよ! これぞ我が新奥義! その名も『可愛い孫を人質に、じーちゃんをボコボコにする殺法』よ!」
下衆な笑い声が、水を打ったように静まり返った謁見の間に、不快に響き渡った。
勇者の所業とは到底思えぬ、あまりにも卑劣で冒涜的な行為。
神聖なる王の間は、今や一人の男の歪んだ狂気によって穢され、絶対的な恐怖と絶望に支配されていた。