※この作品はR-18です。

美少年ハーレムを作りたい!! ~モブおじだけど転生したらチート勇者でした。なので盗賊になって好き勝手に生きることにしました~   作:とけそうだら

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第37話 ジュリアンのお使い②

 

そして現在――。

 

 屈辱に震える手でくしゃくしゃになった買い物リストを握りしめ、ジュリアンは王都の商業区を、とぼとぼと一人歩いていた。

 権蔵から押し付けられた“愛妾の義務”――それは、名誉を剥ぎ取る鎖そのものだった。

 

 

(……どうして、あんな男の言いなりにならなければならないんだ……)

 

 胸の奥で煮えたぎる怒りを、必死に噛み殺す。

 ――けれど同時に、胃の奥からじっとりと熱が這い上がってくるような、妙な感覚があった。

 

 出かける前に、権蔵に差し出された甘ったるい香りの飲み物。

 「気つけだ」と笑っていたが――口にした瞬間から、舌に痺れるような甘苦さが残っていた。

 

(……あの飲み物はなんだったんだ……いや、考えるな。今はあいつへの怒りだけで十分だ……)

 

 汗がにじむ。季節のせいではない。体温が妙に上がり、心臓が鼓動を速めている。

 

 “お使い”とはいえ、買うのはまともな商品ではない。

 卑猥なドレス、淫靡な小道具、そして精力剤まで――まさしく夜を彩るための品々ばかり。

 

(この変態……! 本当にエロいことしか頭にないのか……)

 

 怒りと羞恥で視界が熱を帯びる――その熱に、さっきから身体の奥に巣食う妙な火照りが、静かに混ざり始めていた。

 だがそれでも“美少年ハーレムの掟”を破るわけにはいかない。

 逆らえば今度こそ、自分を疎んでいるグレイに追い出されるだろう。

 そうなれば、今までの忍耐も努力も水泡に帰す。

 

(……偽りの勇者、権蔵。忌々しいが、あいつの力だけは本物だ。もし暴れれば、この国ごと容易く揉み潰せる。……だから、今は耐えるしかない)

 

 勇者の称号を汚し、己が欲望のままに卑劣な真似ばかりを繰り返す――そんな男を野に放つわけにはいかない。

 どれほど自分が踏みにじられようとも、王国の騎士として、エリオット王の忠実な臣下として、この獣の牙が愛する人々に向かわぬよう見張り続ける。

 それが自分に課した最低限の使命だった。

 

 ……だが、その決意すら邪魔するように、脚の付け根あたりにまで熱が満ちてくる。

 下着の中がじわりと湿る感覚に、ジュリアンは歯を噛みしめた。

 

(……やはり、あの飲み物……! くそっ、今は耐えろ……)

 

 胸の奥に渦巻く怒りと屈辱を押し込み、重い足を前に踏み出す――。

 だが、そのなけなしの意地すら、あっさりと侵食する声が降ってきた。

 

「ねぇ、ママー。あのお兄ちゃん、なんで裸みたいな服着てるの?」

 

 あまりにも無垢な、少女の問い。

 たった一言なのに、王都中のどんな嘲笑よりも鋭く、ジュリアンの心を抉る。

 

「こら、見ちゃいけません!」

 

 母親が慌てて娘の目を覆い、その場を足早に去っていく。

 ジュリアンは反射的に胸元と股間を両腕で隠した――

 羞恥だけじゃない。そこを隠さねば、ほんのりと熱を帯び始めた中心部が、余計に目立ってしまうのが怖かった。

 

「……っ……」

 

 守るべき人々から向けられる、好奇とわずかな軽蔑。

 誇り高き騎士だったはずの自分が、王都の真ん中で晒し者として笑われている。

 誰もが、自分を変質者として品定めしている気がした。

 

 視界が滲む。街並みも、祭りのざわめきも遠く霞む。

 今、自分を包むのは誇りではなく、恐怖と屈辱――そして、どうしても消えない内側からの熱だ。

 

“憧れの公爵家の嫡男”

“第一騎士団長の弟”

“伝説の剣聖の孫”

 

 かつて胸を張った称号たちは、今やどこにも残っていない。

 

「……うぅ……嫌だ……こんなの……耐えられない……。この街には、私を知る人も大勢いるのに……どうして私が……こんな目に……」

 

 涙がこぼれそうになるのを、唇を噛んで堪える――同時に、下着越しに脈打つ熱を必死に意識から遠ざける。

 ここで崩れてしまえば、自分で自分を許せなくなるのが分かっていた。

 

 それでも、ジュリアンは拳をぎゅっと握る。

 

(この国と街、この人々を護るために……どれだけ泥を啜ろうとも、私はレステンクールの名に恥じぬ信念を通す!)

 

 魔王軍の影が迫る今、偽りであろうと権蔵の力なくして王国は守れない。

 だから、どれだけの屈辱と、この得体の知れぬ熱を受けても、あの男の傍に立ち、見張り、導くしかない。

 

 ――いつか必ず、彼を「本物の勇者」に変えてみせると信じて。

 

「ふ、ふふ……ははははは!! 見ていろ、“偽勇者”権蔵! この私が、必ずやお前に“真の勇者”の在り方を叩き込んでやる!」

 

 たぎる決意は、熱に浮かされたように口を衝いて飛び出した。

 だが、それが王都の大通りに響き渡った瞬間――ざわついていた市場のざわめきがすっと消え、空気が凍り付く。

 

 通りの人々の視線が、一斉にジュリアンへと注がれた。

 

「「「…………」」」

 

 全身を貫く、息苦しいほどの沈黙。

 次の瞬間――張り詰めていた心の糸が、ぷつりと音を立てて切れる。

 

 ぴょこん――。

 

 薄い下着など物ともせず、股間の小枝のような幼茎が、不意に上を向く。

 包皮に守られた、あまりにも無垢な形のそれが、誰の目にも分かるほどに弾けるような昂ぶりを見せ、完全な勃起を晒していた。

 

「ぁ……え……?」

 

 呆然と立ち尽くすジュリアン。

 人々の視線は顔から順に滑り落ち、やがて下腹部へ――息を呑む音が、あちこちから漏れる。

 

「……や、あ……!」

 

 慌てて股間を両手で覆う。

 だが、その輪郭も、先端にきらめく透明な雫も、もう隠し切れない。

 

「う……これは……違うっ……ちがうんです……!!」

 

 羞恥と混乱が脳を真っ白に染めていく。

 同時に、胸の奥で燻っていた熱に油が注がれた。

 

(まさか……あの飲み物……!)

 

 出かける前、権蔵から手渡された甘ったるい液体。

 ――あれはただのジュースなどではなく、“催淫剤”だったのだ。

 

 そう気づいた瞬間、顔から耳の先までが一気に熱くなる。

 股間を必死に隠しても、膝は勝手に崩れ、下着の奥でぬるりと艶めいた水音が響いた。

 

(うぁ……! ま、また……)

 

「あ……あぁ……♡」

 

 込み上げる甘い眩暈。視界がにじみ、息が荒くなる。

 胸の奥から湧き上がる切なさが、全身を支配していった。

 

 ――もう、限界だ。

 

「う……うぅ……!」

 

 ジュリアンは唇を噛み締め、震える脚に力を込める。

 ぎこちない内股のまま歩き出すが、その足取りは先ほどよりも明らかに遅い。

 

(……誰にも……見られたくない……!)

 

 張り詰めた中心が歩くたびに布地越しに擦れ、余計に甘く痺れる。

 周囲の人々は露骨に距離を取り、ひそひそ声が飛び交う。

 

「今の、見た?」

「あれ……レステンクール公のご子息、ジュリアン様じゃない?」

「『白銀の戦乙女』シャルロット様の弟よね? でも、どうしてあんな姿……」

「顔は綺麗なのに……やっぱり噂通り、壊れかけてるのかも」

 

 囁きは鋭い棘となって鼓膜を刺す。

 

(美しいが、裸同然で奇声を上げ、さらに人前で興奮して勃起する変態貴族)――

 

 そんな最悪の烙印が王都中に広がる未来が、脳裏をよぎった。

 

(……消えたい……穴があれば、そのまま地の底まで……)

 

 羞恥が全身を焼き、顔は朱に染まる。

 それでもジュリアンは――唇を噛み、必死に足を前へ運ぶ。

 

(……私は……もう、終わりかもしれない……。いや、今はどうでもいい。これ以上余計な注目を浴びず、一刻も早く買い物を終えて、この地獄から抜け出すんだ……)

 

 息を荒げながら、市場通りを股間を庇うように押さえて早足で進むジュリアン。

 その耳に、不意に空気を裂く絶叫と轟音が飛び込んだ。

 

「――きゃあっ!」

「魔物だ! 魔物が出たぞっ!」

 

 ざわめきが悲鳴に変わり、賑やかだった市場の空気は一瞬で張り詰める。

 通りの先――黒煙を押し割って、五体の魔物が姿を現した。

 牙を剥き、鞭のような尾を唸らせながら、商店を力任せに破壊し、群衆へと躍りかかる。

 瞬く間に混乱と恐怖が広がった。

 

「こんな時に……魔物だと……!」

 

 ジュリアンは反射的に腰へと手を伸ばす――だが、そこにはあるべき重みがない。

 そうだ。今朝、慌てて宿を出たせいで、剣を置きっぱなしにしてきたのだ。

 

「どうする……武器がない……それに……」

 

 視線が、無意識に下へ落ちる。

 催淫剤のせいで張り詰めた中心が、下着越しに主張をやめない。

 この状態で戦えば――恐怖よりも、別種の悪夢が脳裏をかすめた。

 

(……笑い者になる……いや、それでも……)

 

 耳に飛び込む、子どもの泣き声。押し寄せてくる人波。

 胸奥でくすぶっていた羞恥が、騎士としての矜持に押し流されていく。

 

「……そんなこと、どうでもいい! 民を守ること、それだけを考えろ!」

 

 己を叱咤し、ジュリアンは拳を固める。

 素手でも構わない――一歩でも魔物の前に立ち、盾となる。

 それが今、この瞬間に、自分が果たすべき使命だ。

 

「来るなら来い! オルレアヌ王国第一騎士団の一人、ジュリアン・レステンクールが相手だ!!」

 

 決意の重みを足裏に乗せ、踏み出そうとした――その刹那。

 

 轟音を切り裂くように、ひとつの巨大な影が通りへ躍り出た。

 太陽を背負った鍛え上げられた巨躯。褐色の肌が黄金に輝く。

 男は無言のまま、大剣を抜き放つと、野獣も人も見つめる中で迷いなく振り抜いた。

 

 疾風の如き剣さばき――

 一閃、二閃、三閃!

 

 気がつけば、五体の魔物はすべて地に伏し、動きの影も残っていなかった。

 市場に漂うのは、呆然と立ち尽くす人々と、戦いの余韻を切り裂く静寂のみ。

 

「皆さん、ご安心を。魔物は全て討ち果たしました。怪我をした方はおられませんか?」

 

 堂々たる声が響く。

 恐怖と驚愕が入り混じった市場のざわめきが、次第に歓声と安堵へと変わる。

 誰もが、その男の背中を“救いの騎士”と認めていた。

 

(まさか……この人は――)

 

 陽光を遮るほどの巨躯。褐色の肌。鋭さと温もりを併せ持つ眼差し。

 市場のざわめきを一瞬で塗り替える、圧倒的な存在感。

 ジュリアンの記憶が追いつき、名を思い出す。

 

――間違いない。この人は――

 

「ゼウバルモ先生……!」

 

 男がゆっくりと振り返る。

 その笑みに、懐かしさと威厳が滲む。

 

「おっと、ジュリアンじゃないか? 久々に見たが、お前の甘えん坊顔はすぐ分かるな!」

 

 ――ゼウバルモ・フォン・アルマゲスト男爵。

 騎士道を体現する英雄であり、ジュリアンが幼少期に剣を学んだ師のひとりだ。

 

「先生……! 本当にお久しぶりです!」

 

 思わず声が震えた。

 凛然たるその姿に、先ほどまでの不安が一瞬で消え去ってゆく。

 

「元気そうだな、ジュリアン。変わった様子もないようで安心したぞ」

 

「はい、先生こそお元気そうで何よりです」

 

 五年ぶりの再会――幼かった頃、ゼウバルモの背を追い、無邪気に甘えた記憶が鮮やかに蘇る。

 今は騎士としての誇りが、抱きつきたい衝動をなんとか抑えている。

 市場の喧騒の中、涙なんて見せられない。大人の騎士として、師の威厳に恥じぬようにと心を律する。

 

 そんな生真面目さを、ゼウバルモはどこまでも余裕のある笑顔で受け止めてくれる。

 

「はっはっは! 何だその手は。“俺に飛びつきたい”って顔してるが、さすがに市場の真ん中じゃ止めておけよ?」

 

「うっ……!」

 

 師の冗談に、ジュリアンは思わず固まってしまう。

 

「はは、まったく。お前は小さい頃から筋金入りの甘えん坊だったからな!」

 

「だ、誰が甘えん坊ですか!」

 

 反射的に言い返しながらも、胸には懐かしい温もりが広がっていく。

 憧れの師と、揺るぎない騎士の背中。

 今も変わらず自分を見守ってくれる、この絆こそが、ジュリアンの心を支えている。

 

「違うと言い張るならその涙目を何とかしろ。だがまあ、昔の“ひよっこの公爵家の坊っちゃん”に比べりゃ、ずいぶん立派になったじゃないか。噂じゃ、王国第一騎士団が次世代のエースと目されているそうだな。ただ――顔つきはまだ幼子のままだな」

 

「う、うう……」

 

 “ひよっこの公爵家のお坊ちゃん”。

 幾度となく聞かされた師の口癖が、今は心の奥をくすぐる。

 憎らしいようで、温かい響き。

 

(先生……やっぱり、何も変わってないんだ――)

 

 姉シャルロットと一緒によく汗だくになって剣を振った日々。

 褒められたり、叱られたり、時には声を揃えて笑い合った記憶が、鮮やかに胸に蘇る。

 

 レステンクール領で別れて以来、長く会うことは叶わなかった。

 会いたいと姉のシャルロットに告げても――

 

『ゼウバルモ先生に会いたい? それは叶いませんわ。先生は王国の治安部隊で大忙し。あまりわがままを言っては駄目よ』

 

 いつもそう釘を刺されてきた。

 ――それがまさか、こんな場所で、こんな時に巡り会えるとは。

 夢にも思わなかった。

 

「先生は……あれから、お変わりありませんか?」

 

「おう、俺は相変わらずだ――……だが、お前、その格好は一体どういうことだ?」

 

「っ……!」

 

 しまった。

 師との再会の嬉しさに心が浮かれていたせいで、今の自分の“ビキニアーマー姿”をすっかり失念していた。

 懐かしさが一瞬で羞恥にとって代わり、ジュリアンの顔がみるみる真っ赤になる。

 

「ずいぶん派手な衣装だな。まさか第一騎士団も、最近はこういう奇抜な訓練でも流行らせているのか?」

 

 ゼウバルモ男爵の口調には、朗らかな笑みと、本気で心配する父親のような響きが混ざっていた。

 

「い、いえ、あの……」

 

 ジュリアンは慌てて言葉を探す。

 師に余計な心配はかけさせたくない一心で、とっさに理屈を並べる。

 

「えっと……これ、”くっころ騎士”という伝説の騎士の防具らしいんです。いま“勇者”殿の計らいで、訓練の一環として着せられてて――装備すると基礎能力が底上げされるとかで……見た目がちょっと派手なのは、その……仕様なんです……ははっ」

 

 必死に笑顔を作ってみせるジュリアン。

 その姿を、ゼウバルモはしばし黙して見つめていた。

 すべてを察しているような穏やかな眼差し――叱るでも、責めるでもなく、ただ温かく包み込む瞳。

 

「――そうか。話には聞いていたが、坊やはいま“山賊勇者”のところにいるんだな。」

 

 “山賊勇者”―――。

 それは勇者・権蔵についた、今や街でも蔑み混じりささやかれる渾名だ。 

 王国治安部隊の責任者ともなれば、勇者の悪評だけではなく、その数々の犯罪行為の事実を当然知っている。

 

「はい……はい、あの――山賊勇者のところです。」

 

「そうか……お前があの……下劣な男の下にいるのには、それなりの深い理由があるんだろう。だがな、何か困ったことがあれば、遠慮なく俺を頼るんだ。師として頼りないかもしれんが――お前のことは、今も昔も変わらず大事な弟子だと思っている。いつでも力になる」

 

「先生……」

 

 胸の奥まで染みわたる、素朴で力強い言葉。

 温かい、大きな安心感が全身を包む。

 それでも、その優しさに甘えてしまえば、少し前進しようとしていた自分の意志が壊れてしまいそうで――ジュリアンは強く自分を鼓舞する。

 

「……ありがとうございます、先生。でも……私は大丈夫ですから。」

 

 やっとのことで、それだけを口にした。

 

(――そうだ。私は一人じゃない。私のことを案じてくれる人が、ここにもいるんだ)

 

 心が、ほんの少しだけ強くなる。

 

「せっかく久しぶりに先生に会ったのに、こんな格好で申し訳ありません。もしよければ先生、どこかの店にでも入ってゆっくりと話でも……」

 

 勇気を振り絞って誘うジュリアン。

 その瞬間、ゼウバルモが淡く笑って首を振る。

 

「すまない、坊や。今は少し急ぎの用があってな。大っぴらには言えんが、最近この王都の近くに、とんでもない魔物――魔王軍の手の者が現れたって話があるんだ。」

 

「え……?」

 

「魔王軍“四狂将軍”の一体だ。まさか、奴らが実際にこの国に現れるとはな……」

 

「……四狂将軍っ……!」

 

 ジュリアンが思わず声を上げると、ゼウバルモは顔をしかめる。

 

「声を落とせ。――だからな…俺は伝説の仲間たち、『白き獅子』をまた呼び集めて討伐隊を結成するつもりだ。」

 

「『白き獅子』……! 本当に、あの伝説の……」

 

 師が若き日を捧げた冒険者パーティー――英雄譚の象徴に、ジュリアンの心は思わず熱くなる。

 

「……お前の姉、シャルロットにもよろしく伝えてくれ。あの子も、お前のことをきっと気にかけてる。だが、忘れるな。困ったときは、俺の屋敷でも孤児院でもいい。必ず――必ず、俺を頼れ。お前は一人きりじゃない」

 

 ゼウバルモは大きな手でそっとジュリアンの肩を叩き、豪快な笑顔を浮かべて人混みへと歩み去る。 

 その背中は、昔見た、あの頃のままでどこまでも頼もしかった。

 

 ジュリアンは、その背中が見えなくなるまで立ち尽くしていた。

 師を心配させまいと嘘をついたことに、小さな痛みを覚える。

 けれど、胸には確かな温もりと勇気が灯っていた。

 

(すみません、先生。本当のことは言えなかったけれど……でも私は今、勇者が暴走しないよう、傍にいて見張らなくてはならないのです)

 

 拳をぎゅっと握り直し、ジュリアンはもう一度、目的の店へ歩き出した。

 さっきより、ほんの少しだけ背筋を伸ばして。

 そして、再び頬を赤らめて股間を押さえながら―――。

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