美少年ハーレムを作りたい!! ~モブおじだけど転生したらチート勇者でした。なので盗賊になって好き勝手に生きることにしました~ 作:とけそうだら
「はぁ……はぁ……っ、や、やっと……買い終えた……。宿に、戻るぞ……!」
荷物を両手に抱えながら、ジュリアンはか細く、しかし安堵に満ちた息を漏らした。
権蔵に命じられた屈辱的な“お使い”は、これでようやく終わりだ。
先ほど、アダルトショップの奥で、未知のオナホールによって何度も強制的に射精させられた身体は、もはやどこにも力が入らない。
あれは、屈辱と快楽が入り混じった、悪夢のような儀式だった。
だが、そのおかげか、ほんの少し何かが触れるだけでぞわぞわと粟立つような過敏さは和らぎ、誰かの視線を感じるだけでガクガクと震えていた脚も、今はかろうじて彼を支えている。
しかし、下着の内側では、いまだに熱がじっとりと渦を巻き、彼の中心は、主人の意思に反して、勝手にその存在を主張し続けていた。
「くそっ、まだ収まらない……。あいつ……一体、何を飲ませてくれたんだ……。帰ったら、絶対に文句を言ってやるっ……」
震える指先、そして、知らず知らずのうちに艶を帯びる吐息。
発情状態が続く身体を引きずるように、ジュリアンは荷物を抱え直し、早足で人混みから逃れようとする。
(……この格好で、これ以上さらし者になるのはごめんだ。早く宿に戻りたい。誰にも見られず、ただ、休みたい……)
首をすくめ、周囲の目を避けながら石畳を踏み締める。
しかし、どれだけ急いでも、背後にまとわりつく粘つくような気配は、一向に離れてくれなかった。
じわじわと、しかし確実に強まっていく視線。
気のせいだと、必死に自分に言い聞かせたかったが、歩を進めるほど、その重苦しさは増していくばかりだった。
(くそっ……こんな時に……なんて、運が悪いんだ……)
不安を振り払うように、ふらつきながらもペースを上げる。
路地を曲がり、人影のない裏通りに滑り込んだ、その瞬間――
ジュリアンは素早く身を翻すと、怒りと警戒の光を宿した瞳で、闇の奥を睨みつけた。
「おい、さっきからコソコソとつけ回して……一体、何のつもりだ!? 痛い目に遭いたくなければ、今すぐその薄汚いツラを見せろ!」
闇の中から、三人の男が、まるで溶け出すように姿を現した。
いかにも素性の悪そうな連中が、下卑た笑みを浮かべ、ジュリアンを頭のてっぺんから爪先まで、ねっとりと舐め回すように眺める。
その視線は、下品な好奇心と、剥き出しの欲望を、隠そうともしない。
リーダー格の男が、口の端を意地悪く吊り上げた。
「はは、バレちまったか。まあ、こんな極上の獲物が、そんな艶っぽい格好で一人歩きしてりゃあ、誰だって目がいくってもんだ。なぁに、そんなに怖がることはねえぜ。ちょいと、“仲良く”してやろうってだけさ。さ、俺たちが、本当の天国ってもんを、お前のその綺麗な身体で、教えてやるよ。くくく……」
「くっ……ふざけるな! 私を誰だと……んぅっ♡」
怒りに任せて反撃しようと声を上げた、その瞬間――抱えていた荷物が揺れ、その硬い角が、敏感になった乳首をいやらしく擦った。
思わず漏れ出した甘い声に、ジュリアンは朱に染まった顔を俯かせるしかなかった。
「おやおやぁ、坊や。どうしたんだい? そんな色っぽい声を出して。もしかして、俺たちを誘うために、わざわざこんな路地裏まで来たのかって、思っちまうじゃねえか」
男たちは、嘲笑を浮かべながら、じりじりとその間合いを詰めてくる。
「なっ……そ、そんなこと、あるわけないだろう!! ん、っ……♡ 私は……ただ……そうだっ……風邪をひいて、ふ、苦しいだけなんだ……ぁ……♡」
(くそ……っ! こんな非常時なのに、薬の効果がまだこんなにも残って……!)
薄桃色に染まった肌に、うっすらと汗が滲む。
ジュリアンの身体に纏わりつくような湿った熱気が、彼の意識を少しずつ揺らがせる。
その手から、大切な荷物が、ぼたぼたと路上に滑り落ちる。
「おい、このガキを押さえろ。……こいつは、連れ帰って、じっくりと“調教”すりゃあ、いい値で捌けるぞ。なんたって、極上の逸品だ。少年性愛趣味の金持ち連中も、泣いて喜ぶってもんよ」
「へい、リーダー!」
下っ端の一人が、グロテスクな笑みを浮かべ、その汚れた手を伸ばしてくる。
しかし、ジュリアンは、発熱と眩暈に苛まれながらも、その身に叩き込まれた騎士の本能を、鋭く研ぎ澄ませた。
「んっ……♡ こんな、状態で、も……貴様ら、三下の、悪党ごときに……屈する、騎士では、ない……! 舐めるな……。はぁっ!」
激しい動きで、薄い布地が、熱を持った乳首や股間をいやらしく擦り、思わず漏れそうになる甘い声を、奥歯を食いしばって無理やり飲み込みながら――
ジュリアンは、流れるような動きで体を回転させ、男の一人の顎を、鋭く、そして正確に蹴り上げた。
男は、情けない悲鳴を上げて壁に叩きつけられ、その場に崩れ落ちる。
もう一人が慌てて短刀を抜くが、ジュリアンの動きは、それよりもなお速かった。
すでに男の懐深くへと滑り込み、その眉間へ、容赦なく拳を叩き込む。
「ごぶっ……!」
地に沈む二人を見下ろし、アドレナリンが、一時的に、しかし確実に、彼の身体を蝕む淫らな欲望を上書きしていた。
ほんの僅かに冷静さを取り戻したジュリアンは、その冷たい瞳で、残るリーダー格の男を射抜いた。
「ふぅ……♡ 残るは、お前だけだ」
「ひ、ひいいっ! ま、待ってくれ! 降参だ、許してくれ!」
「黙れ、悪党が」
震える声に、ジュリアンは容赦なく切り捨てる。
リーダー格の男は恐怖に顔を引きつらせ、腰のナイフも、無抵抗に、乾いた音を立てて地面へと落とした。
「……お前たちが、この王都で続発している、子供の連続誘拐事件の犯人だろう。物証がなくとも、その薄汚い顔と、歪んだ振る舞い、それだけで、私には十分だ」
「う……うぐっ……」
「大人しく、警備兵のもとへ出頭しろ。さもなくば、この場で、その卑劣な命、終わらせてやる」
「わ、わかった! 本当にわかった! もう、抵抗はしない! 頼むから……見逃してくれ!」
男は完全に観念し、震える手で許しを乞う。
ジュリアンは、内心で苛立ちながら、一つ肩をすくめた。
(こんな連中に、これ以上関わっている暇はない。今の、この破廉恥な格好で、人目に晒されるのはもうごめんだ……)
さっさとこいつを警備兵に引き渡し、静かに宿へ戻る――そう思いながら、男に歩み寄った、その瞬間。
男が、ふいに指輪を掲げた。
その中央に嵌め込まれた禍々しい宝石から、不穏な光が、ぎらりと迸る。
「――ッ!?」
次の瞬間、金属音のような鋭い痛みが、ジュリアンの首筋を貫いた。
体内に、魔法によって精製された麻痺毒が、奔流のように流れ込む。
全身がビリッと痺れ、筋肉が、まるで他人のものになったかのように、言うことをきかなくなる。
膝が崩れ、ジュリアンは、なすすべもなく、濡れた石畳の上へと倒れ込んだ。
(くっ……これは麻痺毒か……!)
体内では、いまだ媚薬の熱と快感が渦巻き、それに、冷たい麻痺の波が重なる。
意識は悲鳴を上げているのに、身体はもう、糸の切れた操り人形のように、ぴくりとも動かない。
そのあまりにも情けない敗北感が、彼のプライドを粉々に打ち砕き、底知れぬ屈辱だけが、胸の奥を満たしていく。
男は、倒れたジュリアンの傍らにゆっくりとしゃがみ込むと、満足げに、ねっとりと舌なめずりをした。
「へへ……油断したな、お坊ちゃん。こいつはな、特別な闇の力が宿った、呪いの指輪なんだぜ。並の聖職者が使うような、状態異常解除の魔法なんざじゃ、絶対に解けねえ。……もう、お前は、俺たちのものだ。諦めな」
その声は、まるで獲物を前にした獣のように、下卑た欲望に濡れていた。
「まったく、とんだじゃじゃ馬だぜ。だがな、お前もそのうち、俺たちが、きっちりと躾けてやる。金持ちの変態どもが、泣いて喜ぶような、従順な肉奴隷になれるようになぁ。ビビることはねえぞ。奴隷の世界も、意外と悪くねえもんだぜ!」
男が、ゆっくりと間合いを詰めてくる。
その体躯のすべてから、餓えた肉食獣めいた、悪意と欲望が、むせ返るようにほとばしっていた。
(まずい……このままでは――!)
ジュリアンは、必死に意識を振り絞り、動かぬ身体を、なんとか動かそうともがく。
だが、麻痺毒は、彼の意思を嘲笑うかのように、容赦なくその四肢を縛り付けていく。
「ふん、もう無駄だ。さっさと諦めて、おとなしく“抱かれて”くれりゃあ、ちったぁ優しくしてやるのによ」
「くっ……殺すなら、殺せ! お前らなんかに抱かれるくらいなら、死んだ方がましだ」
掠れた声に、ジュリアンは、ありったけの騎士としての矜持を込めて、そう言い返した。
「くくく、殺すなら殺せ、か。気が強くて顔が良いガキが、そうやって睨みつける顔が、また堪らねえんだよなぁ」
ジュリアンが蹴り飛ばしたはずの二人の男も、いつの間にか、ふらふらと起き上がってきていた。
「いいぜ、殺してやるよ。その生意気なケツの穴を、俺たちの汚ねえチンポでずぼずぼに犯して、お前のちっぽけな尊厳もプライドも、根こそぎ殺してやるよぉ!」
ジュリアンの、か細い抵抗を嘲笑うかのように、男たちの汚れた手が、その華奢な身体に伸びてくる。
無遠慮な指が、薄い布の上から、彼の敏感な部分を、執拗に、そしていやらしく責め立てていく。
(そんな……こんな、下衆な奴らなんかにっ……!)
悔しさと絶望感が、心を黒く塗り潰す。
しかし、どれだけ必死に抵抗しようとも、麻痺毒は一向に抜ける気配はなく、ただ悪戯に体力を消耗させるだけだった。
「はあっ、はあっ……くっ……♡ 触るなっ……♡ その、汚らわしい手で……っ!」
そして、ジュリアンの身体を嬲り続ける男たちの手がついに、その下着の縁へとかけられた。
濡れて肌に張り付いた布が、ゆっくりと横にずらされていく。
それにつれて、熱を持ち硬く張り詰めた彼の肉茎が、冷たい外気に晒された。
微かな刺激にすら敏感に反応するそれを、男の、無骨でざらついた手が乱暴に掴み上げた。
「んぁっ……♡」
「へへへ、口では威勢のいいこと言ってるくせに、こっちは随分と正直じゃねえか。もしかして、期待してたってのか? とんだスケベ様だな」
「だ、黙れっ……この、下衆が……!」
「はん! いつまで、そんな綺麗な口が利けるかねぇ?」
男の無骨な手が、ねっとりと上下に動き始める。
その指の一本一本の感触が、まるで神経を直接撫でられているかのような、背徳的な錯覚を起こさせる。
「んっ♡ くぅっ♡ や、やめろっ♡ ひぐっ……♡」
路地裏は、卑劣な笑い声とどこにも逃げ場のない、絶望的な圧迫感に満たされていく。
ジュリアンの唇は、血が滲むほどきつく噛み締められていた。
怒りも、屈辱も、そして抗いがたい恐怖も、すべてをその蒼い瞳に宿して――。
「もう我慢できねえや。なぁ、リーダー。そろそろ、“こいつ”を喰わせてもらっても、いいんじゃねえか?」
「ああ、そうだな。もちろん、俺が一番乗りだがな!」
下卑た笑いを浮かべながら、男たちが、まるで獣のように、ジュリアンの身体に群がってくる。
そして、一人の男の、醜く膨れ上がったペニスが、その先端をぬらぬらと濡らしながら、露わになる。
その猛りが、薄桃色に色づいた彼の尻の窄まりへと、ゆっくりと伸びていった。
「や、やめろっ! それだけは、絶対に、嫌だ!」
「へへ……そう、必死に嫌がられると、ますます興奮するじゃねえか」
「やだっ、やめろっ!! あ♡ あああっ♡♡」
破落戸たちの汚れた欲望が、今にもその聖域を蹂躺せんと、その先端を押し付けた。
――その時、突如、派手な水しぶきとともに、鋭い破裂音が辺りに響き渡った。
「ぶはっ!? なんだ、何が……!?」
リーダー格の男が、怒鳴り声を上げる。
その視線の先には、信じられない光景が広がっていた。
仲間の一人が、首のないままよろよろと二、三歩歩いたかと思うと、まるで操り人形の糸が切れたかのようにその場に崩れ落ちたのだ。
「え……?」
ジュリアンの視界を、真っ赤な鮮血が染め上げた。
あまりに非現実的なその光景に、彼は一瞬、何が起こったのかすら理解できなかった。
その、あまりにも凄惨な光景の向こうから、みっともないほど突き出た腹をこれ見よがしに揺らしながら、一人のだらしない中年男が悠然と姿を現す。
その顔に貼りついているのは、この場にはあまりにも不釣り合いな下卑た笑み。
「よぉ、ジュリアンくん。無事だったか?」
現れたのは、まぎれもなく――権蔵……勇者を名乗る男だった。
「……権蔵!? なぜ、ここに……!?」
蒼白な顔で叫ぶジュリアンに、権蔵は得意げに胸を張ってみせた。
「なに、おぬしの貞操の危機を察知して助けに来てやったんじゃ。ふん、ギリギリ間に合ったようじゃな」
「な、まさか……お前は、宿にいたはずじゃ……!」
「まあ、細かいことは気にするな。ぐふふ、『くっ、殺せ』か……。まさか、あの誇り高きジュリアンくんの口から、くっころ騎士の定型句を聞けるとはのう。実に、いいものを見せてもらったわい」
「う、うるさい! 別に、お前を喜ばせるために言ったわけではない! 私は本当に、尊厳を奪われるくらいなら、死んだ方がましだと……!」
「まぁまぁ、おぬしはそこに転がって、この勇者さまの活躍でもとくと見物しておれ!」
頼れるのか、頼れないのか、まったく判断のつかない、ふてぶてしいドヤ顔。
だが、なぜだろう。
今だけは、そのだらしない背中が異様に大きく見えた。
自分を奴隷のように扱い、弄んできた、最低最悪の男。
それでも今、この絶体絶命の窮地に駆けつけたこの下劣な男が、ほんの一瞬だけ、本物の“勇者”に見えたのだ。
「さて、と……。わしの可愛い愛妾に、無粋な手を出した罪。その汚ねえチンポで、どう償ってもらうとするかのう。ぶひひひっ!」
権蔵は、その短い指を、まるでピアノでも弾くかのように、ピン、ピンと軽やかに鳴らしながら、男たちに、にじり寄る。
「お、おい、おっさん! 俺たちが誰だか、わかってんの――」
手下の一人が、虚勢を張ろうとした、その瞬間――
「うるさいのうっ。小虫が、さっきから、うるさくてかなわんわい」
権蔵は、その芋虫のような太い指で、手下の額を、まるで子供にするように、軽く「ピン」と弾いた。
「へぶしっ――!?」
ブシャッ!!
次の瞬間、手下の身体は、まるで砂の城が崩れるかのように、細かい粒子となって風に溶け、そこに、最初から何もなかったかのように、跡形もなく消え失せていた。
「おっ、今のは、なかなか上手くいったのう。さっきは、ちと加減を間違えて、頭だけすっ飛ばしてしまったが……。死体が残ると、後始末が面倒じゃからのう。今回は、実に良い塩梅じゃ」
無邪気な笑顔で自画自賛する。
ジュリアンは呆然と、権蔵の常軌を逸した力を見つめるばかりだった。
「は、はぁ〜!? な、なんだ、こいつのデタラメな強さは!!」
リーダー格の男が、権蔵の規格外な戦闘能力に引きつった叫び声を上げる。
「て、てめえ! 俺を誰だと思ってやがる! 俺の背後には、この国すら揺るがす巨大な組織がついてるんだぞ!」
「ほう、そりゃ初耳じゃの。して、いかなる組織が、おぬしのような三下チンピラの後ろ盾になってくれておるんじゃ? この慈悲深き勇者さまに、こっそり教えてみい」
「そ、それは……言えん……」
男は急に威勢を失い、しどろもどろに口ごもる。
「ふむ、どうやら口先だけの、信用ならん組織のようじゃな。ならば、遠慮はいらんの」
権蔵はしたり顔でうなずくと、そのでっぷりとした腹をポンと叩き、のっしのっしと前に進み出た。
「だまらっしゃい! てめえみてーなデブの豚野郎が勇者なわけねえだろ! 俺にはボスから直々にいただいた、この暗黒石の指輪があるんだ! 貴様なんぞ、その忌々しい存在ごと、跡形もなく消し炭にしてくれるわ!」
男が左手の薬指にはめた漆黒の指輪から、禍々しいオーラが立ち上る。
「っ!? 気をつけろ権蔵! その指輪は、邪神の力が封じられた呪いの魔道具だ!」
「じゅ、呪いじゃと!? そのワード、なんか知らんが、めっちゃヤバそうな響きじゃぞぉ!」
ジュリアンが警告を飛ばすのと、男が醜悪に笑うのは、ほぼ同時だった。
「もう遅えんだよ、ニセモノの勇者ぁ!!」
指先から放たれた闇色の光線が、権蔵の巨体を一瞬で飲み込む。
「ひっ、ひぎぃいいいい!? 呪われるぅうううっ!? SADAKO的なやつか!? テレビから這い出てくる系か!? わしまだ若いのに、そんなジャパニーズホラー展開で死ぬのは嫌じゃああああ!」
権蔵がその場でジタバタと、実にみっともなく騒ぎ立てる。
「ハッハハハァァ! ざまあみやがれ! この指輪は、邪神様のありがた~いご加護が込められた特別な魔道具なんだ! てめえなんぞ、その汚ねえ脂肪ごと、地獄の業火で燃え尽きるまで苦しみ続けろや! いい気味だぜぇ!」
権蔵はしばらくの間、うめき声を上げ続けていたが、ふと、その大きな首をこてんと傾げた。
「……ん? あれ……? 全然、熱くない……つーか、痛くも痒くもないぞ?」
「な、なにィ!? 馬鹿な、あり得ん……どうして呪いが効かねえんだ!?」
「ふむ。むしろ、ぽかぽかと陽だまりの中にいるようで、実に心地よいわ。それどころか、身体が軽くなって、力がみなぎってくる気がするぞい」
「あの、おぞましい闇の力が効かないだと……。まさか権蔵は、勇者だから……呪いに対する耐性が、異常に高いというのか……」
ジュリアンの呆然とした呟きに、権蔵は心底ほっとしたように、大きなため息をついた。
「なんじゃ、呪いだのなんだのと、大袈裟に脅かしおって! てっきり、わしの貴重な髪の毛が、呪いで全部抜け落ちるのかと……怖がって損したわい……。ほっ……」
「く、くそぉ……! なら、効くまで何度でも喰らわせてやるわ!」
男が再び指輪を天に掲げ、闇色の魔力を解き放とうとした――その瞬間。
指輪に嵌め込まれた黒い魔石が、突如、轟音と共に爆ぜ、逆に、男自身の身体を、内側から激しく焼き尽くし始めた。
「ぎゃあああっ!!! な、なぜだ、どうして、俺がぁ!!」
悲鳴を上げ、地面でのたうち回る男。
「……なんじゃい、今度は本人が燃えとるぞ? 急に、どうしたんじゃ?」
「おそらく、あの指輪は、無謀に力を行使すれば、逆に持ち主の命を喰らう“呪詛具”なのだろう。それを知らされていなかったとは……哀れな男だ」
「なるほどのう。わしはぽかぽかして気持ちがええのに、不思議なもんじゃのう……」
権蔵は全身を包む黒い炎に身を委ね、うっとりとした表情さえ浮かべている。
やがて、その黒い炎がまるで最初から何もなかったかのように静かに消える頃には、男の肉体は見事なまでに灰となり、王都の薄汚れた裏路地に儚く崩れ落ちていた。
あとに残ったのは、男が身に着けていた漆黒の指輪と黒い紋章だけ。
それを見届けると、権蔵はゆっくりとジュリアンの元へ近づく。
そして大きな身体を折り曲げて膝をつくと、彼の頬についた血を優しい手つきでそっと拭った。
「のぉ、怪我はないか、ジュリアンくんよ」
「あ、ああ……問題ない。貴様こそ、大丈夫なのか?」
思わずこぼれた気遣いの言葉に、ジュリアン自身が驚く。
その一言を聞き逃さなかった権蔵が、唇の端をつり上げた。
「……おお、わしを気にかけてくれるとは。普段はツンツンとやかましいやつじゃが、やはりおぬしの根は優しいのう。だからわしは、おぬしがたまらなく愛おしいんじゃ。本当にかわゆいやつよ」
「……ちがっ! 誰が貴様など……!」
慌てて否定するより早く、じわりと頬に熱が広がる。
その初々しい反応に、権蔵は満足げに目を細めた。
「まあよいわい。困ったときは、このご主人さまを頼るがいい。さすれば、このわしが手取り足取り、くんずほぐれつ、おぬしの心も身体も、骨の髄までとろとろに癒してやろうぞ。げへへへへ」
恍惚とした表情でよだれを垂らし、大きな手をわしわしと空中で泳がせる。
「誰が貴様なんぞに頼るものか! この……変態山賊勇者め!」
権蔵の朗らかな笑い声が響くたび、ジュリアンの心臓は不規則なリズムを刻み始める。
(どうしてこいつは、こんなにも下品で欲望に忠実だというのに……いざという時には、こうも……頼りになってしまうんだ……。こいつの側にいるだけで、私の何もかもが狂っていく……!)
絶体絶命の窮地に、颯爽と(?)駆けつけ、強大な敵をいとも容易く一掃するその圧倒的な力。
そういえば、姉のシャルロットも言っていた。
風体や態度はさておき、あの方の力は本物だと。
その姿は、まるで――幼い頃に胸をときめかせた、物語の中の“勇者”そのもののようで――
(……助けてもらった礼くらいは……言うべき、なのか。……そうだ、私は騎士であり、誇り高きレステンクール家の跡継ぎなのだから。礼を欠くことこそ、我が家の名誉を汚すことになる。べ、別に、こいつのことがどうとか、そういうわけでは断じてない。ただ、その……)
「あ、りがとう……」
蚊の鳴くような声でそう呟くと、権蔵は一瞬きょとんと目を丸くし――次の瞬間、太陽のような満面の笑みを浮かべた。
「おうよ! わしに任せておけい!」
その笑顔は、まるで悪戯好きの少年のように屈託がなく、どこまでもまっすぐで。
(だからっ……! そんな顔をされると、調子が狂うからやめろと……!)
ジュリアンは思わず顔を背けた。
しかしその顔は耳まで真っ赤に染まり、胸の奥がなぜかトクンと甘く高鳴っていた。
そんな混乱の海に溺れかけたジュリアンの心に、権蔵が追い打ちをかけるように平然と爆弾を投下した。
「ところでジュリアンくんよ。今な、わしはすこぶるお主を抱きたい気分なんじゃ。……構わんか?」
「……はぁ!? 貴様、調子に乗るなよ! 誰が許すか!!」
怒りと羞恥が一気に沸点を越え、ジュリアンは金切り声を上げる。
だが権蔵はどこ吹く風で、じりじりとその間合いを詰めてきた。
「ぐふふふ。そんなことを言っても、おぬしのおちんぽは正直じゃのう。さっきからずっと、わしを健気に誘っておるではないか……じゅるり」
「なっ!? ど、どこを見ている! この……んんっ……!? ……んむぅぅッ!?♡」
権蔵は口元をだらしなく緩ませながら、ジュリアンの両腕を軽々と押さえ込むと、有無を言わさずその唇を強引に奪った。
「んっ、んむっ……ぷはっ! や、やめっ……!♡ あふっ、んぅんっ……♡」
権蔵は、ジュリアンの形の良い唇をねぶるように貪りながら、その大きな手を彼の薄いビキニアーマーの中へと滑り込ませる。
そして、その骨張った大きな掌で、まだ蕾のように硬い胸の突起を慈しむように優しく揉みしだき始めた。
「あっ♡ ああッ♡ そっ、そんなところ……触るな、ぁあ♡」
(な、なんだこれはっ!?♡ なぜ私は……こんな、蕩けた声を出して……♡)
自分のものとは思えないほど甘く上擦った声に、ジュリアンは激しく動揺する。
しかし権蔵は構うことなく、その分厚い舌先で彼の口内を隅々まで蹂躙し続けながら、さらに強く、胸の先端をきゅっとつまんだ。
「あッ♡ あふっ!♡ んんっ……やぁっ、だめぇっ♡」
まるで電流が走り抜けたかのような衝撃に、思わず甘い声が漏れる。
「げへへへへ、おぬしに盛った媚薬の効果は絶大じゃろう? 今日一日はその調子で発情する代物じゃからのう。おぬしの体はわしのが欲しくてたまらんはずじゃ」
権蔵は満足そうに頷くと、さらに激しくジュリアンの胸を揉みしだいた。
「あっ♡ あぁっ!♡ やだっ……やめろっ♡ そんなとこっ……♡」
媚薬に犯された肉体は、もはや抵抗の意思を示すことすらできない。
それどころか、もっと触ってほしいとねだるように、自然と胸を突きだしてしまう始末だった。
「ぐへへへへ、そんなこと言われて止めるわけないじゃろうが。おぬしもこんなに乳首を勃起させて感じておるではないか? 期待しておるのじゃろ?」
「き、さま、この変態デブ勇者、いい加減にしないと痛い目に……ぃいいいいいいッ!?♡♡」
ジュリアンが文句を言い終わる前に、権蔵は思いっきりジュリアンの乳首に吸いついてきた。
その途端、ジュリアンの全身がビクンと震え、まるで電流が走ったかのように痺れた感覚に襲われた。
「んほ~~~~、ちゅぱちゅぱ。ジュリアンママの雄っぱいとっても美味いちいよぉ。汗のしょっぱさと雄ミルクの甘さが合わさって最高だよ。もっと飲ませておくれ。じゅるる、ちゅぷっ」
「ふぁあああ♡ だ、誰がママだ……あんっ♡ 気色悪い……こ、こら、先っぽを噛むんじゃないって、ああ……♡ もう、敏感になっているから舐めないでくれ♡ 本当にこれ以上は…………はううううううううん♡♡」
「ぐへへ、ママのお乳を飲んでわしはもっともっと大きくなるのじゃ。ほれ、わしの息子もママのおかげでこんなに大きくなってしまったぞ。ジュリアンママのおまんこに挿れたい挿れたいって泣いておるわ」
「し、知るか! 勝手に一人で果てろ変態!!」
「ぐへへ、そう言わずに一緒に気持ち良くなろうではないか。ほれほれ♡」
「ひぁっ♡ あぅう……こ、こらぁ……♡ 太ももにそんな汚いものを擦りつけるなぁ……!♡ あうぅっ♡」
ジュリアンの、むっちりとした太ももは弾力があり、すべすべとしていて、擦りつけるたびに権蔵は息を荒くする。
「ぐへへ、もうそろそろおぬしのけつおまんこもぬれぬれになっておるのではないか? ほれ、見せてみい。わしが確認してやるわい」
「や、やめろっ!♡ ま、まさかこんな街中で……本当に私とするつもりなのか?」
「ぐへへ、おぬしの濡れ濡れおまんこがやりたいって言っておるからのう。その期待に応えねば男がすたるってもんじゃないかの」
権蔵はジュリアンのお尻の穴に指を突っ込みぐりぐりと中を掻き回す。
「ひうぅん♡ や、掻き回すなぁっ……♡♡ そこは本当にダメぇ♡♡」
「ぐふふ。それにしてもお主のけつ穴は締まりがええのう! わしの指を締め付けて離さんわい。ほれ、ここに挿れたらさぞ気持ちいいじゃろうなぁ?」
権蔵はジュリアンを軽々と持ち上げると、そのまま路地裏の地面に押し倒し正常位の形にする。
そして強引に足を開かせると、その小さなお尻の間に自分のモノを押し当てる。
「やだぁっ♡ ほんとに、私は……♡ いま、そんなことされたら私は……♡」
「ぐへへ、わしはもう辛抱たまらんわい! さっそく頂くとしよう!」
権蔵はジュリアンの腰を掴み一気に挿入した。
ずぶぶっ……ぬぷっ♡
「ひぎぃいいいッ!!♡♡♡ あ、ああ……♡」
媚薬で敏感になった肉壁を容赦なく擦り上げられ、その衝撃に思わず悲鳴を上げる。
「おほ〜っ、やはりわしのおちんぽが欲しかったんじゃな〜! おぬしのおまんこがきゅうきゅう食いついてきて離してくれんわ〜!」
「あ、あぁ……♡♡♡ おくっ……♡ 奥まで入ってきてるぅ♡♡♡」
ジュリアンは目に涙を浮かべて喘いだ。
しかし身体は正直だ。
彼の肉壷は歓喜に打ち震えるようにうねりながら、権蔵のモノに絡みつき激しく締め付けている。
まるで待ちわびていたかのように。
「ぐへへ、喜んでもらえて何よりじゃ! どれ、そろそろ動くとするかのう!」
「え、ちょ、ちょっと待って。まだ心の準備が―――」
ジュリアンが制止の声を上げるのを無視して、ゆっくりとピストン運動を始めた。
ぐちゅっ、ぐちょ、ぐちゅっ、ぐちょ
「んん〜♡ ああんっ♡♡ やめっ♡ あうぅうう♡♡」
ジュリアンは必死に拒絶の言葉を口にするが、身体は正直だった。
権蔵の動きに合わせて自然と腰が動いてしまう。
「ぐへへ! 淫乱な小僧め。目がハートになっておるぞ。やはりわしら身体の相性ピッタリじゃな!」
「だ、黙れぇえ!!♡♡♡ こ、こんなの全然気持ちよくないぃいいい!!♡3」
「ほう? ならこれはどうじゃ」
権蔵は腰をグラインドさせ、ジュリアンの弱点を探り当てる。
「ひぃいいん!♡♡♡ そ、そこぉ♡ ダメぇえっ♡♡」
「ぐふふ、ここか? ここがええのんか?♡」
「ちがっ♡♡ あぅっ♡ あっ♡ ああっ!!♡♡♡」
ピストン運動が激しくなり、パンッ、パァンと肉同士がぶつかり合う音が路地裏に響く。
そのたびにジュリアンの口から甘い声が漏れてしまう。
「あ、太い、太すぎるぅうう♡♡♡ ダメ、こんなの耐えられない♡♡♡ 壊れてしまうからぁ♡♡♡ 早く抜いて、はやく、はやく、はやくぅうう♡♡♡」
ジュリアンは押し寄せる快楽を必死に否定しようとするものの、言葉とは裏腹に身体は正直に反応してしまっていた。
その証拠に、彼の小さなペニスの先端から透明な潮が絶えず噴き出していた。
「ぐふふ、いい具合に締め付けてくるわい。おぬしのケツマンコもわしのちんぽが気に入ったようじゃな」
「違っ♡ 違うぅうう♡♡♡ そんなの好きじゃないぃいっ♡♡♡」
「そうかそうか! それじゃあもっと激しくしてやるとしよう!」
権蔵はさらにピストンを加速させていく。
パンッ、パァン!と肉同士がぶつかり合う音が響き渡り、そのたびにジュリアンの口からは甘い喘ぎ声が漏れた。
(ダメなのに……こいつなんか嫌いなのに……!)
心の中でいくら否定しても、快楽には抗えない。
その証拠に、すでに身体は陥落してしまっていた。
(くっ、くそぉおお……媚薬さえ盛られてなければこんなやつなんかにぃ……♡♡♡)
悔しさに涙が溢れそうになるが、それもすぐに喘ぎへと変わってしまう。
そんなジュリアンの様子を見て、権蔵は満足げに笑った。
「ぐふふ、どうじゃ? そろそろ素直になってもいい頃じゃろう? わしのことが大好きだと言ってみぃ! わしのおちんぽをもっとくださいと乞うてみぃ!」
「ふざけるなっ!♡ 貴様みたいなブタ野郎なんか、誰がぁあっ!!♡♡♡ ぁああああぁあん♡♡♡」
「ぐへへ、強情じゃのう。だが、それでこそ”くっころ騎士”というものよ。強情で誇りが高いゆえに堕としがいがあるわい!」
権蔵はさらに激しく突き上げ始めた。パンパンと肉同士がぶつかり合う音が響く。
その音に合わせてジュリアンの口からは甘い声が上がった。
「ああっ♡♡ ああんっ♡♡♡ もうダメぇっ♡♡♡」
ジュリアンの限界が近いことを悟った権蔵はラストスパートをかける。
ズップ、ズップ、ズップ、ズップズップズップ
「ぐふふ、わしももうイキそうじゃわい! 一緒にイクぞ!」
「いやっ♡ イキたくないぃいいい!♡ こんなやつと一緒にイクなんてやだぁあああ!!♡♡♡」
激しく突き上げられ、頭が真っ白になるような快感に襲われる。
権蔵への拒絶勘とは裏腹に身体はどんどん絶頂へと上り詰めていった。
(くぅ……♡ こんな奴にいいように振り回されるなんて……屈辱だ。悔しい……!♡)
ジュリアンの思いとは裏腹に、身体は正直に反応してしまっていた。
そしてついにその時が来た――。
「むほほっ!? 堕としてやるぞ……! このわしの極上ミルクで、身も心もぐずぐずに堕としてくれるわ! イくぞ! 誇り高きくっころ騎士ちゃんに、たぁっぷり、なか出しじゃあああ!!」
権蔵が獣のように咆哮すると同時に、その極太の肉棒を灼熱の勢いで根元まで突き入れた。
ビュビュッ! ビュルルゥ! ブュリュッルリュルル〜! ブリュブリュリュリュッルッ!!! ブュリューリュルルッ!! ビューーー、ビュー、ピュルルルッ…………。
「ひぅ!?♡♡♡ あ、ふあああぁああんーっ!!♡♡♡♡♡」
その瞬間、ジュリアンの内で何かが弾け飛んだ。
腹の奥底に、灼熱のマグマのような中年雄のミルクが、これでもかと注ぎ込まれる。
その圧倒的な熱量と衝動に、ジュリアンは抗う術もなく、身をよじらせながら絶頂の渦に飲み込まれていった。
「あ、ああ……♡ で、出てる……♡ なかに、いっぱい、出されちゃってるぅ……♡♡」
皮を被ったジュリアンのピンと反り上がったペニスからは、まるで小水のように薄い白濁液がぴゅっ、ぴゅっと噴出していた。
「ふひぃ〜、出た出た! こんなに出したのは久しぶりじゃわい!」
権蔵は満足げな笑みを浮かべると、ゆっくりとペニスを引き抜いた。
すると栓を失った秘穴からごぽっと音を立てて大量の精子が溢れ出てくる。
そのあまりの量の多さに逆流して泡立ち、真っ白く染まった液体がドロリと太ももを伝って地面に落ちていった。
「ぐふふ、どうじゃったかの? 己の犯した罪の重さ、その身で少しは反省できたか? 素直になってこのわしを心の底から好きになれたなら、ただの肉奴隷から、わしのかわいい愛妾に昇格させてやらんこともないぞ」
権蔵が勝ち誇ったように問いかけると、ジュリアンから、虫の息のような声が返ってきた。
「……ふ、ふざけるな……♡ わ、私は、貴様のような、卑劣な男に……決して、屈しは、しない……っ♡♡♡」
ジュリアンは絞り出すような声で最後の抵抗を試みるが、快感の奔流に身を委ねた身体は疲労しきっており、指一本動かすことすらままならない。
それどころか、心の芯まで快感に侵されたその肉体は、今や極度に敏感になっており、夜風が火照った肌を撫でる些細な刺激だけで、再びあえかな声を上げてしまいそうだった。
(くっ…………♡ なぜ、私がこんな目に……。無理やり犯されて、悔しくて、屈辱に打ち震えているはずなのに……。こいつのことなど、虫唾が走るほど大っ嫌いなはずなのに……。どうして……。どうして私は、こんなにも……♡)
屈辱的な陵辱に、心とは裏腹に、快楽を覚えてしまった自分。
その事実に、ジュリアンは愕然とし、激しい自己嫌悪の渦に飲み込まれていく。
心では頑なに拒絶していても、この淫らに疼く身体は、あまりにも正直に、権蔵を求めてしまっていた。
「ぐひひ、まあええわ。これから、我が美少年ハーレムの、記念すべき“くっころ騎士枠”として、みっちりと、骨の髄まで育ててやるからのう。楽しみにしておれ……」
権蔵が満足げに言い終わる前に、ジュリアンが「くしゅん」と、猫の子のような可憐なくしゃみをした。
「おや、もうすっかり夜か。……ふむ、その薄着では、風邪をひいてしまうな。ほれ、これを羽織るがいい」
そう言って、権蔵は背負っていた己のマントを、ジュリアンの華奢な肩に、ふわりと掛けてやった。
「……余計なことを。私は別に、寒くなど――気色悪い真似をするな」
「遠慮などいらん。それとも何だ? その恥ずかしいビキニアーマーを、街の者どもに見せびらかすのが、快感になってしもうたか?」
「そんなわけがあるか! ……くっ、背に腹は代えられぬか……あのような辱めは、二度とごめんだ」
ジュリアンは、ぶっきらぼうにマントを羽織り直す。
不思議と、それまで感じていた肌寒さがふっと消え、体の芯からじんわりと温もりが広がっていくようだった。
(ふん……。こんなもの、私の趣味ではないからな。仕方なく、着ているだけだ。けして、こいつの汗臭い体温が、心地よいわけでは……。……でも……なんだ、この感覚……さっきまで、あんなに肌寒かったはずなのに……)
ジュリアンは、マントの襟元をきゅっと握りしめると、そのまま顔をうずめた。
(……ああ、この匂いだ。こいつの匂いに包まれていると、なぜか、安心する。まるで、父親のような、大きな包容力を感じるというか……。いや! 違う! 断じて私は、そんなファザコン変態などではない!!)
「むふふ。どうやら、随分と気に入ったようじゃな」
「……うるさい、黙れ。貴様には、関係のないことだ」
その温もりに包まれるうち、ふと、家族や故郷の情景が脳裏をよぎる。
父や母、姉、そして屋敷の執事やメイドたち――愛おしい日々の記憶。
そんな思いが胸に込み上げ、気づけばジュリアンは、再びマントにそっと顔をうずめていた。
だが、それを見て得意げに微笑む権蔵が癪に障り、思わず一言、呟いてしまう。
「……くさいな」
「な、なにぃ!? くさいだとぉおおっ!?」
権蔵は顔を真っ赤にして、目を剥く。
「そ、そんな馬鹿なことがあるか! わしのマントから漂う香りは、この世で最も素晴らしい、男のフェロモンのはずじゃ!」
「いや、どう考えても酒くさい……。貴様、酒の飲みすぎだ。そんな自堕落な生活を続けていれば、いつか体を壊すぞ」
ジュリアンが至極まっとうにツッコむと、権蔵は狼狽したように慌てふためく。
「そ、そんなことはあるものか! これでもわしは、健康に気を使って酒を控えておる! 一日、たったの20リットル……いや、10リットルで我慢しておるんじゃぞ!」
「それは控えているとは言わん……。まったく、相変わらずだらしのない。私は、貴様のようなデリカシーのない奴は、大嫌いだ」
「ぐぬぬ……言うに事欠いて、この若造が! わしはこれでもまだ四十代半ばなんじゃぞ! わしの故郷、日本では、田舎の村で『よっ、若いね!』とチヤホヤされるピチピチの年齢なんじゃ!」
「だったら、なおさらそのだらしない体型に気をつけるべきだろ! そんなんだからブクブクと太るんだ! 少しは運動したらどうだ!」
「やかましいっ!! 主人に向かってその生意気な口、もう許さん! 宿に戻ったら、おぬしに本気の“お仕置き調教”をしてやる! 覚悟せい!」
「は、はあ!? 馬鹿か! そんなの絶対にやめろ! 何を言い出すんだ、この万年発情変態中年が!」
「いいや、絶対に許さんぞい! わしの肉棒が果てるまで、みっちり可愛がってやるからな! ぐへへ、今夜は覚悟しておけ!」
「くっ、なんてやつだ。貴様のその下品さ、あまりにも目があまる。だからエリオット陛下にも嫌われて婚約を拒絶されるんだ!」
「うっ、エリオットきゅんから嫌われたトラウマが蘇って……。だ、だがしかし! わしは絶対にエリオットきゅんを落としてみせようぞ! 今に見ておるがよい」
「はぁ? 貴様はまだ陛下のことを諦めていないのか。もう完全に振られたというのに、未練たらしくて気色の悪い男だ」
「ぐぬっ、それは……! いや、そうとも限らん! 今回は運が悪かっただけじゃ! わしはいつか必ずエリオットきゅんを我が嫁として迎えてみせるぞい!」
「ふん、夢物語だな。私が知る限り、陛下は貴様のようなデブオヤジには決して靡かない。さっさと諦めてしまうのが身のためだぞ」
「なんじゃとぉおお!? おのれ言わせておけばぁ!! このわしが一度決めたことじゃ! もう誰にも止められんわい!覚悟しておくがよい!」
マントを巡る攻防は、もはや二人の漫才のようだった。
それでも、その温もりだけは、ジュリアンの心の奥深くに、じんわりと沁み込んでいく。
すっかり夜も更け、二人は並んで宿への道を歩く――
ジュリアンは、ふと、あれほど身体を蝕んでいた媚薬の効果が切れ、心が軽くなっていることに気がついた。
(まったく、親からどんな教育を受けて育ったんだ、こいつは……。でも、不思議と、こいつとの他愛ない口論は……楽しい、かもしれない)
ふいに胸をよぎるのは、家族や故郷の懐かしい記憶。
そして、その温かい感情を呼び覚ましてくれたのは、隣を歩く、この下品でデリカシーゼロの、どうしようもない勇者だった。
「……おい、さっきからニヤニヤして、どうした? 何かいいことでもあったのか?」
「え!? いや、別に、なんでも……」
慌てて表情を引き締めるも、一度緩んだ口元は、なかなか元に戻らない。
(それにしても……“異世界からやってきた勇者”か――)
意を決して、ジュリアンは前を歩く権蔵の広い背中に、声をかけた。
「なあ、権蔵。ひとつ……ひとつだけ、聞きたいことがある」
「ん? なんだ急に改まって。何でも聞いてみろ」
権蔵は、いつになく素直に足を止めて、振り返った。
「貴様は……貴様の“元の世界”……日本という国には……家族は、いたのか?」
ジュリアンが、言葉を選びながらそう問いかけると、権蔵の動きが、ふと、止まった。
瞬間、夜の空気が、少しだけ張り詰める。
(しまった……やはり、触れるべきではなかったか……)
ジュリアンが内心で後悔の念に駆られる中、権蔵はゆっくりと口元に、どこか懐かしむような、それでいて寂しげな微笑を浮かべて答えた。
「ああ、家族はおったぞ。兄が一人に、弟が一人……。両親は、まあ、どっちも早くに逝っちまったがな」
その声のトーンは、いつもの傍若無人な響きを潜め、少しだけ低く、静かだった。
「そうか……すまない。辛いことを思い出させてしまったな」
ジュリアンがしゅんとするのを察してか、権蔵は軽く肩をすくめてみせる。
「そんなこと、気にせんでいい。もう、ずいぶんと昔の話じゃ。兄の金蔵は真面目なやつだったから、今頃は嫁と子供に囲まれて、温かい夕飯でも食っとるかもしれんな。弟の銅蔵は、たしか学校で教師をやっていると聞いたが……まあ、わしが言うのも何だが、昔からちと出来の悪いところがあってな。今頃は、刑務所で臭い飯でも食っとるかもしれん、げっへっへ」
冗談めかして笑って見せるが、権蔵の横顔は、夕闇に溶け込むように、どこか遠くを見つめていた。
「……貴様の兄弟か。きっと今でも、貴様のことを心のどこかで想っているはずだ。いつかきっと、また会えるといいな」
ジュリアンが静かにそう告げると、権蔵はふっと鼻を鳴らして、自嘲するように小さく笑った。
「ふんっ! どうせ、わしのことなどとっくに忘れて、自分の人生を謳歌しておるわい。もし、あの世で再会できたとしても、もう顔なんぞ覚えとらんかもしれんぞ」
その背中から滲み出る寂しさを、ジュリアンは黙って見つめていた。
「さあ、さっさと宿に戻るぞ。慣れない異国の夜風にいつまでも吹かれておると、風邪をひくからの」
権蔵はそう言うと、振り返ることなく、再び歩き出した。
「あ、ああ……そうだな」
ジュリアンも慌ててその後を追う。
背後では、街の灯りがじんわりと二人の影を長く伸ばしていた。
(やはり、不器用な男だ。――だが、こいつは、どこか……)
胸の奥に、ほんのりとした温もりがこみ上げる中、ジュリアンもまた、無言でその隣を歩き続ける。
ふと、前を行く権蔵の大きな背中をじっと見つめた。
この男は、望んでこの世界に来たわけではない。
知る者もいない異郷の地で、ある日突然、勇者としての重責を背負わされて――ずっと、独りだったのかもしれない。
本当の自分の居場所も、帰るべき家族もいないこの世界で。
それでも、どこか明るく、おどけた態度を崩さずに。
けれど、その道化の仮面の裏で、一体どれほどの寂しさや不安を隠し続けてきたのだろう。
(……私は今まで、この男に対して、なんて酷い言葉を投げつけてきたんだ)
後悔と、言葉にできない感情が、強く胸を締めつける。
その熱い想いが、喉の奥から突き上げて。
気づけば、ジュリアンの口から、自分でも驚くほど大きな声が弾けていた。
「――権蔵!」
「うむ?」
呼びかけに振り返った権蔵の顔は、いつもより少し戸惑ったような、素朴な表情をしていた。
「あ、いや、その……」
ジュリアンは思わず言葉に詰まる。
その必死な様子に、権蔵が「ったく」と呆れたように促した。
「わしはびびり症なんじゃからいきなり大声を出すでない。心臓に悪いわ」
「す、すまない。……その、なんだ……」
「はよ言わんかい。わしは気が短いんじゃぞ?」
「う、うるさい……!」
ジュリアンは顔を真っ赤にしてうつむきながらも、やがて意を決して、ふいに顔を上げると、権蔵の瞳を正面から見据えた。
「……ええい、もうっ! 今日は、その……助けてくれて、感謝する。……それと、今までお前のことを“偽勇者”などと呼んで、すまなかった。……許して、ほしい」
ジュリアンは、深々と頭を下げた。
予想だにしなかった真摯な謝罪に、権蔵は一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたが――
次の瞬間、腹の底から、豪快な笑い声を上げた。
「ぐへへへへっ! なんじゃ、そんなことを気に病んでおったのか。おぬしも、見かけによらず、意外に繊細な心を持っておるんじゃな」
「う……私だって、それくらいの良識はある! 悪いか!」
「いやいや、むしろ嬉しいくらいじゃ。……あの、いかにも堅苦しい貴族の坊ちゃんであるおぬしも、非を認めれば、この平民のわしにも、きちんと頭を下げられる。そういう人間だったんじゃなと、安心したわい」
「……どういう意味だ、それは」
「ぐへへ、そのままの意味よ」
権蔵は悪戯っぽく笑うと、ふと真面目な表情に戻って言った。
「まあ、そんな細かいこと、子供のおぬしが気にするな。わしはこの世界では無敵の勇者さまじゃ。器も体も大きいのよ、げははははは!!」
(……本当に、不思議な男だ)
そう思いながらも、どこか心が安らいでいる自分に、ジュリアンは気づく。
今までは、どこか勇者という存在に対して、見えない壁を作っていた。
それは、物語の世界でしか知らなかった、完璧で、神聖な“勇者”という偶像への、無意識の畏怖だったのかもしれない。
だが、こうして共に過ごして、分かったことがある。
勇者といえども、彼らは自分と同じ、一人の人間なのだと。
喜び、笑い、悲しみ、そして、人知れず悩む――血の通った、温かい心を持った、ただの人間なのだと。
この男の家族の話を聞いて、不思議と、心の壁が溶けていくような気がした。
「ぐふふ、ジュリアンは本当に素直でええ子じゃのう。わし、ますますおぬしのことが気に入ったぞ。これからは、片時も、わしのそばを離れるでないぞ!」
権蔵がだらしなくニヤけきった顔で身を乗り出し、今にもその唇を奪わんばかりに抱きついてくる。
「ちょ、どさくさに紛れて近づくな!」
ジュリアンは慌てて権蔵の顔を手で押し返した。
「離れるな、だと? 笑わせるな。むしろ、その逆だ! 私はな、貴様を一人前の“真の勇者”に育て上げる責務がある! そのたるみきった根性を叩き直すため、愛の鞭をくれてやるから、覚悟しておけ!」
朱に染まった頬を隠すように、ジュリアンはキッと権蔵を睨み返す。
「ぐふふ、それは心強いのう。実に、嬉しいぞ!」
権蔵は満面の笑みを浮かべると、ジュリアンの手をがっしりと掴んだまま、ずんずんと再び歩き出した。
「ちょ、手を離せ! 離せと言っているだろうが!」
必死の抗議も虚しく、権蔵は豪快な笑い声を上げるばかりで全く聞く耳を持たない。
(……まったく、大人げない。まるで子供のような男だ)
やがてジュリアンは観念し、深いため息をついた。
(……私は、こいつを“真の勇者”にしたい。世界を救う、真の英雄に。その時は、きっと私も――こいつの隣に、胸を張って立っていられるだろう……)
この男を真の勇者にする。
それは当初、この国の騎士としての、ただの使命感からくる決意だった。
だが、今は違う。
一人の人間として、権蔵という、このどうしようもなく不器用な男に対して、純粋に力を貸したいと思った。
心の奥底で芽生えたその温かい気持ちに、ジュリアン自身が、そっと驚かされる。
それが、ただの同情なのか、それとも、それ以上の想いなのかは自分でもまだよく分からないけれど――
(だって、こんな……粗暴で、酒癖が悪くて、口を開けばセックスのことしか頭にない、救いようのないだらしない男のこと……放っておけないんだから、仕方ないだろう……)
ジュリアンは、ほのかに微笑むと、権蔵の大きな手を、ちょこんと握り返した。
その瞬間、権蔵はまた、嬉しそうにニヤリと口元を歪めた。
「いやー、今日はジュリアンくんとの距離が、ぐっと縮まった気がするぞい。これもぜんぶ、わしがあの恥ずかしいビキニアーマーでお使いを頼んだおかげじゃな!」
「きっ、貴様……! 調子に乗るなよ!」
「まあまあ、それだけジュリアンくんが魅力的ということじゃ。おぬしが街で、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしている姿、それはそれは見応えがあったわい。特に、ちっちゃな子供に『お兄ちゃん、裸んぼだ~』と指をさされて、固まっておったあの姿、最高にそそられたぞ!」
「貴様のせいで、どれだけ恥ずかしい思いをしたと……ん? 待て……なぜ、そんなに詳しく知っている。まさか……」
権蔵は、微塵も悪びれることなく、善人そのものの笑みを浮かべた。
「ん? 簡単なことじゃよ。お主が宿を出てから、ずーっと、こっそり後ろをつけて、一部始終、お主の健気な姿を見守っておったのじゃ!」
「……」
ジュリアンの顔から、さっと血の気が引いた。
「ど、どういうことだ……権蔵……」
「だから、最初から最後まで、全部見ておったということじゃ。街の連中に裸同然の姿を見られて赤面し、泣きそうなのをぐっと堪え、それでもなお健気にお使いを頑張るその姿……。それにな、媚薬の力に負けて、あの店主が作ったけしからんオナホで、しこたまオナニーをぶちかましておったのも、ぜーんぶ、な! それはもう、最高に面白いショーだったぞ、わはははは!」
権蔵が腹を抱えて大爆笑すると、ジュリアンは呆れと怒り、そして羞恥の入り混じった複雑な感情に、くらくらとめまいがした。
こいつは――わざわざ己を監視し、その反応を肴に、悦に入っていたというのか。
最低だ。ここまで悪趣味な男だとは思わなかった。
「それにしても、よく平然とあの格好で歩けたもんじゃのう。てっきり約束を破って、途中で服屋にでも逃げ込むかと、ハラハラしながら見ておったんじゃが」
「貴様……最初から、すべて分かっていて、あえて放置したというのか」
「まあ、そういうことじゃな。いやぁ、恥を忍んで主人の使命をやり遂げるおぬしこそ、真の騎士の鑑、いや、真の“くっころ騎士”の鑑よな、げはははは――」
「貴様は……いったい、どこまで卑劣な男なんだ!!」
ジュリアンの怒りと羞恥が、ついに臨界点を突破した。
「とはいえ、まさかあのチンピラどもに襲われるとは、予想外じゃったがの。だが、そのおかげで、ジュリアンくんとの仲は急接近――まさに吊り橋効果というやつじゃな。わし的には大成功じゃぞ、げへへへ」
「こっちに来い、このド変態ッ!!」
ジュリアンは怒りに任せて、権蔵の耳を力任せに鷲掴みにした。
「痛っ! ちょ、ちょっと待てい! 耳は、耳だけは勘弁してくれ、わしの耳は繊細なんじゃ……!」
「うるさい! この偽勇者! 二度と貴様なんかに気を許してやるものか! これからは徹底的に、その腐った性根を叩き直してやるからな、覚悟しておけ!」
「暴力はいかーん! わ、わしが悪かったから、許してくれぇ!」
ジュリアンは耳を力強く引っ張りながら、権蔵の巨体をするすると宿屋まで引きずっていく。
これが本当に、世界を救うために召喚された勇者なのか――まったく、冗談にもほどがある。
(……けれど、この、どうしようもなくふざけた男も、魔王を討伐するために呼ばれた勇者であることに、違いはない。ならば、私が、正義と勇気の本質を、その骨の髄まで、徹底的に叩き込んでやる……!)
ジュリアンは、心の奥底で固く、固く誓う――。
これから先、自らがその手を引いてでも、この男を、本物の勇者へと導いてみせるのだと。