美少年ハーレムを作りたい!! ~モブおじだけど転生したらチート勇者でした。なので盗賊になって好き勝手に生きることにしました~ 作:とけそうだら
今は無き大貴族の屋敷の廃墟。
主を失ったはずの空間は、不気味なほど整えられ、塵ひとつ見当たらない。
だが一歩踏み入れるたび、床下から湿った冷気が這い上がり、骨の髄を冷やす魔力が肌を撫でた。
尋常ならざる力が空間ごと占拠し、屋敷を異界へ反転させている――それを告げる圧だ。
最奥には、豪奢にして妖しい玉座。
そこに、黒を基調としたゴシックロリータの衣をまとった子供が優雅に腰掛けていた。
幾重のレースとリボンが織り上げる端正さは、まるで魂を宿す人形のよう。
魔王軍四凶将軍の一角、”黒薔薇の花嫁”セミヨン。
愛らしさは仮面に過ぎない。
その正体は男の子――否、女装した魔族。
艶やかな毒そのもので、ひとたび視線を交わせば、魂ごと絡め取られる気配がある。
「ふふふ、可愛い。素敵よ、アナタ♡」
玉座の足元、蝋燭の揺らぎに照らされた磔台に、青髪の少年が縛り付けられている。
白い肌を無数の切り傷が走り、滴る血が石床に赤い花を咲かせた。
セミヨンの瞳は恍惚に濡れ、視線は目の前の“玩具”から離れない。
彼の歓び――それは、美少年の苦痛と快楽が交わる刹那、その歪んだ表情を愛でること。
いままさに、その嗜虐を満たす時間を愉しんでいた。
「ああ、素敵……♡
白魚の指先が舞い、刃のように尖った爪が柔肌を浅く裂く。
「あっ……」
小さな悲鳴。
痛みの陰に、かすかな甘さが混じる。
白に赤が走り、ぷくりと浮いた血の珠を舌で掬うと、セミヨンは満足げに微笑んだ。
「んふっ、美味しい♡ 宝石よりも美しく、甘やかに輝く血だわ♡」
嗜虐の光を宿した瞳が、涙を零す少年を舐めるように辿る。
「ねぇ、アナタの命はどんな味がするのかしらね? ちょっと妾に味見させてくれない?」
舌なめずりとともに、爪先が喉元へ迫る。
少年の唇が震え、半ば無意識に言葉がこぼれた。
「や、やめてください……。い、命だけはお助けを……」
「……っ!!」
その一言に、セミヨンは雷に打たれたように硬直する。
「……あは。あはははっ!♡ あぁ、助けてほしいのね♡ 命乞い、しちゃうのね♡ なんて可愛いの♡ なんて愛おしいの!♡」
艶やかに頬を染め、声を弾ませる。
「いいわ。救ってあげる」
「あ……ありがとうございま……」
「でも、その前に――全部ちょうだい?」
「……え?」
見開かれる瞳。
セミヨンはさらに熱を帯び、舌なめずりを深くする。
「だって妾は、あなただけの“花嫁”♡ なら――旦那様の命も躰も、ぜんぶ妾のものよね?♡ あはっ♡ 嬉しい♡ ようやく妾だけのひとになるのね♡」
「そんな……」
少年は絶望に染まった顔でうなだれる。セミヨンは陶然と頬を上気させた。
「ああ、その絶望……最高♡ もう我慢できない♡ 可愛い果実は、今すぐ……摘み取る♡」
牙が首筋へ跳ねかかった瞬間、部屋の奥で魔法陣が脈動し、不気味な光が影を呼び込む。
刹那の静寂。
セミヨンは唇を離し、細い眉をひそめた。
「……このタイミングで無粋ね。誰かしら」
「失礼いたします、セミヨン様」
黒いローブの男が、深いフードに顔を隠したまま進み出る。
「あら、あなた……魔王軍に協力してくれているオルレアヌの人間ね。用件は?」
「ご報告がございます」
「どうせろくでもない話でしょうけど、聞いてあげる。妾が喜ぶ知らせかしら?」
男は一礼し、簡潔に告げる。
「先般お伝えした、国王エリオットと勇者・権蔵の婚約について。その後の進展です」
「ふーん……妾には、あまり面白くなさそうね」
「当初の計画は、王と勇者を婚姻で結び、勇者を王室に縛ることでしたが……不測の事態により、残念ながら破談となりました」
「あっそ。なら、よかったじゃない」
「……“よかった”と申されますが、婚姻の目的は勇者の自由を奪い、宮廷内で腐らせること。破談では、勇者は自由なままオルレアヌのために動けます。セミヨン様のご進軍にも影響が出る懸念が」
「でも考えなさい。正式契約が結べれば、王国は勇者を完全に囲い込める。破談のままなら関係は不安定。王国に肩入れする理由も薄れる。妾の軍には、むしろ有利じゃなくて?」
セミヨンは退屈そうに爪先を眺める。
「いえ。むしろ婚姻成立の方が、我らに利します。理由は一つ――統治の混乱です。“山賊勇者”は束縛を憎む。必ず王室と齟齬を起こす。その対立がこの局面で表面化すれば、王威は地に落ち、民は失望し、統治は弛緩します」
「そうねぇ。勇者が反発すれば内側から割れる。下手をすれば勇者がオルレアヌに牙を剥く……そうなれば妾も攻めやすいわね」
「はい。謁見で婚約は一度破談となりましたが、勇者はなお王を諦めておりません。王側に謝罪させ、再縁談が進むよう、水面下で手を回しています」
セミヨンの口元が愉快そうに吊り上がる。
「それなら話は別ね。ただ、婚姻が転んで不和が起きるだけじゃ足りない。オルレアヌの軍は強い。最新の魔導兵器、王国騎士団、そして伝説の剣聖マキシム……ここは確実に削ぎたいの」
「承知しています。貴族派・中立派、軍の半数はすでに掌中。民意が頂点に達した瞬間、反乱勢力を旗にクーデターを起こさせ、王都を内から分断。混乱に乗じて制圧します。各都市への浸透も完了済みで、機が熟せば暴動は連鎖します」
「腹黒い狸らしくなってきたわね。……でもオルレアヌの勇者だけは厄介よね。ドルテナ要塞をひとりで落とし、四狂将軍の獣王グリムフちゃんまで倒した怪物よ。彼の力を利用できるなら利用したいものだけど、万が一、王が手懐けたら面倒どころじゃない。オルレアヌ侵攻計画そのものが破綻しかねないわ」
「ご懸念なく。勇者を無力化する策は既に講じてあります。それは――」
男は淡々と、しかし自信を滲ませて計画の骨子を述べ始める。
「ふーん、面白いじゃない。気に入ったわ。それでいきましょう。妾は準備に入るから、あなたはあなたの仕事を滞りなく進めなさい」
「はい、仰せのとおりに。……それと、約した通り勇者の顔をお目にかけます。ご覧になりますか?」
「ええ。さっさと見せなさい」
「承知」
男が懐から水晶を取り出す。光が渦巻き、謁見の映像が立ち上がる。
「こちらが、例の勇者です」
「これが……勇者? おぇ……太り過ぎの肉塊じゃない。見てるだけで鼻につく臭いが漂ってくる気がするわ。世も末ね。……で、こっちが美少年王。はぁ……相変わらず、ため息が出るほど可憐。国を滅ぼしたら、絶対に妾のものにしてあげる」
「面目にございませんが、同感にございます」
「あら、この金髪巻き毛の男の子もなかなか。名前は?」
「…………彼はジュリアン。オルレアヌ第一騎士団の従騎士、まだ見習いにございます」
「ふふ。エリオットにジュリアン。顔を見てるだけで身体が疼くの、困るわね。……なのにあの豚、エリオットだけじゃなくジュリアンにまで汚らしい目を……え?」
水晶の映像が切り替わり、セミヨンの表情が固まる。
「え、えぇ……? 巻き毛のジュリアンが、あの豚に……裸に剥かれて……汚されて……?」
映像には、美しい金髪巻き毛の少年が、勇者権蔵に、今まさに犯されようとしている場面が映し出されていた。
赤黒く醜悪にそそり立った巨根が、ジュリアンの、まだあどけなく愛らしいピンク色に染まった窄まりに、ゆっくりと挿入されようとしている。
その光景が、何度も、何度も、繰り返し再生される。
そして、それを見た彼の身体は、わなわなと小刻みに震え始めた。
「こ、この! 豚野郎がああああああ!! 許さない!! 妾のジュリアンをぉおおおおお!!! 絶対に、八つ裂きにして殺してやる!!!!!」
セミヨンの怒りは、ついに限界を突破した。
漆黒のドレスに身を包んだ美少年が放つ尋常ではない魔力の波が、激しい暴風の渦を生み出し、その圧倒的な風圧によって、壁や床に無数の亀裂が入り始めた。
「……これは大変失礼いたしました。すぐに映像を切り替えさせていただきます」
映像は切り替わり、今度は、権蔵が街中で別の少年を後ろから抱きしめている姿に変わった。
―――――――――
『ぐへへへ、きみ、かわいいね。おじさんの家に来ない? おじさんが、みっちりと愛情を込めてしてあげるからねー』
『こんなとこ見られたら、旦那さまに怒られるじゃと? そんなのは、些細な問題じゃんか。わしの勇者の力で、全部踏み潰してやるわ!』
『あー、気持ちいい。やっぱ、丁稚奉公の美少年のケツマンコは、サイコーじゃ~!!』
―――――――――
「……うぷ、最悪。もう結構よ、これ以上は目が腐るわ」
「ご所望どおり。では失礼いたします」
男は礼をして魔方陣へ身を翻し、闇に沈んだ。
残響が消えるのを待って、セミヨンは胸の奥に溜まった嫌悪を細く吐き出す。
「ふぅ……危うく取り乱すところだったわ。あれがオルレアヌの“勇者”だなんて、笑えない冗談ね。やっぱり勇者って、どうしようもないクズばかり……全員皆殺しにしてやるわ……」
縛められた少年の頬に、白い指がそっと触れる。
触れ方だけは限りなく優しい。
「でも――美しい少年は別よ。あなたたちだけが、妾の心を慰めてくれる」
「あ、あの……」
少年は不安げに声を震わせた。
セミヨンの口元が妖しく歪む。
「大丈夫。すぐに楽にしてあげるからね……」
その囁きと同時に、白い首筋へと鋭い牙が優雅に沈む。
甘い血の香りが、静かに広がった。
「かはっ……!?」
少年は、一瞬なにが起きたか分からなかっただろう。
だが、すぐに激痛が全身を貫くが、次の瞬間、その表情は悦楽に醜く歪む。
「あ、あぁああああああああ!!♡♡♡♡」
青髪の少年はびくん、びくんと身体を大きく震わせながら、大量の精を、その場に撒き散らした。
その量は尋常ではなく、セミヨンの豪奢なドレスを純白に染め上げたほどだった。
青臭い、むせ返るような香りが部屋中に立ち込める。
セミヨンは、その匂いに反応するかのように、ゆっくりと発情していく。
「んちゅ、じゅず、れろ、あむ♡ ぺちゃ、くちゅ、ごく、ごくっ、んんっ、はあっ♡ ……おいし……♡ アナタのおかげで少し落ち着いたわ。――それじゃあ、そろそろ“本番”を始めましょうか」
セミヨンは右手で少年の頬を撫で、指先を喉へ滑らせる。
次いで両手が白い首を挟み、ゆっくり、確実に締め上げた。
「ぐ、あっ……が、ぐう……」
力が込もるたび、喉の奥から掠れた音が洩れる。
「あら、まだ死なないの? いいわ、そのほうが楽しい。いまはね、アナタの絶望に歪む顔を、隅々まで堪能したい気分なの。さあ、もっと見せて。もっと、もっと――妾を楽しませてちょうだい」
苦悶に震える表情を真正面から受け止め、セミヨンの瞳が恍惚に濡れる。
やがて、心臓の鼓動が完全に沈黙したのち、少年の身体に異変が走る。
肌は青白く翳り、筋肉が不自然に肥大し、体毛が噴き出すように生え広がる。
爪は刃のごとく伸び、牙は肉を裂くために研ぎ澄まされていく。
「ふふ……やっぱり。妾の眷属として申し分ない出来栄えね。これからよろしく、名前も知らない可愛い美少年くん♡」
獣人めいた醜怪な姿へと化した元少年が、恭しくひれ伏す。
『すべてはご主人さまの望みのままに』
「いい子ね。まずは鬱陶しいスパニアを滅ぼすの。次にオルレアヌ、それから大陸全土。最後に“魔王”を退けて、この世界をいただくわ。そして妾だけの美少年を集めたハーレムを作るの……そして毎日、毎晩、飽きるまで。――ああ、想像だけで昂ぶってしまうわ……♡ でも、その日まで少しだけ我慢ね」
彼は踊るように軽くステップを踏み、優雅に跳躍して転移陣へ身を投じる。
次の瞬間、目の前に広がったのは、地獄の炎に呑まれる堅牢な城だった。
「あら、もう終わっていたのね。つまらないわ」
遠い日の玩具を思い出すみたいに、軽く肩をすくめる。
「この前のスパニアの勇者も退屈だった。喚き散らして斬りかかってくるから、『うるさいわね』の一振りで頭を飛ばしてあげたけれど……あれ、本当に勇者だったのかしら」
崩れた城門の先には、無数の人の屍。
首なき胴、胴なき下半身、四肢を失った躯、露出した臓物――赤黒い川が石畳を染めている。
「見事ね。まるで地獄の門。――せっかくだから、この国の滅びを最期まで見届けてあげましょう」
身の丈を超える禍々しい大鎌を胸に抱き、炎柱をうっとりと見上げるセミヨン。
オルレアヌ王国の隣国スパニアは、いましがた、魔王軍四凶将軍セミヨンの手により、完全に滅亡した。