※この作品はR-18です。

美少年ハーレムを作りたい!! ~モブおじだけど転生したらチート勇者でした。なので盗賊になって好き勝手に生きることにしました~   作:とけそうだら

45 / 64
第40話 黒い策謀

 今は無き大貴族の屋敷の廃墟。

 主を失ったはずの空間は、不気味なほど整えられ、塵ひとつ見当たらない。

 だが一歩踏み入れるたび、床下から湿った冷気が這い上がり、骨の髄を冷やす魔力が肌を撫でた。

 尋常ならざる力が空間ごと占拠し、屋敷を異界へ反転させている――それを告げる圧だ。

 

 最奥には、豪奢にして妖しい玉座。

 そこに、黒を基調としたゴシックロリータの衣をまとった子供が優雅に腰掛けていた。

 幾重のレースとリボンが織り上げる端正さは、まるで魂を宿す人形のよう。

 

 魔王軍四凶将軍の一角、”黒薔薇の花嫁”セミヨン。

 愛らしさは仮面に過ぎない。

 その正体は男の子――否、女装した魔族。

 艶やかな毒そのもので、ひとたび視線を交わせば、魂ごと絡め取られる気配がある。

 

「ふふふ、可愛い。素敵よ、アナタ♡」

 

 玉座の足元、蝋燭の揺らぎに照らされた磔台に、青髪の少年が縛り付けられている。

 白い肌を無数の切り傷が走り、滴る血が石床に赤い花を咲かせた。

 セミヨンの瞳は恍惚に濡れ、視線は目の前の“玩具”から離れない。

 彼の歓び――それは、美少年の苦痛と快楽が交わる刹那、その歪んだ表情を愛でること。

 いままさに、その嗜虐を満たす時間を愉しんでいた。

 

「ああ、素敵……♡ 妾(わらわ)の可愛い、可愛い旦那様」

 

 白魚の指先が舞い、刃のように尖った爪が柔肌を浅く裂く。

 

「あっ……」

 

 小さな悲鳴。

 痛みの陰に、かすかな甘さが混じる。

 白に赤が走り、ぷくりと浮いた血の珠を舌で掬うと、セミヨンは満足げに微笑んだ。

 

「んふっ、美味しい♡ 宝石よりも美しく、甘やかに輝く血だわ♡」

 

 嗜虐の光を宿した瞳が、涙を零す少年を舐めるように辿る。

 

「ねぇ、アナタの命はどんな味がするのかしらね? ちょっと妾に味見させてくれない?」

 

 舌なめずりとともに、爪先が喉元へ迫る。

 少年の唇が震え、半ば無意識に言葉がこぼれた。

 

「や、やめてください……。い、命だけはお助けを……」

 

「……っ!!」

 

 その一言に、セミヨンは雷に打たれたように硬直する。

 

「……あは。あはははっ!♡ あぁ、助けてほしいのね♡ 命乞い、しちゃうのね♡ なんて可愛いの♡ なんて愛おしいの!♡」

 

 艶やかに頬を染め、声を弾ませる。

 

「いいわ。救ってあげる」

 

「あ……ありがとうございま……」

 

「でも、その前に――全部ちょうだい?」

 

「……え?」

 

 見開かれる瞳。

 セミヨンはさらに熱を帯び、舌なめずりを深くする。

 

「だって妾は、あなただけの“花嫁”♡ なら――旦那様の命も躰も、ぜんぶ妾のものよね?♡  あはっ♡ 嬉しい♡ ようやく妾だけのひとになるのね♡」

 

「そんな……」

 

 少年は絶望に染まった顔でうなだれる。セミヨンは陶然と頬を上気させた。

 

「ああ、その絶望……最高♡ もう我慢できない♡ 可愛い果実は、今すぐ……摘み取る♡」

 

 牙が首筋へ跳ねかかった瞬間、部屋の奥で魔法陣が脈動し、不気味な光が影を呼び込む。

 刹那の静寂。

 セミヨンは唇を離し、細い眉をひそめた。

 

「……このタイミングで無粋ね。誰かしら」

 

「失礼いたします、セミヨン様」

 

 黒いローブの男が、深いフードに顔を隠したまま進み出る。

 

「あら、あなた……魔王軍に協力してくれているオルレアヌの人間ね。用件は?」

 

「ご報告がございます」

 

「どうせろくでもない話でしょうけど、聞いてあげる。妾が喜ぶ知らせかしら?」

 

 男は一礼し、簡潔に告げる。

 

「先般お伝えした、国王エリオットと勇者・権蔵の婚約について。その後の進展です」

 

「ふーん……妾には、あまり面白くなさそうね」

 

「当初の計画は、王と勇者を婚姻で結び、勇者を王室に縛ることでしたが……不測の事態により、残念ながら破談となりました」

 

「あっそ。なら、よかったじゃない」

 

「……“よかった”と申されますが、婚姻の目的は勇者の自由を奪い、宮廷内で腐らせること。破談では、勇者は自由なままオルレアヌのために動けます。セミヨン様のご進軍にも影響が出る懸念が」

 

「でも考えなさい。正式契約が結べれば、王国は勇者を完全に囲い込める。破談のままなら関係は不安定。王国に肩入れする理由も薄れる。妾の軍には、むしろ有利じゃなくて?」

 

 セミヨンは退屈そうに爪先を眺める。

 

「いえ。むしろ婚姻成立の方が、我らに利します。理由は一つ――統治の混乱です。“山賊勇者”は束縛を憎む。必ず王室と齟齬を起こす。その対立がこの局面で表面化すれば、王威は地に落ち、民は失望し、統治は弛緩します」

 

「そうねぇ。勇者が反発すれば内側から割れる。下手をすれば勇者がオルレアヌに牙を剥く……そうなれば妾も攻めやすいわね」

 

「はい。謁見で婚約は一度破談となりましたが、勇者はなお王を諦めておりません。王側に謝罪させ、再縁談が進むよう、水面下で手を回しています」

 

 セミヨンの口元が愉快そうに吊り上がる。

 

「それなら話は別ね。ただ、婚姻が転んで不和が起きるだけじゃ足りない。オルレアヌの軍は強い。最新の魔導兵器、王国騎士団、そして伝説の剣聖マキシム……ここは確実に削ぎたいの」

 

「承知しています。貴族派・中立派、軍の半数はすでに掌中。民意が頂点に達した瞬間、反乱勢力を旗にクーデターを起こさせ、王都を内から分断。混乱に乗じて制圧します。各都市への浸透も完了済みで、機が熟せば暴動は連鎖します」

 

「腹黒い狸らしくなってきたわね。……でもオルレアヌの勇者だけは厄介よね。ドルテナ要塞をひとりで落とし、四狂将軍の獣王グリムフちゃんまで倒した怪物よ。彼の力を利用できるなら利用したいものだけど、万が一、王が手懐けたら面倒どころじゃない。オルレアヌ侵攻計画そのものが破綻しかねないわ」

 

「ご懸念なく。勇者を無力化する策は既に講じてあります。それは――」

 

 男は淡々と、しかし自信を滲ませて計画の骨子を述べ始める。

 

「ふーん、面白いじゃない。気に入ったわ。それでいきましょう。妾は準備に入るから、あなたはあなたの仕事を滞りなく進めなさい」

 

「はい、仰せのとおりに。……それと、約した通り勇者の顔をお目にかけます。ご覧になりますか?」

 

「ええ。さっさと見せなさい」

 

「承知」

 

 男が懐から水晶を取り出す。光が渦巻き、謁見の映像が立ち上がる。

 

「こちらが、例の勇者です」

 

「これが……勇者? おぇ……太り過ぎの肉塊じゃない。見てるだけで鼻につく臭いが漂ってくる気がするわ。世も末ね。……で、こっちが美少年王。はぁ……相変わらず、ため息が出るほど可憐。国を滅ぼしたら、絶対に妾のものにしてあげる」

 

「面目にございませんが、同感にございます」

 

「あら、この金髪巻き毛の男の子もなかなか。名前は?」

 

「…………彼はジュリアン。オルレアヌ第一騎士団の従騎士、まだ見習いにございます」

 

「ふふ。エリオットにジュリアン。顔を見てるだけで身体が疼くの、困るわね。……なのにあの豚、エリオットだけじゃなくジュリアンにまで汚らしい目を……え?」

 

 水晶の映像が切り替わり、セミヨンの表情が固まる。

 

「え、えぇ……? 巻き毛のジュリアンが、あの豚に……裸に剥かれて……汚されて……?」

 

 映像には、美しい金髪巻き毛の少年が、勇者権蔵に、今まさに犯されようとしている場面が映し出されていた。

 赤黒く醜悪にそそり立った巨根が、ジュリアンの、まだあどけなく愛らしいピンク色に染まった窄まりに、ゆっくりと挿入されようとしている。

 その光景が、何度も、何度も、繰り返し再生される。

 

 そして、それを見た彼の身体は、わなわなと小刻みに震え始めた。

 

「こ、この! 豚野郎がああああああ!! 許さない!! 妾のジュリアンをぉおおおおお!!! 絶対に、八つ裂きにして殺してやる!!!!!」

 

 セミヨンの怒りは、ついに限界を突破した。

 漆黒のドレスに身を包んだ美少年が放つ尋常ではない魔力の波が、激しい暴風の渦を生み出し、その圧倒的な風圧によって、壁や床に無数の亀裂が入り始めた。

 

「……これは大変失礼いたしました。すぐに映像を切り替えさせていただきます」

 

 映像は切り替わり、今度は、権蔵が街中で別の少年を後ろから抱きしめている姿に変わった。

 

―――――――――

 

『ぐへへへ、きみ、かわいいね。おじさんの家に来ない? おじさんが、みっちりと愛情を込めてしてあげるからねー』

 

『こんなとこ見られたら、旦那さまに怒られるじゃと? そんなのは、些細な問題じゃんか。わしの勇者の力で、全部踏み潰してやるわ!』

 

『あー、気持ちいい。やっぱ、丁稚奉公の美少年のケツマンコは、サイコーじゃ~!!』

 

―――――――――

 

「……うぷ、最悪。もう結構よ、これ以上は目が腐るわ」

 

「ご所望どおり。では失礼いたします」

 

 男は礼をして魔方陣へ身を翻し、闇に沈んだ。

 残響が消えるのを待って、セミヨンは胸の奥に溜まった嫌悪を細く吐き出す。

 

「ふぅ……危うく取り乱すところだったわ。あれがオルレアヌの“勇者”だなんて、笑えない冗談ね。やっぱり勇者って、どうしようもないクズばかり……全員皆殺しにしてやるわ……」

 

 縛められた少年の頬に、白い指がそっと触れる。

 触れ方だけは限りなく優しい。

 

「でも――美しい少年は別よ。あなたたちだけが、妾の心を慰めてくれる」

 

「あ、あの……」

 

 少年は不安げに声を震わせた。

 セミヨンの口元が妖しく歪む。

 

「大丈夫。すぐに楽にしてあげるからね……」

 

 その囁きと同時に、白い首筋へと鋭い牙が優雅に沈む。

 甘い血の香りが、静かに広がった。

 

 

「かはっ……!?」

 

 少年は、一瞬なにが起きたか分からなかっただろう。

 だが、すぐに激痛が全身を貫くが、次の瞬間、その表情は悦楽に醜く歪む。

 

「あ、あぁああああああああ!!♡♡♡♡」

 

 青髪の少年はびくん、びくんと身体を大きく震わせながら、大量の精を、その場に撒き散らした。

 その量は尋常ではなく、セミヨンの豪奢なドレスを純白に染め上げたほどだった。

 青臭い、むせ返るような香りが部屋中に立ち込める。

 セミヨンは、その匂いに反応するかのように、ゆっくりと発情していく。

 

「んちゅ、じゅず、れろ、あむ♡ ぺちゃ、くちゅ、ごく、ごくっ、んんっ、はあっ♡ ……おいし……♡ アナタのおかげで少し落ち着いたわ。――それじゃあ、そろそろ“本番”を始めましょうか」

 

 セミヨンは右手で少年の頬を撫で、指先を喉へ滑らせる。

 次いで両手が白い首を挟み、ゆっくり、確実に締め上げた。

 

「ぐ、あっ……が、ぐう……」

 

 力が込もるたび、喉の奥から掠れた音が洩れる。

 

「あら、まだ死なないの? いいわ、そのほうが楽しい。いまはね、アナタの絶望に歪む顔を、隅々まで堪能したい気分なの。さあ、もっと見せて。もっと、もっと――妾を楽しませてちょうだい」

 

 苦悶に震える表情を真正面から受け止め、セミヨンの瞳が恍惚に濡れる。

 

 やがて、心臓の鼓動が完全に沈黙したのち、少年の身体に異変が走る。

 肌は青白く翳り、筋肉が不自然に肥大し、体毛が噴き出すように生え広がる。

 爪は刃のごとく伸び、牙は肉を裂くために研ぎ澄まされていく。

 

「ふふ……やっぱり。妾の眷属として申し分ない出来栄えね。これからよろしく、名前も知らない可愛い美少年くん♡」

 

 獣人めいた醜怪な姿へと化した元少年が、恭しくひれ伏す。

 

『すべてはご主人さまの望みのままに』

 

「いい子ね。まずは鬱陶しいスパニアを滅ぼすの。次にオルレアヌ、それから大陸全土。最後に“魔王”を退けて、この世界をいただくわ。そして妾だけの美少年を集めたハーレムを作るの……そして毎日、毎晩、飽きるまで。――ああ、想像だけで昂ぶってしまうわ……♡ でも、その日まで少しだけ我慢ね」

 

 彼は踊るように軽くステップを踏み、優雅に跳躍して転移陣へ身を投じる。

 次の瞬間、目の前に広がったのは、地獄の炎に呑まれる堅牢な城だった。

 

「あら、もう終わっていたのね。つまらないわ」

 

 遠い日の玩具を思い出すみたいに、軽く肩をすくめる。

 

「この前のスパニアの勇者も退屈だった。喚き散らして斬りかかってくるから、『うるさいわね』の一振りで頭を飛ばしてあげたけれど……あれ、本当に勇者だったのかしら」

 

 崩れた城門の先には、無数の人の屍。

 首なき胴、胴なき下半身、四肢を失った躯、露出した臓物――赤黒い川が石畳を染めている。

 

「見事ね。まるで地獄の門。――せっかくだから、この国の滅びを最期まで見届けてあげましょう」

 

 身の丈を超える禍々しい大鎌を胸に抱き、炎柱をうっとりと見上げるセミヨン。

 オルレアヌ王国の隣国スパニアは、いましがた、魔王軍四凶将軍セミヨンの手により、完全に滅亡した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。