女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
こういう場では定番の「よぉ、兄ちゃん、可愛い娘連れてるじゃないか、オレと遊ぼうぜ」が現れた。キっとオレが睨みかえすと酔っ払っているのか、つっかかってきた。
こういうとき、横にいるのがらんまだと、らんまが軽くひねったりするのだが、今日はオレがやってみようかと。
—パラディアム……。
小さく呟き勇者の力を覚醒させる。カウンターに置かれたハマキをその「オレと遊ぼうぜ」くんの口にくわえさせて、指から火をだして、ハマキに点火してあげた。
「ひぃ?!ま、魔法……無詠唱……?!」
「オレと遊ぼうぜ」くんの頭がわかりやすいくらいパニックになる。この世界じゃ魔法使いは珍しくもなんともないが、ロッドやスティックを使って、呪文を詠唱して繰り出すわけで、こんな簡単なライター火でも自在に手ブラの無詠唱で出すのは、このオレや超エリートの魔術師くらいしかできない。魔王の復活を企んでいた魔道士ゼノリスだって無詠唱では火も起こせない。おそれ慄くのも無理はない。そして、オレは「オレと遊ぼうぜ」くんにニコっと作り笑顔で言い放った。
「今、お楽しみ中なので、邪魔しないでくださいね♪」
酒場を出て、夜道を歩いているときに、さぞかし、アム姫も楽しんだかと思いきや、反応は真逆だった。
「さっきの無詠唱ですよね……いくら、あの人が行儀悪い人でも魔法の力をあんな風に使うなんて」
「あ……いや……そ、そうですね」
やり過ぎたかなと反省していると、アム姫はオレに近づいてきた。
「うふふ、嘘です、冗談です。めちゃくちゃ面白かったですね、あの男のビビった面!最高でした。でも、無詠唱で術を唱えるのに、あなたの見た目は魔術師でもない、むしろ戦士のように見えます。なにもなののですか?」
お気に召してくれたのは良いが、ここで勇者なんですとは言えない。
「と、とおりすがりの冒険者です……」
まったく面白くもないジョークを口にしてしまうオレ。最近、らんまと結婚できたから、ちょっとはモテるのかなっておもったけど、やっぱり、女性の扱いは下手だった。それもそうだ。今の今までバレンタインデーにチョコレートのひとつももらったことないからな。あ、同じ班というくくりで義理チョコのひとつを小学校5年のときにもらったっけか。
「じゃあ、とおりすがりの冒険者さんにお願いがあります。私、キスまだなんです。キスしてもらえますか?」
おしとやかな口調のらんまの顔が目を閉じて、唇を尖らせてきた。オレは理性で自分を律した。全力で踏みとどまらせた。
「で、できるわけないじゃないですか……既婚者なんですから」
「ふふふ、嘘です、冗談です。キスしたら、らんまさんに言いつけようとおもってました」
「あんまり、揶揄わないでください……」
このお姫さま、ある意味、らんまよりも一緒にいると疲れるかも。