女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
それから数日後の昼過ぎ。
オレたちは昼食を終えて、乗馬を行いに街の馬屋を訪れているとアムール国の衛兵が大急ぎで駆けつけてきた。その顔色から、緊急事態だという事はすぐに読み取れた。
「はぁっはぁ……はぁっ……た、大変です。らんまさんが拐われました」
一瞬で身体が震えて、すくみ上がるような堅苦しい気詰まりを感じた。それまでの穏やかな空気が一変し、剣呑な雰囲気に包まれた
オレは姫をその衛兵に任せ、らんまから借りていた湯太郎(幻獣・アーヴァンク)を小瓶の中から出して飛び乗った。
「すいません、一度、オレは城へ行きます」
「達也さん、わたしも行きます」
「姫は危険です、ここに残っていてください。湯太郎、らんまの危機だ、レムール国へ猛スピードでいくぞ」
飼い主であるらんまの危機とわかれば、湯太郎は雄叫びを上げる間もなくオレを乗せて、城へと駆け出していった。
疾駆する湯太郎に乗ったまま、城下町を駆け抜け、王の間へと飛び込む。
「らんまが拐われたって聞きましたけど」
王の間にはレムール国王とその執事たちがいた。なにやら、騒ついてはいるが、焦っている様子はあまりない。
「あ、達也様。昼前から、城の中に見当たらないんだ。城の外から出ることはないのだが」
「なんで、もっと早く教えてくれないんですか」
オレは憤りを感じていたかもしれない。姫(らんま)が拐われたというのに、城の内部は先日、訪れたときとなにも変わらない平穏な様子だったから。
「だって、あの娘はわが娘・アムの身代わりという約束だったはずだ? むしろ、ワシの予知夢が当たり、アムは無事だという事ではないか」
「は……?」
言葉を失った。たしかに、らんまが代わりに拐われたときの取り決めはしていなかったが、身代わりに殺されたりしてもしょうがないと言った口調だった。
「くそが……もう、いいです。自分で探します。アム姫なら街に護衛といますから、ご安心を」
「今、なんと口にした。たかだがのDランク冒険者が、国王に向かって失礼だぞ」
そう、オレとらんまは魔王討伐を隠して生活していたため、冒険者ランクは最低ランクのDを付けていた。
「なんとでも言ってください、それでは」
オレは湯太郎に飛び乗って、城を出ていった。城下町を抜け、草原に出る手前に馬に乗ったアム姫が帰ってきていた。アム姫に声をかけられる。
「やはり、らんまさんを捜索するのは達也さんだけになったんですね。らんまさんが拐われる事があれば、そうなるだろうとは思っていました」
「……姫もグルだったのか、オレは忙しいんで。姫は城に帰っておいてくれ」
「そうはいきません、私もらんまさんを探しに行きます。助けに行きます」
「なにを言ってるんですか、あんたは城にはやく帰ってください」
「私も戦えます……」
「オレはあんたの助けも誰の助けも借りない。ひとりでらんまを助ける。あんたの父親がそうであるようにオレにとっては、らんまがすべてなんだ。あいつがいれば、オレは他になにもいらない」
「それで、どうやってらんまさんを探すのですか?」
「……世界中をくまなく探します」
「ふふ……短気は損気ですよ、勇者はいつでも冷静でいなくっちゃ。私はこうなると思っていましたから準備をしていました。らんまさんの居場所はわかります」
「へ……? 姫がらんまの居場所がわかるって?」
なぜ、姫がわかるのか疑問に感じたが、オレにとっては一筋の光に思えた。そして、それを手がかかりに絶対にらんまを助けなくてはいけない。
姫の口から出た一筋の光は周到な準備だった。
「らんまさんと服を交換するときに、鉄のコルセットに私の魔力をかけておきました。それが探知機の役割となり、場所がわかります」
「なんと、そのような事を……すいません。それじゃ、さっそく教えてください。一刻を争う事態ですから」
「それじゃ、私も連れていってくれますね」
「……わかりました、それが居場所を教える条件というなら……乗ってください」
アム姫を湯太郎の後部に座らせた。
「すでに探知済みです。らんまさんは北にある山沿いの洞窟の奥にいると思います、出発してください」
「姫は戦えるのですか?正直に言いますけど、足手まといになるのでしたら、外で待っててもらいたいのですが」
「勇者さんでも見抜けないんですね、私の実力を。こう見えても、幼少の頃より賢者カイ様から直々に魔術の手ほどきを受けた魔術師ですわ」
「わかりました……でも、本当にヤバイときは逃げてくださいね。それから、そのリュックにロッドが入っています。それを使ってください」
アム姫が湯太郎の脇にかかえたオレの荷物からゴットロッドを出し、手に取った。八宝斎が所有していたもので、オレが戦いの中で追ってしまったが、その後、ドワーフたちに頼んで修復してもらった。5種の神器のひとつだ。
「これは……いったい? とてつもない魔力の増幅を感じます。やっぱり、数ヶ月前に復活した魔王を討伐したのは達也さんとらんまさんたちだったのですね」
これ以上、隠しておく必要はない。
「……そうです、オレたちが魔王を討伐しました。オレには伝説の勇者の力が、らんまにはの力が宿っています」
「ふふふ……ベリーヌさんも言ったとおりでしたね。でも、すごくワクワクしています、これが冒険ですね」
「ベリーヌのやつ、喋ってたのか……」
国王には喋ってはいなかったようだが、影武者を拒否するアム姫を説得するために伝えていたのかもしれないな。
姫を乗せながら、草原を爆走していると、北の洞窟まで辿り着いた。湯太郎を小瓶にしまい、オレは神斧ラブリュスを手にして進む。