女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
翌朝、起きたオレたちは夕食をご馳走になった場所で朝食をとっていた。パラムとカイがなかなか部屋から降りてこない。
「あのー、パラムさんとカイさんは?」
宿屋の主人がオレの疑問に答えてくれた
「あぁ、あの二人ね。昨夜は宿は要らないと行って、食事の後に出ていったよ。それで急遽、部屋が空いちゃったもんだからね。せっかくだからと、別のご夫婦さんに貸したんだ」
隣のテーブルで食卓を囲み、子沢山の夫婦がオレとらんまを見て、手を振っている。旦那さんが子供を抱きかかえたまま、オレたちのほうへと寄ってきて、耳打ちした。
「ゆうべはずいぶん、お楽しみでしたね。若くて可愛い彼女、大事にしなよ。これあげるよ、宿屋の回数券。10個貯まると1回泊まれるからさ」
そうか、昨夜、パラムとカイだと思ってた声はこのご夫婦の声だったのか。そうとは知らずにオレたちは昨夜、ハッスルしてしまった。
オレは別に対抗したつもりでもなかったのだが、顔が真っ赤になってしまった。
◆◇◆◇◆
試合会場に着くと、すでにパラムとカイが着替えを終え、待っていた。パラムは耳まで覆う大きなヘルムを被っている。見間違いかもしれないがミスリル素材が使われているようだ。
「今日はお手柔らかに……というわけにもいかなそうだけど、怪我なく戦いましょう」
パラムが白く透きとおった手と差し出してきて、オレは握手をしようとしたが、らんまに止められた。らんまがパラムを睨みつける。
「試合前に仲良しこよしなんてできるわけないだろ、達也、そんな奴と握手するな」
「んふふふ……らんまさんったら、血の気が多いのね、いいわ」
相変わらず、カイは無言で目を閉じている。オレたちとの試合のイメージトレーニングでもしているのだろうか。
「まぁ、怪我なく戦いましょう。骨折ったり、病院が必要になったら困るし」
「その辺もカイに任せておけば心配……」
「パラム、言葉は災いを呼ぶ。そこまでにしておけ」
亭主関白なのか、カイが制するとパラムは口を閉ざした。
オレとらんまも控え室で着替えた。オレはベリーヌ騎士団のプラチナメイルに着替えた。らんまはカイが魔法を使う可能性があるという事でアンダーウェアとしてあぶない水着を着た。その上にスリットが大きく入ったチャイナドレス風の武道着に身を包んだ。
武器に関しては、神器は留守番なわけでオレはここに試合前に街の武器屋で購入した『鋼の剣』を、らんまは『らせつの棍』を持って戦う事とした。
控え室から出て、リングへと向かっていく。
相手のパラムはレイピア、カイは常時しているカシの杖で戦うようだ。あんなどこにでもあるような杖で戦うなんて、よっぽどの余裕なのか、もしくはなにか仕掛けでもあるのだろうか。
パラムがマントを脱ぎ捨てると試合開始前だというのに大きな歓声があがった。
ミスリルアーマーだ。今、巷では話題のミスリル素材を使用したアーマー。ミスリルアーマーなんて市場に出たら何十万ゴールドもする代物だろう。頭にはまだ耳まで隠れるほどの大きな帽子を被っている。
「…………ほら、だから言ったろ、その鎧は目立ちすぎると」
「べつにいいじゃない、それにこの娘たち、本気でいかないと危ないわよ」
「…………」
カイは無言で、白いローブの中から冠を取り出した。額に赤い宝石を配置したデザインだ。それを頭に身につけた。
『それでは町おこし主催・カップル対抗!チキチキ・二人三脚障害レースの1位と2位となったカップルの入場です。まずは赤コーナー、パラム選手とカイ選手です。』
パラムとカイがリングインすると大きな歓声があがる。パラムの美貌に男性ギャラリーは大喜び、カイのほうはというと、そこまで女性には騒がれていないので安心した。
『お二人の職業といいますか、ジョブといいますか、戦闘スタイルはパラム選手が魔法剣士、カイ選手は賢者だそうです』
「魔法剣士と賢者だって?本当か?」
たしか、誰だったか店の常連客にでも聞いたかは忘れてしまったが、この世界で賢者と名乗れる魔術使いはわずか数名。あの無言の男がアム姫の先生かもしれないし、もしくは魔物が化けている可能性もでてきたな。
「らんま、カイは相当な術使いかもしれない、気をつけろ。魔物が化けている可能性もある」
「へ、術使いだろうが、なんだろうが、このオレのあぶない水着があれば、魔法は無効化さ」
まぁ、使用装備品の規定は書いてなかったから反則ではないが、術使い相手に魔法を無効化するあぶない水着を着用するなんてチートだよな。
『青コーナー、達也選手とらんま選手です。職業は戦士とです』
リングインしながら、らんまがオレにだけ聞こえる声で愚痴った。
「なんだよ、職業は勇者って書けばよかったのにさ?」
「ダメに決まってるだろ、面倒な事になるからさ」
せっかく、ここまで魔王を倒した勇者だって事は隠して、平穏に過ごしているんだからとらんまには悪いが、職業は戦士と書かせてもらった。
『らんま選手は、このチッタソラーレでは以前にも久能小太刀選手と格闘新体操の試合を行ってくれまして、そのときの鮮やかな身のこなしは記憶に新しいです。今日もアクロバティックな戦いを見せてくれるでしょう』
格闘新体操の試合でのらんまの活躍が見応えあったのか、会場はパラムよりもらんま側の応援のほうが多かった。さすがはオレの嫁。人気あるなー。
試合開始前に最終のアナウンスが話される。
『時間無制限の一本勝負です。両カップルの誰か1名でもギブアップかリングアウトした時点で試合終了です。それでは、最終試合はじめます!』
ゴングが鳴り響き、試合が開始された。
オレとらんまは横並びに構えるのに対して、パラムたちはパラムが前、カイが後ろの位置で構えた。
「ふふふ……どこからでもかかってきなさい。まずは剣の腕を見てあげるわ」
「でぇえい!!」
「おりゃぁあ!」
オレたちは二人がかりでパラムに斬りかかっていく。それをパラムは長剣で受け流していく。オレとらんまの攻撃の手数は多いはずなのに、パラムの剣さばきがそれを上回っている。
パラムが巧みな剣術を持っていることを確認するとオレたちは攻撃の手を強めた。
「でぇありゃ!」
「やるじゃねーか」
キンキンキンキン!!
オレとらんまのスピードについてくるなんて、なおかつ剣の扱いも巧い。一方、パラムだけでも戦えるとでも言わんばかりにカイは、それをじっと見ているだけ。
「くっそ、ナめやがって……」
「らんま、焦るな。焦ると相手の思うツボだぞ」
あえて、パラムの相手をらんま一人に任せて、オレはカイに向かっていく。鋼の剣を振り回し、斬りかかるが、カイにはかしの杖で受け止められた。オレが剣で何度も斬りかかるが、かしの杖は折れたり傷つくことなく、まるで金属のような音を響かせて完全に防御されていく。むしろ、こっちの鋼の剣のほうが刃に傷が入っていく。
「…………まだまだ、無駄な動きが多いな」
「なんだとぉ……」
「ウィンドスキャッター」
カイが左手を広げると、そこから出された風圧でオレはリングロープまで吹き飛ばされてしまう。
「どわぁっ」
「達也……!」
「くぅ、まじで強いな、これは手加減できない。らんま仕方ない、もう、使うぞ」
オレはらんまのおさげを結わいている部分に付けているヘアアクセサリの光の宝玉に触れる。
—パラディアム。
勇者の力なしじゃ、この二人には勝てない。
力を解放したオレは閃光呪文を唱え、両手から炎撃を飛ばした。リングは燃やさないように二人だけを狙うように。
「攻撃魔法?! なら、こちらも。カイ」
「うむ……」
カイとパラムは同時に冷気系統の呪文を唱え、オレの炎撃閃光と相殺させた。
めちゃくちゃ強いなんてものじゃない、パラムは剣の腕に加えて魔法も使える。カイはかなりの熟練の術使いか。
「オレもいるのも忘れてもらっちゃ困るぜー!」
らんまがオレの肩を踏み台にして大きく飛び上がり、空中からパラムを狙った。
「まずい……!」
直撃かと思った瞬間、カイが魔法でらんまの動きを空中で止めた。しかし、らんまの勢いに咄嗟に反応したせいか、動きを止めるため両手が塞がっている。
なら、ここでと。オレは瞬時に闘気エネルギーをオーラの弓矢に変え、カイに向けて飛ばした。
「喰らえ!オーラアロー」
オーラの矢はカイの胸元にヒットし、カイの身体をロープまで吹っ飛ばした。術が解け、らんまがパラムに向かって、棍が振り下ろされるが、パラムはそれを剣で受け止め、弾き返した。
「思ってた以上の実力だわ……」
ロープに打ちつかれたカイが身体をゆっくり起こす。
「私をこうやって倒した相手も、もう何十年ぶりだな……パラム、いくぞ」
パラムが水平に構えた剣にもう一方の手を添えると、剣に炎が宿っていく。そして後方のカイはその炎に油を注ぐように魔力をこめていった。パラムの長剣に炎が燃え盛った。
「火炎剣か……らんま、気をつけろ」
「煉獄火炎剣!」
燃え盛った剣をパラムがオレたちに向けて、斬りかかってきた。まずい。
「オーラシールド!」
オレは咄嗟に巨大なシールドを作り、らんまを含め、身を守った。パラムは細い身体だというのに、力任せにオレのオーラシールドを破壊しようと火炎剣を打ち付けてくる。シールドに亀裂が入る。シールドが破れるのも、これは時間の問題だ。
「らんま!もう一度だ、今度はカイを狙え」
頷いたらんまはオレの肩の上を踏み台にしてジャンプしたと思わせ、横からカイの元へと近づいた。さすが、らんま、上手い。完全なフェイントだ。
「無差別格闘早乙女流奥義!火中天津甘栗突きぃ!!」
無数のらせつ棍がカイを狙っていく。
「なんの……フレアリペル!」
カイが炎の呪文でらんまを撃退しようとしたが。
「へへへへ……オレには呪文は効かねーよーだ♪隙ありぃ!」
らんまの武道着がわずかに燃えながらも無傷のらんまがカイに、らせつ棍をヒットさせリングに沈めた。よーし、こっちも。
オレはオーラシールドを解除し、鋼の剣でパラムの火炎剣に向かっていく。火炎剣と鋼の剣がまじわるが、これは想定どおり。本命の攻撃は……こっちだ。左手から闘気の剣を繰り出し、パラムに向けて斬りかかった。
「オーラソード!」
「くぅ、まずい……!」
パラムは咄嗟にヘルメットを脱ぎ、盾代わりにしてオーラソードを防御した。
ヘルメットはオレのオーラソードで割れたが、ヘルメットの下から現れたパラムの姿に、会場中が驚き沈黙した。
「エルフ……?」
パラムの耳が長く尖っている。
美形エルフが長く綺麗な金髪をかきあげた。
—なぜ、皆が驚くかというと、エルフは絶滅したはずの種族だったからだ。