女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
2-47.継ぐ力
その日は突然、やってきた。いつもどおりに喫茶店PANDの営業を終え、後片付けをしていると、突如、店の客席の真ん中にゲートが開いた。そこから出てきたのは、瀕死となったカイとパラム。後ろにはアム姫を連れている。アム姫は状況がわからずに連れてこられたようだ。傷だらけとなっているのはカイとパラムのみ。アム姫に久しぶり、お元気でしたかと声をかける暇もなくカイが説明しはじめた。
「はぁはぁ……はぁ……もう、時間がない。ここでアム姫に私の力を渡させてくれ」
「渡すって? 力をって? なにがあったんですか」
「って、おい! 誰にやられたんだよ、魔王軍か?」
呑気にパフェグラスやコーヒーカップを洗っていた日常は一転して、非常事態になる。
「人間だ、エルフであるパラムを始末しようと一部の人間が魔王軍に我らの居場所を教えた」
「もう、まもなく、このソイツェストにも魔王軍のモンスターが攻めてくるわ」
そのとき、外から大きな物音と悲鳴が聞こえた。大型モンスターの足音、それも複数。それを聞いたらんまが店の外に飛び出していった。
「わ、わかりました! 事情は後でゆっくり聞かせてもらいます」
「そんな時間もないかもしれないな……」
パラムは壁にもたれかかり、傷ついた自己の身体を修復しようと治療魔法を唱え始めた。カイは杖で魔法陣を描き、その中心にアム姫を座らせる。
「こんなときのために、やはり幼少の頃からアム様を指導してきて良かった。私の魔力・知識のすべてを受け継いでくれ」
「…………」
アム姫はじっとカイを見つめると、目を閉じて、魔法陣の中で心を集中させた。
「じゃあ、オレはらんまと外の様子を見に行ってきます」
店の外に出ると、いつもの平和なソイツェストの風景はそこになかった。あるのは逃げ惑う街の人々と巨大な蜘蛛型モンスターを中心とした大軍。獣系や虫系のモンスターが攻めてきていた。オレは再び、家に戻り、大急ぎで地下室から聖剣エクスカリバーを持ってきた。
街民は避難場所として、船を選んでいた。どんどん船に乗り込んでいくが、あきらかに足りない。
「モンスターが攻めてきたぞー」
「戦えるものは戦え、女子供は船に避難させろ」
怒号が飛び交う、街に滞在していた冒険者たちはモンスターたちに立ち向かっていったが、まるで歯が立たない。モンスターたちの目が血走っている。こいつら、魔王の島にいたモンスターたちと同じ目だ。
どういうことだ。モンスターたちは街を襲ってこないんじゃなかったのか。
冒険者や男の街民がやられていきながらも、モンスターに果敢に戦う者がひとり。らんまだ。
オレは走って、らんまと合流した。
「すごい数だ、ついにゼノリスの野郎が本気になりやがったか?」
「らんま、気をつけろ」
らんまのおさげ髪を結わいているアクセサリにオレは手を備え、叫んだ。
—パラディアム!
勇者の力を覚醒させ、身体はブレイブアーマーに包まれていく。
「ここはオレたちに任せて、皆さんは逃げてください」
逃げ惑う人々に声をかけるオレ。
「達也、こいつら、一発で仕留めないと。次々と増援がくるばかりだぜ」
「あぁ、一気にいくぞ、らんま!」
とは言ったものの、まだ、逃げ遅れている人がいたり、交戦中の冒険者らがいるから、範囲魔法で攻撃ができない。それなら、一番、でかいやつを仕留めるか。
巨大な蜘蛛型モンスターが街の看板らを次々と壊している。
「あっちだ」
オレとらんまは蜘蛛型モンスターのところまで走っていく。そして、オレはらんまを投げ飛ばした。神獣の爪を腕に装備したらんまが空中に飛び上がり、自慢の技で攻撃していく。
「無差別格闘早乙女流奥義!火中天津甘栗拳っ!でやぁああ!たぁあ!あたたたたた!でやあぁあ!たたたたた!!おりゃぁあ!」
見事、蜘蛛型モンスターの顔面にらんまの多段攻撃がヒットした。
オレは聖剣を水平に構え、もうダッシュで蜘蛛の下を走り抜け、足を斬っていった。
ザギュンッ!ザギュ!
足を失った蜘蛛がバランスを崩して、その場に倒れる。オレはその蜘蛛に対して、閃光呪文を放ち、焼き払った。
一匹の蜘蛛モンスターを倒したオレたちだが、後続にまた、モンスターが続いてきている。
ようやく、冒険者らもモンスターとの交戦をやめたので街は雑魚モンスターらが暴れるだけとなった。
「らんま! 危ないから、こっちきてろ。フルパワーで一気に雑魚は倒す」
「おう!」
らんまがオレの背中に隠れた。
オレは両手を横に広げ、呪文の詠唱を唱える。
「ボルティカ・エイ・ソア・ミハ・サウマンダ……雷鳴閃光呪文・ライトニングボルト!」
雑魚モンスターの大群に向けて大技を放った。まるで無双ゲームのようにモンスターの大群が次々とオレの電撃と雷鳴に倒れていった。
「ひひゃぁ……すげえ、これが勇者の力かよ」
「でも、ダメだ。この数じゃ……魔力がいずれ尽きちまう」
でも、それでも戦わなければ。オレたちの街を守らないと。
倒しても倒しても次々と現れるモンスターの大群。何度、いや、もう10発以上は範囲呪文を放っているというのに、モンスターの進軍は止まる事はない。
「いったい、どうなってやがるんだ……」
魔力が枯れ、フラフラになったオレをらんまが支えている。そこに現れたのはさっきの蜘蛛型モンスターの親玉とでもいうべき、ドクロ顔の大型モンスターだ。人型ではなく、虫のように何本もの骨足が巨大な身体を支えている。
「でやがったな……ボスのおでましか」
「らんま、こいつは他のやつとは違う、気をつけろ」
「わかってるってー!でやぁあ」
らんまが走り込んでいくと、ドクロ顔は瞬時にらんまを骨足で弾き飛ばした。ソイツェストの瓦礫にぶつかるらんま。
「らんまぁああー!!大丈夫か? ……てめえ、許さねえぞ」
オレもドクロ顔に切り込んでいこうとするが、足元に力が入らない。なんとか剣を構えて、突進していくが、まるで加速しないオレを嘲笑うかのように、骨足にオレも弾き飛ばされた。
「数が多すぎるんだよ……まったく」
これが人間ではなく戦闘力の高い魔王軍のモンスターたちなのか。
「でも、オレたちの街を守らないと……また、美味しいパフェをみんなに食べさせられないしな」
「だな……あきらめるわけにはいかねー!」
らんまもオレと同時に立ち上がる。でも、らんまも傷だらけだ。
弱っているオレたちにドクロ顔が大きく骨足を振りかぶってきた。直撃か?それはまずい。
オレはらんまを庇うように身を守った。まずいオーラシールドも間に合わない。
「しまった! 間に合わない……」
そのときだった。
ドクロ顔に向けて、風の魔法とフレイムソードの斬撃が飛んできた。