女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
「達也…………」
「えっ…………」
入り口のところにらんまがいた。
「どこにいたんだよ、ずっと探してたんだぞ」
「らんまこそ、どこにいたんだよ、天道あかねに聞いても、そんな奴しらないって」
「オレもだよ、誰も達也のこと知らなくて。それで、アマゾネスの島から帰ったときの話を思い出して、毎晩、ここへ来てたんだ」
「は?毎晩?」
オレとらんまの話を遮るように店員が話かけてきた。
「そうそう、そこのお嬢ちゃん。1ヶ月くらいかね、毎晩、来てたんだよ。ラーメンも食べずにさ。ここに達也って高校生が来たら、らんまが来たって教えておいてくれって言ってたんだよ。あんたが達也かい」
「1ヶ月も……?」
たしかに、オレがこっちの世界に戻ってきてから、1ヶ月くらいだ。それにさっき、らんま、アマゾネスの島って言ってたよな。
「なぁ、らんま、あっちの世界のことさ、覚えてるか?」
「ちょっと、お嬢ちゃん。今日はラーメン食べていくのかい?」
「あ……食べていきます、この達也のと同じのを」
そして、らんまはオレに耳打ちをしてきた。
「悪ぃ、達也、金貸しておいてくれ。オレ、金持ってきてないんだよ」
「おっけ、おっけ。奢るって」
オレは食券前で財布からお金を出す。
「あ、しまった……トッピングしたから、もう残り400円くらいしかない」
「はぁー?!ここのラーメン、達也と食べるのを楽しみにしてたのに」
「わかった。じゃあ、まだ、食べ終わってないから、残りのラーメンをらんまにあげるよ」
「へへへへ♪ そりゃ、悪いな」
オレの席に座ったらんまに割り箸を渡した。らんまが勢いよくラーメンを口に運んだ。
「う、う、うめえぇえ……………」
「そりゃ、美味いだろ。嬢ちゃん、ここのラーメンは関東一のラーメン店だからね」
「はははは、世界一。いや、宇宙一ですよ」
オレは大好きなラーメンをはじめて、店の人に褒めた。
らんまはオレの残りラーメンを完食した後に、店を出た。
「ひゃぁー、腹一杯♪ でも、ないけど、ホント、美味かったな。また、来ようぜ」
「だな、らんま。話したい事あるんだけど、まだ、時間あるか?」
「もちろんだぜ、オレも達也に聞きたいことがあった」
らんまとオレは風林館高校の横を通り、公園のベンチに腰かけて話した。らんまにあっちの世界の事は覚えているかと聞いてみたところ、ちゃんと覚えていた。冒険した事もゼノリスの事も、オレたちの家のことも。夜なのに、目の前の厚い壁が急に取り払われて、空が明るくなったようだった。
らんまもオレと同じようにオレのいない世界で1ヶ月を過ごしていたようだった。
「なるほどな、じゃあ、どうにかして、また、元の世界に戻らないとだな……」
「んで、ここは、そもそも、どこなんだよ? 夢の世界なのか?」
「そこなんだけどさ、ゼノリスの奴。オレたちに二重の夢を見せてたかもしれないんだ」
「は? 二重の世界?」
「ずっと、ゼノリスと戦ったことを思い出してたんだけど、おかしな点がいっぱいあるんだ。らんまの飛竜降臨弾は魔法でないのに打ち返された」
「あっ……たしかに」
オレはさらに推測を続ける。一粒の希望のタネを蒔くような話だ。
「他に聖剣エクスカリバーが、あんなに簡単に折られてしまった事。そして、最後に……洞窟の先の地底魔岩城に行く道の途中の黒霧」
「なるほどな、夢を見させられている可能性大ってわけか」
「おそらくは、あそこにオレたちが眠らされているんじゃないかと思うんだ」
「でも、どうやって、ここから元の世界、あ、いや、ゼノリスの夢の世界へ」
「鳥居だ!鳥居へ、行こう。オレたちが最初にあっちの世界へ行ったときの場所」
そう決まれば、オレはらんまを自転車の後ろに乗せた。二人乗りで自転車を漕ぐ。
「よっし、急げ、急げーーー!ゼノリス待ってろよ」
「オレに、らんまのいない1ヶ月生活させやがって。めちゃくちゃ頭にきた!」
鳥居に着くと、予想どおり、ここにゲートが開かれていた。カイやアムが作ったゲート同じだ。ここが異世界に戻れる場所。
らんまと手を繋ぎ、そこを通ろうとする。
「よし、らんま。いくぞ……」
「あ、ちょっと待った……!」
「どうした?」
「そのさ、行く前にキスしたい、ここも今、夢の中かもしれないけどさ。こっちの世界じゃ、まだ、達也とキスしたことないから」
「い、いいけど……そういう事、言うなよ。なんか、緊張しちゃうだろ」
「ふひひ♪ 緊張させるのも楽しかったりして」
「からかうなよーっ、いっつもいつも…………んぅ」
らんまが背伸びしてオレの唇に自らの唇を重ねてた。それだけじゃなく、舌もこっちの口の中に挿入してくる
「んぅう……んぅ、らんま……」
「ちゅっ、ちゅ、むちゅっ、れろぉっ、じゅる、ちゅぱ。はぁはぁっんちゅ、ちゅぱ、ちゅぅ、れろれるっ、ちゅ。1ヶ月、ずーっとキスしたかったんだ、我慢してたんだから、いっぱいチュウさせろ」
そこで何分、キスしただろうか。いや、何十分、唇を重ねたのかわからないくらい、時間の流れがねじ曲がっていた。
その場でセックスしたかったが、オレたちは我慢した。こっちの世界ではなく、あっちの世界でゼノリスを倒した後で、たっぷりするために。
オレたちは鳥居をくぐった。
景色は再び、魔王の間に。ゼノリスが苦しみ、うなされる。アムやパラムからエネルギーを吸い取っていた。
「やいやい!ゼノリス、よくもよくもよくもぉおー」
「この野郎、夢の中でも、なりた屋のラーメンは美味かったけど。絶対、許さないからな」
「バ、バカな………、私の最大魔術で悪夢を見せていたのに」
アムとパラムも夢から覚めて起きあがる。
「ゼノリス、よくも私のカイを……」
「アム、私も……お父様やカイ様、達也さんを……」
「パラムもアムも……」
オレは大声でアムに向かって、叫んだ。
「アム!ここも夢の世界だ、眠りから覚める呪文をオレたちにかけろ」
「ここも夢の世界?わかりました。メザ…イケ…ドケ…メハ…ザメ…」
「くぅうう、しかし、そんなことへの対策は簡単なこと、無詠唱!呪文封印」
ゼノリスがアムの口に魔術でできた口輪を放つと、アムが声を失った。
「…………………んぐう、んぐぅう」
「ははっはは、これでオマエたちは永遠に夢から覚めることはない。唯一の呪文使いのアムの魔法を封じたからな。愚か!愚か!愚か!」
高笑いするゼノリス。
「くっそぉおーーーー、ゼノリスめえ」
「だぁーー、これじゃ、夢から覚める事なんてできないじゃねえか」
「万事休す!」
「オレたちの負けかぁああああ?!」
ゼノリスの高笑いは止まらない。
「再び、オマエたちに悪夢を見せて、恐怖エネルギーを吸い取ってくれるわ。それこそが、我が、幻夢の秘術を完成させる」
「なーんちゃって」
「達也も演技下手だな」
「らんまこそ……」
オレとらんまが顔を見合わせて、ニカッと笑い、向かい合う。
「ゼノリス、オマエ。馬鹿だな♪ 夢から覚めるには定番の方法があるんだよ」
「そうそう、容赦なく、いくぞー。らんま! いっぱつで目覚めるように」
オレたちは互いの頰に向かって、手を大きく振りかぶった。
「オマエら、ちょっと待てーーー!!」
「「遅い……!」」
バッッチィイイーーーーンッ!!
らんまとオレの頰が赤く腫れ上がり、オレたちは夢から覚めた。
黒と紫の霧に覆われた階段で起きた。アムとパラムもオレたちに数秒後に起きた。
「さてさて、ゼノリス、本体はどこかな」
そのとき、階段の上から、逃げる足音が聞こえる。
「逃すなぁあ!!」
オレたちは大急ぎで、階段を登り、洞窟の外へと逃げていく。ゼノリスを追いかけた。
変身前の山羊仮面の魔道士が逃げている。
「アム、あいつはすぐに逃げる!魔法で捕まえてくれ」
「はい、わかりました!!」
アムがゴッドロッドを振りかざし、ゼノリスの動きを止めた。
「くぅっそお……助けてくれ、もう、モンスターらも引き返させる、だから、命だけは」
「ほぉー、命乞いか。ゼノリス、情けないな」
「私たちに夢の中とはいえ、苦痛を与えた罪は大きいわ」
「てめえ!!オレの大好きならんまに1ヶ月も会わせなくしやがって」
まぁ、もっと早く、ラーメン屋に行けば、会えていたんだが……。
「さぁて、どんな技でオマエを倒してやろうか」
「だな……♪」
◆◇◆◇
「ぎえぇええええーーぎぃいええええええーー!!」
夢を見させる魔道士。つまり、ゼノリスの正体は夢魔であると察したオレとらんまは。
どこからともなく、牛乳と雑巾を用意してきた。小学校の思い出の定番の1つでもある給食の牛乳を誰かがこぼしてしまい、周囲の友人も一緒に雑巾で拭いたは良いが、後日、強烈なニオイを放つ物体。つまりは『牛乳雑巾』を先端につけた『この世で最も臭い武器』である聖剣牛乳雑巾モップを作り上げ、それをゼノリスの仮面になすりつけた。
「ぎええぇえええーー!!なんだ、この強烈な匂いはあああああ、魔力が弱まっていく」
ゼノリスの断末魔の叫び声が響くと、仮面はパリーンと破れ、中からは馬顔のモンスターが現れた。予想どおり、ゼノリスの正体は夢魔ナイトメアであった。悲鳴と共に、その姿は消滅していって、最後に半分に割れた山羊の仮面だけが残った。