女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
小さな足音の主がぞろぞろと現れた。
小柄ならんまよりも頭一つ分小さいドワーフが4名、立ちはだかる。
それぞれ、顔は違うものの全員が長い髭を蓄え、緑色の頭巾を被っている。
リーダー格らしきドワーフがオレたちに話しかけてきた。
「ほっほほほ、旅の者ですか?これはこれは、こんな辺境の地まで、よくぞいらしてくれた」
ドワーフといえば、ゲームやファンタジーの世界では人懐っこくて親切なタイプの場合もあれば、ワガママで狡猾なタイプもいる。好色という設定を持つ場合もある。まだまだ、こちらの警戒は解けないが、会話の中から親切にしたいという気持ちは伺えた。
「らんま、どうする…?」
この場合、ドワーフに世話になるか、それとも、この場から去るかだ。
そのとき、雨がパラパラ降ってきた。
「山の天気は変わりやすい、旅の者、遠慮するでない。私たちの家へ来ると良い」
オレとらんまは誘われるがままに4名のドワーフの後についていった。パラパラと降る雨に塗られながら、山の洞窟へと入る。先頭のドワーフがランプを片手に進む。なにやら、オレたちが理解できない言葉を話し始めているようだった。この
洞窟の奥に小さな小屋がいくつかあった。ドワーフは着くなり、オレたちのためにテントを張ってくれた。らんま用のテントとオレ用のテントの二つを。
らんまのビキニアーマーもオレの旅人の服も濡れてしまったので、ドワーフはオレたちの身体のサイズに合う『 麻の服』を支度してくれた。オレたちはそれぞれのテントで麻の服に着替え、出てくる。
ビキニアーマー以外のらんまの姿を見るのは久しぶりだ。つい、昨日、裸は見せてもらったが。
「達也~、どうだ? 似合うか? これ、軽くて楽チンだな」
らんまがファッションショーさながら、くるっと回転して見せてくる。たしかに着心地は悪くない。
4人のドワーフは明るく社交的でオレとらんまのことを歓迎してくれた。食事を振ってくれながら、4人のドワーフはそれぞれの名前を教えてくれた。アールヴリッグ、ドヴァリン、ベルリング、グレールだそうだ。しかし、見た目の差は僅かだし、全員、同じ頭巾を被っているから、名前と顔を一致させるのは困難だった。
ドワーフたちは今、首飾りを作っている最中だという事で、作りかけではあるが見せてくれた。名をブリーシンガメン、炎の首飾りという意味だそうだ。オレの目には完成しているように見えるのだが、ドワーフたち、いわく、この状態が完成間近だそうだ。
「これを、湖のフレイヤ様に届けることになっておるのだが……」
ドワーフの一人が言った。たぶん、ドヴァリンって名前のドワーフな…はず。
「数日前から途中の谷にゴブリン共が溜まっていて、危なくてとても通れん」
ほかのドワーフたちが呻くような声を出して頷いた。
「今までは、いなかったのか?」
オレが聞くと、ドワーフたちが揃って頷いた。
「ここ何日か、人間の軍隊があちこち動き回って洞窟や昔の鉱山跡で何かを探しておる。ゴブリン共が巣くっていた穴など焼き討ちにするのでな、みんな山の中に逃げてくる」
オレとらんまはそっと顔を見合わせた。軍が探し回っているのはたぶんオレたちだろう。
オレはちょっと考えた。普通なら、軍に追われていることなんか黙っている。でもここはゲーム世界だ、これもクエストに違いない。
「軍が探しているのは、たぶんオレたちですね」
らんまがオレの袖を引っ張った。でもオレは守備隊砦跡からここまでの出来事を全部話した。
ここは
ドワーフたちは俺の話を面白そうに聞いてくれた。特にらんまをレイプしようと企てた兵士をやっつけた話では、手を打って笑っていた。
「いやいや、たいした物だお客人! そんな愉快な話を聞けるとは思わなかった」
オレたちは、すっかりドワーフに気に入られてしまった。
「ゴブリンがこっちに来たのは、オレたちが原因ってことか」
らんまがもぞもぞお尻を動かしながら言った。石を削り出した椅子だけど、ドワーフサイズだからちょっと小さいのだ。そもそもオレは尻のサイズが合わないので椅子には座っていなく、地べたに片膝を立てて腰を降ろしていた。
「まあ、そうなるな」
この先のことは予想できた。オレたちはドワーフを護衛する格好で湖まで移動するのだ。そしてフレイヤ様に会うことになるのだろう。ドワーフたちは善良キャラだから、彼らを欺したり戦ったりするのは悪手だ。
考えているとらんまと目が合った。らんまもたぶんオレと同じ考えなのだろう。
「湖まで、一緒に行こう。オレたちも遠くへ逃げたい」
そんなわけで、オレのパーティーはドワーフを含め、6人になった。
「それじゃ、出発しようか」
ドワーフの道案内で山を越え、もうひとつ向こうの山を越えたらフレイヤ様の湖が見えるそうだが。その山間の谷間にはゴブリンたちのキャンプがあって煙が満ちている。大きな窪地なので、周囲の山を歩けば必ず見つかってしまう。
「迂回って……あっちの、火山の向こう側通らないとダメか?」
西では、温泉の元である火山が煙を上げている。東の尾根の向こうはまだ採掘が行われている銀鉱山があって、警備の軍隊もいるらしい。何とかしてこの谷を突破するしかないようだ。
「どーやる?」
藪に身を潜めて、オレとらんまはゴブリンのキャンプを偵察する。
「30……40匹まではいないね」
小屋が4つ、テントが6つ、どれも粗末なものだ。無駄に大きなたき火が二箇所、生木を燃やしているのかひどい煙だ。
「突っ込んで行って、たき火ぶちまけて……とにかく引っかき回す」
らんまがひそひそ声で言った。
「その間に、ドワーフたちは向こう側に?」
めちゃくちゃ乱暴な作戦だけど、ほかにやりようがない。ドワーフたちと打ち合わせて、それぞれが位置についた。
「いいか?」
オレは静かにスケルトンの剣を抜く。
「オッケー」
らんまが囁き返して、マントを外して体に巻き付ける。
「レッツ、ゴー!」
オレたちは藪の中から走り出す。無言で全力疾走、キャンプに肉薄したところでようやくゴブリンたちが気がついた。
「おらあぁぁ!」
オレはゴブリンを二人蹴り倒し、剣を振りかざしてきた奴を突いて蹴り倒す。らんまがぴょんぴょん飛び跳ねて、そのたびにゴブリンが吹っ飛ぶ。
「らんまー! 火だー!」
「わーってるー!」
オレは転がっていた丸太でたき火を突き崩して、燃えている木を小屋やテントに放り投げる。あたりに煙が充満して、良い具合に周りの山も見えにくくなってきた。
「おらぁー!」
らんまがでかい丸太を振り回して、ゴブリンをなぎ払い吹き飛ばしている。山の中を、緑色の頭巾が並んで通り抜けていくのが見えた。
「らんまー! そろそろ、逃げるぞー!」
「おーう!」
もう、キャンプの中は逃げ惑うゴブリンたちで大混乱になっている。脱出するなら今のうちだった。らんまが集団で向かってこようとした集団に向って丸太を投げつける。
「ドワーフたち、うまいこと、逃げた?」
「さっき、尾根、越えていくのが見えた」
らんまと並んで斜面を駆け上がる。下ではまだゴブリンたちの悲鳴と怒声が聞こえてくる。
「あいつら、追って、来ないかな?」
「それどころじゃ……」
オレは後ろを振り返って、思わず足を止めた。
「なんだ? あれ?」
キャンプの中で渦巻いている火がどんどん大きくなってひとつに固まり、ゴブリンたちを飲みこんでいる。まるで生き物のように炎の触手を伸ばして、逃げ惑うゴブリンを捕らえていく。
「火の、怪物か?」
「うわぁぁ……」
らんまも足を止めて振り返り、悲鳴を上げた。
「やばい。こっちに来る!」