女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
湖の畔を歩き、小川を越えた先にある大きな川に沿って歩く。その先に人里があるとドワーフたちが教えてくれた。しかしどれくらい歩いたらそこに着くのか、ドワーフたちも知らなかった。
途中で暗くなり、火を熾して野宿することになった。夜空を見上げて横になるのはこれで何度目だろうか。
「達也ぁ……この世界に来て、何日経ったっけ?」
らんまがボソッと言った。
「えーと……半月ぐらいは経ってるよな? 絶対」
オレは日を数えるのを途中で諦めた。あまりにもいろいろなことが次から次に起こったので、もうその順番も曖昧だった。
「ここの時間と、元いた世界の時間……同じなのかな? だったら、捜索願とか出ちゃってるよね」
「まあ……そうなるな」
二人でショップに行ってゲームを買い、その帰りに行方がわからなくなったことになる。これが女子二人なら大事件だろう、男子二人なら……やっぱり事件扱いか。男女だったら駆け落ちも疑われるけど……。
「いつか……どこか……ずっとこの世界だったら。腹くくって、決めなくちゃだめだよな」
らんまが言って、オレは数秒してから心臓が跳ねた。
「は……腹……って?」
「フレイヤさんも……オレを、お前の嫁だって見たし。結……ば、れ、たら……絆は、強固になるって……」
その言葉だけでオレは勃起していた。
「結……ばれる、か?」
「今ここではやだ」
一瞬できっぱり拒否されてしまった。言葉でそう言っただけかも知れないが、無理に確かめて本当に言葉通りだったら肉体的にも精神的にも相当痛い思いをする。
「どーせなら。もっと、綺麗な格好で……」
らんまがボソボソ言った。『結ばれ条件』はきれいな衣装らしい。結ばれる綺麗な衣装といえば、ウエディングドレス。らんまと結婚だなんて、夢みたいだ。
あれこれ考えているうちに寝入って、らんまとの結婚初夜の夢を見て、目が覚めたら無精していた。
ドワーフにもらった携行パンはハーブの香りがして、乾いてもカチカチにはならず美味しかった。らんまは何か考えているのか、ほとんど口をきかない。
「山のてっぺんで、場所を確かめたかったんだよな……」
湯太郎に乗って、山を全力で登って降りたのでそんな余裕はなかった。
「場所?」
らんまが聞き返す。
「ここに来た場所。山の上からなら最初の街が見えるだろうから、だいたいの方向がわかったかも知れない」
らんまは何も言わず、立ち上がってマントについた草を払い落とす。
「行こう」
なにを考えているのか、それとも野宿でカゼをひいたのか。ちょっと気になった。
「らんま……」
オレも立ち上がって、剣をベルトに挿しながら言った。
「ん?」
「お前……もしかして、生理? ぐふぉっ!」
胸のど真ん中にらんまの蹴りが入って、オレは2メートルあまりも吹っ飛んだ。
「ひっでーなぁ……胸骨ヒビ入ったぞ」
「うるせえ!」
らんまの後を追いかけるようにして進み、しばらくすると水車小屋が見えた。
「ごめんくださーい」
外から声をかけてみたが、反応はない。水車は回っているが、誰もいないようだ。水車小屋があるくらいだから近くには人が住んでいるはずだ。でも、先に軍が来ていることも考えられる。オレたちは気をつけて道を進む。
「なんか……煙っぽい?」
少し喉にひっかかるニオイが漂っている。道は林の中に入り込んで、煙のニオイはそっちから漂ってくる。火が焚かれているのだから、誰かがいるのだ。
「あ……」
林を抜けて、オレもらんまも立ちすくんだ。そこは村……正確には村だった場所と言った方が正しい。家はどれも焼け落ちて、人の姿は全く見えない。
「何があったんだ?」
用心のために剣を抜いて、オレとらんまは周囲を警戒しながら村の跡を見て回る。そこここ何かを埋めた、まだ新しい土の山がある。埋まっているのが何であるのか、だいたい想像はついた。
「死体を埋めてあるってコトは……誰かが、生き残ってた?」
「そう……かも」
らんまがオレの肩をつかんで、焼け跡が続く道の奥を指した。一部燃えた跡があるが、半分ほど形をとどめている家がある。
「行ってみる?」
らんまが聞く。ここにいるとまた面倒なことに巻き込まれそうな気がするが、らんまはオレの返事を待たずに歩き出してしまった。
「だれか……いる?」
恐る恐るらんまが声をかける、男より女の方が警戒されないだろう。
「だれだ!」
中から声が返ってきた。警戒しているのは当然だろう。
「旅の者だけど。ここ、何があった?」
扉は開かないで、崩れかけた壁の横から男が出てきた。まだ子供に見える。
「兵隊が来て、そのあと盗賊団が来て戦になった。兵隊はみんな殺された、村の人は連れて行かれた」
声が、やっぱり子供だ。オレとらんまは顔を見合わせた。
「何か埋めてあったけど、君がやったのか?」
オレが聞くと、少年は険しい表情で頷いた。
「達也ぁ……これ、新しいクエストかな?」
らんまが嫌そうな口調で聞く。そうだとしたらかなりハードルが高い、正直パスしたい。でも少年の顔を見て、ここで背中を向けるわけには行かなかった。
「話を、聞かせてくれるかな?」