女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
3-30.カラオケタイム
翌朝、起きると窓に楽京斎からの果たし状が届いていた。
達筆な文字で『貴殿に決闘を申し込む。ラブホテル風林館にて待つ。逃げるなよ!』と書かれていた。
ラブホテル風林館といえば、たしか、数ヶ月前に修繕をしはじめたラブホテルだ。昨日、学校からの帰り道に寄ったときも仮設シートで覆われていたままだった。そこを占拠したのだろうか。
「らんま、こんなものが届いているぞ」
オレは隣で眠っているらんまを起こし、ラブホテル風林館へと向かうことにした。
◆◇◆◇
「ここだな、ここ」
「楽京斎の野郎、こんなところに呼びやがって」
仮設シートで覆われているラブホテル風林館へと入っていく。工事の人らの姿が見えない。扉の鍵は空いたままだった。どこかレトロな内装のロビー。物静かな無人のロビーを通ると、ひとつの部屋だけ、ランプが点灯していた。
「らんま、気をつけろよ」
「あぁ、わかってるさ」
楽京斎はこの部屋に待ち構えているというのだろうか。オレたちは無人の受付を過ぎて、赤い絨毯を進んだ。
エレベータに乗り込み、5Fへと移動する。
今にも止まってしまいそうなくらいに動きがおかしいエレベータが5Fへと着けば、自動ドアが開き、部屋へと向う。サキュバスの洋館以来、ラブホテルの廊下を歩く。こっちの世界のラブホテルは初めてなので、少し緊張しながら薄暗い廊下を歩いた。小さな窓から僅かな光が差し込んでいる。
ランプがひとつだけ付いている部屋。505号室へと足を踏み入れた。電気を付けると室内が明るくなった。
「楽京斎、どこにいるんだ……、どっかに隠れているかもしれないな」
らんまがなにやら、TVのリモコンをいじっていると部屋の天井に吊るされたスピーカーから音楽が流れだした。パーティチューンなダンスビートな軽いノリの音楽に合わせて、部屋のミラーボールが回りだした。
「わ?! いきなり、はじまった」
どうやら、らんまが間違えて、カラオケのスイッチを押してしまったようだ。
「ん? どっかで聞いたことあるな、この曲」
オレが思い出せないうちにマイクを片手にらんまが歌い始めた。
「子供のまんまじゃいられない~♪ 青春がほぉら チクタクチクタク♪」
お世辞にもらんまは歌がうまくない。音程なんか好き勝手、自由にめちゃくちゃだ。
「今宵はアナタと踊りたいの♪ 置いてかないでよ、手を繋いで♪」
思い出した。この曲はオレの大好きな漫画が実写化したときのドラマの主題歌だ。ドラマの出来はオレ的には、うーんって感じだったが。この曲は大好きだった。
「Please touch my heart♪ 本当の私を♪」
オレも一緒になって歌う。歌に自信はないが、らんまが持った手に口を揃えて歌った。
「恋がチクタク♪ 弾けるジョイフル♪ ときめくハートで♡ Clap♪Clap♪」
突然、はじまってしまったカラオケタイムだが、らんまと歌うと音程なんか気にせずに自由に歌って踊っていると、あっという間に曲が終わってしまった。
「いきなり、歌がはじまったから、ビックリしたぜ」
「ってか、らんま、よくこの曲を知ってたな?」
「はは、まぁな♪ ほれ、達也もなんか歌えよ」
「えっ、オレ~? いいよ、いつ、楽京斎が現れるかもわからないしさ」
「いいから、いいから」
らんまが埃のかぶった歌本をオレに渡してきた。近頃のカラオケじゃ、タッチパネルで曲名を入力するけど、昔のカラオケマシンなせいか、この分厚い本から曲を探すのか。
知っている曲はないかと、オレは、曲名「あ」から順番に指で探していった。
ひとつの曲が目についた。もう、数十年も前の曲だけど、歌詞が好きな曲だ。それに、異世界で冒険してきたオレとらんまにピッタリな曲かと思った。
「んじゃ、番号入れてみるから、リモコン貸しててくれ」
「おう♪ ほいよ」
らんまからリモコンを受け取り、歌本に書かれた番号を入れる。
印象的なピアノのイントロがスピーカーから流れ出し、オレはマイクを手に取った。