女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
3-38☆.GOKURAKUYU
なんとか、楽太郎を倒し、白虎の勾玉を手に入れたオレとらんまは服に着替え、ラブホテル風林館を後にした。これで、こちらの手には青龍の勾玉と白虎の勾玉がある。オレたちよりも、先にこっちの世界に辿り着いているであろう八宝斎の手にはらんまから奪った玄武の勾玉と、八宝斎自身が朱雀を倒したときに手に入れたはずの朱雀の勾玉があるはずだ。
という事は、次に八宝斎とオレたちが戦ったときに勝利したほうに4つの勾玉が渡る。
最終決戦は近い。
「青龍の勾玉はらんまに渡しておくよ」
「いいのかよ。でも、また、じじいに取られちまうかもしれないぜ?」
「それは、オレのほうだって同じだろ? どちらかが2つを持っているほうがまずい」
「……わかった、絶対に守るって約束する」
らんまに青龍の勾玉を渡し、オレは白虎の勾玉を持つことにした。
いつ、八宝斎が襲ってくるかはわからない。どこにいるのかもわからないから、追うこともできない。
ラブホテル風林館から出て、家路のほうへと歩いていくと小さい子がオレたちの顔を見て笑っている。
「なにか、顔、変か?」
「そりゃ、顔が墨だらけだからな?」
オレはらんまに指摘されて、道路にある反射鏡カーブミラーを覗き込んでみた。たしかに、頰や額が楽京斎の墨で汚れている。
ごしごしっとこするが、滲むだけで簡単に落ちる墨ではないようだ。
「これじゃ、家に帰る前にどっかで落としていかないとな」
「んじゃさ、銭湯でも寄っていくか?」
らんまがオレに銭湯に立ち寄ろうと提案してきた。
しかし、その提案を取り下げようと躊躇した。
「あ、でも、オレは女のままだから女湯か」
元男であるから、やはり女湯に入る事はためらうのだろうか。
「別にいいよ、ひとりでもいいしさ」
「うーーん。……やっぱ、行くよ」
そう決まれば、オレたちは駅前の銭湯へと向かうことにした。
すっかり夕方になり、日も暮れてくる。
ちょうど、オレたちが到着したときに銭湯の看板ネオンに明かりが点いた。ネオンサインで「GOKURAKU」と書いてあり、その下には大きく、ひらがなで「ゆ」とある。
ヤシの木も描かれたネオンサインの看板下の入り口を通って、靴箱に靴を入れた。
この先で、すぐに男湯と女湯に分かれるそうだ。
「んじゃ、らんま。1時間後に外で待ち合わせな」
「おう、わかったぜ」
らんまがソワソワしている。やはり女湯に入ること抵抗があるのだろう。確かにオレも元男という過去があれば、そうかもしれない。
入り口の番台では桃色のガーディガンを着た女性が座っていた。
「高校生ね、1人590円になります」
「あ、そっちの子も払います」
らんまは金を持っていないだろうから、代わりに払う。番台が高いため、らんまの顔が見えないが声は聞こえた。
「悪いなぁ♪」
「では、お二人で1180円になります」
オレは財布から千円札と百円玉2枚を渡して、20円のお釣りとタオルを受け取った。
短い階段を降りて進んだ先の脱衣所は小綺麗なデザインとなっていた。観葉植物なんかも置かれている。
服を脱ぎ、ロッカーに入れる。勾玉はどうするか迷ったが、持っていく事にした。それほど、大きなサイズではないから目立たずに持ち込めるだろう。ただ、オモチャだと思われたら、恥ずかしいが。
勾玉をタオルに隠しながら大浴場へと持って入った。まだ、早い時間だから、それほど、混雑はしていない。かといって、土曜日なのでガラガラというわけでもなさそうだ。
洗い場に座り、鏡の前に勾玉を置いた。鏡で墨の汚れを確認しながら、ボディシャンプーの泡で洗い落としていった。
久しぶりにシャンプーを使って身体と髪を洗った。異世界じゃ銭湯や温泉の類はあっても、こんなようにシャンプーは置いていないから、久々に髪にシャンプーの香りを残せた。
身体を流し湯船に入り、肩まで浸かる。足を伸ばすと思わず、声を漏らしてしまった。
「ふぅううーー」
湯船から見える景色は平和そのものだった。
小さな子や初老、オレと同年代の男らが洗い場で洗ったり、大きな湯船でくつろいでいる。
女湯は仕切り壁を挟んだ向こう側のようだ。女湯を覗く趣味はないが、らんまがどうしているのか気になった。モジモジと女性客の肌を見ないように過ごしているのかもしれない。
男湯と女湯を仕切る壁の上側が空いているのは閉鎖感を生まないために、あえて天井を共有しているのだとも、どこかで見たことがあった。
ここの銭湯にサウナはあるのかと湯船から見渡していると、女湯のほうから騒がしい悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあぁあああーーっ!!」
何人もの若い女性の声がこだまするように女湯から響いた。
「くそぉー、銭湯で戦闘する気か。ゆでダコじじぃ、たっぷり料理してやるぜ!!」
続けて、らんまの声も聞こえる。
「げっへっへっへへへ♪」
あの底気味悪い笑い声。八宝斎の声だ。
「じじぃ! もう勘弁できねぇえ!」
らんまの声に合わせて、女性の悲鳴はさらに大きくなり、ドコバコと破壊される音が聞こえてきた。壁や桶が破壊されているのかもしれない。
「逃すかぁ!」
「きゃあぁあああーーっ!!誰かぁあ!」
「どうした、らんま。もう終わりかの?」
「このじじぃ、本気でいくぜ!」
女湯から悲鳴が聞こえてきたので、こちらの男湯からも仕切り壁のほうへと男性客らが顔を向けた。
ちょうど、その時、仕切り壁の上から、八宝斎が男湯のほうへとやってきた。
「わーーはっははっは!」
すぐに、続けてらんまも仕切り壁の上を飛び越えてきた。
「待ちやがれぇえーっ。このスケベじじぃ!」
八宝斎は藍色のラインが入った千歳緑のスイミングウェアみたいなものを着ているが、らんまのほうは素っ裸で全裸だ。
タオルで下半身を覆うこともなく、あられもない状態で八宝斎を追いかけている。
「どわっ、ちょっ、らんまぁ?!」