女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
3-41.憑依
※らんま主観の三人称視点。
「達也ぁあ! 達也ぁあ! 達也ぁああ!」
達也を襲いかかった四聖獣の勾玉はエネルギー波を放出し終えると、色をなくし、石ころのようになってしまった。
八宝斎も、まさか、達也にここまで攻撃するつもりもなかったのか。唖然としている。
「わ、わしゃ……知らん。まさか、これほどまでの力だとは知らなかったんじゃ」
「じ、じじぃ、よくも達也を、達也を!!」
涙ぐみながら、達也を抱きかかえたらんまに睨まれると八宝斎は逃げていってしまった。
「らんまぁ、ちょっとなによ、これぇ」
騒ぎを聞きつけた天道あかねや良牙がボロボロに破壊された銭湯へとやってきた。後ろには天道なびきや天道早雲や、らんまの父でもある早乙女玄馬もいる。
「ささ、ここだと、なにかと不便だ。うちへ移動させよう」
男たちが達也にタオルを被せ、天道家へと運んだ。
「大丈夫、まだ、息はしている。死んではいない。ただ、眠っているだけのようだよ」
「くぅ、達也はオレを守って……これが四聖獣の勾玉の災いだっていうのか」
そして、数時間後。
早乙女親子が寝泊まりしている一室に達也が布団の上で仰向けに寝ている。
「らんま。あんた、ご飯くらい食べなさいよ。下で用意してるわよ」
「ありがとな、あかね。でも、大丈夫。オレのことは気にしないでくれ。達也が起きるまでここで待ってるから……」
「そう。わかったわ。それじゃ、達也くんが起きたら、教えてよね」
らんまは三角座りをしながら、暗い部屋で達也が目覚めるのを待っていた。
それから、何時間過ぎた真夜中、達也が突然、目覚めた。
「…………」
辺りをキョロキョロと見渡すように達也の視線が動いた。布団から起き上がり、両手や両足をゆっくりと動かすと、そっと呟いた。
「ふふ、ようやく憑依が完了したようだな……このときを待ちかねた」
ウトウトしていたらんまが、起き上がった達也に気がつくとすぐに喜びの声をあげた。
「や、やっと目覚めたか。馬鹿野郎、心配したんだぞ……でも、良かった。目覚めてくれて」
「ふふ、らんまを庇ってくれたおかげで性獣のエネルギーの移動に成功できた。ふふ、つくづく都合の良い男だ」
「性獣のエネルギー? 都合が良い?」
目覚めた達也の言葉にキョトンとするらんま。
「しかも、この若く漲る肉体。まさに欲していた器。あの妖怪じじいの老いた身体では、この漲る力が入りきらないからな。」
狭い部屋の中で、達也から、らんまが距離を置いて離れた。そして、臨戦態勢を取る。
「て、てめぇ、達也じゃねーな? 何者だ」
「…………特別に答えてやろう。我の名前は麒麟。幻獣界の神だ」
「幻獣界の神だと? その幻獣界の神がなんのようだ」
「4000年、待ちわびたぞ。こうして人間の身体に憑依して復活できる日を」
達也の姿を乗っ取った幻獣界の神は麒麟と名乗った。しかし、らんまにとっては、誰だろうと関係なかった。怒りに震えて拳を握りしめた。なによりも、愛する達也を器として使われたことも許せなかったからだ。
「てめぇえ、神だか、なんだか知らねえけど、達也からさっさと出ていきやがれぇ!」
らんまは勢いよく畳の床を蹴り出し、麒麟に殴りかかっていく。麒麟は向かってきた拳の軌道をすぐに把握すれば、さっと避け、手から衝撃波を出して、らんまを弾き飛ばした。らんまの身体が壁に激突すれば、大きな音が天道家に響いた。その音を聞きつけて、天道あかねを先頭に、天道家の人々が階段をかけあがってきた。
「みんな! 気をつけろ、こいつは達也じゃねえ。詳しいことは言えねーけど、身体を乗っ取られているみたいだ」
部屋に入るなり、目の前にいる危険な男を警戒しろと、天道家の人々たちにらんまは伝えた。
「身体を乗っ取られているですって?!」
居合わせた響良牙が麒麟に向けて、攻撃をしかけた。
「爆砕点穴っ!」
「ふふふ、勝てるわけなかろう。我は幻獣界の神だぞ……むんっ!」
向かってきた響良牙の攻撃を指一本で抑えれば、そのまま、床にねじ伏せてしまった。
「ぐぅうう、おのれぇ」
「実力差がありすぎる……。麒麟、いや、幻獣界の神様が達也くんの身体を乗っ取って、なんのようだね?」
天道早雲がその場にいた者たちを代表して、麒麟の目的を聞き出そうと乗り出した。
「ふふ……オレの目的か。復活そのものが目的だったから、とくに決めていなかったが、そうだなぁ……」
麒麟が口元に指を当てた。その指をゆっくりとらんまに向けて、伸ばしていく。
「まずは、そこにいるらんまとかいう蓮葉女を犯すことかな、ふふふ」
「オレを犯すだとぉ?」
「そして、その後はハーレムを形成し、オレを封印した幻獣姫のフレイヤを殺す。目的はこんなとこだな」
らんまを除く、人々は麒麟の話がなんのことか、意味不明な様子で困っている。まるで頭のおかしい若者の支離滅裂な話を聞いているようだった。
しかし、らんまだけは麒麟の野望を理解していた。そして、その野望を止められるのは自分しかないと知っている。
「麒麟……! オレと勝負しやがれ」
「ほぉ、勝負か。人間は愚かだな、これだけの実力差があっても歯向かうのか」
「どうだ、勝負するのか、しないのか!」
「いいだろう、その代わり、勝負の方法はバトルファックとさせてもらおう。ただの格闘勝負じゃ面白くもないしな……」
「バトルファックだとぉ? ふざけた真似を」
「あぁ、そうだ。それのほうが少しは勝ち目があるだろ?」
「わ、わかった……受けてやる。そのかわり、オマエが負けたら。達也の中から出ていけ!」
「…………いいだろう」
明日の夜に風林館高校のグラウンドでのバトルファックを約束し、麒麟は天道家から去っていった。
◆◇◆◇
翌日。
道場で座禅を組んでいるらんまのもとへ、天道あかねが訪れた。
「らんま……本当に今夜の勝負に行く気?」
「あぁ、もちろん。行くさ」
「幻獣だか、なんだか、知らないけど、アイツは神様なんでしょ? らんまが勝てるわけないじゃない」
「…………」
「ちょっと、なにか答えなさいよ!」
らんまの肩を引っ張るあかね。らんまの目が腫れていた。
「じゃぁ、誰が達也を助けてやれるっていうんだよ! オレしかいないだろうが」
「らんま……」
「あのとき、達也はオレを庇ってくれたんだ……。今度はオレが助けないと。それにオレは達也の……」
「やっぱり、あれは夢じゃなかったのね……」
なにかを思い出したかのようにあかねが喋りはじめた。
「私、異世界へ行った夢を見たのよね。そこでは、らんまと達也くんの結婚式が行われてた」
「あかね……」
滞在していた時間が短かったため、異世界の存在は夢のように錯覚していたあかねが、夢ではなく「リアルな出来事」だったと自覚しはじめた。
「そりゃ、元許嫁だったから複雑な気持ちだったけど、らんまの気持ちが本物だとおもったからこそ、私は祝福したの」
元許嫁という立場もあった手前、あかねに申し訳なく、らんまは俯いた。
「行ってきなさいよ! らんま、あんただったら、絶対に達也くんを取り戻せる。私はそう信じているから」
あかねの声援に応えるようにらんまも顔をあげ、決意の表情で立ち上がった。
「ありがとう、あかね。オレは負けない。達也を取り戻す、絶対に!」