女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
それから、オレは学生服に着替え、らんまはチャイナドレスに着替えて、天道家を出た。
今日は月曜日だが、祝日だった。なにをすることもなく、街をぶらつくことにした。
らんまと二人並んで、街を歩く。
「オレたち、四聖獣の討伐の旅をしてたら、幻獣界の神様と名乗る麒麟が現れて、達也の身体が乗っ取られちまったんだよな?」
「あぁ、そうだな。んで、その麒麟をオレの身体から追い出して、パラムとアムとフレイヤ様と倒して、そのあと、みんなの前でセックスして封印した」
まったくを持って、摩訶不思議な旅だったが、夢ではなかったようだ。その一連のことで、身体中に傷もあるし、疲労感も半端ない。
無我夢中の旅の中、こっちの「元の世界」に来てしまったが、目的であった「四聖獣討伐とその封印」を終えた後には、異世界へ戻るか、このまま、元の世界で過ごし続けるかは決めていなかった。
異世界に移動できなければ、このまま、元の世界で過ごすことになるのだが。
「らんま、どうしよっか……」
「どうするって?」
「また、あっちの世界に行くか。こっちの世界にこのままいるかってことだよ」
「そりゃ、どっちでもいいぜ? 達也と一緒なら、どっちでも」
オレと同じ考えだった。オレもらんまと一緒なら、こっちの世界で高校生をやるでもいいし、あっちの世界で喫茶店やったり勇者やったりでも、どっちでも良かった。
ぶらぶらと街を歩いていると学生鞄が大きく振動した。
「んぅ? オレ、べつにバイブ機能とかないスマホなんだけど」
鞄を開けてみると、四聖獣を探しに使っていた探知機が大きく振動していた。探知機といっても、こっちの世界に来てからは、ずっと魔力切れで、使うことなかったのだが。
らんまと探知機を動かしてみると、画面にアムの顔が映った。
「は、、、、や、やっ、、繋が、ました! 達、さん、、んまさ、聞こえま、か? 見えていますか?」
非常に焦っている様子だ。回線なのか魔力なのか、とにかく不安定で、言葉も途切れ、途切れだ。しかし、その言葉のイントネーションから、かなり切羽詰まっている状況が読み取れた。
「アムからだ。ちょっと言葉途切れ、途切れだけど、聞こえるし、見えてるよ。というか、こんな機能あったのかよ」
アムとの回線というか魔力が安定して、ハッキリと姿が見えて、声も明確に聞こえるようになった。
「達也さん、らんまさん、聞こえていますね? 緊急事態発生です! ただちにこちらの世界へ戻ってきてください」
「緊急事態だって?!」
「だぁあー、麒麟を倒したばかりだっていうのに、もうかよ!」
と言いながらも、らんまはアムからの帰還要請に嬉しそうだった。
四聖獣討伐の旅はこっちの世界にも来たりして、てんやわんやな旅になってしまった。途中はかなり危なかったが、終わってみれば、オレとしても非常に充実した冒険であるのは間違いなかった。
「わ、わかった、すぐ戻る。んで、なにがあったんだ? 四聖獣討伐の次はどんなモンスターが」
「は、はい、、それが、もう大量に押し寄せてきているんです!」
アムの声が震えている。アムが住むレムール王国に大量のモンスター軍の侵攻がはじまったのか? だとしたら、すぐにでも行かないと。
「レムール王国の危機か?! す、すぐ、行く。待っててくれ」
「達也、いくぞ」
らんまと一緒に異世界へのゲートとなる神社へと猛ダッシュで走った。
「だぁああーー、こっから神社行っても、あの草原からレムールまでじゃ、すぐに行けないぜ」
「あ、あ、が、、、ざい、す、、も、そ、危機、のは、レ、ー、、国で、な、んです」
また、回線なのか魔力が不安定になり、アムの言葉が途切れはじめた。
「アム! なに言っているか、よくわからない。もっかい喋って」
「その危機なのは、レムール王国ではないんです」
「レムール王国ではない? ど、どこだ?」
抱えた探知機を持って走り続けた。画面の中でのアムの口調から、一刻を争う事態なのが聞き取れた。
「きゃぁああーーーっ! パラムさんがぁああ」
声はまだ、聞こえるが探知機の映像が乱れた。地面しか映っていない。
「おい!おい!アム、どうした」
かつての伝説の勇者のパーティの一員であり凄腕の魔法剣士パラムも苦戦するとは、侵攻するモンスター軍の大軍のリーダー格はかなりの戦闘力と見た。
「アム、他に味方はいないのか?」
「あ、はいっ! ここにはわたしとパラムさんしかいません」
(なんてこった。アムとパラム以外は全滅かよ……、レムール国の騎士団もベリーヌもなにしてんだよ)
「達也、あの角を曲がれば、もうちょいで神社だ。アム、持ちこたえてくれぇえ!」
「は、はいぃいーっ! が、がんばりますけど、わたしにはもう、なにがなんだか、どうすればいいか。もう数が多すぎて、どうすることもできません。とにかくです、はやくきてください!」
「場所はどこだ、転移ゲートからそこへ行くまでも時間かかる、それまで、持ちこたえてくれ!」
全身汗だくになりながら、ようやく神社の前まで辿り着いた。
「場所は、ソイツェストです!」
ソイツェストといえば、オレたちの自宅兼喫茶店がある港町だ。
「ソイツェストか、了解だ! 今から、そっちの世界に戻る。なんとか、オレたちが到着するまで、モンスター軍の猛攻に耐えてくれ!」
「………ん? もしかして、なにか勘違いしていませんか?」
アムの声が途端に冷静さを取り戻した。
「わたくし、モンスター軍に攻められているなんて、ひとことも言ってませんけど?」
「えっ? だって、さっきから緊急事態って」
「そうですよ、緊急事態です」
「ソイツェストが緊急事態なんだろ?」
「緊急事態なのはソイツェストの達也さんとらんまさんのお店、喫茶PANDです。ソイツェストに立ち寄ったときに様子を見に来たんですけど。そしたら、もう、お客さんが、いつから店の営業を再開するんだって大変なことになってまして、店を勝手に開けさせてもらったら、大勢のお客さんが押し寄せてきて、大変なことになってしまってるんですぅうううう!! パフェの作り方もコーヒーの作り方もわからないまま、やってたら、クレームの嵐でええええ」
「「…………緊急事態ってオレたちの店のこと?!」」
「そうです! 大変なんです、はやく戻ってきてください」
しばし、一呼吸おいて、オレたちも冷静さを取り戻した。
「たしかに、それはすぐに戻らないといけないな」
「だな……」
「戻るとするか」
「そうすっか♪」
オレはらんまと手を繋いで、また、神社の鳥居(転移ゲート)をくぐり『異世界』へと帰っていった。
―女らんまと異世界冒険記・第三部 四聖獣討伐編・完―
『第三部』もこのエピソードにて完結です。
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