女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
オレとらんまがウェスティリアで始めた喫茶店営業も順調に進んでいた。パフェ専門店として人気を博していたおかげで、連日大勢のお客さんが押し寄せてくれる。しかし、ある日、開店同時に主にらんま目当ての常連客が押し寄せてくるのだが、今日は誰もいない。
「おかしいな。いつもなら、開店と同時に常連さんたちが来てくれるのに…」
オレは首をかしげながら、らんまに状況を話す。らんまも不思議そうな顔をして、何か考え込んでいる。
開店から1時間、2時間経っても、客が1人も来ない。これにはオレたちも焦り始めた。
「こりゃ、おかしいな……」
「らんま、ちょっと外に出てみよう。何か変わったことでもあるのかもしれない」
というわけで、オレたちは店の外に出てみることにした。すると、隣にはクレープ屋ができていた。しかも、大繁盛していて、店主はなんと、紅つばさだった。
「なんだ、あいつか…」
オレは紅つばさを見て、過去の記憶が蘇る。元の世界でも会ったことのある変わり者で、惚れた相手に対して何かに紛装して突撃することを得意とし、壁や塀を破壊する。物凄くしつこい性格。そしてかなりの男嫌いだ。
「ふーーん、誰かと思えば、ちんくしゃの早乙女らんまか」
紅つばさはそう言うなり、らんまを指さした。
「この港町では、人気のウェイトレスさんがいるって噂だったから、どんな女かと思えば、ブスの早乙女らんまだったか」
ドカンッ!と『ブス』というワードがらんまの頭の上に乗っかった。
「ほほほほほ。そのブスに負けたのは誰かしらっ?」
おそらく、紅つばさを負かしたという勝負は風林館高校で行われたお好み焼き即売対決のことだろう。オレは、あのとき、らんまのお好み焼きを腹一杯食べた。
あのときの味を思い出すだけで……うっぷ……。
「突撃ぃーーっt!」
「ぐへぇ!?」
突然、オレの後頭部に激痛が走る。振り返るとそこには郵便ポストに身を包んだ紅つばさの姿があった。
「いつつ……何すんだよ!!」
「うるさい!!あんたが私のことをブスとか言ったんでしょ?だから殴ったのよ!!」
理不尽すぎる。オレは何も言ってないし、そもそもお前のことをブスなんて一言も言っていないぞ?
幻聴が聞こえてるのか?! ホント、らんまの周りというか、元の世界は変わり者だらけだ。
そして、変わり者には関わるまいという気持ちはらんまも同じようだった。
「達也、帰んぞ。こんなやつを相手にしてると、疲れちまう。」
「そうだな……」
だが、帰る前に一つだけ気になることがあった。それは店の前に貼っているメニュー表である。クレープ専門店と銘打っている割には、普通のパフェもあるし、コーヒーだってある。一体どういうことだ?
「おい、これおかしくないか?」
「えっ?」
「見てみろよ。ここの看板メニューのところだよ。普通、クレープ専門店っていうなら、クレープしか置いてないはずだろ?なのにどうしてパフェもあるんだ?」
「確かに言われてみると……」
「それに、コーヒーまで置いといて、クレープ専門とは名ばかりじゃないか」
すると、紅つばさは腕を組んで自慢げに語り始める。
「フフン♪甘いわねぇ~。そんなことも分からないの?ここはクレープ専門店だけど、スイーツ全般を置いている喫茶店でもあるのよ。つまりはそういうこと♡」
なるほど。つまりはこういうことらしい。クレープ専門の喫茶店ではあるが、デザート類は全て紅つばさが作っており、それを目当てに来る客もいるということか。それならば納得できるな。
「ま、お隣のちんくしゃの店のパフェは食べたことないけど、どうせ、豚の餌レベルでしょうね?」
聞き捨てならない言葉だったが、相手にしないほうが得だ。オレたちはオレたちで確実に紅つばさの店に取られた客を取り返すなり、新規客を大事にするしかない。
「らんま、戻るぞ」と声をかけたが、らんまに声はなかった。拳を握り怒りで震えていた。
「このクソ女ぁあああっ!!!よくもオレの大好きな達也のパフェを豚の餌呼ばわりしたなぁ」
「あらら?怒ったところで何も変わらないじゃない?どうせ負け犬は一生勝てっこないからさっさと尻尾巻いて帰りなさいよ!!」
「上等だっ!!てめぇだけは絶対に許さない!!」
「ふーん、じゃぁ、どう許さないっていうの?暴力は嫌いよ。野蛮なのよねぇ、早乙女らんまって」
「うるせぇっ!!てめぇこそ、男に媚びるだけの色仕掛けなんかで男を落とせると思ってんじゃねえよ!!」
「はぁああ!?誰が男に媚びるですって?!ふざけたこと言わないでくれる?! じゃあ、勝負する?」
「おう、いいぜ。望むところだ。んで、どういう勝負だ?」
「ちょと待てって、らんま。早まるな」
「どうしてだよ、オレは達也が一生懸命作ったパフェを馬鹿にされて、黙ってなんかいられねえよ!」
らんまの言葉を聞いて、胸の奥が熱くなるのを感じた。嬉しいという感情よりも先に、オレのために怒ってくれているという事実が何より嬉しかったのだ。しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。
勝負をするにしても、場所が悪い。もしここで勝負したら、間違いなく周りに迷惑がかかる。そう思い、止めようとしたのだが……。
紅つばさとの勝負はもう引き返せなくなっていた。周りの客らも、面白そうなことをやっていると、どんどん集まってきた。ここで逃げても、オレたちの店は繁盛しないだろう。
「わかった、らんま……、やろう。やってみよう」
「んふふふ、決まったみたいね。勝負方法は単純。次の祝日の日の1日の売り上げを競うのよ。こっちの店と、そっちの店で。名付けて、スイーツウォーズ!」
「スイーツウォーズか、面白れーじゃんか。やってやるよ」
「負けたほうは、店を畳む。立退くってことよ」
「あぁ、わかってるよ。その代わり、オレたちが勝ったら、二度とオレたちに近づかないと約束しろ」
「ふん、いいわ。その条件、飲んであげる。ただし、私に負けたとき、あんたは私の奴隷になるってことでもいいかしら?」
「あぁ、それで構わねぇよ。オレが負けたときはお前の言うことをなんでも聞いてやる。そのかわり、オレが負けたら、オレが負けたときのことは忘れてくれ」
「えぇ、いいわ。その条件で飲みましょう。それでは、スイーツウォーズ開催よ!!」
こうして、オレたちと紅つばさのスイーツウォーズが始まった。
「よっしゃあ!燃えてきたぞ!!」
らんまはやる気満々だった。オレもらんまがここまで怒ってくれたことが何より嬉しく思えた。だが、それと同時に不安もあった。パフェは研究した結果、なんとか作れているが、スイーツに関して言えば、素人同然だ。果たして、紅つばさに勝つことができるのか?
「達也、オレ、頑張るからな!絶対に勝とうな」
「あぁ、もちろんだ、オレも頑張る!」