女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
「らん……ま……」
自分の口から出た言葉で、オレは一気に目が覚めた。
「……あ」
ぼやけていた顔が、らんまの顔になった。
「おーい、起きてるのか? 超人ハルク」
「ハルク?」
「体、緑色じゃなかったけど……起きられるか?」
オレは起き上がろうとしたけど、体のあちこちが悲鳴を上げた。
「ムリ……」
喉の中がはりついたみたいで声がうまく出ない、唇もガサガサ。
「水、飲むか」
「うん……、う……」
返事はしたけど体が起こせない。もがいているとらんまが顔を寄せてきた。唇がくっついて、らんまの口から水が流し込まれてくる。らんまの唇。オレの大好きならんまの唇。
二度、三度、水が体に染み込んでくるようだ。
「もう……大丈夫……ありがと」
らんまがオレの横に腰を下ろした。
「覚えてるか?」
「なにを?」
「なんか達也、髪白くなって……身体もでかくなって、めっちゃ強くなったけど。ゴブリンの剣も効かないぐらい」
らんまに言われて急に思い出した。ゴブリンの粉クスリで麻痺させられて、らんまが犯されそうになって……オレはキレて、鎖引きちぎって、暴れた。
「なんとなく……」
「それで……」
らんまはちょっと嫌そうな顔をして、オレから目を逸らした。
「ゴブリンどもを全部ぶっ潰して砂にして、それから……おまえ、俺をメチャクチャにしやがった」
「……え?」
「ゴブリンに体中ナメられて、その後でお前に3発もやられて……それから気絶したお前背負って。よーやっとあそこから出てきたんだぞ、死ぬかと思った」
「そうか、あれ、夢じゃなかったんだな……」
オレの記憶の中に薄っすらと残った出来事は夢じゃなくて、現実でオレが起こしてしまった事だった。
らんまは、窓の外を見ながらため息をついた。
「まあ……それで助かったんだからいいけどさ。だからまだ冒険者ギルドで報奨金もらってないんだ、行ってくるから。あの、クエストの張り紙出して」
クエストの達成は、募集の張り紙に完了のサインをしてギルドに確認してもらわなければならない。それでゴールドが支払われる。
「オレの……バッグ……」
言いかけてオレは冷や汗が出た。鎖に繋がれたとき、バッグも剣もゴブリンに奪われていた。
「あれ……取り返した?」
「お前の剣とカバンは持って来たけど。中身ぶちまけられてたから、全部拾えたかどうか……」
らんまが差し出したバッグ、オレは慌ただしく中を確かめた。
「……ない」
たぶんダンジョンの中に落ちているのだろう。
「ギルドに話して、達成の確認してもらう」
そう言ってらんまは一人で出て行った。それからオレは、ベッドから起きてトイレに行くという超難関クエストに何とか成功して。また寝たら起き上がれないのでベッドに腰掛けてらんまの帰りを待った。
「ダメだった……」
帰ってきたらんまの表情はさえなかった。
「あの紙、取りに行かないとダメか?」
「バックはあったんだけどさ、報償ゴールドはもう支払われてるって……オレたちの後にあそこ入って行った奴らがいたらしい」
「えっ?」
オレは思わず大きな声を出して、肋骨がみしっと痛んだ。
「ハイエナって言うんだって。クエストに行くパーティーの後ろにくっついて行っておこぼれ拾ったり、帰りのパーティー襲って全部かっさらうんだって。ギルドでも迷惑してるけど、めんどくさがって誰も止めさせようとしない」
らんまの声が低い。当然だけど怒っている。
「ひでえ……」
オレもその辺の壁を殴りたい気分だったけど、自分で痛い思いをするだけだろう。
「そいつらがたむろってる場所は聞いてきた……動けるようになったら、そいつらド突き倒しに行くか?」
「もちろん、行く」
オレは体中が悲鳴を上げまくるのを無視して筋トレを始めた。走って、シャドーボクシング。らんまと組み手。そして冷や汗脂汗を流しながらとにかく食う。
「タフだな」
らんまに冷やかされたけど、奴らが二度とハイエナできないようにしないと腹の虫がおさまらない。
「よし、行こうぜ」
三日後、まだ体は痛いが復調したオレはらんまに言った。連中を殺さないように武器は持たない、その代わり拳闘用の革手袋を作った。
らんまがギルドの冒険者に教えてもらった町外れの小屋。少し離れたところに身を隠して待つと、夕方近くに5人集団が帰ってきた。いかにも小狡い事をしそうな冒険者集団だ。
オレたちが歩いて行くと、そいつらも足を止めた。
「おい。4日前にゴブリンのダンジョン入って行ったの、お前らか?」
5人は顔を見合わせた。
「ゴブリンなんかいなかったぜ。全滅したパーティーのクエスト表落ちてたから、ありがたくゴールドは頂戴したけどな」
一人が言うと全員が笑い声を上げた。
「ゴブリンを全部やっつけたのはオレたちなんだ。クエスト表を取りに戻ったら、誰かが拾って何もしねーでゴールドだけ受け取ったって聞いた」
「そりゃー、お疲れさん!」
5人が下品な笑い声を上げる。それ以上話しをしても腹が立つだけなので、おれはずかずか歩いて行って、正面にいた奴の顔面に正拳突きを入れた。残り4人が怒声をあげて剣を抜く。
「あ~! ひどーい! こっち素手なのに剣抜いた!」
らんまが声を上げる。
「うるせえ! お前らが先に手出しやがったんだろ!」
「ゴールド返してもらいに来ただけよ!」
「だったら一人1ゴールドずつ返してやるよ、姉ちゃんヤるたびによ!」
一人が剣を振り下ろしてくる。へろへろの刃筋を難なくかわして、オレはそいつの腕を取って顔面に肘打ち。そいつが歯と血をまき散らしてぶっ倒れるのを見て、残りがひるんだ。
「おい! こいつがどうなってもいいのか!」
らんまに走り寄って腕をつかんだ奴が叫ぶ。だが、当たり前だけどらんまは平然としている。
「どうなると思う?」
「あ?」
オレが聞くと、そいつは間抜けた表情で固まった。
「どうなるも……」
そう言って、そいつはらんまの体に目をやった。他人の彼女を品定めしやがって。
「この……巨乳娘のビキニアーマー切って。ハダカにして、おめーの目の前でコイツにぶち込むぞ!」
オレは芝居っぽく首を振った。
「ムリだと思う。その前に、お前はその女にボコボコにされる」
「何わけわからないこと言ってやがる!」
切れなさそうな剣をらんまに突きつけた瞬間、そいつの体はらんまの背負い投げで空を飛んでいた。
「ボコボコじゃなくて、ボコボコボコー!」
らんまの言葉通りに、そいつの体はパンチとキックでさらに3回空中に舞い上がった。
「次は? どいつが何やる?」
残り二人が剣を抜いたまま、へっぴり腰で後じさる。最初に正拳突きを喰らったやつは這いずって逃げようとしている。こいつらはただ卑怯なだけの、ザコ中のザコだった。
「確か、ダンジョンクリアの報奨金は600ゴールドだよな。出しな、余分なものは出さなくていいから」
連中の懐からきっちりゴールドを取り返す、オレはそれをらんまに預けてから連中に向き直った。
「お前らみたいに卑怯なやつは、根に持って復讐しようとかバカなこと考える」
3人が、揃って首を左右に振る。
「考えない、考えません……」
らんまがけたたましい笑い声を立てた。
「それを信用しちゃうほど、あたしたち甘くないのよ~! 」
「そんなこと考えもしないように、きっちり教えてやる」
剣を捨てて逃げだそうとした奴の前に、ジャンプしたらんまが立ちはだかる。らんまと二人で、言った通りにした。