女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
過去へと戻った瞬間、スケート場の騒がしい音が聞こえた。風景は過去のあの日のままで、感じた空気の冷たさがオレの身体を包んでいた。見渡すと、すでに、三千院帝と白鳥あずさの百人組手は終わり、アイスホッケー部の男たちは三千院帝たちに蹴り飛ばされていた後だった。オレは一瞬、懐かしさに浸るも、急いで目の前の状況に集中した。
リンクの中でらんまの姿を探した。その姿は遠くに見えた。リンク場でスケートが苦手ならんまが、手をバタつかせている。
「わぁーー、達也、はやく来てくれー、倒れるぞー、もうだめだぞー!」
オレは緊張しながら向かった。足元には光る氷が広がり、その上を行くスケート靴が鋭く音を立てていた。多くのスケートリンクの上の人波をかき分け、ただらんまに向かった。
手をバタつかせていたらんまが、三千院帝に抱きかかえられはじめた。必死な表情でオレを見つめていた。
「達也ぁああーーっ!!」
らんまが大声でオレを呼んでいる。その声は、オレの胸に突き刺さるようで、オレはらんまを助けるために必死になった。
「らんまぁあーーっ!」
急がなければ……。簡単だと思った試練は、思いの外、難しかった。ここでキスされてしまえば、わざわざ飛び込んだ意味もない。そもそも、過去改変に失敗したらどうなるんだ?
大きな声で三千院帝の注意を引きつけるオレ。
「おい、三千院帝!らんまを離せ!」
言葉に力を込めて、オレは叫んだ。三千院帝はオレに興味津々な目で見つめてきたが、オレはそれを意にも介さず、一生懸命、滑っていくオレ。スケートは苦手なほうではなくて良かった。むしろ、得意だ。そのため、オレは思い切ってスピードを上げていった。
オレは勢いよく三千院帝にタックルをして、その隙にらんまを解放した。オレはらんまの腰に手を回し、らんまを抱きかかえるように引き寄せた。その瞬間、らんまの身体がオレの腕の中でふわりと軽く感じた。その軽さには驚いたが、すぐに、しっかりと支えるように力を込めた。
オレはらんまの驚いた顔を見つめながら、その目に涙が浮かんでいるのを見た。涙には、恐怖と安堵が混ざり合っていたように見えた。オレは心配しながら尋ねた。
「らんま、大丈夫か?」
「危なかったぜ……また、三千院にキスされちまうところだった」
うっすらと笑ってから、発した声には、何とか逃れられたという安堵感がこもっていた。
「よし……、じゃあ、さっそく、こんな場所だけどキスしちまおう」
オレたちの目的は、らんまのファーストキスの相手を改変することだ。そのためには、今すぐにでも行動に移さなければならなかった。
らんまはオレの言葉を受け入れ、頷き、目を閉じた。緊張と期待で真っ赤に染まっていた。
オレはらんまの唇に自分の唇を近づけていった。その瞬間、オレの心臓は高鳴り、息が詰まりそうだった。
しかし、その時、周りが騒がしくなった。三千院帝は、らんまにキスをできなかったことに憤慨し、今度は天道あかねを抱きかかえていたのだ。
「ぼくがスケートを教えてあげる」と三千院帝が言い、あかねは戸惑った顔をして、「ん?」と尋ねている。
「余計なお世話よ!」
「そぉ、残念だな。それじゃ、せめて……」
その言葉に、周りがさらに騒がしくなり、オレたちのキスは一時的に中断されてしまった。
そして、あろうことか、三千院帝は天道あかねに強引にキスをしてしまった。その光景にオレは怒りを抑えられなかった。つまり、らんまの過去を改変した結果、天道あかねがキスをされてしまったのだ。
「この万年発情男が……」
三千院帝にキスをされた天道あかねの瞳から涙が溢れていた。
抱きかかえていたらんまをおろした。
「らんま……やっぱり、元の時間に帰るのは少し待ってもらえるか?」
「あぁ、そうだな。考えることは同じだな」
三千院帝は自分がキスをしたことで天道あかねを泣かせてしまっていることを嬉し泣きだと思い込んでいる。つくづくバカなやつだ。
「あぁ、キスだけで嬉し泣きさせてしまうなんて、我ながら罪だな」
「三千院!許さねえ!この場で勝負しやがれ、てめえだけは生かしちゃおかねえ!」
らんまがスケートリンクの上で仁王立ちして、三千院帝に言いがかった。
「なにを怒っているのか知らないが……神聖なリンクを傷つけた罪は万死に値する!きたまえ!」
「上等だ、死ぬほど後悔させてやるぜ」
「待て、らんま。オレに考えがある、勝負は後日にしよう」
しかし、オレはらんまを静止した。まだ、滑れるように練習していない。滑れるようになってから勝負を挑むべきだと主張した。
そうして、オレたちは、後日、コルホーズ学園高校で三千院帝と白鳥あずさペアに格闘ペアスケートの試合を挑むのだった。