女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
サハギン事件を解決したオレたちが受け取った報酬は600ゴールド。旦那様から受け取ったのは1千ゴールドだが、ギルドに手数料として400ゴールドを納めなくてはならなかった。
「ずいぶんと……抜くんだな」
らんまが憮然とした表情で言う。どうやらギルド経由で受ける仕事には保険がかかっているらしい。ファンタジー世界なのにいろいろ経費がかかるようだ。
だが、ついでと言うことで、屋敷から街中にある港までの間を見回る仕事を頼まれた。これはギルド経由ではなくて直接の依頼で100ゴールド先払いだった。
運河が地下道になっていて、その両側に点検用らしい歩道が繋がっている。時々ザコモンスターが出て悪さをしたり、ホームレスが住み着くこともあるらしい。残念だが、らんまは水着からビキニアーマーに戻ってしまった。
「達也。あれ、なんだろ?」
らんまが水の中を指した。水面から太い棒が突きだして、どう見ても邪魔だ。通路に結ばれたロープを辿って水中を見ると、けっこう大きな船が沈んでいる。
「おーい。あんたら、それに触るなよ」
通りがかりの船から、漁師らしい人間が声をかけた。
「水門のモンスター退治してくれたの、あんたらかね?」
「はい。サハギンの群でしたけど、もう追い払いました」
オレが答えると漁師は頭を下げた。
「ありがとう、漁に出られなくて困っていたんだ。助かったよ」
「ここに船が沈んでますけど、何かあったんですか?」
「そいつは、この町ができる前からそこに沈んでんだ。邪魔なんだが呪いがかかっていてね、引き上げようとすると魔物が出てくる」
「ギルドに、退治を頼んでみましたか?」
らんまが言うと、漁師は手を振った。
「引き上げ仕事と退治で、もの凄い金がかかるんだ。それで町長は放っておくつもりらしい。だがそいつにぶつかっちまう船がいるから、みんな困っている」
漁師さんはそう言って手を振って海へ出て行く。らんまがおれを見上げた。
「達也、やってみるか?」
見回りの契約には入っていないけど、化け物魔物退治はオレたちの仕事でもある。
「サービスでやれる相手ならいいんだけど……おいっ! こら!」
オレが決めかねている間に、らんまは沈没船のロープを引っ張り始めていた。オレも一緒になって引っ張るりあげる。
「うーーーーん!」
らんまがうめきながら引くと、少しずつロープが水の中から出てくる。同時に、何だか嫌なアワもボコボコたち始めた。ヤバイ雰囲気、オレは剣を抜いて身構える。とつぜん、薄く濁っていた運河の水が真っ黒になった。
「らんま、来るぞ!」
らんまがロープを放して飛び退いた。水面を割って、でかい口がぞろりと並んだ牙を剥いて飛び出してくる。
「うげー!」
らんまが悲鳴を上げた。でかい口はらんまが避けた後の壁に衝突して、また水の中に戻って行く。ぬるぬる気持ち悪い液があちこちに飛び散る。
「うえー! 気持ち悪いー! 何だよあれ!」
「ジャイアントイールじゃないかな?」
化けウナギだ。下手をすると水の中に引きこまれて食われる。
「またくるぞ!」
今度はデカ口が壁に衝突した瞬間に剣で一閃浴びせた。『ぬるっ』と滑って全然ダメージになっていない。
「やべー! 武器が効かねーぞ!」
バーサーカー化しても、水の中でヌルヌルの相手じゃ分が悪すぎる。
「背開きにして串打ってやれよ!」
「ムリ言うな、うわっ!」
またオレとらんまは紙一重で攻撃をかわすが、ヌルヌルをたっぷり浴びてしまう。オレは簡単に手を出したらんまを恨んだ。これは逃げるしかないところだけど、この狭いヌルヌルになった通路じゃ逃げることも難しい。
「あ、そうだ!」
らんまが手でヌルヌルをこそげ落としながら言う。
「なんだ?」
「化けウナギには、化けビーバー!」
らんまが首から提げていた瓶を出して、栓を抜く。
「湯太郎! あれ、食っちゃえ!」
「ビーバーって、肉食か?」
「知らねー!」
空中に湯太郎こと、幻獣アーヴァンクが出現して、そのまま派手な音を立てて運河に飛び込む。たちまち水の中で大格闘が始まった。
「湯太郎! がんばれ!」
そして水面は静かになり、ときどき大きくうねるだけになった。
「おーい……湯太郎?」
らんまがおっかなびっくり声を出すと。『ざばっ』と湯太郎のビーバー頭が現れた。口にでろんでろんの大ウナギをくわえている。湯太郎の歯に食い破られて、内臓が出ている。
「やったー! オレの湯太郎強ぇ!」
そのまま、湯太郎に命じて水底から船を押し上げてもらった。水面でひっくり返して水をかき出すと、意外なほど痛んでいない。
「うっ!?」
オレとらんまは思わず身構えた。船の真ん中に白い光の柱が出現したのだ。
「こっちが、呪いのボスか?」
「なんか……違うみたいだよ。達也」
光の柱は何だか人の姿になった。
「湯太郎。おいで、戻って」
湯太郎は大ウナギの死骸を放り捨ててらんまの瓶に飛び込む。その間に光の柱は女性の姿になった。
「汚らわしい化け物を退治してくださったのは、あなたがたですか?」
唄うような澄んだ声。出現のしかたからして、当然だけど人間じゃない。
「オレはらんま、こいつは達也。さっきのアーヴァインは湯太郎」
幻のような美女は、胸に手を当てて優美に頭を下げた。
「セイレーン一族のヒーランサーサと申します。この船の守護をしていましたが、乗っていた方々がお帰りにならず残念なことにあの怪物に乗っ取られてしまいました。助けていただきお礼を申し上げます」
これは、もしかすると隠れイベントをクリアしたのかも知れない。オレは期待をこめてセイレーンにきいてみた。
「その船さ、使えるの? 海に出られる?」
「もちろんです。あなた方に乗っていただけるのでしたら、どこへでも海を渡りましょう」
「やっ! た!」
オレとらんまは跳び上がってハイタッチした。これであと十何日も船を待たずに済む。
「そうと決まれば、食糧を買い込んで北西の大陸へゴーだぜ!」
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