女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
あれから、オレたちは公演をこなしながら、少しずつ、ラブシーン以外のシーンにも真剣に取り組んでいった。しかし、客たちがオレたちに期待しているのは、舞台上での卑猥なラブシーン。ラブシーンになれば、客の視線は舞台に集中し、盛り上がるが、卑猥なシーン以外は、まるで興味がないといったように、通常シーンのときは空席も目立ちはじめた。
らんまはどう思っているか、わからないが、オレはロミオという役に真剣に向き合っていた。
たしかにナディアとアレックスが言うように劇中で描かれるロミオとジュリエットの情熱的な恋愛は、それ自体が一つの芸術作品だ。もちろん、その中に含まれるラブシーンは観客を惹きつける要素の一つではあるけれど、それに依存するわけにはいかない。
「らんま、ちょっと話があるんだけど…」
公演の後、控え室でらんまに声をかける。裸のらんまは何かを考え込むように鏡を見つめていた。
「なに?達也、どうかしたか?」
らんまが振り返り、少し心配そうな顔でオレを見た。
「いや、ほら、俺たちの演技、本当にこれでいいのかなって。エロシーンばかりがクライマックスじゃなくて、もっと…もっと芸術的な何かを表現できないかなって思ってさ」
らんまは少し間を置いてから、言葉を濁す。
「まあな、達也の気持ちはわかるぜ。でも、観客が求めてるのはあれなのかもしれないし…」
「そうだね。でもさ、オレたちなりの、もっと深い部分を見せたいんだ。ただのショーよりも、観客に何かを感じてもらえるような。それが、真のロミオとジュリエットじゃないかと思って…」
その言葉に、らんまはしばらく黙っていたが、やがてオレの手を握った。
「確かにそう。オレも本当は、もっと演技の部分で認められたいと思ってる。達也と一緒に何か新しいことにチャレンジできたらいいな」
「じゃあ、次の公演で何か変えてみようか。もちろん、客が喜ぶラブシーンは残しつつ、もっと心に残る何かを…」
「おう、それでいこーぜ!」
らんまが元気に答えてくれた。その瞳には、新たな挑戦に向けた輝きが宿っていた。
そうして、オレたちは次の公演に向けて、新しい試みを練り始めた。ラブシーンの濃厚さはそのままに、劇の中で表現する感情の深さを増すよう、台本の見直しや演出の追加を行うことになった。
◆◇◆◇
公演の日、オレたちはいつもとは違う緊張感を胸に、ステージに立った。新しい試みに満ちたこの公演、ラブシーンを迎える前のディープな演技に力を入れていた。昨夜はプライベートなセックスもそこそこに、二人で何度も台本読みを繰り返した。劇場は空席が目立つ客席、暗く静まり返った空間が、次第にオレたちの演技に色づき始める。
らんまとの間で交わされるセリフは、シェイクスピアの原作に忠実で、それでいて現代的な解釈を加えたものだ。じっくりと情感を込めてロミオの心情を表現する。ジュリエット役のらんまも、その純粋で一途な愛の表現に、全力を注いでいた。
しかし、観客の間からは徐々に落ち着きがなくなってきたようだった。演技のクライマックス、ロミオがジュリエットに誓いを立てるシーンで、オレは情熱的に言葉を投げかける。
「愛するジュリエット、この命が終わるその時まで、君だけを愛し続けることを誓おう。」
らんまもまた、ジュリエットとしての繊細な感情を込めて応える。
「ああ、私の愛しいロミオ、その誓いを信じ、私もまた全てを捧げます。」
だが、その時、劇場の後ろの方から不満そうな声が聞こえてきた。
「おい、いつになったらラブシーン始まるんだよ!」
「話ばっかりで退屈だぜ、さっさと脱げよ!」
「オレたちは退屈な芝居なんか見に来たんじゃねーんだよ、らんまちゃんのおっぱい、おまんこを見に来てるんだよ、はやく脱げ、脱げ」
「そうだ、そうだ!達也の太っいチンポをぶちこまれて、あえいでるらんまちゃんが早く観たいんだよ、ほらほら、はやくラブシーン、おっぱじめてくれよ!いつもみたいにさぁ!」
オレとらんまは一瞬、顔を見合わせる。
きっと、アレックスとナディアは、このような野次を受けながらも真剣に役を演じきっていたのだろうか。まばらな客席。客がいても、求めるのはラブシーン。
ステージ上で、オレは深い葛藤に苦しんでいた。観客からの野次と要求に心が揺れ動く中、真の演技を求める自分と、観客が欲するエンターテインメントを提供する自分との間で。しかし、その悩みを抱えるオレの隣で、らんまはすでに行動を開始していた。
「ったく……うるせぇな、見たいんなら見せてやるよ、いくらでもさ!」
そういって、一気にジュリエットの衣装を脱ぎ捨てたらんまは、舞台上で全裸を晒した。
らんまの裸体がスポットライトを浴びて、輝く。
「らんま……」
ええい、こうなりゃ、やけだ。今日もここで、らんまとセックスしまくってやる。見せてやるよ、オレたちのとっておきのラブシーンってやつを。
その瞬間、観客席からは一瞬の沈黙の後、爆発的な歓声が上がった。いくつかの野次も混じりながら、期待に満ちた声が劇場を満たす。オレは一瞬、らんまの目を見つめ、決意を感じ取った。らんまは勇敢だ。観客が望むことを受け入れながら、それに応えようとしている。オレも覚悟を決める。このステージで起こること全てが、ただのショーではなく、オレたちの愛だ。それがどれほど生々しく、またどれほど卑猥でも。
「達也……、いいぜ」
らんまが、ゆっくりと目を閉じた。オレは、そのまま、らんまに顔を近づけていく。唇が触れ合いそうになった瞬間。
「きゃぁああああーーっ!!!」
不意に客席から女性の悲鳴が上がった。
最初は何事かと思い、客席の後方を見たが、そこには異変の気配が濃厚に漂っていた。その悲鳴は一つでは終わらず、次第に客席全体が騒然となり、人々が立ち上がってどこかへ逃げ始めた。
「なんだ、何が起こってるんだ?」
らんまもオレも一瞬にして台詞を忘れ、舞台から客席を見下ろした。その時、オレたちの目に飛び込んできたのは、劇場の隅から這い出てきたグリーンドラゴンだった。