女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
44.死闘!岩溶けの洞窟
砂漠を通り抜けたオレたちはホログラード地方へと入り、長旅の目的地である『岩溶けの洞窟』に辿り着こうとしていた。
ここにオレの最強武器・神斧ラブリュスがあると思うとワクワクが止まらない。地下のマグマが液体の溶岩として地表に噴出し、流下し流れている活火山地域。並みの人間では立ち入ることがない最果ての奥地といったダンジョンだ。
「いや〜、砂漠での飛龍昇天波の威力はすごかったな。過去最大の威力だったんじゃないか?」
数日前の砂漠でのサンドワームとの戦いを思い出していた。飛龍昇天波は相手を螺旋のステップに誘い込まずとも打てるが、その際は相手の闘気を利用しないため、下から突き上げる打撃に気が加わった程度の威力だ。しかし、砂漠で放ったようにらんま以外の燃える闘気を螺旋のステップに誘い、利用し放てば、その威力は底知れない威力となる。
問題はサンドワームとの戦いでも明らかになったように、そう都合良く相手が螺旋のステップに入ってくれない事だ。なおかつ、螺旋のステップの中で溜めている間にらんまが攻撃を受けてしまえば、元も子もない。
そこで、オレが考案したのが、パートナーであるオレがらんまの螺旋のステップで闘気ならぬ、燃えるスケベ心を放出する方法だった。らんまが飛龍昇天波を放つ直前でオレが避けきれれば、螺旋のステップに相手を誘い込まずとも近距離であればヒットさせられる。合理的かつ、飛龍昇天波の威力を底なしにする方法だった。
「そりゃ、あれだけすごい飛龍昇天波なら、どんな相手だろうと絶対にノックアウトだろうけど」
「けど……?」
「あんなアホな飛龍昇天波、モンスター相手でもできるわけねーだろ、馬鹿馬鹿しぃ!オレの飛龍昇天波をあんな恥ずかしい技にしやがって」
「今度は抱きつかないからさー、いいだろ?べつに。強敵が出たときだけでいいからさ〜」
「へんっ、スケベ達也の言う事なんか聞くもんか」
燃えるスケベ心を利用した飛龍昇天波をは、もう二度と日の目を浴びないかと肩をガックリ落とした。
肩を落としながらも歩いていると、ついに『岩溶けの洞窟』の入り口に差し掛かった。入り口前で足を止める。どれだけの大きなモンスターでも通れそうなほどの大きい穴だ。洞窟というよりも、トンネルのようだった。
「おー、ようやく着いたぁ、ここが岩溶けの洞窟か……」
入り口付近だけではなく、中にもマグマの河が流れ込んでいた。洞窟内もガスが噴出している。気温はかなり高い。
オレは外していた鎧のいくつかのパーツを身体に装着し、軽装備から重装備に防具を変更させた。気温は高いが、防御力を少しでも上げておかなければと思ったからだ。神斧ラブリュスはそう簡単には入手できないはず。ダンジョンの主はもちろんのこと、道中のモンスターも強い場合がある。気を引き締めなおした。
「らんまもそろそろ……」
「うっせーな、わかってらぁ……あっち向いてろ」
普段から無防備ならんまでさえも『あぶない水着』に着替えるのは、さすがに恥ずかしいのか、オレにそっぽを向かせ、その間にビキニアーマーから、あぶない水着へと着替えた。このトンデモなく布面積が少ない『あぶない水着』は幻獣姫フレイヤ様から頂いた貴重な防具で一切の魔法を無効化にするトンデモ性能を持っている。さらに当然のようにらんまの最高エロボディの魅力を際立たせるほどのすごいデザイン。
「へへへ…、やっぱすごいな、その水着」
「ふんっ、さっさと行くぞ」
岩溶けの洞窟を警戒しながら進んでいくあぶない水着姿のらんまとオレ。いつ、どんな敵が現れてもバーサクする心の準備はしておきながら、足を進めた。予想どおり、洞窟に入ればすぐにマグマの河の中からエレメント系モンスターが現れた。マグマを纏った不定形な怪物が左右から襲ってくる。
「くっ!挟み撃ちか」
—バーサク! (狂戦士化)
オレの髪が白くなり鋼鉄の肉体へと変わる。マグマのエレメントモンスターからの攻撃を鋼鉄の腕で受け止めた。カウンターを入れるが、マグマを通過するだけでまったくダメージを与えれない。実態を伴わないモンスターがこれほど厄介だとは。バーサーカーの鉄腕だからこそ、焼ける事はないが。人間の状態なら、火傷では済まないだろう。
「らんま!こいつら、やばいぞ。ダメージを与えれない」
「くっ……」
マグマエレメントはらんまに向けて、炎の塊を投げつけてくる。オレはその間に立ちはだかり、らんまを庇った。鋼鉄の肉体で炎を無効化するが防戦しかできない。おそらくは術師の水や氷の魔法で打ち消しあうしかない。しかし、オレとらんまのパーティは魔法攻撃の手段は持ち合わせていなかった。
「前に逃げるしかねーか」
撤退ではなく、洞窟の先へと逃げたがマグマエレメントの数がどんどん増えていく。その数、十数匹。
「なら、オレの神獣のツメで……! だっちゃあああ! あちゃ!」
らんまが両手に装備した神獣のツメでマグマエレメントに斬りかかったが、ダメージを与えるどころか両手が火傷してしまった。慌てて、水筒の水をかけた。バシャッ!
らんまの最強の武器である神獣の爪でも実態のないモンスターにダメージを与える事はできないのか。ゲームではよくある設定で、どれだけの攻撃力があっても相性が悪ければ、無効化されてしまうのかもしれない。
さすがは最果てのダンジョン。想像以上に最難関のダンジョンだった。マグマエレメントに回り込まれ、防戦一方のオレたちの後方から小さな影が現れた。
「その程度のモンスターで苦戦するとは情けないのぉ、らんま。元祖無差別・氷の魔法!」
小さな影はロッドから吹雪を出して、マグマエレメントたちを消し去っていく。小さな影の顔がはっきりと見えてくる。
「ハッピー参上じゃ〜」
「てめぇは八宝斎!」
「らんまもここに遊びに来ておったのか♪久しぶりじゃな、それにその格好、最高にスイート!」
八宝斎は登場するなり、らんまの胸元に抱きつき顔を埋めはじめてしまった。反射的に引き離し、溶岩の中に突き落とすらんま。しかし、当然のように不死身な妖怪じじい八宝斎。こいつは実戦型格闘技「無差別格闘流」の創始者。らんまの親父さんや早雲さんの師匠でもありながら、子供じみた性格で極度のドスケベ。
「だー!こら、スケベじじぃ、なにしてんだ、こんなところで」
「わーっははは!ここに神斧ラブリュスがあると聞いて、取りに来たんじゃ」
「八宝斎のじいさんも?神斧を取りに」
「そうじゃ、そうじゃ。このとおりゴッドロッドはすでに入手済みじゃ♪それでは先を急ぐぞ」
マグマエレメントたちを氷の魔法で容易く消し去った八宝斎の小さな身体はオレたちよりも先に洞窟の奥地へと入っていってしまった。
「待ちやがれ! 妖怪じじい」
小太刀に続いて、八宝斎もこの世界に来ていたとは。でも、そんなことを考えている場合じゃない、オレの神斧ラブリュスが取られてしまう。猛ダッシュで、オレもらんまに続き八宝斎の背中を追いかけた。
「じじぃの野郎。持ってたのはゴッドロッドとか言ってたな」
「あぁ、まずいな…おそらく伝説の武器を集めているかもしれない」
「オレの神獣のツメに気付かれなくて良かったぜ……」
八宝斎を追いかけて洞窟の先へと進むと大空洞に出くわした。どうやら、ここがダンジョンの最奥地のようだ。しかし、いるはずの八宝斎の姿は見当たらなかった。代わりに現れたのは牛の顔をした超大型のモンスター・ミノタウロスだった。ミノタウロスの手には、まぎれもないオレの神斧ラブリュスが握られている。
「おおああああー!あれが………ラブリュス」
対称形の両刃の斧、間違いない。あれが今回の旅の目的の神斧ラブリュスだ。
ミノタウロスが振りかざすたびに神斧ラブリュスから雷鳴が吹き荒れる。らんまは無効化するあぶない水着を着ているものの、オレの鋼鉄の身体はそのダメージを受けていった。
「ずあ!さすがだぜ、オレの斧」
—どうにかして、あのラブリュスを奪わなければ。
ミノタウロスに数発の炎の爆撃が当たる。振り返ると間合いを取った八宝斎が炎の魔法でミノタウロスを攻撃しはじめていた。
「助太刀するぞ…!らんま、達也」
「とか、言って、あのじじぃラブリュスを奪う気だ。気をつけろ達也!」
「あの妖怪じいさんめ……」
三つ巴の戦闘が開始された。ラブリュスをオレが手にすれば、一気に形勢は逆転できるかもしれない。八宝斎と共闘してミノタウロスを倒した後に八宝斎からラブリュスを奪うか、もしくは逆にミノタウロスと共闘して八宝斎を倒すか。悩んだ末に八宝斎との共闘を選択する事にした。
「らんま、仕方ない。狙いはミノタウロスでいくぞ」
「しゃーねえーか、おい! じじぃ、共闘させてもらうぞ」
「わかれば、いいんじゃよ、それでは元祖無差別チーム、攻撃開始じゃ」
横一列となったオレ、らんま、八宝斎。
3人とミノタウロスが武器を打ち合った。激しい攻防戦。攻撃の手数はこちらが上回った。
ミノタウロスは3対1になった状況を不利と感じたのか、はたまた、八宝斎の次元違いの戦闘力に慄いたのか、攻撃に迷いが生じている。これはいける。オレよりも上背のあるミノタウロスにオレが奇襲をかけた。ミノタウロスと両手をつかみ合って4つで組み合う、なんて強さだ。でも、このバーサーカー状態なら負けない。フルパワーだ。フルパワーで押し切る!
「んぐぅおおぉお、んぅおおぉおぉおぉおぉ!!」
なんとかミノウタウロスを洞窟の壁まで押し切った。続いて、八宝斎がロッドの先に炎球がミノタウロスに向かって放った。
「元祖無差別・八宝大花輪・ファンタジースペシャル!!」
「どわ!じぃさん、あぶねー。オレにも当たるじゃねえか」
背中に超高温の炎球が通る。たしかにらんまの言うとおり、見境ない。
続けて爆炎の中、らんまがミノタウロスの腕を狙いこんでいく。神獣のツメを装備した拳で得意の技を放った。空中で宙返りしながら、まるで猫や虎のように爪で斬りかかっていく。
「たぁああ! 無差別格闘早乙女流奥義!火中天津神獣拳!!」
見事、ミノタウロスの腕から斧が落ちた。
すかさず、オレは拾い上げる。オレが手にした瞬間、ラブリュスが光りを放った。
「よーやくだな、ラブリュスゲット」
ついにこの瞬間が来た。手に馴染む、この感覚。さすがオレの武器!高く飛び上がり、ミノタウロスの脳天に向けて神斧ラブリュスを振りかぶり、垂直に叩き込んだ。
「でぇええいい!!!!神斧ラブリュス奥義・兜割ぃい!!!!!」
「ングォォオォォォオォォオォオオォォオオォオ!!!」
ミノタウロスは怒号のような大きなうめき声をあげて形を無くしていった。そして、一つの宝玉、黄色い宝玉をミノタウロスが残していった。オークを倒したときの赤い宝玉とサハギンからもらった青い宝玉と同じ大きさのものだ。黄色い宝玉を拾おうとした、そのとき、八宝斎が持ち逃げした。
「わーーはっはは! 神斧くらいくれてやる。どうせ、ワシはゴッドロッド持っているしな。でも、この宝玉は頂いていくぞ。この宝玉が7つ全て揃いしとき、魔王の強大な力はワシのものとなるのじゃ」
黄色い宝玉を手にした八宝斎は高らかに笑い、上機嫌で飛び跳ねながら、オレたちの元を去っていこうとしている。
「なんだって?魔王の強大な力だと?待て!じじぃ待ちやがれ」
らんまが引き止めれば、一瞬だけ、振り向き…。
「らんま!ただし、ひと言、忠告しておくぞ」
「な、なんだって言うんだよ」
「ちゃんとブラをせんと形くずれが…。さらばじゃー!」
「…………。」
「あのじじぃ!余裕ぶっこきやがってー」
八宝斎が洞窟を出ていった後、まもなく、主を失った洞窟は崩れ始めた。下は溶岩流、上からは洞窟の破片や土埃が落ちてくる中、なんとか脱出をしたオレとらんま。
念願の神斧ラブリュスは手に入ったものの、衝撃の事実が八宝斎の口から語られてしまった。この世界には、まだ、魔王は存在していない。しかし、宝玉を7つ集めると復活させる事ができ、その力を得られるという事だった。つまりは宝玉は魔王の封印アイテムかなにかなのであろう。あの八宝斎がミノタウロスから、黄色の宝玉を奪っていった。他にも持っているのかもしれない。
そもそも、オレが持つ、赤と青の宝玉がその7つの内の2つである保証はどこにもないが、存在を知られないだけでもラッキーだった。
仮にオレの持つ、青と赤の宝玉が本物ならば、今、わかっている色は赤と青と黄色。そして7つですべてなら、虹の色をモチーフにしているかもしれない。そうすると残りは橙・緑・藍 ・紫の4色になるはずだ。