女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
47.ベリーヌ公爵
その日の夕方にベリーヌ公爵の屋敷へ武器を輸出する貨物船に乗り込む事に成功した。武器を運ぶ報酬はいらないからと乗せてもらったのだ。貨物船は蒸気船であり、湯太郎(幻獣・アーヴァンク)に引っ張られるよりも速い速度で運航していた。予定だと2日もあれば、到着するとのことだった。
「しっかしまぁ、予想的中だったな」
「まぁな♪」
らんまに褒められれば、鼻高々に笑うオレ。運ばれる貨物船の中にはギッシリと武器や鎧が積み込まれており、これだけの装備品を定期的に購入しているという事はベリーヌ公爵の兵隊は相当な軍備を誇る兵だろう。あとは、お尋ね者である誤解を解いて、宝玉の事や魔王の事を聞き出せれば。
雑嚢からコンパスを取り出して確認すると船は西へと向かっていた。ん?ベリーヌ の屋敷がある大陸は南東のはずだが。
オレは舵を取っている船員のところへ行って聞いてみる事にした。
「ベリーヌ公爵の屋敷がある大陸は南東のはずですけど、この船、西に向かってません?」
「そうだ、この船は西のルートを辿って向かっている」
「え、それは困ります。オレたち、1日でも早くベリーヌさんところに行かないと」
「だーっははははは!」
舵を切る船乗りらしく豪快に笑った。オレに唾が飛んでくるほどの豪快な笑いだった。
「オマエ、田舎もんか?世界はまーるいんだよ。だからグレス大陸の東側にあるベリーヌさんのところへは、このルートが近いんだ。」
「あ?そうでしたね、あははは、すみません。勘違いしていました」
ゲームの世界は現実の地球のように丸い世界マップである場合と端は行き止まりになるマップの2種類がある。このゲームは前者だった。なおかつ、オレたちが転移してきた最初の大陸はグレス大陸という名前の大陸だという事も判明した。
潮の流れも西向きであった事から、グレス大陸(東の大陸)には予定よりも早く着いた。
港に着くなり数台の馬車に貨物線からの武器と防具を運び込む。バーサク状態なら、軽々と運べる重量も人間のままだと、かなり重い。らんまは女である事から荷物運びではなく、荷台を引っ張る馬の餌やりを任されていた。
アイツは元男なのにこういうときはズルイよな。
荷物の詰め込みがすべて完了し、ベリーヌの兵隊がカルデアの鍛冶屋から装備品の納品書にサインをもらっているときにオレたちは大声をあげた。
「あー!オマエはあのときの!」
「タツヤとラマー?!」
偶然の再会ってあるもんだな。オレたちを牢屋に閉じ込め、ベリーヌの屋敷へと連れて行こうとした兵隊が貨物の警備も担っていた。
「タツヤとラマーたちがいなくなってしまって、オレらはベリーヌ様にこっぴどく怒られたんだからな。オマエたちは重要人物の可能性が高いからと。普段は温厚なベリーヌ様があれだけ怒るのも珍しかった」
「いやー、そのすみません…、今日はちゃんと逃げずに行きますから」
「悪ぃ、悪い。元はといえば、オマエたちがあのとき、オレのことを…!」
そこまでだと、らんまを制してベリーヌ公爵にはこっちからも相談したい事があると兵に伝え、会わせてもらうよう取り繕ってもらった。
無事にカルデアから装備品を送り届け、ベリーヌの屋敷に招かれたオレとらんま。主であるベリーヌの部屋へと通される。
金髪のいけ好かないイケメンの公爵。まるで少女漫画にでも出てきそうな長い手足、高身長、小さな顔。ブルーの瞳。それがベリーヌだった
「キミたちのことをずっと探していたよ、タツヤとラマー。でも、まさか、ラマーがこんなに美しい女性だとは思ってもみなかったな」
ベリーヌは近づいてきて、跪き、らんまの手の甲にキスをした。出ました。会うなり、女らんまに惚れてしまうキャラ。この後、すぐに「求婚」の展開に決まってる。
「ラマー、気に入った。僕の嫁にしてあげよう。」
そのセリフ、予測できたぜ。でも、オレはまだ、らんまの旦那になったわけではない。らんまはどう出るんだ?まさか、オレじゃなくて、このいけ好かない野郎のところへ行ってしまうのか?
「オレの名は早乙女らんま、悪いな、ベリーヌ公爵。オレにはもう、運命を決めた相手がいるんだ」
—らんまぁ!!!!嬉しい
内心、号泣だったが、色々と面倒な事になるのでオレは感情を表に出さないように堪えた。早いとこ、宝玉の事をベリーヌから聞き出して、この屋敷から離れたい。
「ふふふ、ますます、気に入ったよ。ラマーではなく早乙女らんま。」
女らんまモテモテ・イベントを終えた後に、オレから話を切り出した。
「それで、ベリーヌ公爵。この宝玉のことについて、色々と教えてほしい事があるのですけど」
「断る、それは超重要秘密事項だからな」
—こんな遥々、別の大陸から聞きにきておいて、そりゃないぜ。金髪キザ野郎。
「そんなぁ、そりゃないぜ?この宝玉は魔王を復活させる重要なアイテムなんだろ?ケチくさい事言ってないで教えてくれよ」
らんまがオレの代わりに代弁してくれたが、喋りすぎだ。魔王の話はベリーヌから、もっと事情を聞き出してからにするべきだ。
「なるほど…、らんまたちはそこまで知りすぎているのか、では、こうしよう。僕の兵で新しく身のある暗器の使い手がいる。そいつと武術の一対一の勝負をして勝利する事ができたら、僕が知っている事は教えてやろう……ただし」
「ただし…?」
「こちらの兵が勝利したら、早乙女らんま。僕の嫁として、この屋敷に住んでもらおう。それでどうかな?悪い条件じゃないだろ」
「はぁ?!んな、条件飲めるわけないだろ」
らんまよりも先にオレが金髪キザ好色野郎に抗議した。
「それに、どっちにしろ。僕の兵に勝てないのでは、その宝玉をキミたちに任せる事はできない」
明らかにこの宝玉がこの世界の超重要なアイテムだという事はよくわかった。八宝斎が言っている事も嘘ではないだろう。そして、このベリーヌは宝玉についての事を知っている。ここは条件を飲むしかないか。
「よし、いいぜ。その条件、飲んだ。そのかわり、戦うのはこの達也じゃなくてオレだ」
「ふふふ、面白い。こっちは相手がらんまでも構わないぞ、それでは紹介しよう。暗器の使い手・ムース」
「ムースだって!?」
オレたちがよく知っている白鳥拳の使い手・ムースが屋敷の扉から現れた。
「うわ!?オマエは早乙女乱馬」
ムースもこの世界にやってきていたのか。らんまとの再会に驚いてはいるが、どうやら、オレのことは近眼で見えていないようだな。
「ほぉ、キミたちは顔見知りだったのか。面白い、それでは勝負は明日…、屋敷の中庭で行う」
ムースとオレたちはベリーヌの部屋から出ていった。
「らんま、今は女の姿のようだが、オラと戦うときには男の姿で戦うのだぞ?」
「わかってる、わかってるよ」
余裕綽々のらんまだが、ムースもこの世界に来て、強くなっているかもしれない。
この展開、過去にも覚えがある。あれは元の世界での数ヶ月前の出来事。
天道あかねを賭けた男と男の勝負を申し込まれるものの、総身猫舌のツボを押されてしまって男に戻れなくなったらんまがムースと戦う事になった試合だ。あのとき、オレはギャラリーの生徒として、試合を見物していたんだが、男に戻れ!と言われたらんまがバニーガールみたいな格好でムースに裸にひん剥かれたんだったっけな。
あのときは裸を見れたものの、すぐに天道あかねが服を着せてしまって残念な展開だった。今回の試合もあのときの試合みたいになればいいな。
バニースーツは持っているわけだし。
ムースと分かれ、ベリーヌの屋敷がある街の宿屋に泊まる事にしたオレたち。らんまに聞いてみた。
「なぁ?らんま、また、ムースと戦うときに男に思い込ませるのか?こっちの世界じゃ男には戻れないしさ」
そう、らんまはこの世界に転移してきたときに女の姿で転移してきたのでお湯をかぶっても、男には戻れないままだった。おそらくはムースも逆に水をかぶってもアヒルにならないのだろう。しかし、本人はその事に気付いていないかもしれない。
「んー、そうだな。前にもやった作戦やるしかないか、バニーの衣装もあるしな」
「そうか!そうか!じゃあ、オレは街の裁縫屋から布やら、なんやらを買ってきてやるよ」
オレは宿屋から出て、街の裁縫屋でらんまの手品道具をしまったり、身を隠す一式の物を買う事にした。しかし、らんまを裸にひん剥いて戦うムースが羨ましい。どうにかして、ムースに、その役に代わってもらえないかな?
—ん?待てよ、ここはF系ゲーム世界。変化の魔法、アイテムがあるんじゃないのか?でも、時間は1日しかない。こんな事だったら、もっと魔法について調べておけば良かった。
後悔で頭を悩ませるオレ。いや、1日もあると考えるんだ。街の裁縫屋から布を受け取り、宿屋への帰り道。必死に考え続けた。
—こんな困ったときはフレイヤ様! フレイヤ様に聞いてみよう。