女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
オレたちと騎士団はノロノロと帰りの道を辿る。せっかく、ここまで来て、緑の宝玉まで、あと少しだったが収穫は何もない。気持ちがあがるはずもなかった。
「あと……ふたつか」
らんまがぼそりと言う。緑も八宝斎に奪われた、あと見つかっていないのは藍色と紫色の宝玉だ。今、八宝斎には橙、黄、緑の3つ。オレたち側には青と赤。青はベリーヌが屋敷で厳重に守っている。おそらくは兵の一人が交代で守っているのだろう。
「八宝斎じじぃは……魔王を復活させて、その力でなにをするんだろ?」
らんまに聞かれて、オレは首を傾げた。
「復活させてくれたお礼に、三つの願いを聞いて貰えるとか?」
オレが答えると、らんまはしばらく空を見上げたまま歩いていた。
「あいつがお願いするとしたら、何だろ?」
やがてらんまが空を見上げたまま聞く。
「さあ……やっぱり、女かな?ま、くだらない事には間違いないが、まずい場合もあるかもな」
あとは何も思いつかない。そのうち、先頭を歩いていた兵が立ち止まった。
「何だろ?」
道案内の猟師も混じって、何人かで地図を見ながら話し合っている。
「どうしました?」
「道がおかしい。いまいる場所がわからない」
兵士が言う。
「歩いた距離だともうとっくに山を抜けているはずなのに、いつまで経っても出られない」
何だか謎なことになっているようだ。
「達也、ちょっとこれ持ってて」
らんまがオレに雑嚢を押しつけてきた。
「なに?」
「着替える」
洞窟の中でメイルの胴が溶けてしまったので、いまのらんまはあぶない水着にマントだけだった。だいぶハレンチな格好だ。
馬車の荷台から麻の服を引っ張り出して水着の上に着込んだ。
「鎧の、足とか腕とかだけでもつけようかな?」
「もう帰るだけだから、いらないだろ」
そのとき、林の中から火の玉が飛んできて隊長の体を貫いた。
「うぐっ!」
隊長が呻きながら剣を抜こうとしたが、もう一発飛んできた火に包まれて火だるまになる。
「敵襲!」
遅ればせながら声が上がる、兵士たちが剣を抜いた。でも誰も林に向かって突っ込んで行こうとはしない。
「らんま、これきっと、魔法だぞ!」
「だったら、オレには効かねー!」
そのとき、両側に広がる林の中から武器を持った連中がわらわらと現れた。そして、火の玉が飛んできたあたりに黒いローブをまとったヤツがいる。いかにもな魔道士だ。フードを深く被っていて、顔がよく見えない。
「おらぁー!」
らんまが叫んで魔道士に飛びかかる。武装した連中も一斉に動き出して、兵士との間で斬り合いが始まった。敵の方が数が多い。オレはらんまと兵士と、どっちに加勢が必要か一瞬迷った。
「うわあ!」
らんまの悲鳴。魔道士の前で蜘蛛の糸のような物に絡まれて動けなくなっている。
「緊縛の呪術だ、お嬢さんには魔法が効かない事は知っている」
「ちぃ、ダメージを与えられないから、捕えるってわけか。らんま!」
オレが叫んだ瞬間、2人が剣で襲いかかってくる。
「おらあぁー!」
神斧ラブリュスの横薙ぎで二人とも吹き飛ばした。刃で斬ったら人間の胴体など両断してしまうから斧の腹でひっぱ叩いた。
後ろから漸撃。ゴーレムの火の玉を食らったときに留め帯が焼けて、メイルは洞窟に置き去りにしてしまったのでオレは無防備だ。
「バーサ……うわっ!」
バーサクが間に合わない。同時に前後から襲いかかってくる。もう周りは敵ばかり、戦っている兵士の姿はほとんどない。騎士団の連中がバタバタと道に倒れている。
「達也ぁー!」
らんまの声。緊縛の呪術で作られた縄でぐるぐる巻きにされて担ぎ上げられている。
「くそぉーっ!」
もう手加減している余裕なんかなくなった。ラブリュスのひと振りで剣を持ったままの腕と首が舞い上がる。自分でも気付かないうちにバーサクしていた。
「おらあぁあぁぁ!」
くの時になった人体がふたつラブリュスにひっかかって、その重量でオレはよろけて膝をついてしまう。
「ステューピファイ・デュオデュオ!(強く強く麻痺せよ)」
魔道士の声。魔道士がロッドを振り上げた途端、オレは薄暗い影のようなものに包まれた。
「あ……」
ラブリュスが、振り上げた状態で止まっている。腕が動かない、足も動かない。敵の剣がオレの体に突き刺さる。痛みも何も感じない。目の前がどんどん暗くなっていく。
◆◇◆◇
「達也、達也!おい、起きろ、達也!」
らんまの声が聞こえて目が覚めた。灰色の薄暗い部屋。牢屋か。どこだ、ここ。目の前にはらんまがいる。裸だ。そうか、あぶない水着は脱がされちまったのか。手錠と足枷をはめられているのか、オレも同じみたいだな。手同士、足同士がくっついてやがる。
「目覚めたようだな……オマエの布袋から、赤の宝玉は頂いたぞ。これで八宝斎様の持つ宝玉は全部で4つ。残りは3つだ」
魔道士が低く落ち着いたトーンでオレに話しかけてくる。
—残りは紫と藍。それとベリーヌの屋敷にあるはずの青だ。
「わっははは、らんまちゃんの水着ゲットじゃ♪ワシのコレクションに加えよっと」
「八宝斎!」
魔道士の横から八宝斎が現れた。手にはらんまのあぶない水着を持っている。
「こら!エロじじぃ、ここから出しやがれ」
「ははははー、そう言われて、出す愚かもんがどこにおるか、バッカモーン」
八宝斎は裸のらんまの頭をキセルでゴツンと殴った。こいつめ。でも、なんとかして……ここから出ないと命だってまずいよな。一瞬にしてバーサクをすれば、この手錠と足枷は外せる。でも、この魔道士と八宝斎を相手にしてらんまを助けて脱出する。それは難しいよな。
必死に考えろ。八宝斎のゴッドロッドは折ったばかりだ。魔道士も手に持ってるロッドを奪うか、もしくは折ってしまえば、もしかすると術は使えなくなるかもしれない。勝負は一瞬。隙を伺うしかない。オレは横にいるらんまの目を見つめる。あの目はあきらめていないって目だ。
こんなとき、らんまなら、どうやって切り抜ける。どうやって切り抜けてきた? らんまが頷いた。なにかやるな。よし、バーサクの準備だ。
「あぁああーーあああ!!!じじぃの後ろに巨乳のめっちゃくちゃエッチなエルフのお姉ちゃんが!」
「エルフのお姉ちゃんじゃと?!どこどこ?」
古典的な方法だったけど、スケベじじぃの気を引くには十分だったぜ、らんま。
—バーサク!
オレは一瞬でバーサクし、手錠と足枷を引きちぎった。魔術師めがけて突進していく。
「ステューピファイ…」
そこまで言いかけたところでオレがロッドを握り潰した。これで術は唱えれない。
「詠唱がおせーよ、てめえ!うおらぁあ!」
魔道士を抱えて壁に投げつける。頭から壁に激突させたので気絶はさせたはずだ。
「こーらぁああ!ワシを怒らせたな、らんまちゃんに達也」
「えっ?でも、さっき、本当にいましたよ。巨乳のドスケベな格好したエルフが」
「へ?どこどこ?」
「ほらほら、あそこにって、いるわけねーだろ!スケベ妖怪じじぃ」
小さな頭を掴みとって、魔術師と同じ壁に向けて投げこんだ。
「らんま、逃げるぞ!脱出だ」
オレはらんまを抱える。裸のらんまをお姫様抱っこで抱えて走った。ここはどこだ、でも、走るしかない。途中に神斧と神獣のツメがあった。それをらんまに持たせて、走る、走る。
先に光が見える。ピクシーか。それに、湯太郎もいる。らんまの縄を引きちぎって、湯太郎に乗せた。ピクシーが照らす方向へと走った。階段を登った先に地上の光が見えてきた。出口だ。地上に出る、ロックトロントからそう遠くはなっていないはずだ。これなら、帰れる。
「らんま、これ着ろよ、ちょっと汗臭いのは我慢してくれ」
オレはメイルを外して、中のシャツを脱いでらんまに渡した。
「ありがと……達也の匂いがする。あーあ、でも、あぶない水着、じじぃに取られちまったな。けっこう気に入ってたのにさ」
「は?!らんま、あれ、気に入ってたのか。変態だな、やっぱ、女装癖が……」
「ち、ちげーよ!魔法を無効化するからだよ」
「なんだー、そっか」
「そうだよ!」
顔を赤らめながら恥ずかしがるらんまを冷やかしたがあぶない水着を失った事はオレも残念だった。
◆◇◆◇
騎士団の生き残りと合流したオレたちはベリーヌの屋敷に戻って、体制を立て直す事にした。
「すまない、魔道士と八宝斎はやっぱりグルだった。今、八宝斎のほうには宝珠が4つです」
「そうか、仕方がない。任務ご苦労。この屋敷で保管しているのが1つで、見つかっていないのが2つか」
「どのみち、八宝斎のじじぃとは全面戦争だな」
らんまが拳を打ち鳴らした。
「そうそう。でも、らんまと達也が行っている間に、こちらも進展があったんだ」
「進展?」
「うむ、宝玉の場所を突き止める術というのは、そこまで難しい術ではなかったんだ。ただ
大まかな場所しか出ない。それで、1つの宝玉がね。どうも、位置関係がおかしいんだ。こちらのグレス大陸にあったと思ったら、次の日にはノードヴェスト大陸(北西の大陸)にあったりしてね。その速度からして、おそらく飛行しているようなんだ。」
「飛行しているってことは、鳥とかそんなモンスターが持っているんですかね」
「ただ、昨日は港町ソイツェストの辺りにあったようなんだよね。そして、今朝、男女の変死体が見つかったんだ」
「飛行するモンスターに男女の変死体……」
そう、オレとらんまには思い当たるモンスターがいた。
「もしかするとサキュバス?!」