女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
「達也……」
街の明かりが近づいて、宿の前にある篝火が見えてきたとき。らんまが小さな声で言った。
「さっきから、つけられてる」
「うえ?」
オレは思わず振り返った。
「バカ! 振り返るな」
らんまがそう言ったとき、背後の暗闇から走ってくる足音が聞こえた。
「また、ガイコツ?」
「ガイコツがあんな足音たてるかよ。左右に分かれて!」
オレは左に、らんまは右に跳んで構えた。
「おいガキ共! 命までは取らねえから。お宝をよこしな」
お約束な、追い剥ぎ盗賊のセリフだった。人数は4人、剣を持っているのは二人。あとはこん棒とナイフだ。とは言えこっちもらんまは素手、オレはスケルトンから頂戴した錆び剣だけだ。
「お宝ぁ? それ、なんのことかしら~?」
らんまがすっとぼけた声で言う。
「しらばっくれるな! お前らは西の岩山にある旗を取りに行ったんだろ!」
「やだぁ~。そんな恐いこと、できな~い。命からがら逃げて来たのよぉ~」
らんまが『ぶりっ子』ポーズで言うが、しらばっくれるにしてもわざとらしすぎる。
「おいお前」
リーダーらしい一人が、剣でオレを指した。
「女とお宝を置いて、失せろ」
ビキニアーマーだけで武器も持たないらんまを何だと思ったのか、そいつは危険な選択をした。オレもおとなしく従う気はなかったけど、らんまが目顔で合図を送ってきた。オレは剣をベルトに戻す、スケルトンは鞘を持っていなかったので剣だけだ。
らんまと盗賊たちに背を向けた瞬間に、背後で打撃音が起こった。背中越しに振り返るともうナイフを持った男が倒れて、剣を持った一人はのけ反っている。
「達也ぁー。ひとり頼むよー」
らんまの声。オレは錆び剣を抜き直して、リーダー格の男に向き合った。竹刀でなく、本物の剣で人と対するのはこれが初めてだ。恐かったけど、勝たなかったら殺される。
オレは覚悟を決めて息を吐き、両手で中段に構えた。
「なんだ……その、おかしな構えは」
片手で剣を構えた男が言った。明らかに戸惑っている。たぶんこっちの世界では見たことがない剣の構えなのだろう。気合いをこめて一歩踏み出した。
「おらあぁ!」
男が斬りかかってくる。
「ええーいっ!」
オレは男の手元めがけて剣を振り下ろす。鋭い金属音、オレンジ色の火花。
後ろに数歩よろめいた男の剣は、鍔のところからなくなっていた。
「おお……ああ?」
男が口を開けて折れた剣を見つめ、手に残った柄を放り投げて逃げ出す。
「達也、すげーじゃんか」
倒れた男の上に座り込み、らんまが笑いながら手を叩いた。
「すごいな、この錆び剣……」
スケルトンの剣をかざすと、それはもう錆びた剣ではなかった。あの一撃で刀身の錆が全部飛んだのだろうか、街の灯を映して光っていた。
「へえー、それもお宝だったんだな」
らんまが剣をのぞき込んで言う。
◆◇◆◇
街へ戻り、翌朝武器屋の主人に守備隊の旗を渡した。
「これは……確かにあの旗だ。よく無事に帰って来れたな……その剣は?」
「砦から出てきたスケルトンのです。サビサビだったけど、盗賊を相手にしたらこうなりました」
「ちょっと……見せてくれ」
武器屋の主人は剣をしげしげ見回して、柄を布で磨いてのぞき込んでいた。
「これは……たぶんジーガンフ隊長の剣だ。鞘は?」
「ありませんでした……ジーガンフって?」
オレが訊くと主人は頷いた。
「私の上司だった人だ。援軍を呼ぶために、私はあの砦から伝令に出たんだ……だが戻ったときにはもう、砦は奪われた後だった」
オレとらんまは顔を見合わせた。すると、あのスケルトンのどれかがその隊長だったことになる。
「旗を降ろしたら、入るときにはいなかったスケルトンが出てきました」
「隊長は、まだ旗を守り続けていたんだな……倒したのか?」
オレはちょっと答えに困った。
「こいつが、その場で聖水作って溶かしちまいました」
「聖水?」
「あ……」
オレは思い出した。オークから引っこ抜いた宝玉だ。
「オークのボスの、頭にはまってた石です。これを水に浸して、スケルトンにぶっかけてみました」
ナイフが刺さったままの宝玉を見せると、親父さんは目を剥いた。
「これは……凄いモノだな。これは、どうする気だ?」
「いや……売ってみようかって……」
「これほどの物になると、交換所で売るには街の人間の保証がいるよ。私が紹介状を書いてあげるよ」
旗を取り戻したお礼のゴールドも貰い、紹介状を持って交換所へ行き宝玉の鑑定を依頼した。鑑定には数日かかるらしい、その間にオレたちは武器屋から貰ったゴールドで装備を補強する。らんまはマントを新調し、オレは剣の鞘を作ってもらった。剣の鞘には模様を無料で入れてもらえるという事だったので『R&T』と入れてもらった、もちろん、RanmaのRとTatsuyaのTだ。この鞘、めちゃくちゃ気にいったぜ。
◆◇◆◇
そして指定された日に交換所へ行くと、何だか雰囲気がおかしかった。普段なら冒険者と旅の商人しかいないのに、場違いな軍人のような人間がいる。
「何だろ?」
オレが訊くと、らんまも首をひねった。
「さあ?」
交換窓口へ行き、宝玉の預かり証を見せた。窓口の人がちょっと手を上げて誰かに合図した。やっぱり何か様子が変だ。
「お前たち、そこを動くな!」
その声に振り返ると、入口から兵隊がどやどやと踏み込んできた。
「へ?」
「お前たちが持ち込んだ宝玉は、ベリーヌ氏の屋敷から盗まれたものだ。事情を聞かせてもらおう」
俺たちの後ろに立っていた軍人が合図すると、オレもらんまも両腕をつかまれて交換所から引きずり出された。抵抗しても無駄なことは言われなくてもわかった、兵隊は20人以上いるのだ。
町外れの、どうやら軍の基地みたいなところに連れ込まれて。二人とも牢屋に放り込まれた。
「おい! あれは西の岩山でオークから取り返した物だぞ! 盗んだんじゃない!」
抗議をしても、誰も聞いてくれない。
「しょーがない。取り調べを待つしかないだろ」
らんまが諦めた口調で牢屋の冷たい床に寝転がった。