女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
はじまりの街の牢屋で一晩を過ごしたオレたちが鍵をベリーヌ騎士団に返しに行くと、最後の宝玉の所在地がわかったとのことだった。最後の宝玉もサキュバスが持っていた紫の宝玉と同様にあちこちを移動していたらしい。ただし、サキュバスのように移動速度は速くなく、陸路や海路で移動しつづけていたようだった。それが、昨日からは、このグレス大陸で復興しつつある村で反応が止まりだした。
「そこの村はたしか、バハムートに焼き尽くされた村だな」
「地図の位置関係でも間違いない」
「キミたち、その村を知っているのか?」
「知っているも、なにも盗賊から解放させたのはこのオレたちだぜ?」
らんまが得意気に伝えると団員の方も驚いたが、すぐさま表情を戻した。
「驚いたな、あれはキミたちの仕業だったのか。では、焼け跡の村まで宝玉を探しに行ってもらえないかな?」
馬車を用意してもらって、騎士団の同行はなしで最後の宝玉。藍色の宝玉を焼け跡の村へと探しに行く事となった。
馬車を操縦するオレ。騎士団にしっかりと調教されている馬が引っ張っているため、操縦はまったく難しくなかった。それどころか、道も馬が覚えているようだ。
「ようやく、次で最後だな。全部、集まったらゲームクリアかもな?そうすると、元の世界に戻るゲートとか開くかもしれない。どうする? 元の世界に戻るか?」
「その話はオレも達也とはちゃんとしておこうと思ってんだ……。達也はどうしたい?」
もちろん、こっちの世界の人間ではないのだから元の世界に戻るべきだ。でも、こっちはこっちでオレたちには役目もある。各地ではモンスターが暴れたり、また、魔術師や盗賊、悪党どもがのさばるかもしれない。少なくともベリーヌ騎士団に席を置いておけば、警備の任務には就き続けられて、衣食住には困らないだろう。
あと、もう一つは元の世界に戻ったら、らんまとの関係はどうなるんだろうって事だ。もしかするとこれは全部夢でゲームをクリアしたら、元の世界では関係がリセットされてしまうかもしれない。だとすると、やっぱり、この世界で生き続ける事が良いのだろう。というのが本心だったがオレは曖昧な答えを口にしてしまった。らんまの本心を聞きたかったからだ。
「そうだな……ひとまずはまだ、この世界にいるよ。クリアしてゲートが開くなら、ゲートが開いた後に考えればいいだろ? べつにゲートにすぐに入らないといけないってわけっでもないしさ」
「それもそうだな♪ あとさ、宝玉を持って、あちこち移動してるって事だけど、オレ、思い当たる奴がいるんだ」
オレも同じだ。騎士団の人から話を聞いて、一人、思い当たる男がいる。
「響良牙!」
らんまと口を揃えて、方向音痴であちこち移動し続ける男の名前が出た。
◆◇◆◇
でも、焼け跡の村に着いたときにいたのは意外な人物だった。
「え……?らんま」
高校入学後はロングヘアだったが途中からショートカットに髪型を変えた天道あかねが焼け跡の村にいた。
「お姉ちゃんとらんまたち知り合いなの?」
「ええ、まぁ……」
焼け跡の村に残っていた少年が天道あかねと一緒にいた。らんまと天道あかねは知り合いどころの関係じゃない。元の世界じゃ親同士が決めた許嫁だ。同じ家に住んでいた。オレの目から見れば、乱馬とあかねは、オレとらんまと同じように固い絆で結ばれている。今、オレとらんまは付き合っているが、まるで彼女の元彼に出会ったような心地悪さだった。オレの恋人のらんまは女で、その許嫁が女だから、もはや、性別関係がぐちゃぐちゃだが。そして、オレたちの目当ての物を天道あかねが首からぶら下げていた。宝玉を鎖で繋げたものをペンダント代わりにして、身につけていた。少年には席を外してもらって、オレとらんまは素直に宝玉やこの世界のことを説明した。
「そっか……これ、そんなに大事なものだったんだ。どうりで綺麗な色してると思ったのよね。これ、昨日、良牙くんがプレゼントしてくれたものなの」
「やっぱりな、良牙もこっちの世界に来てたのか。んで、その良牙はどこにいるんだ? 良牙にも会って話しておく必要あるだろ」
「変ね、さっきまでここにいたんだけど」
天道あかねが辺りを見回すのと同時にオレたちも見回した。そうすると信じられない動物がいた。子豚のときの良牙、つまりPちゃんがいたのだ。
「え……?! Pちゃん?!」
らんまとオレが驚くのも無理はない。この世界に移動してくるときの姿のままに呪溺泉の呪いは固定されてしまう。らんまは女の姿で、ムースは元の男の姿、楽太郎は子供の姿だった。
今の話を整理すると、このPちゃんは響良牙の水をかぶった姿で天道あかねは人間のときの良牙に会っている。つまりは呪溺泉の変身がこの世界でも起きているということだ。天道あかねには村で待っててもらうよう伝えて、オレとらんまは大急ぎでPちゃんを抱きかかえ、森の奥へ移動した。
焚き火でお湯を沸かす。それをPちゃんにかけた。熱湯の湯気の中から男が現れる。
「どわああ! あっちあっち、熱湯はやめろ、らんまぁ」
「ホントだ、良牙だ。おい、良牙、どうやって、こっちの世界で変身できるようになった」
らんまが良牙に質問をはじめる。オレの胸がドキンっと痛くなる。その方法をらんまが知ったら男に戻れるようになってしまうかもしれない。それに許嫁のあかねの登場。
「そこの森の奥の泉だぜ? そこに落ちたら、また、子豚の姿になった」
「なんだと? 良牙、案内してもらえるか?」
べつに構わないと言う良牙についていく事となった。オレとしてはらんまには、やっぱり男に戻ってほしくはないが、本人が希望するなら、それはそれで仕方がない。飲み込まなくてはならない。
それから、良牙について歩くこと……5時間。夕方になり、夜になっていた。そして、歩き続けた結果、見慣れた村に戻ってきた。ここは焼け跡の村だ。
「もしかして、良牙くん。道に迷ったんじゃ……」
そう、こいつは極度の方向音痴で一度、行った場所にもう一度、行く事なんて不可能だった。でも、らんまが男に戻れるようにならなくて良かったと、オレは肩を撫で下ろした。
でも、この世界には呪溺泉の変身能力を戻す泉があるという事はわかった。
「だぁー、こいつに道案内なんてできるわけなかった」
◆◇◆◇
その後、天道あかねから藍の宝玉を受け取り、ついに七つの宝玉が揃った。宝玉同士、七つ揃っていると反応が激しいため、オレとらんまで4つと3つずつに分けて、それぞれの布袋に入れた。焼け跡の村で仮設テントを建て、今夜はそこで寝泊まりして、明日の朝にはベリーヌの元へ戻る事にした。
らんまと横並びで寝袋に入る。元の世界にも帰りたくないし、男にも戻れるようになってほしくない。それをしっかりと口で伝えるべきか、非常に迷う。伝えるべきなのか、悩んだまま、オレは眠りについた。
ふと、目が覚めた。そんなに長く寝ていないようだ、まだ、眠い。
横にいるはずのらんまに目をやったが、姿がない。耳を澄ますと微かにテントの外から声が聞こえる。なにを喋っているのかまでは聞き取れないが、どうやら、らんまと天道あかねの話し声のようだ。オレはテントから出ると村の端にらんまとあかねが歩いていく姿を見つけた。二人の姿がピクシーに照らされている。ゆっくりと近づいていくと会話の内容が聞き取れる距離まで近づいた。
「……それで、オレは元の世界には。あ、達也」
らんまがオレに気づき、会話がそこで止まった。
「達也くん、今、ちょっとらんまと話してんだ」
なにを話していたのか、気になるけど、オレがいたら二人の邪魔かと思ってテントへ戻ろうとした。
「オレいたら、話しづらいよね? 二人は許嫁だしさ」
「いや、大丈夫。達也もいてくれ……どうするか迷ったけど、やっぱり、いてほしい」
らんまがすごい緊張している。足や手が震えている。珍しい。深く息を吸い込んだ後にらんまが話はじめた。まっすぐな瞳で天道あかねを見ている。
「あのさ……あかね。オレと許嫁、解消してくれないか?」
「えっ……」
「あかねとの関係を曖昧にしたくないから、ハッキリ言わせてほしい。オレさ、今から最低な事言うから、ぶっ叩きたいなら、ぶっ叩いてくれてかまわないから」
らんまが話を続ける。オレと天道あかねはそれを聞き続けた。
「……オレ、元の世界にいたときはあかねのこと、好きだった。本当に大事だった。勝手に親同士が決めた許嫁だったけどさ、あかねのことを大切に思ってた。でも、この世界に来てからさ、もう、半年くらいになるかな……今、オレは達也と恋人として付き合っているんだ」
らんまが言い切った。オレとの関係を言い切った。心臓が高鳴る。痛いくらいに苦しいくらいに。嬉しいけど元許嫁にそんな事を言っていいのか。でも、言わなきゃいけないってらんま自身が思ったんだよな……。
「達也と、この世界で旅をずっと続けてきてさ、宝玉も集めたり八宝斎のじじいの野望を阻止したりで、忙しかったんだけど。そんな旅の中で気づいちまったんだ。……オレ、達也のことを好きって」
「大丈夫、それ以上言わないで……大丈夫だから……らんま」
天道あかねは一瞬、表情を曇らせたが、微笑んだ。作り笑いのようにも見えたが微笑んだ。
「今日、二人に会ったときにすぐにわかったのよ、ただならぬ関係ってね。私もらんまとずっと一緒に住んでたからかな、なんかわかっちゃうのよね。顔にも達也くんのが事が好きって書いてあるもん。わかりやすいんだから、らんまは……。許嫁を解消するもなにも、そもそも、らんまが女の子でいるときは許嫁でもなんでもないんだから、好きにすればいいのよ」
「あかね……」
「達也くん。らんまのことを大事にしてよね、こんな変態男女でも私の元許嫁なんだから」
「ふふふ……変態男女は余計だぜ」
らんまはあかねに言葉を小さく返した。
天道あかねが強がっていたのか、それとも本心でらんまとのことは割り切れたのかは、オレにはわからなかったが、そこまでにしてテントに戻る事にした。
「達也、オレはちゃんとハッキリ、あかねには言ったぞ。達也もハッキリ教えてほしい、これからの事とか、呪溺泉の事とか……」
(らんまもオレの本心を確かめようとしている。でも、ここでやっぱり、らんまがあかねに言ったようにオレもハッキリ言わないと……。)
息を吸い込んでから気持ちを言葉にした。
「……らんまに男に戻ってほしくないよ、ずっとこの世界にいたい。この世界でらんまと添い遂げたい。無事に集めた宝玉を使って魔王の復活を阻止できたらさ、結婚しよう。女として生きてほしい。これがオレの正直な気持ちだ、どうするかはらんまに決めてもらいたい」
らんまの目が潤んできた。泣き顔を見せる。
「オレ、本当に嬉しい……そこまで想ってくれるなんて。オレの気持ちも一緒だ、オレはこの世界で女として生きて、達也と添い遂げたい……」
「……らんま」