女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
オレとらんまはベリーヌと共に魔王の島へと向けて出航した。世界地図の中央に位置し、地図上には記載されていない魔王の島はベリーヌを含めた一部の人たちにしか共有されていない小さな島だ。そんな小さな島が簡単に見つかるのかと思えば、答えは明確だった。晴れた天候だった海面も魔王の島が近づいてくれば、嵐が立ち込め、暗雲に閉ざされた。主である魔王を失った魔王城であるが、その城と島自体には、まだまだ強大な魔力が残されているように見えた。平和な世界かと思われたこの世界には、これだけ不吉で危険な地帯があるとは思ってもみなかった。
「そろそろ、着きそうだな。上陸前に作戦を説明しておこう」
ベリーヌが双眼鏡で魔王の島を確認した後、オレたちと団員を集めて、上陸後の作戦を説明した。
「偵察隊の話では城の周りには、かなり凶悪なモンスターが城を守っているとのことだ。まずは騎士隊が前衛で上陸する。騎士隊は後方の法術隊の爆撃呪文の後、突撃していってくれ。その間に達也とらんまちゃんには城に入っていってほしい。おそらく、城の内部にもモンスターはいる事かと思う。二人の体力を温存するためにも手下のモンスターらは僕らベリーヌ騎士団に任せてほしい。そのための法術隊の呪文での奇襲攻撃だ」
つまりは法術隊の呪文で奇襲をかけ、騎士隊とモンスターが交戦している間にオレたちが城へと走り抜くという事だ。
こちらの団員は8名の騎士隊、4名の法術隊、それにオレとらんまと司令官のベリーヌの合計15名だ。ベリーヌの作戦に不満はまったくない。かなり理に適った作戦だと思った。
「もうすぐ着きます! 皆さん、ご武運を」
オレたちは武器を合わせ、互いの無事を祈った。一人も欠けることなく、生きて帰るために。
「へっへへへー、腕がなるぜ」
チャイナドレス風のスリットが大きく入った天龍の道着を身に纏ったらんまが両手に装備した神獣のツメをガチャガチャと合わせ鳴らした。オレも神斧ラブリュスの持ち手を握り返す。装備を整えたときのついでにグリップに布を巻き、力を加えやすくしておいた。苦労したものの、やはり、こういう戦いのときのためにラブリュスを入手しておいて良かった。
「よし、いくか……」
—船が沖に着いた。魔王の島へ上陸。
作戦通り、前衛に騎士隊。続いて、法術隊が続く。その後ろのオレとらんまとベリーヌ の3名。
「想定よりも数が多いな……」
オレたち15名に対してモンスターが50匹以上待ち構えていた。主に獣系の武装したモンスターたちは、皆、目が赤く血走り、強い魔力を纏っていた。大陸にいるモンスターとはわけが違う。
「だが、引き返すわけにはいかない……ベリーヌ騎士団出撃!」
おー!っと騎士隊の連中は己を奮い立たせ、上陸していく。すぐに法術隊が船上から魔法を詠唱する。遠距離の爆撃呪文でモンスターに奇襲をかけた。法術隊の爆撃呪文を受けたモンスターが簡単に倒れるまでもなく、爆撃呪文の土煙の中、騎士隊とモンスターたちの交戦が開始された。そして騎士隊は船から城の入り口への道を開けるようにモンスターを押していく。
「よし! らんまちゃん、達也。なんとしでも魔王を復活させないように宝玉を封印してきてくれ。この世界の命運は二人に任せたぞ」
「任せとけって♪」
「らんま、いくぞ……」
—バーサク!
オレの髪は白くなり、目が血走る。バーサーカーの姿に変身して船を降りて、城へと走っていく。騎士隊が空けてくれた道をつっきっていく。空からは大量のキャットバットが現れた。しまった、コウモリの姿だが、顔が猫だ。らんまは猫が大の苦手だが、猫顔のコウモリはどうなのだろう……。
「ひぃぎゃあぁああー! ネゴオオ!? ぎらぁあいいぃぃぃいい」
うむ、やはり苦手だった。
ここで猫拳が発動しては城にも入れなくなる。オレはらんまの顔にマントを被せ、そのまま走っていく事にした。キャットバットが四方八方からオレの頭を突いてきたり、引っ掻いたりしてくる。斧を振り回そうにも、ここじゃ狭すぎる、味方にもあたってしまいそうだ。
ドガァアン! ドガァ! ドガァ!
そのとき、後ろから攻撃呪文が飛んできて、キャットバットを撃ち落としていった。最後方に位置していたベリーヌだ。ロッドの先から閃光呪文を飛ばしている。勇者の末裔も嘘じゃないが、歯をキラリと光らせて、ドヤ顔をするなとツッコミたかった。
「伊達に攻撃呪文は学んでいないよ、さ、ここは僕らに任せて、城へ!」
「サンキュウっ♪」
ベリーヌに援護されながら、オレたちは城へと侵入した。城に着くなり、幻獣ピクシーを小瓶からだし、周りを明るくする。
「玉座はどこだ……」
城の内部の地図はもらっていないので行き当たりばったりでたどり着くしかない。オレたちはまっすぐに進んだ。敵が出ようがしょうがない。
薄気味悪い幽霊屋敷ではなく、綺麗に管理された城だ。
魔王城の内部をまっすぐに進んでいくオレたちに氷の刃が飛んできた。氷の攻撃呪文。この威力は並の術使いじゃない。なら、アイツか。オレが氷の刃の出元を見ると深くフードを被った魔道士が槍を持った上半身は鬼型で下半身は魚のような槍騎兵を従えていた。モンスター人気投票があれば女子ファンから人気を集めそうなイケメン風のガーディアン・ランサーだ。
「ふふふ……七つ宝玉を集めたようだな。オマエらの動きは常に把握していた。八宝斎をそそのかし、七つ集めさせ魔王様を復活させる計画だったが、オマエたちが集め終えるとはな。だが、ここでオマエたちから奪えばいい話」
「てめえ、人間じゃなくて魔王側の者だったんだな?」
この城に人間が滞在できるわけがない。こいつの正体はモンスターだ。
「もう隠しておく必要もあるまい、私の真の姿を見るがよい」
フードを脱ぐと黒く染まった顔が山羊のような仮面へと変わっていく。ローブには強大な妖力が溢れる魔石が現れ、ローブからは尻尾のようなものが何本も生えだした。
山羊仮面が術を唱えると炎や氷の魔法がオレとらんまに襲いかかってきた。
「我が名はゼノリス、覚えておけるなら覚えておけ」
「へっ!オレには魔法は効かねえよーだ」
らんまがオレの前に立ちはだかり、魔法を無効化した。アンダーウェアとして着ているもっとあぶない水着の効果だ。
「お嬢さん、キミの相手は用意してあるが?」
らんまをガーディアン・ランサーが槍でなぎ払った。咄嗟に神獣のツメの甲でガードしたが城の壁へと吹っ飛ばされた。
オレが急いで駆け寄っていく。
「大丈夫か? らんま」
「痛ててて、その槍、ただの槍じゃねえ、めちゃくちゃ強力な武器だ」
「そのとおり、これはロンギヌスの槍。我らが魔王軍と戦うために神に作られた武器。しかし、この武器も人間側ではなく我が魔王軍にあれば、なんてことはない」
さて、どう倒せばいい。術使いに槍使い。こちらは斧と爪が武器だ。長期戦になれば回復の術を持たないオレたちが不利になる。なら、らんまとどちらか一方を狙うべきか。決めかねているうちに相手側が襲ってきた。
「魔法が効かぬなら、こうすれば良いだけだ」
ゼノリスは城の壁を削り取り、その破片に魔力を込めてらんまに向けて飛ばしてくる。らんまの天龍の道着が切り裂かれる。狙いはアンダーウェアがわりの水着か。そうはさせないと、オレがらんまを斧で守ろうとしたらガーディアン・ランサーが襲いかかってきた。オレは斧で槍と打ち合った。神武器同士だと打ち返しても折ることができない。オレは斧を振り回し、雷鳴を放った。しかし、それをガーディアン・ランサーはロンギヌスの槍を一振りして打ち消した。
「くっそ、無言野郎、なかなかやるじゃねえか」
「…………」
まるで正確無比な槍捌き。これは手こずりそうだぜ。
横ではらんまがゼノリスに道着を切り裂かれている。布地が減っている。正直セクシーだが、今はそんなことを思ってる場合じゃない。オレがゼノリスをらんまがガーディアン・ランサーと戦えればいいものを向こう側も考えた結果、この戦いになっているのだろう。このゼノリスはオレたちとの戦闘を事前にシュミレーションしてやがったな。
今、自分の武器でできる最大限の戦法を考える。斧の技でよくあるのってなんだっけ、トマホークか。よし、それだ。トマホーク大作戦でいくぞ。
「らんま……オレがなんとか、あいつからロンギヌスの槍を奪う、奪ったらパスするから、そこで一気に倒しにかかってくれ」
「おう、わかった……、あんまり無理すんなよ」
「多少、無理しねえと倒せないよ。いくぞ! でぇええい」
オレは気合を込め、ガーディアン・ランサーに斬りかかっていった。と見せかけて、斧を振り回し、ゼノリスに投げつけた。
「ふ……なにを血迷ったか、武器を投げ捨てトマホーク代わりか、甘い!」
ゼノリスは術を唱え、トマホークを空中で止めた。
そしてオレのほうへとはガーディアン・ランサーが槍を突き刺してきた。
その槍を真正面から受け止めた。バーサーカーとして防御力を最大にした鋼鉄の腕でだ。しかし、さすがはロンギヌスの槍。オレの身体に突き刺さった。すごいエネルギーだ。
「ぐうぁ、痛ぇえ……でも、この槍を奪わなないと……」
オレは槍を握りしめ、ガーディアン・ランサーの手から放させた。槍を奪い、それをらんまに投げ渡す。
「らんまぁあ!」
「任せておけって、無差別格闘早乙女流槍殺法・火中天津さみだれ突きぃ!」
らんまが空中で受け取った槍で技をガーディアン・ランサーへと放つ。無防備となっていたガーディアン・ランサーは大ダメージを受け、倒れていった。
「へへへへ、どんなもんだ。次はオマエだぞ」
「さぁ、2対1だしな」
「人間どもが……でも、私には見える。魔王様の力が復活する未来がな」
「なに言ってるんだ、それを阻止するために、封印するためにオレたちが来てるんだからな」
「この世界にモンスターがいるかぎり、魔王軍は不滅だ」
ゼノリスは自らを暗黒の魔障に変え、窓の外へと出ていった。窓の外には小さなコウモリが飛んでいる。
「どういう意味だ? コウモリになって逃げていったのか?」
「負け惜しみだろ、気にする事ないさ、先へ急ごうぜ」