女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
そして翌日、『年の数茸』を食べ、1歳程度の身体に縮んだオレはアマゾネス島へ向かう船に揺られていた。てっきりらんまに抱っこされての移動を期待していたのだが、ベビーカーでの移動だ。歩かないで良いので楽といえば楽だが、らんまのおっぱいを堪能できないのは非常に残念だった。
船にはオレたち以外にも10数名の女戦士や魔術師が乗り合わせていた。グレス大陸からの腕利きの女冒険者を集めたとベリーヌは言っていたが、それほどの実力を持ち合わせているようには見えなかった。年齢もらんまと同じくらいの娘もいれば、20代や30代くらいの女性冒険者もいる。らんまだけで十分だろうが、そうもいかないのだろうな。矜持の高いアマゾネスに対して、小娘1人とその子供じゃ、示しがつかなかったのだろう。
そう、オレは今回はらんまの子供という体裁で支援に同行する事となった。こんな危険な戦闘に子供を連れてきてと卑下する女戦士もいれば、1歳児姿のオレを見て可愛いと言ってくれる女戦士もいた。アマゾネス島へはソイツェストからは、2日もあれば着くらしい。
幼児のオレがぺらぺらと会話するのもいけないのでらんまとは他の乗客が見えないところで会話をした。
「ったく……なにが楽しくて、オレが達也のママ役なんかでいかなきゃいけねーんだよ、まったく」
「まぁ、いいじゃないか。んで、もう、オレ昨日からなにも食べていなくて腹減ってしょうがないんだけどさ、いい加減母乳だしてくれる気になった?」
「はぁぁああっ?」
らんまが不良女子高生やヤンキーも真っ青なくらいの怖さ十分なメンチを切ってきた。よっぽど、オレのママ役というのと母乳を出すのが嫌らしい。
まさか、この世界でベビーカーに乗るとは思わなかったが、正直、赤ん坊役はホントに暇だ。常に横になっているので日中のほとんどは睡魔に誘われてグウグウと寝るばかり。こんなんで、また、元の姿に戻ったときに、十分に戦えるのかとても不安だ。そう、もしも、アマゾネス島でヤバイ状況になったときはオレも自分の年と同じ長さの『年の数茸』を食べて、戦いに参加していい事になっている。
ただし、条件が2つある、それはアマゾネスたちに見られずに戦う事と倒し終わったら、また、再び、1歳児になる長さの『年の数茸』を食べ直す事だ。
武器については神器である神斧ラブリュスや神獣のツメ、ロンギヌスの槍は置いてきた。最強の攻撃力を誇る神器たちだが、むやみやたらに倉庫から出すべきではない。もしも、寝ている最中などに盗まれたりしたらとんでもない。モンスター側にしても、アマゾネス側に奪われても同様だ。
ベリーヌはアマゾネスと友好な関係を結んでいるようで、やはりアマゾネスの勢力や軍の力は大きくなりすぎないようにコントロールしているようにも見えた。
代わりにベリーヌはオレたちに二つの武器を持たせた「デーモンスピア」と「まどろみの剣」だ。デーモンスピアはらんまが無差別格闘流・槍殺法での技を覚えている事から持たせてもらった。まどろみの剣はオレが元の身体に戻ったときに武器として使用するために用意してもらった。まどろみの剣には魔力が封じこまられており、モンスターや人間を眠らせる。ドラクエでいえば、ラリホーの効果を持つ剣だった。これなら、オレの正体をアマゾネスたちにバレないようにモンスターを倒したりする事ができるからだ。
船が到着し、アマゾネスたちの歓迎も、そこそこにグレス大陸からの支援部隊はモンスターと戦闘を行なっている前線に加わる事になった。猫の手も借りたいほどに戦線は緊迫しているのだろう。
そんな状況の島に送り込まれて、1歳児のオレはどんな任務につくかといえば……留守番だった。
らんまとは分かれ、ベビーカーに乗ったまま、村の託児所に連れていかれ、村の子供や赤ん坊に混じって待機だった。おしっこやうんちの匂いが充満する託児所、あちこちで突発的に発生する鳴き声、うまくもない粉ミルクを飲んで初日を過ごした。正直、かなり暇だ。赤ん坊の頃の記憶はないが、赤ん坊のときの生活っぷりはこんなものなだろうと追体験できて、良かったのか……?
夕方には戦闘を終えたアマゾネスの女戦士たちや派遣部隊が戻ってくるという事なので、夕方まで寝て過ごしたが、ホント、暇だった。暇すぎるので、ある事をオレは繰り返していた。それは美人なアマゾネスの近くで泣いて、抱っこしてもらうという事だ。らんまには悪いが胸の大きめなアマゾネスの前で泣いて、抱っこしてもらって、その後は。また、豊満なバストを見つけては泣いて、抱っこしてもらってムニムニさせてもらっていた。超合法的に美人の胸に抱かれる事ができる。赤ちゃんってなんて素晴らしいんだと思いながら繰り返していた。
そんな暇つぶしを繰り返していたら夕方になった。戦闘に出てたり村で働いているママ・アマゾネスが次々と託児所を訪れては我が子を抱えて帰っていく。
一番最後に残されたオレの元へもらんまが帰ってきたのだが、すぐにオレを連れていこうとはせずに、なにやら託児所でオレを面倒見ていたアマゾネスと話しているようだ、頭を下げているようにも見えたが、なにを話しているかは遠くからは会話の内容までは聞き取れなかった。
らんまがオレの身体を抱きかかえ、ベビーカーに乗せ、歩きはじめた。らんまに今日の前線の様子を聞こうと思ったのだが、他のアマゾネスたちがいる前で1歳児が流暢に話だしては驚いてしまうのでオレは静かにベビーカーに揺られていた。どうも、らんまは不機嫌なようでムスっとオレを睨みつけている気がした。
らんまとオレが滞在するコテージに入るなり、ベビーカーからオレを抱き上げ、そのまま、ベッドに向かって投げ飛ばした。いきなりのことでなにが起きているかわからなく狼狽するオレに対して、らんまが大激怒している。
「おいっ! 達也、てめぇ、どういうつもりだ。わーわー泣いて、託児所の人を困らせていたそうじゃねーか」
「あ……」
「あっ、じゃねーよ、どういうつもりだぁ? ちゃんと話してもらおうか」
オレの服(ロンパース)の胸元を掴み、宙に浮かんだまま身体を揺さぶられた。軽い脳しんとうが起きるくらい激しく揺さぶられた。
「わ、わかった、わかった。ちゃんと話す、ちゃんと話すって」
「あーあ、達也がちゃんといい子でお留守番してたら、乳くらい吸わせてやろうかって思ってたけど、やーめた」
「えっ? いい子で留守番してたぞ、だから、らんまの乳ミルク吸わせておくれよぉ」
自分がどんな顔をしているかは見えないが、精一杯の赤子スマイルでらんまの母性をくすぐるように訴えてみた。このスマイルで託児所のアマゾネスに抱っこされていたスマイルで。
「ふーーーん、なんか、いろんな女に代わる代わる抱っこさせてみてたらしいけど?」
「なんだよ、らんま、ヤキモチ焼いてるのか? 抱っこしたいなら、いいんだぞ、好きなように抱っこして、ほらほら」
オレは短い両手をあげて、らんまに抱っこされようとアピールした。しかし、それをらんまは振り払い。
「バカ! ちげーよ、達也、オマエがな、託児所の人らに手間かけさせてるのが大迷惑だっていうんだよ」
「う……だって、らんまが甘えさせてくれたり、抱っこしてくれたり、おっぱい吸わせてくれないから。らんまがおっぱい吸わせてくれないから……らんまがおっぱい吸わせてくれないから……」
「ふーーん、また、そうやって言い訳するんだ? 往生際の悪いやつだな、ホント」
オレはベッドの上で小さな身体を駆使して、男の土下座、いや、赤子の土下座を行なった。
「わ、わっかりました! 明日はいい子にしてますから、ちゃんと出来たら、ご褒美に乳ミルクを吸わせてください、どうか、このとおりです。お願いします」
「本当か〜? その言葉、嘘じゃねーだろうな?」
何度も頭を下げ、必死に懇願するオレをらんまが薄目で疑ってくる。
「本当だって、信じてくれよ。オレとらんまの仲じゃねえか」
「よし、わかった。んじゃ、一回だけ信じてやるよ」
「うひ、らんまありがとうぉー。」
どさくさに紛れて、らんまに抱きつこうとしたが拒否されベッドに叩き落とされた。
「ちゃーんと明日、いい子にしてたら、だからな?」