女らんまと異世界冒険記 ※AIイラスト挿絵920枚付き 作:RNOVEL
常連客のヤスには指名手配のオレを捕まえた役をやってもらった。オルレアン家に着くなり、オレだけが屋敷の地下室に監禁された。
昔はらんまと牢獄に入れられても脱出する事はできなかったが、今やオレは勇者の力を得ている。バーサーカーの力でも、こんな鉄の扉をへし曲げるのは簡単だし、勇者の魔法で見張り役を気絶させる事なんて、朝飯前となっていた。
オレが閉じ込められてから、十数分もしないうちにオレは手錠をはめられ、オルレアン伯爵の部屋へと向かわさせられた。警備兵がオレの左右につく。
警備兵がドアを開けるとそこには初老の男が偉そうに座っていた。背が高めで逞しいヒゲを生やした男。ナポレオンジャケットのような服を着ている。どうやら、この男がオルレアン伯爵のようだ。オルレアン伯爵はオレの顔を見るなり、指差して怯えた。
「こ、こ、こいつだ……そうだ、こいつだ。この男が私を何度も殺してくるのだ夢の中で……!毎晩、毎晩、ひぃいい……」
ひどく怯えた様子のオルレアン伯爵はオレから逃げるように執務用の机の下に隠れてしまった。50歳過ぎくらいの見た目のオルレアン伯爵が、まるで鬼を怖がる子供のようにオレを見て、ひどく怯えている。
オレはその様子を無言で申し訳なさそうに視線をそらした。屋敷の者にとっても、このように子供のように怯える伯爵の姿は見たくはないだろう。
怯えるオルレアン伯爵に代わってメイドがオレに事情を説明しはじめた。
「旦那様が毎晩、殺される夢を見初めて、もう1ヶ月くらいになります。その事を占い師に相談し、似顔絵を描いてもらったら、達也さんにそっくりだったんです」
「ったく、夢に出てきたからってうちの達也を指名手配にするなよな?」
らんまもヤスを連れて部屋に入ってきた。
オレの顔を見ていると話もできないようだからと、別の部屋でメイドと話をする事となった。
そんなに怖い顔でもないのに、ここまで怯えられるとオレもオレで不安になってしまう。別の部屋に移動する途中、らんまに聞く。
「そ……そんなにオレの顔って怖いか?」
「怖いわけねーよ、どちらかというとファニーだぜ」
ファニーっておかしいとかそんな意味だよな。それはそれで傷つくぜ、らんま。
別の部屋につくと、メイドが紫色の水晶を取り出してきた。
「それでですね、悪夢を見るという事で有名な夢占い師に来てもらいまして、占ってもらったところ、直ちに悪夢に現れる男を捕らえろという事になり、指名手配とさせてもらったわけです」
「そんな……達也はなにもしていないのに」
「夢占い師が言うには、予知夢の可能性もあるからと……」
今、オレがなにを言っても無駄だし、怖がらせている以上、かなりの悪夢で毎晩、うなされているのだろう。だから、オレは黙ってメイドの話を聞いていた。
「夢占い師は魔除けの品として、この水晶を置いていきました」
メイドが布を取り去ると紫色の水晶が現れた。こんなインチキなものを売りつける占い師の顔が見てみたい。
と思っていたら……まるで強い磁石に引っ張られるようにオレの腕が水晶に吸い込まれていく。
「うわ……?!なんだ、なんだ?!」
腕を吸い込まれるオレを慌てて、らんまが捕まえる。らんまと水晶でオレの身体を引っ張りあった。
「ちょ……!なんだ、これ」
「うわう、うああうあ〜、旦那様を呼んできます!」
この感覚、覚えがある。八宝斎と楽京斎と戦ったときにエネルギーを吸われたときの感覚だ。力が抜けていく感覚。あのときよりもオレに勇者の力が備わっているから、より吸引がすごい。
水晶はオレの力を吸い取ると、紫色がどんどんと黒く濁っていった。全身から力が抜けていく、まるで麻酔を打たれたときのようだ。それも身体中に。
「んぐあぁあああ……!んぐぅああああああ!」
「達也、大丈夫か?しっかりしろ」
オレの力を吸い終えると水晶は暗黒の妖気を放ちはじめた。空になったオレにはもうは用はないと、水晶の吸い込みが終わった。オレはらんまに引っ張られた反動でらんまと二人で屋敷の壁に激突した。
「痛てててて……」
「うわ! 見ろお、黒い霧が達也の姿になっていくぞ」
水晶は形を変え、暗黒の魔障になると、 たちまち、黒い人影へとなっていく。腕には黒い剣、聖剣エクスカリバーと同じ形をした剣を携えている。人影の顔がオレの顔に変わった。実体化した人影はオレとらんまに向かって、剣を振り下ろしてきた。
寸前で避けたが、避けきれない。オレの肩が斬られる。肩が痛み、動けないほどの大ダメージを受けた。
オルレアン伯爵がメイドに呼ばれて、部屋へとやってきた。
「こ、こいつだ、こいつに殺される夢を見た、何度も何度もぉおお、ひぃい!」
黒いオレは目を赤くしながら、オルレアン伯爵を斬りつける。そこをらんまがオルレアン伯爵に防いだ。
「てめえの相手は、ここにいるぜ」
「…………」
黒い霧状のオレはらんまの言葉に耳を貸さずに攻撃を再開した。
壁に持たれ、体制を崩しているオレや、怯えるオルレアン伯爵や屋敷の者たちの前で、らんまと黒い霧状の人影が交戦しはじめる。
「無差別格闘早乙女流奥義……火中天津甘栗拳!」
らんまが黒いオレに攻撃をしかけると、黒いオレは一瞬にして黒い霧状に変化し、らんまの無数の拳を空回りさせた。まるでらんまが一人でシャドウボクシングをしているように、黒い霧を虚しく裂くだけ。
黒い聖剣を作り出して、それをらんまに振りかぶった。
「らんまぁ!危ねーーっ」
「きゃぁああーーっ!」
黒い聖剣が振り下ろされると、メイドたちから悲鳴があがる。
パシィ!
「なんの、これしき。無差別格闘早乙女流奥義!真剣白刃取り」
うまい。大上段から脳天目掛けて振り下ろされた刃を両掌に挟み受けて、らんまが斬撃を制した。
「ここじゃ、狭い。達也、外に行くぞ」
らんまが屋敷の二階の窓から飛び出していく。黒い霧状のオレも、らんまを追いかけた。オレも窓の外から飛び出そうとするが、目が眩んだ。地上を見ると目眩がした。
—パラディアム!
オレはそう叫ぶが、なにも起きない。身体から勇者の力が湧いてこない、やはり、力を吸い取られたせいか。続いて、状況も状況なのでバーサクも試したが、姿は変わらない。
それどころか、急な眠気によって、オレは倒れて眠り込んでしまった。