天地 泉水の起こした騒ぎと戦闘から数日後、京都ではその騒ぎは“未曾有の大火災”と騒がれ、一時京都中が大騒ぎとなったが、事態の沈静化を急いだ政府と対魔忍、天御剣の総隊長からの無言の圧力によって迅速な対応が取られた。
泉水によって被害を受けた民家などの修復、怪我人の治療も駆けつけた医療チームの医師や看護士達によって的確かつ素早く行われ、京都での騒ぎは少しずつ沈静化されていったが、その中で井河 アサギ、
「さて、此度の一件……魔族の浸入に並び、京都を汚した下手人、天地 泉水とやらとの戦闘。全くもって不愉快極まりない。我らも気を緩めていたであろうが、対魔忍からの説明があれば我らも手を貸していた。」
「それについては申し訳ありません。春輝……ウチの生徒も説明しなかったことに対しては深く反省しています。ですが、彼が情報提供を拒否したのはそちら側に責任の一端はあることをお忘れなきよう。」
「……何だと?」
まさか反論されるとは思わなかったようで不快そうに言葉を出す榊。
「そちら側が隊士を何者かによって殺されたことをこちらに注意勧告なりしてくだされば、ノマドの二人組の情報を提供するなり探査追跡系の術を扱う者を派遣などやり様がありました。まるでこちらが足を引っ張り状況を悪化させた物言いは不愉快です。」
「……。」
2人のあの間に不穏な雰囲気が形成されそうだったが、仲裁に入った信繁の声で消える。
「2人ともそこまで。生徒を犯人扱いされ不愉快な気持ちは解るがアサギも挑発的な言動は慎め、お前らしくない。榊殿も、今回のことは誰も予見できなかったんだ。
それに当人が謝罪をしたのなら、それで良いではないですか。」
「今回の件で彼も反省したであろう。あまり責めてはいかんであろうに。
これからは彼も直していくと言っていたぞ。」
「確かに、そうじゃのう。」
「……まぁよい。今後はこの様な事がないようにしていきたい。
山本殿、それについては何か意見はあるか?」
「それについてなのですが……天御剣と対魔忍で協定を結ぶというのは?
今回の件でお互いに協力した……そこで今後は何かあった際に手を結ぶというのは?」
信繁の言葉にほんの僅かに沈黙する重國。
確かに今後何かあった際に天御剣の面々で対処出来ない事があった際に、外部からの協力などがあれば、隊士達にも良い刺激になるだろうと考えたが、一方でもし、その外部から来た者達が自分達を害するのなら、それは逆にデメリットなのではと感じていた。
そう易々と外部の者達を加えても良いものかとも思っていると、信繁が条件を出してきた……。
◆◆◆
その頃、春輝は勇斗と共にある部屋におり、そこで勇斗から質問をされており、仲間達は別室で待機していた。
「スレッド・ホークスとその仲間との戦闘……。
それが本当だということは大体理解したが、会った時に話せば良かったのに。
まぁ、俺も犯人扱いして悪かったけど。」
「俺も挑発して、悪かった……。あの時は少しムカッとして、あんなことをしちゃって。」
「それについてはもういい……。しかし、その2人は行方知れず、か。
分かった、あとはこっちで調べる。帰って良いぞ。」
「良いのか?ありがとう、それじゃあ「その前に聞きたいことがある」ん?」
勇斗が春輝を呼び止めると、真剣な眼差しで春輝を見ながら質問を始めた。
「水城 春輝、お前……“ふうま”って名前に聞き覚えは?」
「?“ふうま”……確か、昔大きな戦いをした忍の一派だって授業で聞いたことがあるけど、それが?」
「実はそいつらの残党が京都を襲ったことがあってな。しかもその残党の中にはふうまの“宗家”の人間を凌ぐ力を持った者がいて、そいつらはその人間が生んだ“子供”を探してると言っていた。幸いにも“ふうま”の一団と加担していた者達は半分が討伐、半分は逃走したらしいがな。」
「あの、もしかしてそれが原因であんな態度を?」
「……否定はしない。あの連中が暴れた結果、対処した隊士たちにもそれ相応の死傷者を出したからな。あの一件で皆、対魔忍に対して良い印象を持っていなかったよ。」
少し悲しそうな顔をし井河優斗は春輝の言葉を肯定した。
それを聞いた春輝は彼らがあれほど自分達、対魔忍を腫物扱いしていたのか理解することができた。とんだとばっちりだが自分も同じ立場だったら彼らと同様な対処をしただろうなと思った。
「そう、なのか……。それで、その子供は?」
「この京都にはいなかったらしい。まぁいればこちらで保護したがな。ああ、一応、君からアサギさんにこのことを伝えておいてくれ。……つまらない話をした。また京都に来たら、その時は観光を楽しんでくれ。」
勇斗が部屋を出て行くと、春輝も部屋を出ると外で待っていたゆきかぜ達と合流して、クラスメートらの所に帰っていき、アサギらも会議を終えた中で生徒達に“ゴム製の赤い腕輪”を配布していった。
その腕輪は天御剣の重國との協定で定めた対魔忍と一般人を区分けする物らしく、それがあれば何かあれば迅速に連絡が取れるらしいのだ。対魔剣士達も“ゴム製の青い腕輪”を受け取ったらしい。
「(色々あったが、それ相応に修行にはなったな。)」
春輝は母や翔馬へのお土産を買うと、その帰りの新幹線の中で眠りにつく仲間達と共に家に帰るまでの間に外を見ているのであった……。
◆◆◆
その頃、スレッド・ホークスとアイリスの2人は京都の伏見稲荷大社へと来ており、その像の首に掛けられている“勾玉の首飾り”を取り外し、姿を消すと人気のない場所に転移する。
「間違いない、本物です。スレッド。」
「うむっ!これでよい、対魔忍、それにあの見知らぬ男と対魔剣士には驚いた。
しかし!!これで任務は達成できたと言えよう!!我が主も喜ぶぞ!!
そう思わんか、アイリス!」
「そうですね。しかし、京都を蹂躙すると言う目的、果たせませんでしたね。イングリットに叱られそうです。」
「うむっ!それならば甘んじて受けようっ!!だが我が主なら分かってくださる!!
さぁ帰ろうっ、アイリス!我が主の下へ!!」
スレッドとアイリスは天御剣の者達に見つからないように身形を擬装して、京都を出ると手土産に手に入れた“勾玉の首飾り”を手にして……。
◆◆◆
そして、その頃。
かつて五車を襲った謎の一団の一人である荼毘は軍服を着た女性“ミサキ”と共にある湖へと来ていた。
「ここらしいな?」
「えぇ、ここに“三尾の大亀”がいるはず。ふふふっ!楽しみですねぇ。」
巨大な湖、その中には巨大な3つの尾を持った亀が泳いでいた……。
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