「あれ……なに?」
ゆきかぜが“外し”を使った春輝の雰囲気と様子が変わったの見て、驚き呟いたが、それはゆきかぜ以外の全員も同じであり、雰囲気が変わった春輝をざわざわとしていた。
「あれは……まるで肉体のリミッターを外しているみたいね。」
「リミッター……?アサギ様、それっていったい何なんですか?」
「あれは言うなれば己の制限を外して闘っているのよ。リミッターを外しているからこそ、可能な動きもある。それこそ、私の使う隼の術よりも速いわ。」
「その分、体力の消耗と体の負荷が激しい。下手をすれば命に関わる力だ……何処の馬鹿が教えたのか知らんが、聞いてみたいモノだ……春輝ができるからと言ってお前たちは絶対、真似するなよ。」
と蓮魔はゆきかぜたちを鋭く睨みつけ釘をさすように言う。
「肉体のリミッター解除は忍法じゃないから個々の資質によるけど修行をすれば誰にでもできるの。でも蓮魔先生の言う通り体力の消耗、特に身体の負荷が尋常ではないのよ、下手したら戦闘中肉体の限界を超えてしまい自滅してしまうパターンが多い、いわば諸刃の剣。……限界を超え運良く生き残れても病院のベッドで一生、寝たきりか車椅子生活よ。」
その言葉に不知火も同意するように深く頷き、そんな危険なモノをいつの間にか取得していた息子にある種の憂いを帯びた表情をしながら訓練の様子を見続ける。
アサギと零子の説明と不知火の様子から一同はそれほど危険な奥義とは思っていなかったようで非常に驚き一部の者、特に妹のゆきかぜと弟分の秋山達郎は顔を青くしながら頷いた。
春輝の外しは本家の呉一族に比べれば、純度は足りないがそれでも格闘に関して言えば能力は格段に上がる。
しかし、この状態にはデメリットがあり、尾獣化や九尾モードよりも慣れていないためにコントロールが難しく、体力の消耗が激しい。その為に今は制限時間付きであり、そのリミットはフルで使えば5分である。
春輝は自身の手を開いて握ってを繰り返してから、源太の方を見て見ると源太は楽しげに笑っていた。
「おい、なんだそりゃあ?隠し玉か?」
「いや、お前の極熱血闘……だったか。その力、凄いなって思ってな。
だから俺も出せる全力でやる。」
「全力、全力か……!くくくくっ!良いじゃねぇか!!」
「っ!!」
源太が駆け出した瞬間、春輝も駆け出して互いに拳をぶつけ合い、近接の拳や蹴りの応酬をしながらも、まるで競うように速度を上げていく。
その中で源太の体から蒸気が噴き出して来ており、さらに拳や蹴りの威力が段々と上がってきており、その蒸気に触れる度に春輝は“ある感覚”を感じていた。
「(この感じ、九喇嘛!この感覚って!?)」
【気付いたか春輝。どうやらそのガキ……“人柱力”だ!しかも尾獣の奴と無意識に“リンク”してやがる!】
「(だよな!あの時感じた違和感はこれか!!)」
春輝は源太が教室に入ってきた時に感じた違和感、それは人柱力特有のチャクラであり、それを感じた春輝は源太を不思議に思っていたが、合点がいった事で納得した。
そんな中、源太の方も自身から感じる普通とは異なる力に驚きと高揚感を懐いていた。
「(懐かしい感覚だぜ!まるで“あの時”みたいだ!!)」
源太は子供のころ捨て子だった。彼は幼い頃に興奮すると体から蒸気が出てすさまじい怪力を出す上に、回復力が異常だったために源太の両親は彼を気味悪がって捨てた。
しかし、傷付きながらも源太は自分の身を守る為に様々な格闘術を独学で学んでいき、そして当時、全盛期だった紅 藤十郎と出会い、その力を見込まれ修行の中でボコボコにされ長期入院することになるが、常識外れの回復力ですぐに退院し修行を続けた。
そんな無茶を繰り返していく中、とてつもない耐久力と打たれ強さを身に付け、藤十郎も呆れる程だったが、いつしか自分と戦える程に成長するんじゃないかと期待をし、そしてある日、源太は藤十郎と勝負し勝利したが、無理をしすぎてボロボロになり、また入院することになった。
その後、春輝の事を知ると雄叫びと共にさらに修行をしていったが、無茶な修行や実戦をした事で入院してしまい、退院したのは春輝達が京都から帰ってきた時だった。
そんなある日、藤十郎との組み手中に源太が“極熱血闘”を発動した際、体から蒸気が出たがその蒸気はまるで源太を守るように纏わせているのを藤十郎は見た。それを見て源太の火遁の忍術だけでなく、他の忍術の力もあるのではないかと藤十郎は推測していた。
「(俺の中に“何か”がいるのかは分かんねぇ……!だが、こんなに気分と調子が良いのはオッサンと組手してた時以来だ!!!もっと、もっともっと!!)熱上げるぜぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「っ!!負けるか!!!!」
「「炎荒/金色神楽!!!」」
拳や怒涛のラッシュがぶつかり合い、採掘場が大きく揺れ、周囲の壁などもヒビが入り始め、その振動に一同は危険を感じ始めていた。
「おいおい!これ、ヤバくないか!?」
「ヤバイどころか、危険よ!!」
「皆、避難しなさい!!不知火、零子!最悪、私たちで止めるわよ!!」
「「分かったわ/了解だ!!」」
3人が警戒体勢を中、怒涛のラッシュが互いに拳をぶつけ合って距離を取ると、肩で息をしながら互いに心底楽しそうな笑顔で相手を見る。
「ッシャアアアアアアアアアッ!!!楽しい!!楽しいぜ春輝!!こんなに血が燃えるのは久々だぜ!!!」
「俺も、楽しいよ。けど、そろそろ終わりにしようぜ。互いにボロボロだしな。」
「良いぜぇ!!!なら、全力で行くぜ!!はあああっ!!」
「っし!」
源太が高らかに叫ぶとドンッ!!とまるで空気が揺れるような衝撃が襲い掛かり、さらに周囲に蒸気が満ち溢れて行き、春輝も応戦するようにチャクラを高めていく。
そして、源太の拳に炎が、春輝の拳に渦巻く風が纏われ、そして……駆け出す。
「っらああああああああああっ!!光炎・万丈!!」
「はあああああああああああっ!!金色神楽!!」
「そこまでだ。」
互いに必殺技を出し、ぶつけ合おうとした瞬間。藤十郎が両手に炎の纏って2人の拳を止め、さらにアサギ、不知火、零子も2人を止めるが、源太は藤十郎を睨むように見る。
「オッサン……なんのつもりだ?」
「あのなぁ、源太。これは訓練なんだぜ?本気出すのは構わねぇが、それぶつけ合ったら互いにタダじゃ済まねぇだろ?」
「貴方達の訓練は見させてもらったわ。結果として素晴らしいものだったけど、やりすぎは傷付きながらもダメよ。2人ともこれから明日から学校に戻って授業を受けるように……分かった?」
「は、はい。」
「ふぅ、しゃあない。だが!決着はいつか着けるぜ!!じゃあな、春輝!!!」
「あぁ、その時は負けない。」
意気揚々と藤十郎と帰っていく源太、その背中を見送った後に春輝達はそれぞれの家へと帰っていき、休むことにした……。
◆◆◆
源太side
「ここは、どこだ……?」
春輝との勝負の夜、藤十郎のオッサンに飯を奢って貰い寮に戻った俺は風呂に入ったあと、疲れきった俺はすぐに眠ってしまった。眠ったはずだったのだが、気づけば俺は何処か広い場所に立っていた。
「どこだここは?俺は確か寝てた筈【源太。】ん?んおっ!!?」
後ろから聞こえてきた声に振り返ると、そこには巨大な白い体に5本の尾が生えた鹿?らしき生き物がいた。
そのあまりの巨体に構えをとって、その生き物を睨み付ける。
「なんだぁてめぇは!?ここはてめぇの造った空間か?!」
【警戒するのも分かります。ですが、私は貴方と戦いに来たのではありません。
私は貴方と話をしたくてここに来させたのです。】
「……てめぇ、何者だ?」
【我が名は穆王。貴方の中に幼き頃からいる物であり、貴方を見守っていた者です。
貴方が体から出す蒸気、覚えていますか?】
体から出す蒸気……俺が興奮すると体から出るあれはこいつの力?
まさか、昔から俺を守るように出ていた蒸気は……この穆王って奴が?
親に殺されそうだった時や喧嘩の時にピンチになると、出てきたあの蒸気はこいつが……。
【これからは私の力を貴方に貸します。私はいつでも貴方を見守っています。】
「穆王……おうよ!!じゃあこれからは一緒に戦おうじゃねぇか!!」
【ふふっ、そうですね。宜しくお願いしますよ、源太。】
そういうと、俺は目を覚ますと視線の先には見覚えのある天井があり、夢かと思ったが確かに穆王の存在を感じる……。
「(穆王、これから宜しくな。)」
◆◆◆
その頃、とある湖の中心にある小さな芝に1人の少女が膝を抱えて座っており、その前には荼毘が“珊瑚”に包まれた右腕を抑えて少女を睨んでいた。
「やってくれるじゃねぇか……!このガキ!!!」
荼毘が蒼炎を出すが、少女は頭を抱えて怯え出す。
「消えて……!私の前から消えて!!!!」
少女が叫ぶと、少女の背後から“巨大な灰色の鎧ような甲羅を身に纏った三つの尾を持つ亀”が現れ、雄叫びを挙げる。
【彼女に、近付くなぁぁぁぁぁぁぁっ!】
亀が荼毘を潰そうと飛び上がった瞬間、荼毘はその場から離れて危機を脱すると、そのまま何処かへと消えていき、残された少女はそのまま顔を伏せた。
「もう、嫌……!誰も、ここに来ないで……!!」
【〇〇……。】
俯きながら涙を流す少女を見ながら、亀は歩み寄ろうとするがそうはせずに湖の中へと消えていったのであった……。
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