熱き女、来る!
入学式から数日後、春輝達は一般的な学業と平行して“対魔忍”としての特別カリキュラムを行っていった。暗殺や戦闘に必要なスキル、さらに数学に織り混ぜた暗号の解読をしたりでのやり取りなどを学んだり、多国籍語(最大で3つ)を学んでいた。
さらに白嶺の空間で修行もこなしながらという、普通なら倒れるメニューをこなしている。
「そろそろお昼か。飯行くかな。」
「なら食堂に行くか?」
「行きましょ行きましょ!お兄ちゃんも達郎も!早くしないと、良い席取られちゃうよ!」
「元気良いわね。まぁいいや、一緒に行こっと。」
何故かきららは春輝の腕を組んで一緒に笑顔で席に向かおうとする。きららは春輝を好いているのだが、春輝はそれに気づいておらず、同年代の女子よりも育っている胸を押し付けられ免疫のない春輝は戸惑っていた。
それを見て真や藤孝からは「頑張れ」と肩を叩かれ、ゆきかぜからはジト目で睨まれてしまい、凜子は複雑そうにため息を吐かれ、九喇嘛に相談しても【そんなの知るか!】と言われてしまったのである。
そんな中、食堂で食事をしていた時。
「お前が理事長に勝ったっていう奴か?ずいぶんヒョロっとしてんなぁ。」
「?」
ゆきかぜや凜子、達郎やきらら達と一緒に昼ご飯を食べていた春輝は現在、1人の女子に絡まれていた。
クリーム色の長髪の女子、彼女の名は
元々が妖怪などと戦う対魔を家系の生まれであり、生まれ付いての火遁の天才であり、現在は対魔忍"火遁衆"の隊員である。
そんな彼女が春輝に絡んでいるのは、彼と純粋に戦ってみたいという思いからであった。
アサギに勝利した男子生徒、これは一部の対魔忍しか知らないことであるが焔は、とある教師からその事を聞いた焔は春輝との戦闘をする為に彼の教室へと来たのである。
「あの、何か用……ですか?」
「あぁ、用がなくちゃ来ないだろ?お前、水城 春輝だったな?お前、私と戦え!」
「え?あの、なんで?」
「お前面白いらしいな?私とどっちが強いか勝負といこうじゃないか!
まぁ、私の方が強いだろうけどな?」
そう言って春輝を挑発する焔、するとそれを見ていたゆきかぜときららが立ち上がって噛み付いた。
「お兄ちゃんを馬鹿にするな!!お兄ちゃんは強いんだから、あんたなんて一発よ!」
「そうよ!春輝はあんたなんかには負けないわ!」
「はっ!外野が煩いっての、私はそいつに「分かった。」……は?」
「「え?」」
「戦闘だよ。俺もどんな人がいるのか興味があったんだ。」
特に気にした様子もなく、春輝がそう言うと焔は楽しげな笑みを浮かべる。
「いいじゃんいいじゃん!乗り良くって最高だよ!
んじゃ、学園長に許可取ってくるけど、逃げんなよ?逃げたら許さないからな!」
そう言うと焔は足取りも軽そうに去っていった。
「春輝、良かったのか?相手は火遁衆の眞田 焔だぞ。」
「確か好戦的で、教師だろうが生徒誰だろうが構わずに喧嘩を売ってるって同級生の子が言ってたなぁ。やべぇのに目を付けられたな。」
「そうか。けど、なんか悪い奴じゃなさそうだし、大丈夫でしょ?」
春輝の呑気な言葉に凜子と藤孝は溜息を吐く。
そして午後の授業を終えた春輝はお手性の槍を持った焔に呼ばれ、外に行こうとした時、春輝達のクラス委員である“
「水城くん!対魔忍同士での私闘は御法度ですよ!!先生方にもそう言われていたでしょ!
眞田さんも、何故ルールを破るのですか!?」
「うっせぇな堅物女!外野は引っ込んでな!あと、これは理事長からも許可取ってんだよ!!邪魔すんな!行くぞ水城!」
「あ、ちょっ!?黒田さん、ごめん!!」
「なっ!?もう、蓮魔先生に伝えなければ!!」
巴は自身の師であり、憧れの戦闘教官でもある蓮魔 零子の下へと足早に急ぐのであった……。
◆◆◆
その頃、春輝と焔は忍獣が放たれている山の中へと来ており、焔は得物である槍を軽々と振り回しながら好戦的な笑みを浮かべる。
「いつでも良いぜ、掛かってきな!」
「それじゃあ、遠慮なく!雷遁手裏剣・乱!!」
春輝は雷遁を纏わせた手裏剣の影分身を焔に投擲する。それを見て焔は口笛を嬉しそうに口笛を吹き、全て弾き落として見せた。
「へぇ、雷遁の手裏剣か。中々の面白い術を持ってるが……甘く見んなよ!!」
「だったら!雷遁、雷装甲!」
槍と雷の鎧を纏った蹴りがぶつかり合い、その度に火花を散らしていく。
焔の槍は特殊金属、オリハルコンを使っており、その切れ味はどんなものでも貫き切り裂き、さらに炎を纏わせて戦うことも出来る特殊武器である。
「体に雷を纏わせるなんて、面白ぇな事するじゃあねぇか!中々楽しめそうだ!!」
「そいつはどうも!!」
春輝は焔と戦いながら、自身の事を振り返っていた。
この学園に入る前は謎の男(九郎)に、そして学園に入ってからは“ある同い年の少年”に負けた。だが、それが逆に彼を強くする理由となり、彼は自身の弱さや弱点や直すべき所を学び、自身を変えようとしてきた。
彼は入学式に見た青年、“獅子堂 宗一郎”にいつか挑んでみたいと思い、そして、誰かを守れるような忍になりたいと心から強く願い、己を鍛えていった。それによって春輝は強くなっている。
「はぁ!!」
春輝の拳が焔を追い詰めていき、怒濤のラッシュを撃ち込み続けた。
焔はその攻撃に笑みを浮かべると、槍の石突き部分にある噴射口から炎を吹かせて春輝に当てようとすると、春輝はそれを咄嗟にガードして後ろに跳ぶと再び雷遁手裏剣を投げる。
「へえ、中々やるじゃねぇか!こいつは面白くなってきた!」
「そいつは良かった。んじゃあ、まだまだやりますよ!」
「良いぜ、見せてみろよ!」
焔が笑みを浮かべて槍を持ち、突貫してくる。炎を吹かせて突進してくる速度はかなり速く、春輝を貫かんばかりの勢いであったが、春輝はそれを一発で迎え撃った。
かつて、春輝はそんな焔に修行で習得した“自慢の術”で挑むことにした。
「螺旋丸!!!」
その瞬間、学園の森が半分が無くなり、焔は打撲、春輝も火傷を負ったが逆にその威力に驚き、止めに来た蓮魔から春輝と焔には反省文が課せられたのであった……。
◆◆◆
焔side
負けた。まさか負けるなんて思いもしなかったし、ぶっ飛ばされたのも初めてだ。
「(水城春輝、か。中々面白ぇな!オッサンに話してみるか!)」
その翌日の五車学園。
その日、焔は絶対安静の身であったが、病院を抜け出して自身の所属している戦闘部隊である“火遁衆”が集まっている教室の1つに来ていた。
「ん?おぉ、焔。無事だったか?」
「姐さん、元気そうで良かった!!」
焔に声を掛けたのは、火遁衆を率いる現・総隊長であり、壱番隊筆頭の加治 鉄志と彼が本当の妹のように可愛がっている伍番隊の筆頭に推薦した神村 舞華である。
2人とも焔の仲間であり、個性的な面々の火遁衆のメンバーである。
「鉄志、舞華。オッサンいる?」
「師範代か?いるがどうしたんだ?」
「……面白い奴、見つけた!」
焔の言葉に鉄志は腕を組み、怪訝そうに見る。
「お前に勝ったって奴か……森を半分吹き飛ばしたとかいう?」
「あぁ、鍛えれば見所のある奴だよ……オッサン、いるか!?」
焔が奥の部屋に行くと、そこにいたのは、20代後半の男が煙草を吸いながらテレビを見ていた。その顔付きは退屈そうであった。
「なんだ焔、退院速ぇじゃねぇか?騒いでどうした?」
「それがな、面白い奴がいた!」
焔はその男に昨日の事を話した。すると、彼女の言葉を聞いて、男……紅 藤十郎は凶悪そうに、かつ楽しげに笑みを浮かべる。
「そいつはまた、面白そうな奴が入ったものだな?
なら、会って遊んでみるとするかねぇ?」